夢の浮橋

下記3点に内容を絞って一から出直しです。 民俗・文化風俗や伝承音楽の研究に寄与できればと思っています。 ・大分県の唄と踊りの紹介 ・俚謡、俗謡、新民謡の文句の蒐集 ・端唄、俗曲、流行小唄の文句の蒐集

Category:大分県の唄と踊り > わらべ唄(曲種別)

●●● 大黒様の数え唄 ●●●

手まり唄(杵築市溝井)
☆大黒さんという人は ここのお国の人でない 唐から日本に渡るとき
 一で表を踏ん張って 二でにっこり笑うて 三で盃いただいて
 四つ世の中良い様に 五つ出雲の神様に 六つ婿さん貰うて
 七つ何事無い様に 八つ屋敷を買い広め 九つここに蔵を立て
 十でとうとう福の神 ちょいと一貫貸しました

亥の子唄(姫島村)
「亥の子餅来たで」
☆エートンサーエートンサー
 亥の子の餅を祝わんものは 鬼う生め蛇生め
 こってなら人をつけ うなみなら角ん生えた子生め
 京は天竺 わが朝に 一つや二つは祝いもの 一で俵を踏ん張って
 二でにっこと笑うて 三で酒をつくって 四つで世の中よいように
 五つでいつものごとくなり 六つで無病息災に
 七つで何事ないように 八つで屋敷を踏み拡げ
 九つ米俵うっつんで 十で十並の蔵を建て
 十一で金のガンガン湧くように 十二お家の繁盛と申し上げます
 サンヨサンヨ

亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 大黒さんという人は ここのお国の人でない
 唐から日本に渡るとき 一で表を踏ん張って 二でにっこり笑うて
 三で盃いただいて 四つ世の中良い様に 五つ出雲の神様に
 六つ婿さん貰うて 七つ何事無い様に 八つ屋敷を買い広め
 九つここに蔵を立て 十でとうとう福の神 京は天竺わが朝に
 一つや二つは祝いもの 三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ

手まり唄(大分市国分)
☆大黒様という人は ここの国の人でなし 一で俵を踏ん張って
 二でにこにこ笑うて 三で杯いただいて 四つ世の中ヨイヤセ
 五ついつものごとくなり 六つ婿じょう貰うて 七つ何事ないように
 八つ屋敷広めて 九つここに蔵を建て 十でとうとう収めた
 ※婿じょう=お婿さんを。「婿じょ」は親しみを込めた呼び方(同様に「嫁じょ」とも) 

お手玉唄(臼杵市稲田)
☆大黒さんという人は このお国の人でない それから日本に渡るとき
 一で俵を踏んばって 二でにっこり笑うた 三で盃貰うて
 四つ世の中よいように 五つ出雲の神様が 六つ婿から結びあい
 七つ何事ないように 八つ屋敷を買い広め 九つここで祝いましょ
 十でとうとう収まった
メモ:地口に近い単調な節の繰り返しで、テンポが速い。

亥の子唄(臼杵市深江)
☆一つ祝いましょ 大黒さんという人は 一で俵を踏んまえて
 二でにっこり笑うて 三で盃さし合うて 四つ世の中よいように
 五ついつものごとくなり 六つ無病息災に 七つ何事ないように
 八つ屋敷を広めて 九つここに蔵を立て 十で京に上って
 宝物を買いくらせ あなたのお蔵にちょうどいっぱい ユーンエイ

亥の子唄(佐伯市青山)
☆ここでひとつ祝いましょう 十月の亥の子には 山でも里でも餅を搗く
 餅を搗いて祝いましょう 一で俵をふんまえて 二でにっこり笑うて
 三で盃かかえて 四つ世の中よいように 五つ厭でも金ができ
 六つ無病息災に 七つ何事ないように 八つ屋敷を拡めて
 九つここらい蔵が建ち 十でとうとう祝った エイエイ エイトナー
 ※ここらい=ここらに

亥の子唄(直川村仁田原)
☆亥の子をひとつ祝いましょう
 今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて 実に実がなって
 一歩に米が七俵 五文にお酒が七銚子 ついても減らん 叩いても減らん
 ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
 福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出ていけ エーイエイ エイトナ
 亥の子餅搗かん者は鬼生め蛇生め
 大黒さんという人は 一で俵をふんまえて 二でにっこり笑うて
 三で酒をふるもうて 四つ世の中よいように 五ついつものごとくなれ
 六つ無病息災に 七つ何事ないように 八つ屋敷を踏み拡げ
 九つここに蔵を建て 十でめでたい大黒さん 福の神ゃ入ってこい
 貧乏神ゃ出て行け 祝うて三献 まひとつ三献
メモ:直川村で唄われたものは、唄というよりは地口に近い。

亥の子唄(緒方町)
☆今夜の亥の子を祝いましょう 大黒さんという人は 一で俵を踏ん張って
 二でにっこり笑うて 三で盃差し合うて 四つで世の中よいように
 五つで泉の湧くように 六つで無病であるように 七つで何事ないように
 八つで屋敷をまわりうち 九つ米蔵おん建てて 十でめでたく祝うた

亥の子唄(大野町)
☆今夜の亥の子を祝いましょう 大黒さんという人は 一で俵を踏ん張って
 二でにっこり笑うて 三で盃差し合って 四つで世の中よいように
 五つで泉の湧くように 六つで婿さんあるように 七つで何事ないように
 八つで屋敷をまわりうち 九つで米蔵おっ立てて 十でめでたく祝いましょう

手まり唄(直入町長湯)
☆大黒様という人は ここのお国の人でない 唐から日本に渡るとき
 潮風に吹かれて それでお色が真っ黒い 一で俵をふんばって
 二でにっこり笑うて 三で盃差し合うて 四つ世の中よいように
 五つ出雲の神さんが 結び合わせた縁じゃげな 七つ何事ないように
 八つ屋敷を踏み広げ 九つここに蔵を建て 十でとうとう納めた 納めた

手まり唄(九重町後野上)
☆大黒様はこの国の人でなし 唐から日本に渡るとき
 一に俵を踏ん張って 二でにっこり笑って 三で酒をつくって
 四つで世の中よいように 五つで出雲のごとくなる 六つで無病息災で
 七つで何事ないように 八つで屋敷を広めて 九つここで家造り
 十でとうとうおさめた これでいったいおおわせた



●●● 亥の子餅ゅ搗かんもんな ●●●
 もとは悪口唄だったのだが、本来の意味は失われているようだ。

亥の子唄(武蔵町)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅を搗かん者は鬼生め蛇生め
 角ん生えた子生め

亥の子唄(杵築市弓町)
☆亥の子亥の子 亥の子餅ゅ搗かん者な鬼ぅ生め蛇生め
 角ん生えた子生め サンヨッサ サンヨッサ
 搗いた餅ゃ搗き戻せ 盆のように搗くものは
 京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いもの
 三つと搗いたらもうよかろ
 ワーイワッショイワッショイワッショイワッショイ

亥の子唄(杵築市魚町)
☆東西南北万々歳 東西南北万々歳 東西南北万々歳
 亥の子亥の子 亥の子餅ゃ搗かん者にゃ鬼ゅ生め蛇生め
 角ん生えた子生め サンヨッサ サンヨッサ
 搗いた餅ゃ搗き戻せ 盆のように搗くものは
 京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いもの
 三つと搗いたらもうよかろ

亥の子唄(杵築市馬場尾)
☆亥の子亥の子 亥の子餅ゅ搗かん者な鬼ゅ生め蛇生め
 角ん生えた子生め 京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いのもの
 三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ
メモ:農家では「豊年満作万々歳」、商家では「商売繁盛するように」、男児のない家では「この家にぼんのでくるごと」など、その場その場で適宜、冒頭に挿入して唄うこともあった。

亥の子唄(大分市国分)
☆今夜の亥の子を祝わん者は 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め
メモ:国分ではワラてぼを使っていた。餅ではなく、おはぎをくれたとのこと。この行事は大分市内では全く廃絶したが、他地域では今なお行っている集落がある。

亥の子唄(大分市国分)
☆今宵さの亥の子餅ゆわわん者は 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め

亥の子唄(臼杵市深江)
☆搗かいな 搗かいな
 亥の子餅うくれんもんな鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め
 大きな子もこんめえ子も杵う取って投げた
 田中たよむさんが棚から落ちて 缶子踏み割り猫ん御器う蹴割り
 鉈で足う切る不調法な男 ヘンテー ヘンテー ユーンエイ
 ※こんめえ=幼い
  たよむさん=太右衛門さんの転訛

亥の子唄(津久見市)
☆亥の子 亥の子 こいさんの亥の子 祝わんもんな皆バカよ
 鰯の頭ヘイコン うるめん頭ヘイコン
 麦餅ゃいらんせん 米ん餅くだんせ

亥の子唄(蒲江町蒲江浦)
☆亥の子の餅をくれんうちゃ 鬼ゅ生め蛇生め
 角ん生えた子生め ヒンフンミーヘー
 ※くれんうちゃ=くれない家の者は

亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅くれにゃ 鬼生め蛇生め
 角の生えた子を生め おばさん餅くだんせ
 餅くれにゃ 小便たごチチ割るど
 買うて祝わにゃ ヤーさんに祝え
 ※チチ割る=「チチ」は強意の接頭辞 やや荒っぽい言い回し。

亥の子唄(佐伯市木立)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅搗けつけ
 搗かんもんな皆ばか 鬼生め蛇生め 角の生えた子生め
 ここん旦那さんなぶんぶん分限者 銭も金も湧いてこい
 福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出ていけ 餅一つ祝わんせ

亥の子唄(鶴見町島江)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅う搗かんもんは鬼生め蛇生め
 角の生えた子生め カンクロ餅ゃいらんど 白餅を十ばかり
 ※餅う=餅を
  カンクロ餅=かんころ餅
  いらんど=いらないぞ

亥の子唄(米水津村浦代浦)
☆亥の子餅ゅくれんやた鬼生め蛇生め 角の生えた子生め
 ※くれんやた=くれない奴は

亥の子唄(米水津村竹野浦)
☆亥の子 亥の子 今夜は亥の子
 亥の子餅搗かんもな鬼生め蛇生め 角の生えた子生め

亥の子唄(挾間町谷 中村)
☆今夜の亥の子 祝わん者は鬼生め蛇生め 角生えた子生め
 祝うた門には福来る 最後にも一つ添えちょけ ま一つ添えちょけ

亥の子唄(大野町)
☆今夜ん亥の子 餅つかんもんな 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め

亥の子唄(緒方町)
☆今夜の亥の子 祝わんものは 鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め

亥の子唄(玖珠町)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅う祝わんもんな
 鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め



●●● 杵築の町の千太郎さん ●●●

亥の子唄(国東町浜)
「祝わせちょくれ」
☆ヨーイヨーイ ヨーイヤナ アレワイセ コレワイセ
 サッサーヤーワドッコイセ
 杵築の町の千太郎さん まだも九つならん年 若殿さまからもらわれて
 池の端に田をつくり 一株作れば二千石 二株作れば四千石
 お飯に炊けば富士の山 お酒に造れば泉酒 これの屋敷はよい屋敷
 お鶴とお亀が舞い遊び さよう さよう
 船が難船せんように 死んでも命があるように さよう さよう



●●● これの座敷はよい座敷 ●●●

亥の子唄(武蔵町)
☆そもそも亥の子の始まりは 京や天竺わが朝に
 唐土から飛んで来て 五穀成就の鬼となる
 これの これの座敷はよい座敷 南下がりの北上がり
 東方朔は八千歳 浦島太郎は九千歳 千も万も搗いて御慶とせ
 サンヨサンヨ

亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 これの座敷はよい座敷 東下りの西上り
 南上りの北下り 東方朔は八千代 浦島太郎は九千代
 千年も万年も生くるよに サンヨサンヨ
 ※生くるよに=生きるように



●●● 鶴と亀とが舞い込んで ●●●

亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 亥の子様を念ずれば 鶴と亀とが舞い込んで
 家は栄えて神の福 蜘蛛のえばりをつくときにゃ 京は天竺わが朝に
 一つと二つは祝いもの 三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ
 ※蜘蛛のえばり=蜘蛛の巣
メモ:悪口唄ではない本来の文句だが、あまり唄われていない。



●●● お大黒の能には ●●●


亥の子唄(佐賀関町西脇)
☆一つ祝いましょう お大黒の能には 銭も何もがらがら
 金の恵比寿の福の神 ハヤッサイノーヤッサイノー
 一振り二振り金剛界 ヤレやったかぶんまくろう
 鍛冶屋の金クソ天竺までも祝いて それが足らんちゅて角のえのみの木
 ちんぐりむいてひり割った ヒェーンエーイ ここの家は繁盛々々
 ※足らんちゅて=足りないと言って



●●● 男の子を祝いましょ ●●●

亥の子唄(臼杵市大浜)
☆みそすりゴンゴン みそすりゴンゴン
 一つ祝いましょ 男の子を祝いましょ エントンセ エントンセ
 亥の子餅う搗かんもんな 鬼う生め蛇生め 髭の生えた子生め
 ユーンセー
 ※餅う(もちゅ)・鬼う(おにゅ)=餅を・鬼を
☆一つひよどりゃひよの山祝え 二つ船乗りゃ船んさま祝え
 三つみみずは土の中祝え 四つ嫁じょは姑を祝え
 五つ医者どんは薬箱祝え 六つ婿じょは嫁じょを祝え
 七つ名子どんな鍬と鎌祝え 八つ山伏ゃほうらんけを祝え
 九つ紺屋は窯の中祝え 十で殿さま蔵の中祝え
 ユーンエー ユーンエー
 ※婿じょ・嫁じょ=「お婿さん」「お嫁さん」程度の、親しみをもった呼び方
  名子どん=小作人
  ほうらんけ=ほら貝



●●● 銭三文見つけち ●●●

亥の子唄(津久見市保戸島)
☆亥の子ひとつ祝いましょう 亥の子 亥の子 亥の子餅ゃ搗っかいな
 角ん生えたこれん これんの下で 銭三文見つけち 一文で柿買う
 二文でじょうり買う じょうり屋のおばんが焦がれたままよ
 商売 商売 商売よ おかみさんの帷子 貧乏神は出ち行け
 福の神は入っち来い ヨイショヨイショ お家のご繁盛
 ※じょうり=ぞうり
メモ:臼杵以北の亥の子唄は地口に近い単調な節を繰り返すばかりだが、保戸島のものは半ばに別の節をイレコにして変化を持たせてある。この傾向は県南に行くほど顕著で、節がやや技巧的になってくる。



●●● ぶんぶん分限者かんかん金持ち ●●●

亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆祝いましょう 亥の子亥の子 亥の子のお餅は 搗けば搗くほど
 黄金が湧き出る 妙や目出度やお多福繁盛 繁盛広めて蔵をも建てて
 蔵の中には穀金ゆ詰めて 呑めや大黒唄えや恵比須 中で酌とる福の神
 根を持って咲いた ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
 誰々が代になったら 金にゃしゃごん しゃごんじゃ

亥の子唄(直川村赤木)
☆亥の子をひとつ祝いましょう 今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて
 実に実がなって 米が一歩に七俵 酒は御門に七銚子
 ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
 福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出て行け エイエイエイトナ

亥の子唄(直川村直見)
☆亥の子をひとつ祝いましょう 今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて
 実に実がなって 米が一歩に七俵 酒は御門に七銚子
 ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
 福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出て行け 祝うて三献 まひとつ三献
 ※まひとつ=もう一つ



●●● 赤いたすきで金はかる ●●●

亥の子唄(蒲江町蒲江浦)
☆亥の子 亥の子 今夜の亥の子 亥の日を祝うた者は
 正月見れば松島飾る 四方の隅に蔵建て並べ
 ここのおかみさんないつ来てみても 赤いたすきで金はかる
 ひとつ祝いなんせ スットントンのトン



●●● 大文字かぼちゃ ●●●
 これは大昔の流行小唄の転用。吉原の大店「大文字屋」の主人は、娼妓の食事をかぼちゃばかりにして倹約して商売を大きくした云々、背が低くて頭の大きい人だったため「大文字かぼちゃ」と渾名された由。それからきた悪口唄だが、剽軽な人で近隣在郷の者が唄い囃すと一緒に唄った始末だったとかで、流行に拍車をかけた。端唄・小唄としては全く廃絶しているも、堅田踊りの演目として今なお唄われている。
 ところで、「大文字かぼちゃ」の節は三弦唄としては易しい部類だが、子供が唄うには難しすぎる。今の子供のように4拍子や3拍子などの拍子感覚が身にしみついているわけではなく、「間をとって唄う」ような拍子感覚に馴染んだ子にとってはまた違ったのかもしれないが、この唄を亥の子唄に転用したとは驚きである。

亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆ヤーさんヤーさん ヤーさんが餅は 搗いてもねれん 叩いてもねれん
 エーイ エーイ バー かかはハリセー ととはコリャセー
 手水でようねれた ヨイヤニセー ヨイヤニセー

亥の子唄(鶴見町羽出浦)
「亥の子一つ祝いましょう」
☆祝いめでたな若松さまよ 枝もサッサ 栄えて ホンニ葉もしげる
 よいわいの よいわいの ヘントンヘントン
☆ここの屋敷はめでたな屋敷 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
☆ここの屋敷に井戸掘り据えて 水は 湧かずに 金が湧く
☆ここの姉さんいつ来てみても 茜 たすきで ねねはかる
☆ここの嫁さんいつ来てみても 茜 たすきで 金運ぶ
☆ここの旦那さん真浦に網を置き込んで 鰯ゃ 沖を飛ぶ 前をからす
☆姉と妹に紫着せて どちが 姉やら 妹やら
☆沖の暗いのに白帆が見える あれは 紀州の みかん船
☆貰うて帰りますお旦那様よ 明日は お礼に 参ります
○亥の子の神さん祝うてくんなんせ あとをまどうてくんなんせ
 よおき白餅くんなんせ
 ※まどうて=(元の状態に)埋め戻して
  よおき=たくさん

亥の子唄(鶴見町島江)
「亥の子一つ祝いましょう」
☆祝いめでたや若松さまよ 枝もサッサ 栄えて ホンニ葉もしげる
 サーよいわいの よいわいの ヘントンカントン
☆ここのお庭に井戸掘り据えて 水が 湧かずに 金が湧く
☆ここのお家はめでたい屋敷 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
「亥の子の神様祝うてくんなんせ」

亥の子唄(鶴見町大島)
「祝いましょう 祝いましょう」
☆祝いエー めでたな若松様よと申します
 そりゃまたどう言うて申すかな 枝も チョイトセイ
 栄える ホンニ葉も茂る ヨサよいわいな よいわいな
☆ここの ご家はめでたいなご家と申します
 そりゃまたどう言うて申すかな 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
☆ここの 庭にと 井戸掘り据えてと申します
 そりゃまたどう言うて申すかな 水の 涌くほど 金が涌く

亥の子唄(米水津村浦代浦)
「エイトナ エイトナ エントンついたら地がほげた
 後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い 
 ※地がほげた=地面に穴があいた
  まどうて=(元の状態に)埋め戻して
☆祝いめでたな若松様よ 枝も栄えて葉も茂るヨ
 面白いな よいわいな
 「エイトーエイトー  エントンついたら地がほげた
  後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い
☆沖のカモメに潮時とえば 私ゃ立つ鳥 波に問えヨ よいわいな
 「エイトーエイトー エントンついたら地がほげた
  後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い
☆貰うて帰りましょう旦那様よ 明日はお礼に参りますよ 面が白いな
 「ぶんぶん分限者 ここのとんたんな分限者 銭も金も湧いて来い来い

亥の子唄(米水津村竹野浦)
☆エイトンジョーヤ 亥の子の餅は石で搗く 搗けたらめれんと申します
 セイヤ はれさ引く手も ほんに猿がまなこ サーよいわいな よいわいな


●●● お正月さま ●●●

お正月の唄(杵築市納屋)
☆お正月さまはどこから来るか かんじょう屋の木戸まで すずに酒入れ
 袂に餅入れ こんぶりこんぶりござる すいすいござる

正月の唄(臼杵市海添)
☆お正月さまはどこからござる ブーブー山の木の下 羽根と羽子板
 重箱に餅入れて 瓢箪にあかを入れ 山芋を杖につき
 ひょっくりひょっくり ござった
 ※あか=酒
メモ:正月に、親や祖父母が子に唄ってやったり、物ごころのついた子供が口ずさんだりした。

正月の唄(臼杵市東福良)
☆お正月さまはどこから来る ブーブー山の下から すずに酒入れ
 袂に米入れ 重箱に餅入れ 羽子板腰にさし 山芋の杖ついて
 ひょっくりひょっくり ござった
 ※すず=お神酒徳利

正月の唄(佐伯市木立)
☆正月どんはどっからござるか 扇山のそらから さぜえぶきい酒う入れて
 つるの葉に米う入れて 鼻え杖うつっぱって へっこらへっこらござった
 エッチキ蕎麦食うた 小豆食うた あぶらげ食うて すべくった
 ※さぜえぶきい=さざえブクに(さざえの殻に)
  酒う(さきゅう)=酒を う=「を」にあたる助詞
  鼻え杖う(はねえつよう)=鼻に杖を え(い)=「に」にあたる助詞
  すべくった=「すべった」の強意(やや俗っぽい言い回し)
メモ:正月に親や祖父母が子に唄ってやったり、または兄弟姉妹で一緒に唄った。

正月の唄(鶴見町羽出浦)
☆正月さんが来た来た だいだい木の根まで だいだいをかむげて
 つるの葉をくわえて 餅を袂に入れて 金の杖をついて
 へっこらへっこら 来やんした


●●● へろへろの神さま ●●●

どんど焼きの唄(杵築市)
☆へろへろの神様は 正直な神様で おささの方へ面向きよる 面向きよる
 ※おささ=お酒



●●● トンドタギリギッチョ ●●●

トンド焼きの唄(鶴見町羽出唄)
☆トンド トンド タギリギッチョ ギリギッチョ ギリギリもうちゃかんまんが
 かもうこたかもうが 源氏が怒るけ ヤレ囃せ囃せよ
 ※もうちゃ=回っては かんまんが=構わないが
  かもうこたかもうが=構うことは構うが 怒るけ=怒るので
☆トンド トンド タギリギッチョ ギリギッチョ ギリギリもうちゃかんまんが
 かもうこたかもうが 源氏が怒るけ ヤレかやせかやせよ
 ※かやせ=倒せ


●●● もぐら打ちゃ十四日 ●●●

もぐら打ちの唄(安心院町)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆飯ゃ腹いっぺえ 明日なさ おかい
 ※腹いっぺえ=腹いっぱい 明日なさ=明日の朝は おかい=おかゆ

もぐら打ち唄(九重町)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆げえは十五日 餅おくれ 餅おくれ
 ※小豆げえ=小豆がゆ

ぶりこ打ちの唄(玖珠町柿西)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆粥は十五日



●●● よしのみ一杯 ●●●

よしのみの唄(中津市下正路町)
☆よしのみ一杯 粥一杯 鍋釜売ってもよしのみゃ祝え
 よしのみ一杯 粥一杯 長々お世話になりました
 よしのみ一杯 粥一杯 ごりょんさんさよならケツねぶれ
 ※よしのみ=米・麦・粟・小豆で炊いたごはん。
メモ:正月十四日、小正月前夜のお祝いを「よしのみ祝い」という。奉公人は、藪入りを迎える明るい気持ちで唄ったものである。



●●● 粟ん鳥、稗ん鳥 ●●●
 小正月の昼間に、子供が割竹を振り回して歩きながら大声で唱えた。豊年を願うものである。

鳥追いの唱え(国見町岐部)
☆粟ん鳥ゃホー 稗ん鳥ゃホー

鳥追いの唱え(大分市国分)
☆粟ん鳥 稗ん鳥 ショイショイ 田原まで飛んで行け



●●● 実盛どん ●●●

虫送りの唄(中津市福島)
☆実盛どんはごうじんだ ごうじんだ その虫は おん供で
 アータフーケ マンプクリン エーイエーイ ワー

虫送りの唄(湯布院町由布院)
☆実盛どんのごうじんだ 後ぁ富貴 満福利

虫送りの唄(玖珠町)
☆実盛どんなごうじんだ 後ぁ富貴 満福利


●●● 盆の十六日 ●●●

お盆の唄(杵築市馬場尾)
☆盆の十六日おばんかて行たら 上がれ茶々飲め やせうま食わんか
 ほうちょうのべのべ今夜の夜食 茄子きりかけ ふろうの煮しめ
 ※おばんかて=おばさんの家に
  やせうま=のべぼうちょうに黄な粉をまぶしたおやつで、お盆のお供えにした
  のべのべ=伸ばせ伸ばせ
メモ:お盆の頃に親、また祖父母が子供と一緒に唄ったもので、盆踊りの文句の転用。

お盆の唄(竹田市)
☆盆じゃ提灯じゃ 明日の晩は祝言じゃ
☆お盆の十六日おばんかた行ったら 上がれ飲め飲め やせうま食わしょ
メモ:おばんかた=おばさんの家に
   やせうま=のべぼうちょうに黄な粉をまぶしたおやつ(お盆のお供え)


●●● 柿なれはらめ ●●●

柿の表年を願う唄(佐伯市木立)
☆はらめ はらめ 柿なれはらめ はらまにゃ伐って 飛ばするぞ


●●● 御取越参っちおくれ ●●●

御取越誘いの唄(豊後高田市田染)
☆御取越参っちおくれ じいさんもばあさんもこけんごち参っちおくれ
 煮豆もたけた 煎菓子も入れた みんな早う次郎やん方に参っちおくれ
 じいさんもばあさんも 早う参っちおくれ
 ※こけんごち=転ばないように


●●● 家移りげえ ●●●

家移り粥の唱え(大分市国分)
☆家移りげえ 何食おう けえの国のけえ太郎 投げ込みけえする けえする
 ※げえ=粥
メモ:新築祝いのお座の前に、大黒柱その他に棟梁・その家の長男・親戚の長男の3人がお粥さんを備える行事で唱えた。



●●● 一つ踏めば千石 ●●●

餅踏み唄(本匠村)
☆誕生餅一つ祝いましょう
 もう一つ祝いましょう 祝うて三坤祝いましょう
 右の(左の)足から踏みましょう 千石万石踏み拡げ
 今年ゃ豊年穂に穂が咲いて 道の小草に米がなる
 東の方に蔵建てて 西の方にも蔵建てて 千石万石入れましょう
 東の蔵に米つめて 西の蔵にも米つめて 千石万石祝いましょう

餅踏み唄(佐伯市青山)
☆ヨシ子ちゃんお誕生日
 一踏み踏んだら千石で 二踏み踏んだら二千石
 三千石に踏み広め 東の方には金の蔵 西の空き地に銀の蔵
 空いたところに瑠璃の家 鶴は千年 亀は万年
 百まで長命おめでたや おめでたや

餅踏み唄(佐伯市木立)
☆一つ踏めば千石 二つ踏めば二千石
 三千石のお祝いに 鶴は千年 亀は万年
 あなた百までわしゃ九十九まで ともに白髪のはゆるまで
 百まで生きて米かめ米かめ 鶴は千年 亀は万年 千石も万石も
 この子が蔵を建てますように

餅踏みの唱え(大分市国分)
☆ヨイショヨイショ ともに白髪の生えるまで
 アー踏みましょ踏みましょ ヨイショヨイショ

●●● 一かけ二かけ ●●●
 この唄は「一番はじめは一宮」の節で唄うことが多いが、ほかにも「かっぽれ」の「豊年満作」または「道は六百八十里」の節で唄うこともある。

手遊び唄(宇佐市長洲)
☆せっせっせ
 一かけ二かけて三かけて 四かけ五かけて六をかけ
 橋の欄干腰かけて 遥か向こうを見渡せば
 十七八の小娘が 片手に花持ち線香持ち
 姉さん姉さんどこ行くの 私は九州鹿児島の
 西郷隆盛娘です 明治十年十二月
 切腹なされた父上の お墓参りに参ります
 お墓の前で手を合わせ ナムチンナムチン拝んだら
 お墓の中から魂が ふんわりふんわり じゃんけんぽん あいこでしょ

お手玉唄(杵築市弓町)
☆一かけ二かけて三かけて 四かけて五かけて六かけて
 六かけ七かけ橋かけて 橋の欄干腰かけて
☆はるか彼方を眺むれば 十七八なる姐さんが
 花と線香を手に持ちて こちらに渡って来るわいな
☆姐さん姐さんどちら行き 私は九州鹿児島の
 切腹なされた父親の お墓参りに参ります
☆お墓の前で手を合わせ なむあみだぶつと拝んだら
 お墓の中から幽霊が ゆらりゆらりと浮かびくる

お手玉唄(大分市国分)
☆一かけ二かけて三をかけ 四かけて五かけて橋をかけ
 橋の欄干手を腰に 遥か向こうを眺むれば
☆十七八の姉さんが 竹の子うだいてねえている
 姉さん姉さんなぜ泣くの 紫竹破竹の孟宗竹
 ※ねえている=泣いている
☆寒竹竹まで生えたのに わたしのオソソにまだ生えぬ
 それが悲しうて泣いている それが悲しうて泣いている
メモ:通常「十七八の姉さん」は「西郷隆盛の娘」だが、ここでは内容がすっかりかわってバレ唄になっている。ほかに「一かけ二かけ」のバレ唄としては「(橋の)下から見上げりゃ…」云々のものもある。この種の発想の文句はさしてめずらしいものではなく、盆口説の「イレコ」としてかつて広範囲で行われていた。最近の盆踊りで耳にすることはめっきり少なくなったが、今でも稀に聞くことがある。ここに紹介したものは、盆の坪で聞き覚えた文句をおもしろがって、ませた子供がお手玉をしながら唄ったものだろう。

手まり唄(鶴見町)
☆一かけ二かけて三かけて 四かけて五かけて橋をかけ
 橋の欄干腰をかけ はるか向こうを眺むれば
☆十七八の姉さんが 片手に花持ち線香持ち
 もしもし姉さんどこ行くの 私は九州鹿児島の
☆西郷隆盛娘です 明治十年三月に
 切腹なされた父上の お墓参りにまいります
☆お墓の前で手を合わせ 南無阿弥陀仏と拝みます

手まり唄(直入町)
☆一かけ二かけ三かけて 四かけ五かけ六かけて
 橋の欄干腰をかけ 遥か向こうを眺むれば
 十七八のねえさんが 片手に花持ち線香持ち
 あなたどこかと尋ぬれば 私九州鹿児島の
 西郷隆盛娘です 明治三年三月の
 お墓参りもせにゃならぬ ヤレコレタンショ

手まり唄(天瀬町女子畑)
☆一かけ二かけて三かけて 四かけ五かけて橋をかけ 橋の欄干腰かけて
 はるか向こうを眺むれば 十七八のねえさんが 手には線香花を持ち
 お前どこかと問うたれば 私ゃ九州鹿児島の 西郷の娘でござります
 明治十年戦争に 討ち死になされた父上の お墓参りにまいります
メモ:この文句は普通「いちばんはじめは」や「「豊年満作」または「道は六百八十里」の節で唄うが、女子畑では「覗き節」である。覗き節は、今ではすっかり姿を消した「覗きからくり」の口上の口説が変化して、酒宴の騒ぎ唄となったもの。盆口説の「いれこ」に転用されるなど、県内各地で親しまれていた。



●●● 一番はじめは ●●●
 ルルーの「抜刀隊」の一部のメロディーを抜き出してヨナ抜き・陽旋に変化させたもので、明治以降全国的に流行した。このような経緯もあって、在来のわらべ唄、古くからの日本の旋律というわけではないが、「お城のさん」などより古いと思われる数々の唄と同列に扱われてきたようだ。

お手玉唄(武蔵町)
☆一番はじめは一宮 二また日光修善寺
 三また佐倉の惣五郎 四また信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々鎮守様
 七つ成田の不動様 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法様 十で東京心願時
 これほど心願懸けたれど 浪子の病気は治るまい
☆武雄がボートに移るとき 浪子が白いハンカチを
 打ち振りながらねえ武ちゃん 早く帰ってちょうだいと
☆ゴーゴーゴーと鳴る汽車は 武雄と浪子の生き別れ
 二度と逢われぬ汽車の窓 鳴いて血を吐く不如帰

お手玉唄(杵築市札ノ辻)
☆一番はじめは一宮 二また日光修禅寺
 三は佐倉の宗五郎 四また信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々天神様
 七つ成田の不動様 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法様 十で東京は心願寺
 これほど心願かけたのに 浪子の病は治らない
☆ゴウゴウゴウと鳴る汽車は 武夫と浪子の生き別れ
 鳴いて血を吐く不如帰 ほんに哀れじゃないかいな

お手玉唄(杵築市本庄)
☆一番はじめは一宮 二また日光東照宮
 三また佐倉の宗五郎 四また信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々天神様
 七つ成田の不動さん 八つ八幡の製鉄所
☆九つ弘法大師さん 十で東京の心願寺

手まり唄(別府市東山)
☆一番はじめは一の宮 二また日光東照宮
 三また佐倉の宗五郎 四また信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々天神さま
 七つ成田の不動さん 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法さん 十でとうとう心願寺
 これほど心願かけたのに 浪子の病はよくならぬ

手まり唄(野津原町野津原)
☆いちばんはじめは一宮 二また日光修善寺
 三また佐倉の宗吾郎 四はまたヨネンのハイカラさん
☆五つは出雲の大社 六つ村々天神さま
 七つ何事ないように 八つ八幡の八幡宮
☆九つ子供の高野山 十でとうとう心願しょ
 あれほど心願かけたのに 浪子の病はよくならぬ
メモ:野津原のものは、文句がずいぶん変わっている。

手まり唄(上浦町)
☆一番はじめは一の宮 二また日光東照宮
 三また佐倉の宗五郎 四また信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々天神様
 七つ成田の不動様 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法様 十で東京明治神宮

手まり唄(弥生町)
☆一番はじめは一の宮 二はまた日光東照宮
 三また佐倉の宗五郎 四はまた信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村の鎮守様
 七つ名古屋の名古屋城 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法様 十で東京二重橋

手まり唄(湯布院町川上)
☆一番はじめは一宮 二は日光の東照宮
 三で佐倉の宗吾郎 四はまた信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々天神さん
 七つ成田の不動さん 八つ八幡の八幡宮
☆九つ高野の弘法さん 十で東京の東照宮

お手玉唄(玖珠町)
☆一番はじめは一宮 二で日光東照宮
 三で讃岐の金毘羅さん 四はまた信濃の善光寺
☆五つ出雲の大社 六つ村々地蔵さん
 七つ成田の不動さん 八つ大和の法隆寺
☆九つ高野の弘法師 十でところの氏神さん

手まり唄(鶴見町吹浦)
☆明治の二十八年に 台湾島におこりたり
 悪者どもを鎮めんと 北白川の宮殿下
☆多くの軍人引き連れて 勇んで家を出かけたり
 ちょうど六月七月の 暑さ厳しきそのうえに
 ※勇んで家を出かけたり=元唄では「勇んでお出でなされたり」となっている。きっと唱歌「桃太郎」の「桃から生まれた桃太郎、気はやさしくて力もち、鬼が島をば討たんとて、勇んで家を出かけたり…」の文句と混同したのだろう。
☆水は少なく食足らず 山は険しき道悪し
 戦に強き軍人も この難儀には弱れたり
☆宮は難儀はいたわれど 軍人どもを励まして
 勇んで攻めて悪者を おおかたお鎮めなされたり
☆ふと病気にかかられて 惜しやお隠れなされたり
メモ:唱歌「北白川宮」の文句を「一番はじめは」の節に乗せたもので、これも局地的なものだろう。この種のアレンジは字脚が揃っていればどうにでもなり、採集されていないだけで他地域の子供達の間でもこういった替え唄は行われていたのではないだろうか。掲載するまでもないようにも感じたが、元唄の文句が伝承の過程でやや変化していることもあり、参考として元唄の文句も引き一応掲載することにした。
(参考)唱歌「北白川宮」
 ☆明治の二十八年に 台湾島におこりたる
  悪者どもを鎮めんと 北白川の宮殿下
  多くの軍人引き連れて 勇んでお出でなされたり
 ☆ちょうど六月七月の 暑さ厳しきそのうえに
  水は少なく食足らず 山は険しく道悪し
  戦に強き軍人も この難儀には弱りたり
 ☆宮は難儀を厭われず 軍人どもを励まして
  進んで攻めて悪者を おおかたお鎮めなされしに
  ふと御病気にかかられて 惜しやお隠れなされたり

手まり唄(鶴見町吹浦)
☆朝早くから梅の木に ホーホケキョーとウグユスが
 枝から枝に飛んでいる ドドラドレドラ、ソ、ソ、ソ
 ※ウグユス=鶯 「うぐいす」「うぐゆす」どちらの言い方も通用していた
  ドドラドレドラ、ソ、ソ、ソ=音階をなぞった文句
☆野原に花が咲いている すみれたんぽぽ蓮華草
 赤や黄色で美しい ドドラドレドラ、ソ、ソ、ソ
メモ:「一番はじめは」と全く同じ節だが、文句が多分に小学唱歌的である。また、末尾の「ドドラドレドラ」云々も小学校の音楽の授業を連想させる。経緯は不明だが、おそらく小学生が替え唄的に唄った、極めて局地的なものだろう。



●●● 一列らんぱん破裂して ●●●
 この唄は文句が時勢にそぐわないため今は全く聞かれないが、昔は全国的に流行し、「一匁の一助さん」などと同じくらい盛んに唄われたものである。「歩兵の本領」の節を2回繰り返して、最後に2句余るところは後半の節を繰り返して唄う。「道は六百八十里」の節で唄うこともある。

お手玉唄(宇佐市横田)
☆十一一合のお豆煎り 十二は日光大権現
 十三三十三間堂 十四は四国の金毘羅さん
 十五は御殿の八重桜 十六六夜のお月さま
 十七七士の墓参り 十八浜辺の白兎
 十九は楠木正成で 二十は二宮金次郎 金次郎
 またまた一点とりました
メモ:唱歌「道は六百八十里」の替え唄だが、「十一いちごの」「十三三十」以下同様に、節の頭にあたる部分がくずれて平板になっている。通常、「一列らんぱん破裂して」の文句に接続して唄う。

手まり唄(杵築市馬場尾)
☆一列ランパン破裂して 日露戦争始まった
 さっさと逃げるはロシヤの兵 死んでも尽くすは日本兵
 ※一列ランパン=日列(日本と列強国)談判の転訛か。
☆御門の兵を引き連れて 六人残して皆殺し
 七月八日の戦いに ハルピンまでも攻め込んで
 ※御門の=他地域では一般に「五万の」と唄われることが多い
 ※六人残して=数え唄の語呂合わせになっている関係で「六人」と唄っただけか
☆クロパトキンの首を取り 東郷大将 万々歳

お手玉唄(野津原町野津原)
☆一列らんぱん破裂して 日露戦争始まった
 さっさと逃げるはロシヤの兵 死んでも尽くすは日本の兵
☆五万の兵を引き連れて 六人残して皆殺し
 七月八日の闘いに ハルピンまでも攻め伏せて
☆クロパトキンの首を取り 東郷大将万々歳
 十一一合のお豆煎り 十二新田の義貞は
☆十三寒いは北海道 十四四国の金比羅さん
 十五御殿の八重桜 十六ロシヤの大戦争
☆十七七士の墓参り 十八浜辺の白うさぎ
 十九楠木正成で 二十二宮金次郎

お手玉唄(上浦町)
☆一列談判破裂して 日露戦争となりました
 さっさと逃げるはロシアの兵 死んでも尽くすは日本の兵
☆五万の兵を引き連れて 六人残さず皆殺し
 七月八日の戦いに ハルピンまでも攻め入って
☆クロバタキンの首を取り 東郷大将万々歳
 十一一合のごま参り 十二は浪子の墓参り
☆十三は三十三間堂 十四は四国の金毘羅さん
 十五は殿御の八重桜 十六はロシアと大戦争
☆十七は七士の墓参り 十八は浜辺の白兎
 十九は楠木正成よ 二十は二宮金次郎
 まるまる一かんかしました

お手玉唄(佐伯市池田)
☆一列談判破裂して 日露戦争始まった
 さっさと逃げるはロシアの兵 死んでも尽くすは日本の兵
☆五万の兵士引き連れて 六人残して皆殺し
 七月八日の戦いは ハルピンまでも攻め寄って
☆クロバトキンの首を取り 東郷元帥万々歳
 十一いちごのごまめいは 十二は新田義貞で
☆十三三月ひなまつり 十四は四国の金毘羅さん
 十五は殿御の八重桜 十六ロシアの大戦争
☆十七は七士の墓参り 十八浜辺の白兎
 十九は楠木正成で 二十は二宮金次郎
 ますますいったい勝ちました 勝ちました

運動会の唄(杵築小学校)
☆秋空高くさわやかに 今日は楽しい運動会
 元気に満ちた杵築の子 いざ立て奮え わが選手
☆臥牛の丘の校庭に 今日ぞ集える健男児
 騎馬の戦や駈け比べ 赤の(白の)勝鬨あげようぞ 
メモ:唱歌「歩兵の本領」の替え唄で、お手玉に唄った「一列らんぱん」の節と同じなので子供にはなじみ深く、応援合戦等で盛んに唄われていた。ここに掲載した2節目は昔唄われた歌詞で、後に「臥牛の丘の校庭で、今日は楽しい運動会、団体競技や徒競走…」云々に改訂され、今なお唄われているようだ。

運動会の歌(庄内町渕)
☆待ちに待ちたる晴れの場所 百戦錬磨の健脚を
 試さんときは今なるぞ 奮い起こせよ渕校を
メモ:唱歌「歩兵の本領」の替唄(一列らんぱん破裂して…と同じ)。



●●● 姉さんここは西ヶ原 ●●●
 これも「一番はじめは一宮」の系統の節を持っており、おそらく唱歌の節の転用なのだろうが元唄がわからない。陰旋で、やや暗い感じのする節である。

手まり唄(弥生町上小倉)
☆姉さんここは西ヶ原 いつもの学校終えたなら
 遊びに通うて君逢うて あおば姉さんこの花は
☆なんときれいな花でしょう トキちゃんこれは女郎花
 咲いての花はいくつかえ 数えてごらんおもしろや



●●● さんよう山は霧深し ●●●
 これは唱歌「川中島」の転用で、迷ったが、伝承の過程で文句が転訛していたり、また節回しも元唄から若干離れていることもあって、参考として掲載することにした。
 唱歌「川中島」
 ☆西条山は霧深し 筑摩の川は波荒し 遥かに聞こゆる物音は
  逆巻く水か強者か 昇る朝日に旗の手の きらめくひまにくるくるくる
 ☆車がかりの陣ぞなえ 巡る合図の閧の声 あわせる櫂も嵐吹く
  敵を木の葉と掻き乱す 川中島の戦いは 語るも聞くも勇ましや

お手玉唄(弥生町江良)
☆さんよう山は霧深し 筑摩の川は波高し 遥かに聞こゆる物音は
 逆巻く波か強者か 昇る朝日に鬨の声 ひらめく波にくるくるくる

手まり唄(清川村宇田枝)
 ☆さんよう山は霧深し 筑摩の川は波荒し 遥かに聞こゆる物音は
  逆巻く波か強者か 昇る朝日に鬨の声 きらめくひまにくるくるくる
 ☆琵琶の形に似たりとて その名を負える湖の 景色のよいのに驚いて
  秋津の木陰に帆掛け船 きらめくひまにくるくるくる
メモ:これは唱歌「川中島」の転用だが、伝承の過程で文句が変化している。特に2節目の「琵琶の形に」に至っては「川中島」とは全く関係のない文句で、唱歌「近江八景」の影響が感じられる。参考として元唄を掲載しておく。
 唱歌「近江八景」
 ☆琵琶の形に似たりとて その名を負える湖の
  鏡のごとき水の面 あかぬ眺めは八つの景
 (以下略)



●●● 三月三日のわらべ折り ●●●
 これは「浪子と武雄」(不如帰)として全国的に流行したもので、「一番はじめは一宮」とか「一列らんぱん破裂して」「波はどんどと打ち寄せる」などの唄と同系統の節をもっている。在来のわらべ唄ではなく、明治以降に入ってきた西洋の旋律を元にヨナ抜きの長音階に改めたものだろう。

お手玉唄(清川村宇田枝)
☆三月三日のわらべ折り 武雄は浪子の手を引いて
 浪さん転ぶな危ないよ 心配なさるな武雄さん
 ※わらべ=わらび
☆武雄がボートに移るとき 浪子は白いハンカチを
 うち振りながらねえあなた 早く帰ってちょうだいね



●●● 波はどんどと ●●●
 俚謡というよりは唱歌風の節である。元唄は不明だが、同種の唄が全国的に唄われたようだ。おそらく「いちばんはじめは一宮」や「一列らんぱん破裂して」などと同じように、明治以降に入ってきた外国のメロディをヨナ抜きに改めたものだろう。

縄跳び唄(宇佐市長洲)
☆波はどんどと打ち寄せる ここは夕べの山の上
 青空高く立ちて 白地の旗が立っている

縄跳びの唄(杵築市馬場尾)
☆波はどんどと打ち寄せる ここは浜辺の山の上
 あの空高くそびえ立つ 錦の旗の勇ましさ

縄跳び唄(上浦町)
☆浪はどんどと打ち寄せる ここは海辺の丘の上
 青空高くとうちりと 白きの旗が立っている
☆昔あるとき友達が 井戸の水をくみ上げて
 南無阿弥陀仏と手を合わす

縄跳び唄(佐伯市木立)
☆波はどんどん打ち寄せて ここは伊香保の山登り
 浪ちゃん転けるな危ないど 心配なさるな武夫さん
 ※危ないど=危ないぞ ※かつて県内でよく聞かれた「ぞうきん」を「どうきん」と発音するような訛りと同様
☆武夫がボートに移るとき 浪子は白いハンケチを
 打ち振りながらねえあなた はやく帰って下さんせ

縄跳びの唄(中津江村)
☆波どんどと打ち寄せて ここは海辺の山の上
 青空高くそびえ立ち 錦の旗が立ってます



●●● 嬉しき楽しき運動会 ●●●

運動会の歌(竹田市)
☆嬉しき楽しき運動会の 心は飛び立つ空のまり
 ポンポン ポンポン ポンポンポン
 互いに争うかけ声の 激しき方ぞ勝ちと知る
☆嬉しき楽しき運動会の 心は浮き立つ空の旗
 ヒラヒラ ヒラヒラ ヒラヒララ
 互いに選ぶ勝ち負けは 旗色よりぞ現れる



●●● エンヤラエンヤラ足並みそろえて ●●●

応援歌(庄内町渕)
☆エンヤラエンヤラ足並みそろえて 桜の葉陰に鍛えし大選手
 今日こそ大勝利 今日こそ万々歳
 そら飛べ やれ飛べ さっさ飛べ タンタラタン



●●● 青葉シゲちゃん ●●●
 唱歌「桜井の訣別」の替え唄。元歌の歌詞のままでお手玉やまりつきに唄うことも広く行われたが、しばしば陰旋化して伝わっている。

手まり唄(豊後高田市田染)
☆青葉シゲちゃん昨日は 長々お世話になりました わたし今度の日曜に
 東京女学校に参ります 皆さんよくよく勉強して 立派になって下さいね



●●● さよなら三角 ●●●
 尻取り唄の類で、全国的に唄われたもので地域性は感じられない。文句に適当でない表現が見られるが、掲載に他意はなく、昔の子供に親しまれた唄として紹介する。

尻取り唄(宇佐市横田)
☆さよなら三角また来て四角 四角は豆腐 豆腐は白い
 白いは兎 兎は跳ねる 跳ねるは蛙 蛙は青い 青いはバナナ
 バナナは長い 長いは煙突 煙突は黒い 黒いはインド人
 インド人は強い 強いは日本 日本は狭い 狭いは二階
 二階は揺れる 揺れるは電気 電気は光る
 光るは親父のハゲ頭 ピッカッ

尻取り唄(宇佐市長洲)
☆日本の 乃木さんが 凱旋す 雀 メジロ ロシヤ
 野蛮国 クロバトキン 金玉 負けて逃げるがチャンチャン坊主
 棒で叩くは犬殺し 死んでも命のあるように
☆さよなら三角また来て四角 四角は豆腐 豆腐は白い
 白いは兎 兎は跳ねる 跳ねるは蛙 蛙は青い 青いはバナナ
 バナナは長い 長いは煙突 煙突は黒い 黒いはインド人
 インド人は強い 強いは金時 金時は赤い 赤いはザクロ
 ザクロは割れる

尻取り唄(豊後高田市田染)
☆鳴ると飛び立つ群雀 雀のお宿は藪の中 仲良くしましょう姉妹
 もとより強い大日本 日本は島国松の国 お国を守る兵隊さん
 算術いつも勉強する 駿河の名所は田子の浦 浦島太郎は亀に乗る
 乗ると過ぐるとは汽車の旅 宿屋の看板大きいな
 田舎のごちそう麦うどん ドンドンパチパチ大演習
 修身のお話ためになる
☆扇子と団扇と扇風機 木から木へ吊るハンモック
 つるつる剥ける梨の皮 かわいい亀の子ぶらりんこ
 氷とラムネとところてん 天には星がきーらきら

遊びをやめるときの唄(佐伯市女島)
☆さよなら三角また来て四角 四角は豆腐 豆腐は白い 白いは兎
 兎は跳ねる 跳ねるは蛙 蛙は青い 青いはバナナ バナナはむける
 むけるは筍 筍は長い 長いは煙突 煙突は黒い 黒いは闇夜
 闇夜に鉄砲 はなせば危ない ズドーン



●●● どんどと鳴るは ●●●

手まり唄(臼杵市東福良)
☆どんどと鳴るは雷な 上の関まで押せ押せ お関の弟の長吉が
 チョキチョキ八百屋のスモテンテン テレツク様の越後獅子
 牡丹に唐獅子 竹に虎 虎追うて走るは和藤内
 和藤内の娘は智恵がない 智恵の中山 請願時
 請願時の和尚さんな のこたこで 人をだますが大名人

●●● 猫の子・兎の子 ●●●

寝させ唄(大分市国分)
☆眠れ眠れ眠れよ 眠れ眠れ猫の子
 うっつけうっつけ兎の子 眠れ眠れ眠れよ

寝させ唄(大分市松岡)
☆ねんねんねんねん ねんねんよ うっつけうっつけ兎の子
 眠れ眠れ猫の子 ほうらねんねん ねんねんよ

寝させ唄(鶴見町羽出浦)
☆ねんねん山の兎の子 どうしてお耳が長いの
 こんまいときにとっちゃんが お耳をくわえて引っ張った
 それでお耳が長いの
 ※こんまいときに=小さいときに

寝させ唄(宇目町)
☆ねんねんねんねん ねんねんよ ねんねん山の虎猫は
 一匹吠ゆれば皆吠ゆる ほろろんほろろん ほろろんよ

寝させ唄(弥生町堤内)
☆ねんねこ ねんねこ ねんねこよ ねんねこ山の虎犬が
 一匹吠えたらみな吠えた ほーら ねんねこ ねんねこよ

寝させ唄(大野町)
☆眠れ眠れ 猫の子 うっつけうっつけ うさぎの子
 うさぎの耳は どうしてそんなに長いな
 枇杷の葉食べたき長いぜ そら眠れ 眠れや
 ※どうしてそんなに長いな=そんなに長いな(長いのは)どうして?
  食べたき=食べたので

寝させ唄(竹田市本町)
☆向こう山の兎は どうして耳が長いな
 小さいときにちち乳母が 耳をくわえて引っ張った
 それでお耳が長いな ねんねんねんねんよ ねんねんねんねんよ

寝させ唄(直入町長湯)
☆眠れ眠れねずみの子 うっつけうっつけ兎の子 泣くな泣くな茄子の子
 坊やが眠った後からは 裏の山の山猿が 一匹とんだらみなとんだ
 そらそら眠れ眠れよ そらそら眠れ眠れよ



●●● この子が七つに ●●●

寝させ唄(大分市松岡)
☆正ちゃんが十九になったとき ぼんぼろ屋敷に蔵をたて
 蔵のめぐりに杉植えて 杉の小枝で鳥が鳴く
 うの鳥うの鳥なぜ鳴くの 親がないのな子がないな
 親もござれば子もござる たった一人の姉さんが
 よんべコロリと死にました それが可愛ゆて泣きやんす
 ほうら泣くな泣くなよ
 ※親がないのな子がないな=親がないのか子がないのか
  よんべ=昨夜
  可愛ゆて=かわいそうで

寝させ唄(佐伯市青山)
☆この子が十三なったれば お屋敷広めて蔵建てて
 蔵のまわりに杉植えて 杉が三本松三本
 合わせて六本根を見れば 根にゃ根草が覆いかぶり
 うらにゃ鴎が巣をくうて 十二の卵を生み揃え
 それが一度に立つときにゃ 金の盃黄金の銚子
 飲めば大黒唄えば恵比須 中で酌する福の神
 うっつけうっつけ牛の子 眠れ眠れ猫の子
 ほうりゃねんねん ねんねん ほうりゃねんねん ねんねん
 ※巣をくうて=巣を組んで

寝させ唄(玖珠町)
☆坊やはいい子だねんねしな この子が七つになったなら
 上のお寺に参らせて 法華経なんぞを習わせて
 堅山砕いて堂建てて 堂のまわりに杉植えて
 松の緑に鳴く鳥は 雁かすいしょか鵜の鳥か
 開いてみたり ごしょの鳥



●●● おむくの父さん ●●●
 縁故関係か、または山師の一族の移動等によって局地的に伝わったものと思われる。

寝させ唄(中津市金谷町)
☆おむくの父さんどこへ行った 寒田の金山 金掘りに
 金が掘れたか掘れぬやら 一年待てどもまだ見えぬ
 二年待てどもまだ見えぬ 三年ぶりの霜月に
 おむくに来いとの状が来た そりゃねんねん ねんねんよ
 おむくを遣ること易けれど 着物着替えを持ちませぬ
 下には木綿の中小袖 上には越後のお帷子
 これほど仕立ててやるほどに あとに帰ろと思やるな
 先に蓮華の花が散る あとに時雨の雨が降る
 そりゃねんねん ねんねんよ そりゃねんねん ねんねんよ

寝させ唄(大分市南大分)
☆坊やの父さんどこへ行た 長い長崎金掘りに
 金がないやら死んだやら 一年経っても帰りゃせぬ
 二年経っても帰りゃせぬ 三年経っても帰りゃせぬ
 三年三月に状が来た

寝させ唄(佐伯市鶴岡)
☆おむくがとったんどこどこに 豊後佐伯に金掘りに
 金がないやら掘れんやら 一年経っても状が来ん
 二年経っても状が来ん 三年三月に状が来た
 おむくに来いとの状が来た おむくに何を着せてやる
 下にゃ羽二重白小袖 上にゃ羽二重黒小袖
 てんて座敷に直らして 朝から晩までお手習い
 お手は習わずバクチ打ち バクチ打つほど負かされて
 高い縁から突き落とされて 二十五匁小脇差落とし
 誰が拾うたか詮議をすれば 町の横丁のお春が拾うた
 お春出せ出せお七が出して お七婆さん手まめな婆さん
 川に流れた芋屑を拾うて つんぐり剥いておかせにかけて
 機になんかけちゃんちゃん織って 向こうおまんさんの夏羽織
 しっかり確かに受け取りました
 ※とったん=父さん
  手習い=お習字
  町=ここでは佐伯町のこと(旧市街)
  おかせにかけて=枷繰りにかけて

寝させ唄(九重町舟ヶ迫金山)
☆おウメの父さんどこ行った かんろの山に金掘りに
 金が出るやら出でぬやら 一年経ってもまだ見えぬ
 二年経ってもまだ見えぬ 三年たったら状が来た
 状の上書き読んでみりゃ おウメにゃ来いとの状じゃもの
 おウメを遣ること易けれど 着せてやるものないほどに
 下には白無垢 白小袖 上にはお稚児のお帷子
 これだけ仕立ててやるほどに 後に帰ろと思やるな
 先には蓮華の花が散る 後にはしぐれの雨が降る
 ほら ねんねこよ ねんねこよ



●●● さっこさっこ上がれば ●●●
 この唄は、意味をよくよく考えてみるととても幼い子供向きとは思えない内容である。何か元になる民話の類があるのかもしれないが、捉えようによっては、子孫繁栄・家内繁昌のおめでたい文句でもある。

寝させ唄(山国町守実)
☆坊やはにった にったよ 坊やはにった 来なさんせ
 坊やがにった どうそいな 団子を搗いて冷まいて
 さっこさっこ上がり寄たりゃ 坂の辻に宿借る 堂の中を見たりゃ
 うっついほっぽがひとみょうと ばっしょいぽっぽがふたみょうと
 ばっしょいぽっぽの言うことにゃ わしげのねぐらが狭いとて
 莚を千枚 菰千枚 黄金の臼を搗き終えて
 ごろりごろり摺りよったら 立派な坊ちゃんを摺りだした
 ※にった=寝入った
  さっこさっこ=「迫々」或いは「坂を坂を」
  うっついぽっぽ=美しい鳥
  ひとみょうと=ひとつがい
  ばっしょいぽっぽ=汚い鳥
  わしげの=私の家の
  筵・菰=「堂」「ばいしゅい」との縁語的な用法で、「物乞い」を暗示か。
  ごろりごろり摺りよったりゃ云々=男女の関係を暗示か。

寝させ唄(山国町守実)
☆坊やはにった にったよ 坊やはにった しなしゃんせ
 坊やがにった留守にゃ 団子をついて冷まいて
 さっこさっこ上がり寄ったりゃ 坂の辻にゃ堂がある 堂の中を見たりゃ
 うっついぽっぽがひとみょうと ばいしゅいぽっぽがふたみょうと
 ばいしゅいぽっぽの言うことにゃ わしげの裏が狭いとて
 筵を千枚 菰千枚 黄金の臼を搗きすえて
 ごろりごろり摺りよったりゃ 立派な坊やを摺り出した
 ※にった留守にゃ=寝入っているうちに

寝させ唄(前津江村星払)
☆さっこさっこ上れば 右も左も山々
 その山のむこうに一軒の堂があったげな その堂の中にゃ
 じゅうじゅう虫が入っちょった じゅうじゅう虫の言うことにゃ
 俺の方の裏にゃ 銀杏の木 二の木 三の木桜 五葉松 柳
 さっこさっこ上れば
 ※俺の方(かた)の=俺の家の
☆あららんこららん子が泣くばい 泣かせてたまらん乳飲ましょ
 乳も飲まんな泣くならば 筵に包んで川に流そ
 海のチチがつつき出す あららんこららん 子が泣くばい
 ※チチ=トト(魚の幼児語)



●●● 隣が人と我が人と ●●●
 宿屋の者が宿泊客を殺して金品を奪おうとしているのをこっそり聞いた人が、「早く逃げなさい」とこっそり教えてあげる内容の唄である。逃げようとしているのを察知されないように、わざと漢字を音読みしたり分解したりして伝えている。背景は不明だが、盆口説として親しまれた「平井権八小紫」の一場面を思い起こさせる内容である。寝させ唄として唄うには物騒な内容だが、唄われた子供には意味がわからないだろう。

寝させ唄(中津市金谷町)
☆隣が人と我が人と 言することを聞すれば 旅人を刺すと言すなり
 草の上の草をとり 山に山を重ねよ そりゃねんねん ねんねんよ
 そりゃねんねん ねんねんよ
 ※隣が人と我が人と=「りんがじんとわがじんと」
  言することを聞すれば=「げんすることをぶんすれば」
  草の上の草をとり=草から草かんむりをとって「早」
  山に山を重ねよ=山を重ねて「出」



●●● 坊やがお寝間 ●●●

寝させ唄(国東町来浦)
☆とんとんとろり とんとんとろり とんとんとろりとなる音は
 坊やがお寝間にゃまだ来ぬか 来ぬか来なけりゃお迎えに
 坊やと一緒に参りましょ



●●● ねんねん子守の来る年は ●●●

寝させ唄(大分市国分)
☆ねんねん子守の来る年は 世の中良うで世が良うで
 五升と八升は作り取り 五升は坊やが餅の代
 八升はお父さんが酒の代 ねんねんこんこん こんこんや
 ※子守の来る年は=子守奉公の娘の来る年は



●●● ねんねが唱命 ●●●

寝させ唄(大分市国分)
☆ねんねが唱命じょうさんげ さんげが足らずに喜ばん
 喜ぶ心を当てにすな 当てになるのが御勅命
 聞いたら疑けな 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏



●●● 坊やも負けずに ●●●

寝させ唄(大分市松岡)
☆坊やも負けずに早う眠れ あれ見よ叔父さんももう眠った
 そこにはきれいな鳥がいて 明日の朝まで鳴いている
 坊やも負けずに早う眠れ 叔父さんの眼覚むな明日まで
 ※叔父さんの眼覚むな=(夜泣きをして)叔父さんの眼を覚ますな



●●● ヨイヨイ節 ●●●
 これは子守奉公の娘が唄ったもので、大分市以南の沿岸部で広く唄われた。特に宇目町で唄われたものはステージ民謡にもなっており、広く知られている。

守子唄(大分市国分)
☆こんこん寝た子に香箱七つ 起きて泣く子に石七つ
 ※こんこん寝た子=ぐっすり眠った子
☆わしが小さいとき米屋の子守 今じゃ酒屋の嫁となる
☆心急くより川堰きなされ 川にゃ思いの鯉がおる
 ※鯉=恋の掛詞
☆アーラ嬉しや橙熟れた わしの帰るのも近寄りた
 ※奉公人が小正月の藪入りを待ちわびる文句
☆明日は帰りますどなたもさらば ながのお世話になりました
☆親が貧すりゃ緞子の帯を 買うてやろやろ口ばかり
 ※貧すりゃ緞子の帯を=「貧すれば鈍す」にかける
☆泣いてくりゃるな泣かんでさよも 尻をひねるよに思わるる
 ※泣かんでさよも=泣かないときでさえも。守子は、赤子が大人しくしているときでさえ「尻をひねられる」ような辛い立場なのだから、泣いてくれるな(泣けば守子が叱られるため)の意。

守子唄(大分市稙田)
☆ねんねしなされまだ夜は明けんヨ
 明くりゃお寺の鐘が鳴る 鐘が鳴る
☆こん子泣かん言うてわしゃ騙された
 泣かんどころか泣き暮らす 泣き暮らす
☆あんた背戸屋じゃわしゃ子の守じゃ
 なんぼ呼んだかて加たらりょか 加たらりょか
 ※背戸屋=ここでは水仕事の意
  なんぼ呼んだかて加たらりょか=いくら誘われてもなんで遊びに加わることができようか
☆守じゃ守じゃとせがいやんなごりょん
 こん子かるうはわしじゃぞえ わしじゃぞえ
 ※せがいやんな=いびりなさるな
  ごりょん=おかみさん(奉公先のお母さん)
  かるう=背負う
  全体として、「守子に辛く当たると自分の子にしっぺ返しが来るぞ」の意
☆山が焼けたち山鳥ゃたたん
 なんでたたりょか子のあるに 子のあるに
☆こんこ寝たときゃ米ん団子ほうちょ
 寝らにゃ鷹から取らるるぞ 取らるるぞ
 ※こんこ寝たときゃ=ぐっすり眠ったときは
  ほうちょ=ここでは「やせうま」の意
☆ヤーレ嬉しや正月来るで
 わしの帰りも近寄りた 近寄りた

守子唄(大分市松岡)
☆正月きたきた橙熟れた 俺の帰るのも近寄りた
☆子守ゃ子が泣く姉さんな眠る 起こしゃまた泣くまた眠る
☆旦那おっかさん どなたもさらば ながのお世話になりました

守子唄(津久見市保戸島)
☆食べてみらんせ他人の飯を ヨイヨイ
 骨はなけれど喉にたつ ヨイヨイ
 ※喉にたつ=喉にひっかかる。「奉公先では三度の食事も遠慮がちだ」の意
☆金が欲しけりゃ鳥島女島 命ほしけりゃ通われぬ
 ※命ほしけりゃ=命惜しけりゃの転訛
☆巡査ごめんなれ守衆の唄を 守衆ゃ唄わにゃ日が経たぬ
 ※ごめんなれ=免じておくれ
☆親のない子は磯辺の千鳥 潮が干りゃ鳴く満つりゃ鳴く
☆こいな泣く子はくれたちいらん くるりゃ茶の木の肥にする
 ※こいな=こんな
  くれたちいらん=くれるといってもいらない

守子唄(佐伯市大江灘)
☆この子かるうも今日限り 年が明けたらかるやせぬ ヨイヨイ
 ※かるうも=背負うのも
  年(ねん)が明けたら=年季が明けたら
☆二十三夜は降らねど曇る 冴えた月夜も闇となる

守子唄(佐伯市木立)
☆あの子いい子じゃ牡丹餅顔じゃ
 黄な粉つけたらなおよかろ ヨイヨイ
☆この子よい子じゃよい子の守じゃ この子育てた親みたい
☆この子泣かんちゅき守い来てみたら 泣くも泣かんか泣き暮らす
 ※この子はあまり泣かないというので(楽だろうと思って)子守奉公に来てみたら、ときどき泣くどころか明けても暮れても泣くばかりだ
☆ねんねよしよし寝る子は可愛い 起きて泣く子は面憎い
☆面の憎い子は田んぼに蹴込め ずべり上がればまた蹴込め
 ※ずべり上がれば=這い上がれば

守子唄(佐伯市女島)
☆ねんね寝た子はしんからかわい ヨイヨイ
 起きて泣く子は面憎い ヨイヨイ
☆面の憎い子は田んぼに蹴込め 上がるそばからまた蹴込め

守子唄(上浦町)
☆死んでなろかや二十二や三で 墓に茶碗があげらりょか ヨイヨイ
☆あん子つら見よわしょ見て笑う わしも見てやろ笑うてやろ

守子唄(鶴見町吹浦)
☆わしがこうして旅から来ちょりゃ 旅の者じゃと言うて憎む ヨイヨイ
 ※旅の者=よそから来た者。年季奉公等で外から来た人。
☆旅の者じゃとかわいがっておくれ かわいがる人親と見る
☆お前百までわしゃ九十九まで ともに白髪の生えるまで
☆わしが山へ行きゃイドロがとめる イドロとめるな日が暮れる
 ※イドロ=いばら
☆わしのおとったんな鯛釣り上手 人が百釣りゃ二百釣る
☆あいつあの外道にやりたいものは にぎりこぼしか焼け火箸
 ※にぎりこぼし=握りこぶし
メモ:「宇目の子守唄」の「返し」の節として一般に知られている節ばかりを繰り返して唄う。

守子唄(鶴見町羽出浦)
☆ねんねしなんせ寝た子はかわい 起きて泣く子はつら憎い
 ほらほらねんねんよ ねんねんころりや おころりよ
☆この子よい子じゃよい子の守じゃ この子育てた親見たい
☆この子よい子よ牡丹餅顔よ 黄粉つけたらまだよかろ
☆私ゃこんまいとき七つの年に 親に死なれて子守い出る
 ※こんまいとき=小さいとき 子守い出る=子守奉公に出た
☆親が難儀すりゃ子供のときに 子守い出されて泣き暮らす
 ※難儀すりゃ=貧乏なので
☆あん子あん畜生を谷ん中蹴込め 上がるそばからまた蹴込め
☆他人のことちや言いたい見たい とかくわがこた隠したい
 ※他人のことちや=他人のことといえば
  わがこた=自分のことは
☆あいつあん畜生がけ死ぬりゃよい 猫のどうわた買うて祝いしょに
 ※け死ぬりゃ=死ねば。「け」は強意の接頭辞(俗っぽい言い回し)
☆人に当てようた戸板に目釘 何度当てたて当たりゃせぬ
 ※当てようた=当てようとしても
☆あいつつら見りゃおこぜのつらよ 見れば見るほどおこぜづら
☆私ゃかんまんどう言われても それを苦にするわしじゃない
 ※かんめん=かまわない(気にしない)
☆いらんお世話を他人が焼くな 焼いてよければ親が焼く
☆わしのこんまいときゃ縮緬だすき 今は縄帯 縄だすき
☆この子泣かんちゅき守ゅ来てみたら 何が泣きめえか泣き暮らす
 ※この子はあまり泣かないというので(楽だろうと思って)奉公に来てみたら、何が泣かないものか、明けても暮れても泣いている。
☆雨は降り出す洗濯物はぬれる かわい子は泣く日は暮れる
 ※洗濯物はぬれる=守子は、子守以外にも様々な雑用を言いつかった
☆泣くな源ちゃん泣かんと加たれ 泣いちゃ日も日もたまりゃせぬ
 ※泣かんと加たれ=泣かずに(遊びに)加わりなさい
☆あいつつら見りゃ胸糞が悪い 山椒味噌の芽で胸直せ
☆わしが死んだら誰が泣いてくりょか 千里奥山の蝉が鳴く
☆蝉じゃござらんちゃごろでござる ちゃごろかわいや蝉憎や
☆わしが死んだら往還ばたにいけて 通る若い衆に拝ませて
☆わしがこうして子守に来ちょら 旅の者じゃとつら憎む
 ※旅の者=よそから来た者
☆旅の者じゃとかわいがっておくれ かわいがるお方を親と見る
☆わしとお前は二枚の屏風 離れまいぞや蝶番
☆わしは小浦の粟島様に 燈明明かして願ほどく
☆山が高うして丹賀が見えぬ 丹賀かわいや山憎や
☆一夜どまりの遍路に惚れて ついちゃ行かれぬ泣き別れ
☆親の意見となすびの花は 千に一つの徒はない
☆好いちゃおれども身がままならぬ ままにならぬ身を惜しうござる
☆ままにならぬとお櫃を投げて お台所はままだらけ
☆沖の大船ろくろで締める わしとあなたは寝て締める
☆船がいっぱい来りゃお客さんか思うて 宿のおげんさんが走り出る
☆沖のかもめに潮時聞けば 私ゃ立つ鳥 浪に聞け
☆沖の暗いのに白帆が見える あれは紀州のみかん船
☆みかん船なら急いで下れ 冬のあなじは西になる
☆あなた恋しても高嶺の花よ いくら思うても手がとわぬ
 ※とわぬ=届かない
☆あなた思えど身はままならぬ 出るに出られぬ籠の鳥
☆籠の鳥じゃと嘆くな小鳥 籠の破れることもある
☆ここと中越にかねの橋かけて 中のくぼるほど通いたい
☆わしとあなたは出雲の神の 結びあわせた仲じゃもの
☆うちのお父さんお酒が好きよ 今日も朝から茶碗酒
☆うちのお父さん鯛釣り上手 他人が千釣りゃ二千釣る
☆うちのお父さんシマンダ沖で 波に揺られて鯛を釣る
 ※シマンダ=島の浦
☆わしとあなたはどうした仲か 袖の触れ合う他生の縁
☆嫁じゃ嫁じゃと嫁の名を立てる かわい我が子も他人の嫁
☆死んでまた来るお釈迦の身なりゃ 死んでみせます今ここで
☆羽出よいとこ朝日を受けて 住める人たちゃ和やかで
☆心大分県 身は兵庫県 落ちる涙は機の上
 ※出稼ぎに兵庫に行った者が、故郷の大分を懐かしむ文句。女工唄か何かの転用…かつて米水津辺りから関西の紡績工場に出稼ぎに行く娘が多かったそうで、その関係で聞き覚えたのだろう。
☆ここと島江は棹さしゃ届く なぜに届かぬわが想い
☆いのか猪之助 戻ろか茂助 ここで別りょか源之助
 ※いのか=帰ろうか
☆死んでなるかや二十二や三で 墓に茶碗が据えらりょか
☆わしが死んだらお酒を据えて きせり卒塔婆に立ててくれ
 ※きせり=キセル
☆ねんねこぼいち竹馬与市 竹にもたれて思案する
☆いしまおげんさんの鉄漿壺は 鉄漿を入れんでも浮いてくる
☆お前さんとなりゃわしゃどこまでも 江戸や対馬の果てまでも
☆肥後と津島は愚かなことよ 世界の果てまで行きたいの
☆下関行きゃ櫓櫂が踊る 鉄の碇が浮いてくる
☆雨よ降れ降れ千百日も 船の艫綱腐るまで
☆一で玄海 二で遠江 三で日向の赤井灘
☆寒い北風 冷たいあなじ 吹いて温いのがまじの風
☆まじの風じゃてひどう吹きゃ寒い どんなおかみさんも屁は臭い
☆うちの父ちゃん芋食うて死んだ 芋が芽を出しゃ思い出す
☆嫌じゃ嫌じゃと畑の芋は かぶり振り振り子ができた
☆山で赤いはつつじに椿 まだも赤いのが女郎のへこ
☆山で床とりゃ木の根が枕 落ちる木の葉が夜着布団
☆わしのスーちゃん知らなきゃ言おか 藁で髪結うて鼻垂れて
 ※スーちゃん=意中の人
☆鼻の地蔵さんに団子を据えて 早くややこのできるよに
☆お前さんとなりゃ戸は筵でも 掛け金縄でもいとやせぬ
☆唄を唄いましょ流行の唄を あたりさわりはごめんなれ
☆雨が降るのは愚かなことよ 雪の千夜も降ればよい
☆わしの思いは戸穴の役場 レンガ造りのガラス窓
☆娘十七八 嫁入り盛り 箪笥長持 はさみ箱
☆それほど揃えてあのやるときにゃ 行たら戻るなへ戻るな
☆そこで娘の言う言葉には 父様母様そりゃ無理よ
☆千石積んだる大船でさよ むこう嵐が来たならば
☆艫をくるりと舵取り直し 元の港にまた戻る
☆宮に参ったらどう言うて拝む 一代この子がさかしいように
 ※さかしい=利発な
メモ:文句の内容がバリエーションに富んでおり、明らかに盆口説や流行小唄、作業唄の転用と思われるものが目立つ。

守子唄(米水津村)
☆色利ゃ日が照るミヤンダ曇る ヨイヨイ
 中のセキヤミゃ雨が降る ヨイヨイ
 ※ミヤンダ=宮野浦 セキヤミ=関網
☆雨は降る降る薪は濡るる 可愛いこの子は雨雫
☆あの子泣かんちゅて守来てみれば 泣くも泣かんか泣き暮らす
 ※この子はあまり泣かないというので(楽だろうと思って)奉公に来てみたら、何が泣かないものか、明けても暮れても泣いている。
☆色利ミヤンダに金ん橋かけて 金の腐るまで通いたい

守子唄(宇目町木浦)
☆あんこ面見れ目は猿眼 口はわに口エンマ顔 ヨイヨイ
☆いらん世話焼く他人の外道 焼いちよければ親が焼く
☆いらん世話でん時々ゃ焼かにゃ 親の焼かれん世話もある
 ※いらん世話でん=余計なお世話でも
☆旅の者じゃと可愛がっちおくれ 可愛がらるりゃ親と見る
 ※旅の者=よそから来た人
☆可愛がられちまた憎まるりゃ 可愛がられた甲斐もない
☆わしがこうしち旅から来ちょりゃ 旅の者じゃと憎まるる
☆山が高うち在所が見えん 在所恋しや山憎や
☆でくることなら在所を山に 山を在所にしてみたい
☆お前面見れぼたもち顔ぢ きなこつくればなお良かろ
☆ねんねねんねと寝る子はかわい 起けち泣く子は面憎い
☆面ん憎い子は田んぼに蹴こめ 上がるそばからまた蹴こめ
☆お前どっから来たお色が黒い 白い黒いは生まれつき
☆お前さんのよにご器量がよけりゃ 五尺袂にゃ文ゃ絶えめ
 ※文ゃ絶えめ=恋文が絶えることはないだろう
☆子守ゃ辛いもんじゃ子にゃいがまれち 他人にゃ楽なよに思われち
☆奉公すりゃこそわれんよな奴に おしゅう様じゃと奉る
 ※われ=お前(女性が使うと喧嘩腰の印象を受ける呼び方)
  おしゅう様=ご主人様
☆私ゃ唄いとうじ唄うのじゃないよ あまり辛さに泣くかわり
☆あまり辛さに出ち山見れば 霧のかからぬ山はねえ
☆憎みゃしませぬ大事にします とぎじゃとぎじゃと遊びます
 ※とぎ=遊び相手
☆はだけられてん世間な広い 広い世間にゃ出て遊ぶ
☆旦那よう聞け御寮も聞けよ 守子守子とばけするな
 ※ばけするな=馬鹿にするな
☆今にゃ見ちみれ守子をなぶりゃ 好かんお前ん子にあたる
 ※「守子をいじめると、子にしっぺ返しがくるぞ」の意
メモ:「宇目の唄げんか」として全国的に有名な唄で、地元では盆踊りにも転用されている。レコードなどの音源では、奇数節と偶数節の節回しが明確に区分されていることが多いが、地元の唄い方では必ずしも交互に唄うわけではなかったようだ。

守子唄(宇目町小野市)
☆ねんねねんねと寝る子はかわい 起けて泣く子は面憎い ヨイヨイ
☆面が憎けりゃ田んぼに蹴込め 上がるそばからまた蹴込め
☆私ゃ唄いとぢ唄うのじゃないが あまり辛さに泣くばかり
☆あまり辛さに出て山見れば 霧のかからぬ山はない
☆嫁にやるなら田原にゃやるな 田原田どころ畑どころ
☆人の子じゃとてわがまま気まま いつかお前の恥が出る
☆あの子よい子じゃ牡丹餅顔じゃ 黄な粉つけたらなおよかろ
☆黄な粉つくるよりゃ白粉つけて 晩は二階で客となる
☆よいやよいやと与一を見なれ 与一金ゆえ殺された
☆あの子覚えちょれ後日の晩に 怨み殺さにゃ取り殺す
☆守子三人寄りゃ喧嘩の元よ 喧嘩せにゃよいさせにゃよい
☆二十五日はたびたび来れど 帰る五日はさらになし
☆二十五日のいとまの風が そよと吹いたら帰りましょう
☆心棒し厭いた床とり厭いた 様の機嫌もとり厭いた
☆小野市ゃ照る照る釘戸は曇る 並ぶ楢ノ木ゃ槍が降る
☆天の星々数えてみれば 九万九つ百七つ
 ※九万九つ=九万九千日の意か。8月9日は観音様の縁日で、この日にお参りをすると九万九千日分お参りをしたのと同じ御利益があるとの伝承。 
  百七つ=除夜の鐘の108回のうち旧年中につく107回と何か関係があるのかもしれない。

守子唄(蒲江町西野浦)
☆この子泣かんちゅき守ゅしちみれば 泣かんどころか泣き暮らす
 ※この子はあまり泣かないというので(楽だろうと思って)奉公に来てみたら、何が泣かないものか、明けても暮れても泣いている。
☆この子よい子よ牡丹餅顔よ 黄粉つけたらなおよかろ
☆この子変な子じゃわし見て笑う おのれ見ておれ今に見よ
☆うちのこの子は十にもならで 石板持たせて学校行き
☆お前見たよなボタンの花が 咲いております来た道に
☆山の奥にも花咲くけれど 都の花ほど艶がない
☆あなたよう来た五里ある道を 三里笹ヤブ二里の坂
☆言うてくれるな何よのことも ここは大事な親の前
☆親は樋竹子は桶の水 親の遣る先どこまでも
☆子持ちよいもの子にひかされて 間にゃ苦も見る楽も見る
☆思や残念あのヤブ医者が 薬違えて様殺す

守子唄(蒲江町西野浦)
☆ここの御家はめでたな御家 ヨイヨイ 鶴と亀とが舞い遊ぶ ヨイヨイ
☆三味の音がする太鼓の音する かわい男の声もする
☆かわいかわいと夜は抱きしめて 昼は互いに知らぬ顔
☆わしが死んだら煙草で焼いて キセリ卒塔婆を立ててくれ
 ※キセリ=きせる
☆わしが死んだらシキミの花を 差してくだんせ墓の前
☆いじめられても世間は広い またも時世の風が吹く

守子唄(蒲江町西野浦)
☆うちのお父ったんな仙崎鼻で ヨイヨイ
 波に揺られて鯛を釣る ヨイヨイ はやくねんねしなされ
☆泣かん泣かんいうて守してみたら 何が泣きめえか泣きくらす
 ※この子はあまり泣かないというので(楽だろうと思って)奉公に来てみたら、何が泣かないものか、明けても暮れても泣いている。
☆明日はつしから米を下ろして 団子や餅やして食わそ
 ※つし=天井裏の物置き場(昔は梁に簀子などを渡して用をなした)

守子唄(蒲江町畑野浦)
☆わしの思いは阿蘇さん山の 朝の霧よりまだ深い ソラヨーイヨーイヨー
☆あなた思うてかわしゃ夏痩せか 帯の二重が三重まわる
☆思うて見て泣き見て思うて泣き 思い忘れる暇がない
☆山で伐る木は数あるけれど 思い切る気はさらにない
☆この子ぁよい子じゃ牡丹餅顔じゃ 黄な粉つけたらなおよかろ
☆あの娘こっち向け手拭が落ちた なんの落ちよか顔見たい
☆わしのおっとたんなシマンダの沖で 波に揺られて鯛を釣る
 ※シマンダ=島ノ浦
☆うちのおっとたんな白髪の山で 板をかるうて苦労する
☆うちのおっとたんな鯛釣り上手 他人が千釣りゃ万も釣る
☆打つや叩くと思うなキセリ かわいけりゃこそ吸いもする
 ※キセリ=きせる
メモ:畑野浦の節は、他地域のものとはやや異なっている。全体的にテンポが速くて所謂「ピョンコ節」に近くなっており、上句を7字・7字の2息に分けてやや引っ張り気味に唄う一方で、下句はほとんど音引きなしで節を詰めて一気に唄っている。宇目や蒲江、木立などの節とくらべると、こちらの方が派手で、多分に流行小唄的な雰囲気である。子供を寝かせるには不向きで、うっぷん晴らしに勢いよく唄ったのだろうという印象が強い。



●●● おどんがこまんかときゃ ●●●

守子唄(日田市亀山)
☆おどんがこまんかときゃ お兼と遊うだ
 今じゃお兼は庄屋どんの嫁御
 庄屋どんの嫁御てちゃ高ぶりゃさいな 常にゃ粟ん飯 鰯のしゃ
 ※おどんがこまんかときゃ=私が幼い頃は
  遊うだ=遊んだ(昔はこのような音便も用いた)
  嫁御てちゃ=嫁御とて。嫁御だからといって
  高ぶりゃさいな=けんたいぶりなさるな(調子に乗るな)
  常にゃ粟ん飯 鰯のしゃ=普段は粟や鰯など安価なものを食べている
  しゃ=菜(おかず)



●●● ねんねこ子守はつらいもの ●●●

守子唄(姫島村)
☆ねんねこ子守はつらいもの おかんから叱られ子にゃ泣かれ
 人から楽なよと思われて この子がかわゆはないけれど
 お釜の種じゃと思やこそ ようこそ子守もしたもんじゃ
 おっかんもおっとんもよう聞きゃれ 晩の仕事は疾うやめて
 ややも泣きとはなけれども 乳が恋しゅてお泣きやる
 ※かわゆはないけれど=可愛いわけではないけれど
  お釜の種じゃと=生計のためだと
  やや=赤子

守子唄(大分市松岡)
☆眠れ眠れ眠れよ 親から叱られ子は泣いて
 なんのこの子がかわいかろ お飯の種じゃと思やこそ
 ちったあ可愛い可愛いよ お前が眠ったるすには
 あっぱいまんまを炊いてから なんなさんにあげた残りを
 お前に残らずみなあげる ほら ねんねん ねんねんよ
 ※ちったあ=ちょっとは
  眠ったるすには=眠っている間に
  あっぱいまんま=甘いおやつ
  なんなさん=仏様「まんまんちゃん」と同種の幼児語

守子唄(大分市国分)
☆こんこん子供はわしゃ厭じゃ お飯の種じゃと思やこそ
 ちょっとは可愛い可愛いよ



●●● 大波小波 ●●●

縄跳び唄(宇佐市長洲)
☆大波小波 高い山越えて 低い山越えて
 谷川渉ってじゃんけんぽん

縄跳び唄(弥生町切畑)
☆大波小波 雨が降ったらどんぶりこ
 風が吹くときに 鯛を一匹釣り上げた



●●● 船頭さん渡しておくれ ●●●

縄跳び唄(佐伯市)
☆船頭さん 船頭さん 渡しておくれ 今日は大波 渡されません

縄跳び唄(挾間町上市)
☆お舟の船頭さん渡しておくれ 今日は御用で渡されぬ
 ソレ ひ ふ み よ いつ む なな や この と

縄跳びの唄(九重町)
☆お入り お舟の船頭さん乗せちょくれ 今日は荒波乗せられん
 それ一二の三 じゃんけんぽん 負けた人は出てちょうだい

縄跳びの唄(玖珠町)
☆お入り お舟の船頭さん乗せちょくれ 今日は荒波乗せられん
 それ一 二 三 四 五 六 七 八 九 十
メモ:大波小波で長縄をとって、「それ一、二…」から回す。



●●● 熊さん熊さん ●●●

縄跳び唄(佐伯市堅田)
☆熊さん 熊さん 両手を上げて 熊さん 熊さん 片足上げて
メモ:長縄遊びの時に、回す人が「両手を上げて」「片足上げて」などと指示して、その通りの所作で跳ぶという遊び方。ほとんど地口で唄というほどのものでもないが、一応掲載する。



●●● お嬢さんお入り ●●●

縄跳びの唄(杵築市弓町)
☆お嬢さん お入んなさい じゃんけんぽん あいこでしょ
 負けたお方は出てちょうだい
メモ:一人で長縄を跳び、唄に合わせてほかの子が一人入る。じゃんけんをし、負けた方が外に出る遊びである。

縄跳びの唄(杵築市弓町)
☆郵便屋さん お入んなさい はいこんにちは
 じゃんけんぽい 負けたお方は出てちょうだい はいこんにちは
 じゃんけんぽい 負けたお方は出てちょうだい
 おごめんなさい お入んなさい はいオッポコリキリキオッポッポ
 じゃんけんぽい 負けたお方は出てちょうだい
 ※おごめんなさい=ごめんください 昔は、近所の家を訪ねるときに「おごめーん」と呼びかけることが多かった。

縄跳び唄(佐伯市堅田)
☆花ちゃんお入り じゃんけんぽん あいこでしょ
 負けたお方は出てちょうだい
メモ:長縄遊びのときに、先に誰かが入って跳んでおいて、そこに次の人が入ってきたら石拳をして負けた方が出るのを繰り返す遊び方。

縄跳び唄(弥生町切畑)
☆みんなお入り かいおろし アップクチキチキ アッパッパ
 じゃんけんぽい あいこでしょ 負けたらさっさとお出なさい

縄跳び唄(上浦町)
☆誰かさんお入り はいよろし アップクチキチキ アッパッパ
 じゃんけんし あいこでしょ
 負けたお方は出てちょうだい 次のお方は来てちょうだい

縄跳び唄(挾間町上市)
☆花子さんお入り タイオノヒ セップクシキシのジャンケンショ
 あいこでショ ショッショのショ 合わぬかショ
 負けたお方は出てちょうだい

縄跳び唄(庄内町長野)
☆花子さんお入り はいよろし アップクチキチキ アッパッパ
 じゃんけんぽん 負けたお方は出ておくれ

縄跳びの唄(玖珠町)
☆誰々さんお入り はい アップクチキリキ アッパッパ
 じゃんけんぽい あいこでしょ 合わぬかしょ しょっしょっしょ
 負けたお方は出てちょうだい



●●● 郵便屋さん(葉書拾い) ●●●
 この唄は長縄遊びのときに今でもよく唄われている。そう古いものではなく、「郵便屋さん」が珍しかった時代に面白おかしく唄いはじめたのだろう。

縄跳びの唄(杵築市馬場尾)
☆郵便屋さん 郵便屋さん 葉書が十枚落ちました
 私が拾うてあげましょか 一枚 二枚 三枚 四枚
 五枚 六枚 七枚 八枚 九枚 十枚 おあがり
メモ:はじめは縄を往復させておき、一枚二枚…からは縄を回す。

縄跳び唄(佐伯市堅田)
☆郵便屋さん 郵便屋さん 葉書が十枚落ちてます
 拾ってあげましょ 一枚 二枚 三枚 四枚
 五枚 六枚 七枚 八枚 九枚 十枚



●●● イロハニ金平糖 ●●●

通り抜け遊びの唄(杵築市札ノ辻)
☆イロハニ金平糖 どこから通る 上か下か真ん中か ソイヤー



●●● 狐取り ●●●

狐取り遊びの唄(別府市内竈)
☆取ろや 取ろや 信太の森の 狐を取ろや
 戻せ かやせ 信太の森の 狐をかやせ
 ※信太の森の狐=葛葉の子別れから かやせ=返せ

狐とりの唄(佐伯市女島)
☆取るか取るまいか 信太の森の
 狐取り見しゃんせ ちょっと取ってみしょか


●●● かっちんかまぼこ ●●●

からかい唄(挾間町上市)
☆かっちんかまぼこ 堅木ん実 食われんもんはどんどんぐり



●●● 男と女子と豆男 ●●●

からかい唄(挾間町朴ノ木)
☆男と女子と豆男 豆から生まれたやせ男



●●● 屁をひった ●●●

からかい唄(玖珠町)
☆誰々ちゃんが屁をひった あんまり大きな屁をひって
 隣のハンドをひり割った
 ※ハンド=水瓶



●●● 人真似こまね ●●●

からかい唄(真玉町金屋)
☆人真似 こまね 大工さんの嫁女

からかい唄(挾間町上市)
☆まねし万歳 米もらい 一日貰うて米一升



●●● ここまでおいで ●●●

からかい唄(中津市下正路町)
☆ここまでおいで 来きらんか
 ここまで来きらん土人形 土から生まれた藁人形

からかい唄(杵築市奈多)
☆ここまで来い来い はよ来んか来きらんやた
 石の地蔵さんか藁人形



●●● ちょうじ、みょうじ ●●●

十数えの唱え(真玉町山畑)
☆ちょうじ みょうじ たごん くわいん じっちょう
メモ:二つずつ拾いながら唱えると、十になる。「ちゅうちゅうたこかいな」と同様。



●●● 知らにゃシンゴやん ●●●

からかい唄(挾間町朴ノ木)
☆知らにゃシンゴやんが 赤ケツねぶれ



●●● せりべっど金平糖 ●●●

押し合い遊びの囃子(玖珠町)
☆せりべっど 金平糖 中んもんぬ せり出せ

押し合い遊びの唄(臼杵市東福良)
☆せりせりおんぼ 中んもんをせり出せ



●●● ゆうべ旦那さんの ●●●

子取り鬼の唄(臼杵市東福良)
☆ゆうべ旦那さんの草履がかわった これではないか 後ろ後ろ



●●● 一切りゃ二とかく ●●●

数え唄(本匠村)
☆一切りゃ二とかく 三切りゃ四とかく 権現だらすけ
 ぴんやの茶袋 ぴんやのぽい



●●● 睨みっこしましょ ●●●

目くらべ遊びの囃子(玖珠町)
☆だるまさん だるまさん にらめっこしましょ
 笑うたらだめよ ウントコドッコイショ

目くらべ遊びの囃子(大分市東鶴崎)
☆だるまさん だるまさん にらみっこしましょ
 笑ったら負けよ ウントコドッコイショ



●●● 上がり目下がり目 ●●●

目くらべ遊びの囃子(玖珠町)
☆上がり目 下がり目
 くるりと回って猫の目 も一つ回して狐の目



●●● 泣けべそこべそ ●●●

からかい唄(中津市下正路町)
☆泣けべそこべそ 海に行って泣いてこい

からかい唄(杵築市奈多)
☆泣きべすこべす コンコンチキヤーコンチキヤ
 泣きしこ泣くやたスッテンテンのテン
 ※泣きしこ泣くやた=泣くだけ泣く奴は
  ~しこ=~だけ(≠only)



●●● せんこまんこ ●●●

遊びを止めるときの唄(中津市下正路町)
☆せんこまんこ 日が暮れた



●●● むく一斤見星寺 ●●●

むくろじ投げ遊びの唄(臼杵市東福良)
☆むく一斤 見星寺 拾ったところはまんしゅう寺



●●● 山焼き弥十郎 ●●●

野焼きの唄(臼杵市福良)
☆山焼き弥十郎 田井ヶ迫の弥三郎 道に玉を落として
 水汲みどんが拾って 地蔵かと思うて のったりそったり拝んだ



●●● ぶらんこぶらんこ ●●●

ぶらんこ遊びの唄(臼杵市東福良)
☆ぶらんこぶらんこ こげよこげよ 数えてこげよ
 一 二 三 四 五 六 七 八 九 十
 十まで数えたら代わりましょう
メモ:みんなが平等に遊べるように本人も周りの者も一緒に唱え、十まで数え終わったら交代した。



●●● お寺の花子さん ●●●

拳遊びの唄(杵築市弓町)
☆お寺の花子さんがヘチマの種をまきました
 芽が出てふくらんで 花が咲いてしぼんで
 開いたところで じゃんけんぽん
☆一本橋こちょこちょ ひねってたたいて飛んで行け
メモ:「お寺の花子さんが…」の末尾で石拳をして、勝った方は「一本橋こちょこちょ…」と唄いながら負けた者の腕をくずぐったり軽くつねったりする遊び。



●●● 汚れかたん裏に ●●●
 風呂に入りたがらない子供に対して「みんなにこう言われるよ」とからかい半分に親が唄った。

からかい唄(杵築市馬場尾)
☆汚れかたん裏に 汚れ鳥がとまって 汚れ汚れ鳴きよった



●●● みよちゃんどけ行く ●●●
 遊び友達がおめかしをして出かけるのを見かけたときに、からかい半分に唄った。

からかい唄(杵築市奈多)
☆みよちゃんみよちゃんどけ行っかえ
 いっちょらぢお手振っちエッシュッシュ
 ※どけ行くかえ=どこに行くの?
  いっちょらぢ=一張羅で(おめかしして)



●●● 通りゃんせ ●●●

関所遊びの唄(臼杵市東福良)
☆ここは何という道な 天神様の通り道
 一度通して下さんせ お札がなければ通られぬ
 お札を納めに参ります 通りゃんせ 通りゃんせ
 ※何という道な=何という道かい?

くぐり遊びの唄(玖珠町)
☆この道どこだ 天神さまの細道だ
 ちょっと通してくだしゃんせ 用事のないもん通りゃせん
 この子の七つのお祝いに お札を納めに参ります
 通りゃんせ通りゃんせ 行きはよいよい帰りは怖い
 帰りは鬼から攻めらるる



●●● じっぽはっぽ ●●●

鬼決めの唄(竹田市本町)
☆ジッポハッポ 播磨の早瀬 甘茶の花が咲いたか咲かぬか
 まだ咲き揃わん 雨降り小僧が杖ついて
 ソッコラソッコラつんむけた



●●● 子供と子供がけんかして ●●●

手遊び唄(宇佐市長洲)
☆子供と子供がけんかして おやおや飛んで行って
 中さんがなけ入って なかなかすまんで 紅屋であいすんだ
 ※子供=小指 おや=親指 中さん=中ゆび 紅屋=紅差し指(薬指)

手遊び唄(本匠村中野)
☆小指と小指が喧嘩して 親々同士が腹立てた
 なかなか聞かんというところ
 薬屋さんがちょっと来て ちょっと直った
メモ:両手を突き合わせて、指を動かす遊ぶ。指の名前が文句に折り込まれている。

指遊びの唄(玖珠町)
☆子供の喧嘩に親が出て 人々さんから笑われて
 紅屋のお竹が止めに来た 高指さんは朝から晩まで
 相撲の稽古 ワッショ ワッショ ワッショ



●●● 一兵衛さんが芋食って ●●●

拳遊びの唄(杵築市弓町)
☆一兵衛さんが芋食って 二兵衛さんが肉食って
 三兵衛さんが酒飲んで 四兵衛さんが酔っ払って
 五兵衛さんがごんぼ切って 六兵衛さんが毒飲んで
 七兵衛さんが縛られて 八兵衛さんが腹切って
 九兵衛さんが首斬って 十兵衛さんが重箱かついで
 エッサッサ じゃんけんぽん

数え唄(弥生町切畑)
☆一で芋食うて 二で逃げて 三で探して 四で知れて
 五で御番所に入れられて 六で牢屋につながれて 七で火あぶり
 八ではりつけ 九で首絞め 十でとうとう死んだげな
 ※芋食うて=芋を盗み食いして
  知れて=見つかって



●●● ろうそく心棒 ●●●

輪遊びの唄(中津市下正路町)
☆ろうそく心棒 ろうそく心棒 輪になって回れ 輪になって回れ
 ろうそく心棒 ろくそく心棒 輪になって開け 輪になって開け



●●● びんびん九つ ●●●

鬼決めの唄(玖珠町北山田)
☆びんびん九つ ろっぽう牢屋のかなしずくに 問うちみたら
 油ひけ蝋ひけ そのいび ぴんとひき燃えたらぱっちりしょ



●●● 三重の重箱 ●●●

遊ばせ唄(竹田市本町)
☆三重の重箱おにぎり握って たたきごんぼにゴマ振りかけて
 椎茸さんいやいや かんぴょうさんもいやいや
 それでもいやならオッチョコチョイのチョイ



●●● どうどうくんど ●●●

くぐり遊びの唄(杵築市弓町)
☆どうどうくんど どうくんど 畑の水はどうかやす
 まっくりかやして こうかやせ
 ※かやす=裏返す、または水をこぼす



●●● ギッコショマッコショ ●●●

遊ばせ唄(臼杵市東福良)
☆ギッコショマッコショ まだ米ゃすれんか 糠こそすれた
 箕を持て来い してこましょ ヤッシッシ ヤッシッシ



●●● こうもり来さんせ ●●●

こうもりの唄(佐伯市木立)
☆こうもり こうもり来さんせ
 朝 猿が子を生んで 見舞いに行こうな なあ猿さん



●●● 一けん来なさいちょぼくりさん ●●●

手遊び唄(竹田市)
☆一けん来なさいちょぼくりさん 蛇の目のからかさ さんだいし
 新式鉄砲で ごうはいし 胸つきゃドンドン



●●● 豆々食おうか ●●●

手遊び唄(久住町久住)
☆豆々食おうかどうして食おか 挟んで食おか
 うちにいんぢ言うちゃるわい そっからチャボ口 差い出すな
 ※いんぢ=帰って
メモ:両手を使って一人で遊ぶ唄だが指の絡ませ方がややこしく、小さい子供にとってはそれなりに難しかったのでないかと思う。それがまた却って、おもしろく感じたのだろう。



●●● 息ながしょうか ●●●

独楽打ち唄(大分市国分)
☆息ながしょうか しょうくらべ お前のごうまは割れごうま
 息ながしょうか しょうくらべ べんさんがヘコかいて
 堅木のごうま 割れごうま
 ※ごうま=独楽



●●● 田舎の子供のゴマ打ち ●●●

独楽打ち唄(臼杵市東福良)
☆田舎の子供のゴマ打ちは たすきかけて下駄はいて
 堅木の枕の割れるほど いちどきエンヤのここのとお



●●● ひいばばひいばば ●●●

手遊び唄(挾間町上市)
☆ひいばば ひいばば ひいばばどこ行たか
 あの山越えて この谷越えて ひいばあかた ここここ



●●● 鬼ごっこするもんな ●●●

人寄せ唄(中津市下正路町)
☆鬼ごっこするもんな寄って来い来い
 みんな揃って寄って来いの小犬丸

人寄せ唄(杵築市奈多)
☆鬼ごっこするもんな寄って来い来い
 はよ寄って来んやたかっせんぞ
 ※やた=奴は
  かっせんぞ=仲間に入れてやらないぞ



●●● 火番かたここか ●●●

手遊び唄(中津市下正路町)
☆火番かたここか あの山越えて この川越えて
 火番ここここ ここここよ

手遊び唄(大分市南大分)
☆火貰う火貰う 火はどこどこか あの山越えて
 この谷越えて 火はここここ



●●● まいまいどんぐり ●●●

どんぐりコマ回しの唄(中津市下正路町)
☆まいまいどんぐり目がもうた 金谷がまうか目がまうか
 ※目がもうた=目が回った



●●● けえつうにケツ火がついた ●●●

かたつむりの唄(中津市下正路町)
☆けえつうに ケツ火がついた 早うくぐらにゃ 火事になるぞ
 ※けえつう=かたつむり



●●● 蟹さん蟹さん ●●●

蟹の唄(中津市下正路町)
☆蟹さん蟹さんまま炊けまま炊け 雨が降るのでじいじいまま炊け
 蟹さん蟹さんまま炊けまま炊け じいじいまま炊け逃がしてやるぞ



●●● つくしんぼう出ておいで ●●●

つくしの唄(中津市下正路町)
☆つくしんぼう 出ておいで 袴をはいて出ておいで
 いつまで待っても出て来んと お前の坊主をちょん切るぞ



●●● ぶぶ風吹くな ●●●

羽根つき唄(大分市松岡)
☆ぶぶ風吹くな 銭箱やるぞ



●●● 一、二、三、二の四の五 ●●●

手遊び唄(杵築市馬場尾)
☆一、二、三 二の四の五 三、一、二の四の二の四の五
メモ:唄に合わせて指折り数えていく簡単な手遊び。



●●● 坊主ぼっくり山芋 ●●●

囃し唄(大分市東稙田)
☆坊主ぼっくり山芋 似ても焼いても食べられん



●●● 里の土産に何貰うた ●●●
 全国的に広く知られている子守唄だが、昔はその土地によって文句が少しずつ違ったり、節が違ったりしていた。

寝させ唄(豊後高田市河内)
☆ねんねんころりや おころりや 坊やのねんねはどこに行た
 あの山越えて里に行た 坊やの土産に何貰うた
 ピーピーカラカラ 笛太鼓

寝させ唄(国東町来浦)
☆ねんねが守はどこに行た あの山越えて里に行た
 里の土産に何貰うた でんでん太鼓に笙の笛
 鳴るか鳴らんかや吹いてみよ 鳴るならうちのぼんにやれ
 鳴らねば隣のぼんにやれ うちのぼんには買うてやる

寝させ唄(国東町富来)
☆ねんねん子守はどこに行た あの山越えて里に行った
 里の土産に何貰うた でんでん太鼓に笙の笛
 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ 鳴るならこの子にやってくれ
 鳴るな鳴るけど吹ききらぬ 隣の坊やにやってくれ

寝させ唄(安岐町)
☆ねんねん子守はどこに行た あの山越えて里に行た
 お里の土産に何ゅ貰うた でんでん太鼓に笙の笛
 鳴るか鳴らぬか吹いてみれ 鳴るならこの子にやりなされ
 鳴るにゃ鳴るけんど吹ききらぬ 隣のびこにやりましょか
 ※びこ=女の子(親しみをこめた呼び方) 男の子の場合は「ぼん」
  鳴るにゃ鳴るけんど吹ききらぬ=音は出せるが旋律を吹けない

寝させ唄(杵築市弓町)
☆ねんねんころりよねんころり ねんねのお守はどこ行った
 あの山越えて里行った お里のおみやにゃ何よ貰うた
 でんでん太鼓に笙の笛 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ
 鳴らねば隣のびこにやろ
 ※おみや=おみやげ

寝させ唄(杵築市馬場尾)
☆ねんねこっこよー ねんねんよ ねんねのお守はどこに行た
 お暇を貰うて山越えて あの山越えて里に行た
 みやげに貰うた笙の笛 鳴るかや鳴らんかや吹いてみれ
 ねんねこっこよー ねんねんよ

寝させ唄(大田村)
☆ねんねんねんねん ねんころりん ねんねがお守はどこへ行た
 あの山越えて里へ行た お里の土産にゃ何ゅ貰うた
 でんでん太鼓に笙の笛 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ
 テンテンドンドン テンドンドン 坊やはよい子だ ねんねしな

寝させ唄(大分市国分)
☆ねんねんよ ねんねんよ ねんねのお守はどこへ行った
 あの山越えて里へ行った 里の土産は何々か
 でんでん太鼓に笙の笛 起きたら敲かしょ笛吹かしょ
 ほうらねんねん ねんねんよ
☆ねんねん子守はどこへ行った あの山越えて里へ行った
 里の土産は何々か 一に香箱 二に鏡 三に薩摩の更紗帯
 締めて廻せば四重廻る 四重の座敷に直らせて
 金襴緞子を縫わすれば 四苦八苦と泣きやんす
 何が不足で泣きやんす 何も不足はないけれど
 襟とおくみを付けきらぬ 上の叔母さんに持って行け
 上の叔母さんは針がない 針は針屋の腐れ針
 下の叔母さんに持って行け 下の叔母さんは糸がない
 糸は糸屋の腐れ糸 寺の姉さんに持って行け
 寺の姉さんは手が痛い 正月三日に持って来い
 正月三日に着る着物 ほら ねんねこねんねこよ

寝させ唄(大分市松岡)
☆あーちゃん おとったんどこ行ったな あの山越えて里に行た
 里の土産は何々な でんでん太鼓に笙の笛
 起きたら敲かしょ笛吹かしょ ほうらねんねん ねんねんよ
 ※おとったん=お父さん

寝させ唄(直川村)
☆さよちゃんのお守はどこ行った あの山越えて里行った
 里の土産に何貰うた ぜんぜん太鼓に笙の笛
 起けたら叩かしょ笛吹かしょ こん子はいい子じゃねんねしな
 こん子がねんねのその暇に 糸を紡いで機織って
 縫って着せましょいいおべべ ほうらねんねん ねんねんよ
 ※ねんねのその暇に=眠っている間に

寝させ唄(鶴見町羽出浦)
☆ねんねんころりよおころりよ 坊やはよい子じゃねんねしな
 坊やのお守はどこにいた あの山越えて里にいた
 お里のおみやげ何貰うた でんでん太鼓に笙の笛
 起きたら敲かしょ笛吹かしょ 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ
 ねんねんころりよおころりよ 坊やはよい子よねんねしな

寝させ唄(蒲江町西野浦)
☆ねんねがお守りはどこ行った あの山越えて里に行った
 里の土産に何貰うた 一に鏡台 二に鏡 三で薩摩の板買って
 板を買って門を立て 門の周りに杉植えて 杉の小枝で泣く鳥は
 前の吉四六さんの飼い鳥じゃ ほら ねんね ねんねしな

寝させ唄(弥生町堤内)
☆眠ったこの子に何やろか でんでん太鼓に笙の笛
 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ ほーら ねんねこ ねんねこよ

寝させ唄(弥生町切畑)
☆お前の母さんどこに行た あの山越えて里に行た
 里の土産に何貰うた でんでん太鼓に笙の笛
 鳴るか鳴らんか吹いてみよ

寝させ唄(竹田市本町)
☆坊やはよい子じゃねんねしな 坊のお守はどこへ行た
 あの山越えて里に行た 里の土産に何貰うた
 おきゃがりこぼしに笛太鼓 ねんねんねんねんよ

寝させ唄(玖珠町)
☆坊やはいい子だねんねしな 坊やのねえやはどこへ行た
 あの山越えて里行った 帰りの土産に何もろた
 でんでん太鼓に笙の笛 起きたら敲かしょ笛吹かしょ
 ほーらねんねこ ねんねこよ

寝させ唄(九重町桐木)
☆坊やはよい子だねんねしな 坊やのねえやはどこへ行った
 あの山越えて里へ行った 里の土産に何貰うた
 「あぶをついてさないて べべの子にうせて
  坂をのんぼり追い上げて 坂をくんだり追い払い
  ねんねんころりよ ねんねしな ねえやの行き場はどこにある
  ねえやのお土産 何貰うた でんでん太鼓に笙の笛
  お鈴もお前にあげまする ねんねんころりよ ねんねしな
  ばあやと一緒に休みましょう
 ※あぶ=餅の幼児語 「あぼ」ともいう
  べべ=牛の幼児語
☆坊やはよい子だねんねしな 坊やのねえやはどこへ行った
 あの山越えて里へ行った 里の土産に何貰うた
 「あぶをついてさないて べべの子にうせて
  坂をのんぼり追い上げて この子が七つになったなら
  上のお寺に参らせて 法華経なんどを習わせて
  かたやまくどいて堂建てて 堂のめぐりに杉植えて
  杉のみどりに鳴く鳥は 雁かすいしょか鵜の鳥か
  開いてみたり後生の鳥
 ※かたやまくどいて=堅山砕いて
  めぐりに=周りに
  すいしょ=かわせみ
メモ:桐木独特の子守唄で、はじめは「ねんねんころりよ」等のよく知られた節で始まったかと思えば、途中(「印)から盆口説の「イレコ」のような節になるのがずいぶんかわっている。

寝させ唄(中津江村)
☆ねんころりよ おころりよ 坊やはよい子だねんねしな
 ねんねの守はどこへ行った あの山越えて里へ行った
 里の土産に何貰うた べんべん太鼓に京の笛
 鳴るか鳴らぬか吹いてみよ ねんころりよ おころりよ

寝させ唄(前津江村大野)
☆坊やはよい子だねんねしな 坊やのお守はどこに行った
 山を越えて里に行った お里の土産にゃ何貰うた
 でんでん太鼓に笙の笛 起きたら敲かしょ笛吹かしょ
 笛も吹かんで泣くならば 筵に包んでかえ流そ
 川にゃ流さん海流そ 海に流すと海の魚がつつきだす
 あららんこららん子が泣くぞ 泣かせちゃならない乳飲ましょ
 乳も飲まんで泣くならば 筵に包んでかえ流そ
 川にゃ流さん海流そ 海に流すと海の魚がつつきだす
 ※かえ流そ=川に流そう



●●● 酒屋が嫌なら ●●●

寝させ唄(姫島村)
☆ねんねんころりよねんころり 酒屋が嫌なら嫁にやろ
 嫁入り道具は何々と 一にゃ香箱 二にゃ鏡
 三にゃ薩摩のはやり帯 流行帯ょして腰ょ締めて
 腰の締め口ゃ血じゃないか いやいや血じゃない紅じゃもの
 紅は何紅 大阪紅 大阪紅こそ色よけれ
 おつばにつけたらなおよかろ
 ※大阪紅こそ色よけれ=「けれ→已然形」の係り結びの用法が方言として残ったもの
  おつば=唇

寝させ唄(姫島村)
☆ねんねんさいろく酒屋の子 酒屋が嫌なら嫁にやろ
 嫁入り道具は何ょ貰うた 箪笥 長持 挟み箱
 一にゃ香箱 二にゃ鏡 三で薩摩のはやり帯
 はやり帯ょして腰ょ締めた 腰のめぐれは血じゃないか
 血ではないない大阪紅 大阪紅こそ色よけれ
 おつばにつけたらなおよかろ ねんねんころりや 寝やしゃんせ

寝させ唄(姫島村)
☆ねんねんさいろく酒屋の子 嫁入り道具は何々ぞ
 赤いおべべに紐つけて 畳の上で乳飲ませ
 乳を飲んだらおよらんせ およったらたんぼに連れて行て
 あましやお菓子を貰うてやろ ねんねんころりや おころりや
 ※およらんせ=寝なさい

寝させ唄(大分市国分)
☆ねんねんねんねんよ ねんねの守はどこへ行った
 酒屋が嫌なら嫁入らしょ 嫁入り道具は何々ぞ
 箪笥 長持 夜着 布団 ほどよく仕立ててやるからに
 必ず戻ると思やるな 赤い紐つきゃヤヤさんに
 夜着と布団は婆さんに 机文庫は兄さんに
 さらばさらばと先見れば 先は蓮華の花が咲き
 さらばさらばと後見れば 後は時雨の雨が降る

寝させ唄(野津町)
☆ねんねんこんぼう酒屋の子 酒屋が厭なら嫁入りしょ
 嫁入り道具は何と何 箪笥長持 夜着布団
 これほづ仕立てちやるからにゃ 全く帰ると思うなよ
 帰れば追い出す叩き出す 父さん母さんそりゃ無理じゃ
 千石積んだ船までも 風の追手じゃ吹き戻す
 縁がなければわしゃ戻る
 ※これほづ=これほど

寝させ唄(大野町)
☆ねんね子守は酒屋の子 酒屋がいやなら嫁入りしょ
 嫁入り道具は何々か 箪笥 長持 夜着 布団
 全く帰るな言うちょくぞ お父さんお母さんそりゃ無理じゃ
 年が来たなら帰ろうに
メモ:後半の内容については盆口説の「イレコ」でよく聞かれるほか、名古屋甚句その他の本調子甚句系の流行小唄でもよく唄われている。



●●● 泣くと鷹から ●●●

寝させ唄(宇佐市長洲)
☆ねんねんころりやねんころり 泣くと鷹から取られるぞ
 鷹から取られて今日七日 七日と思うたら四十九日
 四十九日から百箇日 ねんねんころりやねんころり

寝させ唄(豊後高田市河内)
☆ねんねんころりや おころりや 眠らんと鷹から取らるるぞ
 眠らんと母さん連れて行かんぞ そーら眠れ 眠れや

寝させ唄(大分市上戸次利光)
☆ふーらにいれにいれよ つたんがふねえのじょうき出ち
 せんびとふうずきゃ買うてやる ふーらにいれにいれよ
 泣くとわんわんがついちくるど ふーらにいれにいれよ
 ※ふーらにいれ=ほーら寝入れ
  つたんがふねえのじょうき=父さんが府内の城下に
  せんびとふうずき=煎餅とほおずき
  わんわん=おばけ
  ついちくるど=ついてくるぞ

寝させ唄(野津町前河内)
☆ほらほら眠れ眠れよ 眠らにゃくわんくわんが食いつくぞ
 お前の親たちゃどこ行た あの山越えち畑行った
 畑の土産になにう貰うた お芋の掘り割り柿の実か
 ようき取っち戻っち来るぞ いっときこらえち眠らんし
 くねん でしこしゃ 何と鳴いた
 眠らん子がおったりゃ連れちくぞ はやく眠れ眠れよ
 ※くわんくわん=おばけ 大分の方言では「か」と「くゎ」を区別して発音していたが(例:火事「くゎじ」と家事「かじ」など)、今はよほど高齢の人でなければ一様に「か」と発音している。
  なにう(なにゅ)=なにを 「う」は「を」にあたる助詞
  ようき=ようけ(たくさん)
  眠らんし=眠らんせ(お眠りなさい)
  くね=「くね揺すり」のおばけのこと
  くねんでしこしゃ=「くね」の子分は

寝させ唄(宇目町)
☆眠れ眠れ鼠の子 うっつけうっつけ兎の子
 泣いたら鷹に取られるぞ ほろろんほろろん ほろろんよ

寝させ唄(竹田市本町)
☆眠れ眠れ猫の子 うっつけうっつけ兎の子
 眠らんとおじいもんが連れに来るぞ 早う眠れ猫の子
 うっつけうっつけ兎の子 ねんねんねんねんよ
 ※おじいもん=おばけ



●●● 坊やが眠ったお留守には ●●●

寝させ唄(大分市国分)
☆ねんねんころりよ おころりよ 坊やは良い子だ ねんねしな
 坊やが眠ったなかまには たいたい買うて飯炊いて
 坊やが起きたら食べましょう
 ※眠ったなかまには=眠っている間に
  たいたい=魚(幼児語)
メモ:昔は、沿岸部以外の農村では魚は高級品だった。特にブエン(干物や塩漬けなどにしていない魚)は、何かのお座をするときなどにしか食べられなかったという話はよく聞かれる。この子守唄に出てくる「たいたい」は、「米ん団子」などと同様に、ご褒美・ご馳走の意味合いが強く、隔世の感がある。

寝させ唄(大分市南大分)
☆ねんねんころりよ おころりよ 早く坊やはねんねしな
 坊やが眠ったなかまには たいたいぴちぴち買うてきて
 まんまにそえて食べさしょう 早く坊やはねんねしな

寝させ唄(大分市松岡)
☆眠れ眠れ孝ちゃんは 私の好きな孝ちゃんは
 お眠りしたそのときは おっかちゃんのお膝で
 お乳をたんとあげましょう 眠れ眠れ孝ちゃんよ

寝させ唄(大分市松岡)
☆ねんねんよう ねんねんよう 赤ちゃんなよい子じゃ怜悧もんじゃ
 ほーら眠れ眠れよ 起きたらお乳をあげますよ ほーら眠れ眠れよ
 ※怜悧もん=お利口さん

寝させ唄(宇目町)
☆この子が眠ったお留守には つしから豆ゆ下りいち
 炊っちはてえちかましゅうぞ ほろろんほろろん ほろろんよ
 ※つし=天井裏の物置き場(昔は梁に簀子などを渡して用をなした)
  豆ゆ下りいち=豆を下ろして 「おろして」→「おろいて」→「おりいて」
  はてえち=はたいて
  かましゅうぞ=噛ませようぞ
☆お正月様が来たならば おてんてままにお茶かけち
 おこんこ添えちザブザブと ほろろんほろろん ほろろんよ
 ※おてんてまま=おにぎり
  おこんこ=沢庵
☆お釜ん前にいるこどみ ちっとんづつ手に入れち
 後ん残りゃみなこん子 ほろろんほろろん ほろろんよ
 ※こどみ=子供に
  ちっとんずつ=ちょっとずつ

寝させ唄(弥生町堤内)
☆ねんねこ眠ったそのときにゃ つしから豆をおろして
 いってはたいて煮てかましょ ほーらねんねこねんねこよ

寝させ唄(大野町中井田)
☆坊やよい子だねんねしな 坊やがねんねんした間には
 つしのお米を下ろして 搗いてはたいて団子して
 坊やと二人で食べましょね そらそら早う眠れ
 ※つし=農家の、天井裏の物置き場 昔は梁に簀子を渡して用をなした
  団子して=団子をこしらえて…昔は「米の団子」は滅多に食べられないおやつだった。昔話のむすびにも「もしもし、米ん団子」などと言うことが多い。

寝させ唄(玖珠町)
☆坊やがねんねこしたうちに あぶちゃんついてさしまして
 べんべの子に乗せて 坂をのんぼり追い上げた 坂の下りで転んで
 あごも何も土だらけ ほーらねんねこ ねんねこよ
 ※あぶちゃん=餅の幼児語「あぶ(あぼ)」の擬人化 飴を飴ちゃんというのと同じ
  べんべ=牛の幼児語

寝させ唄(前津江村大野)
☆坊やねんねこねんねこよ ねんねこしゃんせ とこしゃんせ
 明日は疾うから起きしゃんせ お乳の初を飲まするぞ
 はよ寝れ泣かんでねんねしよ ねんねこねんねこ ねんねこよ
 ねんねんころりよ おころりよ

●●● 一里とリャンリャン ●●●
 意味不明な唄だが、全国的に知られている。文句はところによって異なるが、いずれも意味不明。あるいは、そう古い唄ではないのかもしれない。

手まり唄(宇佐市長洲)
☆いちりきせんせん かまくらランラン
 シッシッシ 白雪の上に秋のお花
 いちりきりんりん かまくらランラン
 シッシッシ 白雪さいしゃん秋のお花

手遊び唄(杵築市馬場尾)
☆一里とリャンリャン らんきょ食うてシーシー
 しんがらホケキョで とんがらしでホイ
☆二里とリャンリャン らんきょ食うてシーシー
 しんがらホケキョで とんがらしでホイ
(以下、三里、四里…と増していく)
メモ:意味不明な文句だが、同種の唄は全国的に唄われたようだ。

手まり唄(中津江村)
☆いちにとら らんきょくってし
 しんがらほけきょ とんからしんがらほけきょ



●●● 梅王松王桜丸 ●●●
 浄瑠璃「菅原伝授手習鑑」を題材にした内容。

羽根つき唄(大分市国分)
☆梅王 松王 桜丸 桜が枯れたら一つきとせ
☆梅王 松王 桜丸 桜が枯れたら二つきとせ
☆梅王 松王 桜丸 桜が枯れたら三つきとせ
(以下、順々に数を増していく)

羽根つき唄(大分市南大分)
☆梅王 松王 桜丸 お初が婿じょはさかしいか 一きとせ
(以下、順々に数を増していく)

羽根つき唄(大分市松岡)
☆梅王 松王 桜丸 桜に別れていっきとせ



●●● へんべんひゃっくり ●●●
 この種の、ただ数を増していくだけのお手玉唄では、よく「十、二十、三十…」と数える文句が見られる。これはどういう意味かよくわからないが、3個や4個のお手玉を高速で投げていくため1回投げるごとに「一、二…」と数えるのは現実的でなく、だいたいの数として唄の間合いに合わせて10ずつ数えたのではないかと思う。若干水増しされているとは思うが。

お手玉唄(姫島村)
☆へんべんヒャックリコックリ ちょいとさ
 二十さが三十さ 三十さが四十さ 四十さが五十さ
 五十さが六十さ 六十さが七十さ 七十さが八十さ
 八十さが九十さ 九十さが百さ

お手玉唄(杵築市馬場尾)
☆へんべんひゃっくにこっくに十とせ
☆へんべんひゃっくにこっくに十とせ 二十とせ
☆へんべんひゃっくにこっくに十とせ 二十とせ 三十とせ
(以下、二十、三十…と百まで同様に)

お手玉唄(杵築市弓町)
☆へんべんひゃっこく十とせ
☆へんべんひゃっこく二十とせ
☆へんべんひゃっこく三十とせ
(以下、二十、三十…と百まで同様に)



●●● おんどり一羽が一匁 ●●●

お手玉唄(杵築市本庄)
☆おんどり一羽が一匁 テコテン
☆おんどり二羽が二匁 テコテン テコテン
☆おんどり三羽が三匁 テコテン テコテン テコテン
(以下、十までテコテンを順々に増していく)

お手玉唄(臼杵市東福良)
☆一羽のおんどり一匁 トコトン
☆二羽のおんどり二匁 トコトン トコトン
☆三羽のおんどり三匁 トコトン トコトン トコトン
(以下、十まで順々にトコトンを増していく)

お手玉唄(玖珠町)
☆おんどり一羽が一匁 トコトン
 めんどり一羽が一匁 トコトン
 合わせて二羽鳥 二匁 トコトン トコトン
 鶏三羽は三匁 トコトン トコトン トコトン
 鶏四羽は四匁 トコトン トコトン トコトン トコトン
(以下、十まで順々にトコトンを増していく)



●●● 百十々 ●●●

手まり唄(直入町)
☆百十々 お二百十々 三百十々 お四百十々 お五百十々
 六百十々 七百十々 ハ百十々 九百十々 一千貸したで



●●● べにべに ●●●
 掲載例は少ないも、同種の唄が方々で唄われてきた。この唄は、2個のお手玉を片手で交互に投げ上げる遊び方専用で唄う。

お手玉唄(大分市国分)
☆べにべに もっここ十
☆べにべに もっここ二十
(以下、三十、四十…と同様に)

お手玉唄(佐伯市女島)
☆べにべに やっこここ 一とさ
☆べにべに やっこここ 二とさ
(以下、十まで同様に)



●●● ひとふたまんど ●●●

手まり唄(山国町中摩)
☆ひとふたまんどう まんどで十よ
 十よで二十 二十で三十 三十で四十 四十で五十
 五十で六十 六十で七十 七十で八十 八十で九十
 九十で百 百で一転渡した お前さんに一点かるわせた

お手玉唄(玖珠町)
☆ひとふたまんど まんどで十
 十で二十 二十で三十 三十で四十 四十で五十
 五十で六十 七十で八十 八十で九十 九十で百
 十々渡した 二十々々渡した 三十々々渡した 四十々々渡した
 五十々々渡した 六十々々渡した 七十々々渡した 八十々々渡した
 九十々々渡した 一斗まがついた 二斗まがついた 三斗まがついた
 四斗まがついた 五斗まがついた 六斗まがついた 七斗まがついた
 八斗まがついた 九斗まがついた 十斗まがついた
 これで一回かろわせた

お手玉唄(中津江村)
☆ひとふたまんど まんどで十
 十で二十 二十で三十 三十で四十 四十で五十 五十で六十
 六十で七十 七十で八十 八十で九十 九十で百
 十でとうとう渡した



●●● 伊勢々々いっせっせ ●●●

手まり唄(中津江村)
☆伊勢々々 いっせっせ
 新潟々々 伊勢 新潟
 三河々々 伊勢 新潟 三河
 信州々々 伊勢 新潟 三河 信州
 神戸々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸
 武蔵々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵
 名古屋々々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館
 九州々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館 九州
 東京々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館 九州 東京
 京都々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館 九州 東京 京都
 大阪々々 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館 九州 東京 京都 大阪
 大学目薬 伊勢 新潟 三河 信州 神戸 武蔵 名古屋
 函館 九州 東京 京都 大阪 大学目薬
 これでいっこう終わった



●●● ひいふうみっつ、ななやことんで ●●●

手まり唄(香々地町堅来)
☆ひいふうみっつ ななやことんで ひいふうみっつ ななやこ二十
 ひいふうみっつ ななやこ三十のチョイ
 一つ二つ とんで 一つ二つ 二十 一つ二つ 三十のチョイ
 すいせん とんで すいせん 二十 すいせん 三十のチョイ
 いっちょけん にちょけん さんちょけん
 いったい にたい さんたいしょ つかも もうも
 食わずにしんきく お手ば叩いて お膝ついて
 すっとんとん やれこのいっしょ

手まり唄(杵築市弓町)
☆ひいふうみっつ ななやこ とんでいな
 ひいふうみっつ ななやこ 二十いな
 ひいふうみっつ ななやこ 三十のチョイ
 一つ二つ とんでいな 一つ二つ 二十いな
 一つ二つ 三十のチョイ 一ちょ二ちょ三ちょ
 一たいな 二たいな 三たいのチョイ
 つかも もんも くわず しんく おして おひざ
 スッポンポン ポーンポン ちょいといっこん貸しました

お手玉唄(玖珠町栃木)
☆ひいふうみいよう いつなな十 十で三十



●●● ひいや、ふうや、みつトコトン ●●●

手まり唄(大分市国分)
☆ひいや ふうや みつトコトン サラサのアイコラショ
 ヨイトマカセのいいちいね

羽根つき唄(大分市国分)
☆ひいや ふうや みいとこせ シャラシャの アイキリショ
 ヨイトマカセの 一つきとせ

羽根つき唄(大分市国分)
☆ひいや ふうや みつトコトン サラサの アイコロショ
 ヨイトマカセの いいちいね

羽根つき唄(大分市国分)
☆ひいやらふうやら ふっトコトン ヨイトマカセの 一つきとセ



●●● ひいとチンゴチンゴ ●●●

手まり唄(大分市松岡)
☆ひいとチンゴチンゴチンゴ ふうチンゴチンゴチンゴ
 みいチンゴチンゴチンゴ ようチンゴチンゴチンゴ
 いつチンゴチンゴチンゴ むうチンゴチンゴチンゴ
 ななチンゴチンゴチンゴ やあチンゴチンゴチンゴ
 九つおこのにせめ上げて 十と万とといっきとせ



●●● 牛方馬方 ●●●

手まり唄(大分市国分)
☆牛方 馬方 跳ね馬 どうどうひんひん
 五百めりまで お皿突き上げて
 一より 二より 三より 四より 五より 六より
 七より 八より 九より 十より 十から十まで後に返して
 返さんさん 戻さん
 一ちょ 二ちょ 三ちょ 四ちょ 五ちょ 六ちょ
 七ちょ 八ちょ 九ちょ 十ちょ お重に重ねて
 雄鶏 雌鶏 雄鶏一羽が一匁 雄鶏二羽が二匁 雄鶏三羽が三匁
 雄鶏四羽が四匁 雄鶏五羽が五匁 雄鶏六羽が六匁 雄鶏七羽が七匁
 雄鶏八羽が八匁 雄鶏九羽が九匁 雄鶏十羽が十匁 お重に重ねて
 雄鶏 雌鶏 雌鶏 一めんど 二めんど 三めんど 四めんど 五めんど
 六めんど 七めんど 八めんど 九めんど 十めんど お重に重ねて
 そそり そそりは 一めんど 二めんど 三めんど 四めんど 五めんど
 六めんど 七めんど 八めんど 九めんど 十めんど お重に重ねて
 そそり そそりは一めんど そそり 一のめん 二のめん 三のめん
 四のめん 五のめん 六のめん 七のめん 八のめん 九のめん
 十のめん お重に重ねん おっちんちん
 一 二 三 四 五  六 七 八 九つ 十
 江戸の川瀬は内緒で上がる 水は幾尺 積もれば千尺
 水は水晶のおのせで上がる
 一としや 二としや 三としや 四としや 五としや 六としや
 七としや 八としや 九としや 十としや 十で下ろして
 一十や 二十や 三十や 四十や 五十や 六十や 七十や
 八十や 九十や 九かんの親の眼の前で
 百ついた 二百ついた 三百ついた 四百ついた 五百ついた
 六百ついた 七百ついた 八百ついた 九百ついた 九百ついた
 千ついた 千のお城の川の瀬は おんさいじょうして
 お式だいから 棚だいろくだい おんてん口八町十町

手まり唄(挾間町朴木)
☆牛方 馬方 口十丁ヒンヒン
 五十めいから五百めいまで お皿を付き添えて
 一よりん 二よりん 三よりん 四よりん
 五よりん 六よりん 七よりん 八よりん
 九りん 十よりん 十から十まで後に返して
 返さん返さん 戻さん戻さん
 一丁 二丁 三丁 四丁 五丁 六丁
 七丁 八丁 九丁 十丁 十に重ねて
 雄鶏 雄鶏 雄鶏一羽が一匁 雄鶏二羽が二匁 雄鶏三羽が三匁
 雄鶏四羽が四匁 雄鶏五羽が五匁 雄鶏六羽が六匁 雄鶏七羽が七匁
 雄鶏八羽が八匁 雄鶏九羽が九匁 雄鶏十羽が十匁 十に重ねて
 雌鶏 雌鶏 一めんど 二めんど 三めんど 四めんど 五めんど
 六めんど 七めんど 八めんど 九めんど 十めんど 十に重ねて
 そそりそそりは にちめ にそそり 一めん 二めん 三めん
 四めん 五めん 六めん 七めん 八めん 九めん 十めん
 十に重ねておっちんちん
 ひ ふ み よ いつ む なな や この と
 江戸のこの瀬は ノーショウショウ ショショで上がる
 水は九勺 積もれば十勺 水はスイショウでオノセで上がる
 一しゃ 二しゃ 三しゃ 四しゃ 五しゃ 六しゃ 七しゃ 八しゃ
 九しゃ 十しゃ 十で下ろして 一十や 二十や 三十や 四十や
 五十や 六十や 七十や 八十や 九十や 九十薬缶の蛇の目の前
 百ついて 二百ついて 三百ついて 四百ついて 五百ついて
 六百ついて 七百ついて 八百ついて 九百ついて 千ついて
 千の社のおんさい女郎衆か お前が女郎衆か
 シイキライからオライロクまで 御手ん引き寄せ
 御手の花もうし ひとばえ



●●● 浜やおくにの奥さん三六 ●●●

手まり唄(九重町)
☆ひいふうみいよ いつむにななや 浜やおくにの 奥さん三六
 御髪が四六で ちよのごんじょ ちよのごんじょは 一六六十か
 一七七十か 一八八十か 一九は九十で
 ちょいといったいかるわせた
 ※三六=十八歳
  一六六十=6割る1は6(いっちんいんじゅが6回)の意 ~十というのは「にいちてんさくのご」の割り算のときの言い方で、商が1桁上にずれる(元の1位は余りになる)。1桁で割るときは使わないが、見一算では「いっちんいんじゅ」も使う。

手まり唄(玖珠町柿西)
☆ひいふうみいよはいつむになんな 十と十一 十三四五よ
 奥山おくすけ 奥さんさぶろく おくしがしろくで
 ちょのぐんじょ ちょのごんしょで 私達よ




●●● ひいやんふくれた ●●●

羽根つき唄(宇佐市長洲)
☆ひいやんふう ふうやんみい みいやんよう ようやんいい
 いいやんむう むうやんなあ なあやんこう こうやんとお

羽根つき唄(宇佐市長洲)
☆ひいやんふくれたお姫さま 朝から晩までおむすび十よ



●●● 大寒小寒 ●●●
 同種の唄が他県でも広く唄われていた。寒い冬の日に外遊びをするとき、または学校の帰り道などに唄い囃した。

冬の唄(中津市下正路町)
☆大寒小寒 こーさんかて行たら 芋似て隠した
 その芋どうした 犬が食うてしもうた
 ※~かて=~かたに(~の家に)

冬の唄(豊後高田市河内)
☆大寒小寒 こさむかて行たら 稗餅う食わした

冬の唄(真玉町山畑)
☆大寒小寒 こうやんかて行たら 握り飯くれて
 包むもんがなかって ヘコん端い包うだ

冬の唄(臼杵市東福良)
☆大寒小寒 こさんかて行たりゃ 餅搗く音じゃ
 呼ばるりゃ行かるん 呼ばれにゃ行かれん
 ※行かるん=「行かるるに」の転訛。
  呼ばるりゃ行かるん呼ばれにゃ行かれん=(餅搗きの音が聞こえて行きたくなったが)招かれれば行けるが、招かれなければ行けない

冬の唄(挾間町上市)
☆大寒小寒 こうやんかて行たら 芋ん茹じゅう貰うた
 包むもんがなかって ヘコん先い包うだ
 ※芋ん茹じゅう=芋の茹でを(茹で芋を)
  先い=先に 「い」は「に」にあたる助詞
  包うだ=包んだ

冬の唄(玖珠町)
☆大寒小寒 こうさんかて行たら 芋煮て隠した かぶ煮て突き出した



●●● じょうり隠し ●●●

履物隠しの唄(中津市下正路町)
☆ジョリカン隠しに加たって 加たらん者は 鬼踏み蛇踏み
 蛇の口踏んで あー踏みしゃいた あー踏みしゃいた
 ※ジョリカン=じょうり(草履)
  加たって=仲間に入って

履物隠しの唄(別府市内竈)
☆じょうり隠し くねんぼ まな板あてて
 チョッキリコッキリ くね割った
 ※じょうり=草履

履物隠しの唄(竹田市本町)
☆下駄隠し くねんぼう 下駄の下の鼠が
 下駄をくわえてチュチュチュのチュチュチュ
☆チュッチュの饅頭は誰が食うた 誰も食やせん わしが食うた

履物隠しの唄(玖珠町)
☆じょんじょん隠しに加たらん者は 鬼生め蛇生め
 蛇の中の泥鰌が子を生むそうな
 一きか二きか 二きめが下りた あれ取ってこれ引け
 ※じょんじょん=じょうり(草履)
  加たらん=加わらない



●●● 雪やこんこん ●●●

雪の唄(中津市下正路町、玖珠町)
☆雪やこんこん霰やこんこん 子供は風ん子 大人は火の子
 雪やこんこん霰やこんこん 馬屋も背戸屋も小麦団子 小麦団子



●●● 蛍来い ●●●
 同種の唄が全国的に広く唄われた。音楽の教科書に掲載された旋律は今でもよく知られているが、昔はその土地々々の旋律や文句の違いがあった。残念ながら、教科書的な唄い方に駆逐され、地域色のあるものは廃絶している。

蛍の唄(豊後高田市河内)
☆蛍来い来い こいの町のおばさんが お提灯とぼして待っちょるぞ
☆蛍来い来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ

蛍の唄(大分市南大分)
☆ほうほう蛍来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ
☆蛍来い来いや 来い来いやのおばさんが
 お提灯とぼして待っちょるぞ はい来にゃ逃ぐるぞ
☆蛍来い来いよ 谷川の水やろう あっちの水はすゆいぞ
 こっちの水は甘いぞ 柄杓持て来い汲んでやろ

蛍の唄(庄内町阿蘇野)
☆ほうほう蛍来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ
 天神 勧進 清の水 カンコロ好きの婆さんが
 提灯とぼして待っちょるぞ ほうほう蛍来い

蛍の唄(挾間町上市)
☆ほうほう蛍来い あっちの水は甘いぞ
 こっちの水は苦いぞ 柄杓を持てこい汲んでやろ
☆ほうほう蛍来い あっちの水は苦いぞ
 こっちの水は甘いぞ 行灯の光をちょいと見てこい

蛍の唄(玖珠町)
☆ほうほう蛍来い あっちの水は苦いぞ こっちの水は甘いぞ
 天神 勧進 井戸の水 かんころ好きな婆さんが
 提灯とぼして待っちょるぞ
 ※かんころ=かんころ餅



●●● 眉毛の殿さま ●●●
 眉毛、目、鼻、肩…と、体の部位が文句に折り込まれている。唄いながらその箇所を指していく遊びで、主に親などが乳幼児と一緒に遊んでやる類のものである。

遊ばせ唄(中津市下正路町)
☆眉毛の殿さまが妾を連れて 花見に行ったら方々の者が
 口々言うて 無念のことをおへそが聞いて ちんちこりんが笑うた

手遊び唄(九重町)
☆眉毛の殿さま 妾を連れて 花見に行たら 方々の人が
 ぐちぐち言うて 胸んことをおへそが聞いて ちんちろりんが笑うた

手遊び唄(弥生町切畑)
☆眉毛の殿さま 妾をつれて 花見におりて 方々の人から
 口々言われ 無念のことを おへそが聞いて チンコロリンが笑った



●●● 羅漢廻し ●●●

羅漢廻しの唄(真玉町)
☆羅漢さんが揃うたら 今からそろそろ廻ろじゃないか
 テレスコテンのスッテンテン テレスコテンのスッテンテン

羅漢廻しの唄(竹田市)
☆羅漢 羅漢 羅漢が揃うたらそろそろ回そじゃござらんか
 ヨーイヤサッサ ヨヤサッサ ヨーイヤサッサ ヨヤサッサ



●●● チョンキナ ●●●
 この唄は宴席のはやり唄の転用で、色街では「ちょん脱げちょん脱げ」などといって脱衣を伴う拳遊びをする人もあった。全国的に流行したものが子供の遊びに入ってきたのだろう。

拳唄(杵築市馬場尾)
☆セッセッセのヨイヨイヨイ
 チョンキナチョンキナ チョンチョンチョンと来な
 チョンがチョンと来て チョチョンがヨイヤサ
メモ:せっせっせをして、「チョチョン」で素早く2回手拍子をして「ヨイヤサ」でじゃんけんをする。

拳唄(杵築市馬場尾)
☆チョンキナチョンキナ チョチョンがチョンと出た 加藤清正毒饅頭
☆ヨイヨイヨイヤサで お次は何かな 三十一文字書き残し
 ※三十一文字書き残し=「恋しくば、たずね来てみよ和泉なる、信太の森の怨み葛の葉」のこと。葛葉の子別れ…縁語的に狐をさしている。 
メモ:雨の日に、2人でふすまを挿んで待つ。ほかの誰かが好きな文句を唄い、その内容に合わせた三すくみ拳をする遊びである。たとえば前者なら、唄の半ばより「加藤清正」「おばあさん」「虎」の中から、後者なら「狐」「庄屋」「鉄砲」の中から好きなポーズを選んで、ゆっくり前に進み、ふすまの開いたところまで出たら見合わせて勝負を決めるという遊び。この遊び方は簡単な三すくみ拳だが、どの三すくみを取るかが唄の半ばまでわからないというところに面白味があった。

拳唄(臼杵市東福良)
☆チョンキナチョンキナ チョンチョンキナキナ
 チョンが菜の葉で オッチョコチョイノチョイ
メモ:せっせっせ遊びをして、「オッチョコチョイノチョイ」でじゃんけんをする。



●●● ひよひよ ●●●
 この唄は字脚が特殊で、「ひよどり」「頼むしょ」ほか、4字が見られる。これは近世調以前の古い詩形で、古調の面影をよく残し、旋律にも典雅な雰囲気がある。類似のものとして、福岡県添田町に伝承されている盆踊り唄「ひよひよ」があげられる。古い流行小唄の転用かと思われるが、大分県の伝承唄は近世調か、または口説が目立つ中で、たいへん貴重なものといえる。

羽根つき唄(庄内町)
☆ひよひよと 鳴くはひよどり 鳴かぬは鵜の鳥 お池に住むが鴛鴦
☆鴛鴦の 思うお羽根を ひとすげが欲しや 頼むしょ
☆ひとすげが 一丈召しょうとも 三丈召しょうとも お前の羽根はのびゃすめ
 ※のびゃすめ=伸びはしまい

手まり唄(玖珠町柿西)
☆ひよひよと 鳴くがひよどり 鳴かぬが鵜の鳥 小池につのが鴛鴦
 千鳥の 重いおおねが とぶひとつげこそよ おつげが二十め ストンと
 三十め ストン お月さんのかねが のぶいがヨ
 山の見る きのまた都で話しましょ



●●● ぼんちかわいや ●●●
 大人が唄っていた流行小唄「ぼんち可愛や」を聞き覚えて、手まり唄に転用したものである。

手まり唄(豊後高田市河内)
☆ぼんちかわいい ねんねしな 品川女郎衆で十匁
 十匁の鉄砲玉 玉屋がかわいい すっぽんぽん
 ※玉屋がかわいい=「川へ」の転訛「川い」を「可愛い」と誤ったものか



●●● ずいずいずっくりばち ●●●
 これは一般に知られている「ずいずいずっころばし」の文句が多少変化した程度のもので、県内からの採集例は少ない。

鬼決めの唄(杵築市弓町)
☆ずいずいずっくりばちゃゴマみそずい たちばに遅れてトッピンシャン
 抜けたらドンドコショ 俵のねずみが米食うてチュウ チュウチュウチュウ
 お母さんが呼んでもお父さんが呼んでも行きっこなし
 井戸のまわりでお茶碗欠いたなだあれ



●●● くりゃくりゃ、きりいども ●●●
 昔言葉遣いの悪い殿様がいたのでそれを当てこすったからかい唄。

からかい唄(別府市内竈)
☆くりゃくりゃ きりいども げんこうぐちい うもうまわせ くすうくわしい
メモ:「こりゃこりゃ家来ども、玄関口に馬をまわせ、草を食わせよ」の意。



●●● 緒方のしゃんしゃん ●●●
 盆口説の「イレコ」の文句を転用したもので、盆踊りの際に聞き覚えたのだろう。

手まり唄(千歳村舟木)
☆緒方のしゃんしゃんの祭礼に 一では鉄砲 二では弓
 三ではしゃんしゃん大神輿 四では白旗 猩々緋
 五では五人のうちわどり 六つで六頭舞い立てて
 七つで何にもお揃いで 八つで屋敷を舞い立てて
 九つこれまで舞うてきて 十でとんとこ舞い納め トコイッキトセ



●●● 今度柞原から ●●●
 これも盆口説の転用で、簡単な節を次々に繰り返して唄う。

お手玉唄(大分市牧)
☆今度柞原から嫁貰うて 八幡御幸町通り越し
 火王さんが仲立ちで 浜の市でたんす買い
 生石で長持買ってきて かんたん夢の枕も買ってきて
 春日駄ノ原通るとき 勢家の若い衆に
 よい嫁貰うたと褒められて 着いたところが沖の浜 沖の浜
 ※火王さん=柞原様の御旅所にあるお宮。
  浜の市=柞原様の放生会で、御旅所周辺は露店で賑わう。「志きし餅」が著名。
  かんたん夢の枕=栄枯盛衰の儚さを意味する故事成語と、かんたん湾(別府湾の旧称)の掛詞
  沖の浜=瓜生島の別称…昔、別府湾には瓜生島、久光島等の島があったが、瓜生島のお地蔵様に誰かが悪戯をした罰が当たって大地震が起き、一晩で島が全部沈んでしまった云々の伝説がよく知られている。



●●● 七つ大事は人の道 ●●●

手まり唄(大分市松岡)
☆ひ ふ み よ いつ む なな や
 七つ大事は人の道 これを学ぶは学校行き 学校の先生訓えには
 親には孝行 君に忠 兄弟仲良く暮らすのは 日清戦争のもととなる
 蕾のお花が開かずば めでたくお春となりました イヤいっきとせ



●●● じいさん酒飲んで ●●●
 この唄はそう古い唄でなく、県内で唄われ始めたのはおそらく戦後になってからだろう。これはオペラ「マルタ」の中の「農民たちの合唱」という歌が元で、その替唄として榎本健一が浅草オペラで唄ったものが流行したそうだ。その文句は「酔っぱらって死んじゃった」だが、米水津村では大分の言葉で「死んじょった」となっている。この種の唄は多分に流行小唄的な側面があり、俚謡の採集からは漏れやすい。記録としては米水津村色利浦のみの採集だが、おそらく県内の他地域でも、戯れ唄としては唄われていただろう。

手まり唄(米水津村色利浦)
☆じいさん酒飲んで酔っぱらって死んじょった
 婆さんそれ見てびっくりして転んだ 転んだ
 それから始まる狸の腹鼓
 ぽんぽこ一つ ぽんぽこ二つ ぽんぽこ三つ
 ※死んじょった=(婆さんが気付いたときには既に)死んでいた



●●● 一に市福所 ●●●
 青山から堅田方面を中心に佐伯の地名を並べた、「ものはづくし」と数え唄を兼ねた文句。

手まり唄(佐伯市青山)
☆一に市福所 二に仁田原 三に西野の千代鶴さま
 四は城下の瓦焼き 五つ池田の蓮の花 六つ筵のもみ畑
 七つ波越の蛙の田 八つ山田の三軒屋
 九で黒沢の船ヶ下 十で富尾の権現様



●●● 麦摘んで小麦摘んで ●●●

カード遊びの唄(中津江村)
☆麦摘んで 小麦摘んで お手に豆が九つ
 六つの鐘が鳴るところ 生まれ在所が恋し
 「恋しゅくば たずねきてみよ 信太の森の 怨み葛の葉
メモ:庄屋、鉄砲、狐などの絵柄の書いたカードをめいめいに配り、唄のあとで一斉に見せ合い勝負を決める。



●●● だんだん上がれば ●●●

囃し唄(臼杵市東福良)
☆だんだん上がれば大橋寺 ゆうりゅう降りれば龍原寺
 ひゅらひゅら ひゅうげん寺 テレスクテレスク天満寺
 あっち向きゃ安養寺 こっち向きゃ光蓮寺



●●● みかんきんかん ●●●

囃し唄(臼杵市福良)
☆みかん きんかん 酒の燗 子供に羊羹やら泣かん
 親が折檻 子は聞かん 田舎のねえちゃん気が利かん
 相撲取りゃ裸で風ひかん
 ※羊羹やら=羊羹をやれば



●●● 指切り ●●●

指切りの唄(真玉町山畑)
☆指切り指切り 金屋のおばさんが指切って死んだ
 反物一反 銭百両

約束の唄(挾間町上市、玖珠町)
☆指切り金切り 金屋の爺さんが指切って死んだ
 嘘言や地獄 本当言や極楽



●●● しびれしびれ ●●●

しびれ取りの唱え(武蔵町糸原)
☆しびれ しびれ 京上れ わしもついて上るぞ

しびれ取りの唱え(玖珠町)
☆しびれ しびれ 京上れ わしもついて上るぞ



●●● あぶらほんけん ●●●

火傷のまじないの唄(中津市下正路町)
☆あぶらほんけん 猫の皮 猫 七力の皮

火傷のまじないの唄(杵築市奈多)
☆あぶらほんけんそわか あぶらほんけんそわか

打撲などの痛み取りの唱え(玖珠町)
☆あぶらおんけんそわか あぶらおんけんそわか
 あぶらおんけんそわか 親んづづ 親んづづ



●●● 返事がない ●●●

からかい唄(武蔵町糸原)
☆花ちゃんちゅうても返事がない あんまりつんつんしなさんな
 いい婿さんでも貰うたかえ

からかい唄(玖珠町)
☆誰々ちゃんちゅうてん返事がない あんまりつんつんしなさんな
 いい婿(嫁)さん もらえんど



●●● 腹立て袋 ●●●

からかい唄(武蔵町糸原、玖珠町)
☆腹立て袋 かん袋 医者どんに見せたら虫袋
 勧進に聞いたら勧進袋



●●● 初めて聞いた ●●●

からかい唄(武蔵町糸原)
☆初めて聞いた今日聞いた 隣のハンドを吹き割った
 ※ハンド=水がめ(井戸水の汲み置き用)

からかい唄(杵築市奈多)
☆初めて聞いたじゃ 今こそ聞いたじゃ
 こりゃまたたまがった ケトロク言いやんな
 ※ケトロク=でたらめ

からかい唄(挾間町朴ノ木)
☆初めて聞いた今日聞いた 驚きいった肝いった



●●● からす勘三郎 ●●●

からずの唄(大分市南大分)
☆からす からす 勘三郎 親の恩を忘るんな

からすの唄(竹田市本町)
☆からす からす 勘三郎 お前方ん家が焼けよるぞ
 早う去んで水かけろ 水がなけりゃやるぞ
 柄杓がなけりゃ貸すぞ 明日になったら戻せ
 山手のからすが皆逃げた
 ※去んで(いんで)=帰って
メモ:遊びの帰りに、夕焼けの空を鴉が渡るのを見て唄い囃した。

夕焼けの唄(玖珠町)
☆からす からす 勘三郎 お前かたん家が焼けよるぞ
 早う去んで水かけろ 水がなけりゃやるぞ
 柄杓がなけりゃ貸すぞ 明日になったら戻せ
 山んからすが みな逃げた
 ※逃げた=大分の言葉の「逃ぐる」には、共通語でいう「逃げる」と同じ意味だけでなく、若干違うニュアンスの意味もある。後者は、「そこにいた人(動物)が、よそに行ってしまう」といった程度の意味合いである。この唄であれば、山端を飛んでいたからすが、「火事(夕焼け)から逃げてねぐらに帰った」の意味だけでなく、「いつの間にかいなくなった(見えなくなった)」の意味も含んでいる。たとえば「山で鹿を見かけたが逃げた」などの言い回しは共通語でも聞かれるが、これは「(私から)逃げた」の意で、必ず「~から」のニュアンスを帯びている。ところが大分では、適当な「~から」がない場合でも「逃げた」を使う。日常の会話で言えば、たとえば居間に家族が集まって食事をとった後、団欒から一抜けして自室に引き上げるのも「逃ぐる」などと言う人があった。この種の微妙な言い回しは廃ってしまい、今では共通語と同じ使い方のみになってきている。



●●● 今年のつばな ●●●

つばなの唄(竹田市本町)
☆今年のつばなはようできた 耳に巻いてスッポンポン
 鼻に巻いてスッポンポン も一つおまけにスッポンポン



●●● 三百間の燈明台 ●●●

囃し唄(中津市下正路町)
☆三百間の燈明台 ひっくり返して罰金ぞ
 罰金どころか懲役ぞ 懲役どころか首がない



●●● いたち面う見し ●●●

いたちの唄(真玉町金屋)
☆いたち面う見し 蟹うやるぞ
 いたち面う見し かんころ餅う三つやる



●●● とびとび舞え舞え ●●●

とんびの唄(真玉町山畑)
☆とびとび舞え舞え 高田んじんじに行ったら
 たいたい買うて投げ上げよう
 ※たいたい=魚



●●● 雁々渡れ ●●●

縄跳び唄(玖珠町栃木)
☆雁々渡れ 小さい雁は先に 大きい雁は後に 仲良く渡れ



●●● ずうにい、ずうにい ●●●

ずうにいの唄(杵築市弓町)
☆ずうにい ずうにい 茶を沸かせ 昼飯食うから茶を沸かせ
 ※ずうにい=燕麦
メモ:燕麦の種を爪の上で回して遊ぶときに唄った。



●●● おねご、おねご ●●●

おねごの唄(杵築市弓町)
☆おねご おねご なし首をかたぐるか ひもじい候
 ※おねご=翁草 なし=なぜ かたぐる=かしげる

●●● 一わもしんじゅ ●●●
 同種の唄はかつて広範囲に亙って唄われたようで、他県にも同種のものが伝わっている。文句は地域によって異なる。遊び方も、まりつきやお手玉はもとより、せっせっせ遊びや、文句に出てくる「船頭」「相撲取り」その他の所作を真似して遊ぶなどいろいろな遊び方で親しまれた。

手遊び唄(武蔵町)
☆一度と廻れば わしゃ石ゃかたげん
 石屋どんなりゃこそ石をかたげましょ
☆二度と廻れば わしゃ庭掃わかん
 女子衆なりゃこそ庭掃わきましょ
☆三度と廻れば わしゃ三味弾かん
 芸者どんなりゃこそ三味弾きましょう
☆四度と廻れば わしゃ皺寄らん
 年寄りなりゃこそ皺寄りましょう
☆五度と廻れば わしゃ碁は打たん
 旦那どんなりゃこそ碁を打ちましょう
☆六度と廻れば わしゃ櫓は押さん
 船頭なりゃこそ櫓も押しましょう
☆七度と廻れば わしゃ質ゃ置かん
 貧乏人なりゃこそ質置きましょう
☆八度と廻れば わしゃ鉢ゃ割らん
 鼠なりゃこそ鉢割りましょう
☆九度と廻れば わしゃ鍬かたげん
 百姓なりゃこそ鍬かたげましょ

手まり唄(庄内町阿蘇野)
☆一わもしんじゅ わしゃ市ゃ持たねど
 相撲取りなりゃこそ市持ってまわる
 わしゃ市ゃ持たねど トンコロリンと構えた
 ※一わもしんじゅ=一羽も進上の転訛か
☆二わもしんじゅ わしゃ荷は持たねど
 車屋なりゃこそ荷を持ってまわる
 わしゃ荷は持たねど トンコロリンと構えた
☆三わもしんじゅ わしゃ三味は持たねど
 芸者すりゃこそ三味持ってまわる
 わしゃ三味は持たねど トンコロリンと構えた
☆四わもしんじゅ わしゃ皺持たねど
 年寄りなりゃこそ皺持ってまわる
 わしゃ皺持たねど トンコロリンと構えた
☆五わもしんじゅ わしゃ碁は持たねど
 旦那なりゃこそ碁を持ってまわる
 わしゃ碁は打たねど トンコロリンと構えた
☆六わもしんじゅ わしゃ櫓は持たねど
 船頭すりゃこそ櫓を持ってまわる
 わしゃ櫓は持たねど トンコロリンと構えた
☆七わもしんじゅ わしゃ質ゃ持たねど
 質屋すりゃこそ質持ってまわる
 わしゃ質ゃ持たねど トンコロリンと構えた
☆八わもしんじゅ わしゃ鉢ゃ持たねど
 唐津屋なりゃこそ鉢持ってまわる
 わしゃ鉢ゃ持たねど トンコロリンと構えた
☆九わもしんじゅ わしゃ鍬持たねど
 百姓すりゃこそ鍬持ってまわる
 わしゃ鍬持たねど トンコロリンと構えた
☆十わもしんじゅ わしゃ銃は持たねど
 猟師すりゃこそ銃持ってまわる
 わしゃ銃は持たねど トンコロリンと構えた



●●● ひとめふため ●●●
 全国的に唄われた羽根突き唄。

羽根つき唄(宇佐市長洲)
☆ひとめ ふため みやこし嫁御 いつやの昔
 ななやの薬師 ここのやトンボ これで一点かしました

羽根つき唄(大分市松岡)
☆ひとめやふため みいめやようめ いつめやむうめ
 ななめややあめ ここのめやとおめ

羽根突き唄(鶴見町羽出浦)
☆ひとめにふため みよこし嫁御 五重に武蔵
 七重に役者 ここのまや通らせん
 ※ここのまや=ここの前は

羽根突き唄(佐伯市堅田)
☆ひとめにふため みやこし嫁御 いつやに武蔵
 七やに八つし ここのまで一体じゃ

羽根突き唄(佐伯市女島)
☆ひとめにふため みやこし嫁御 いつやに武蔵
 七やに薬師 ここのまや通らせん



●●● 一夜に二夜 ●●●

羽根突き唄(佐伯市女島)
☆一夜に二夜 三日目の夜明け 五つの虫が
 鳴く音をやめて 恋しい小山に飛んでった



●●● いちじくにんじん ●●●
 全国的に唄われた羽根突き唄。

羽根つき唄(宇佐市長洲)
☆いちじく にんじん 山椒に椎茸 ごんぼにむかご
 七草 やたけ くねんぼにとんがらし
 ※ごんぼ=牛蒡

羽根つき唄(大分市東稙田)
☆いちくり にんじん 山椒に椎茸 ごぼう ろうそく
 七くり 初茸 くねんぼ とんがらし
 ※七くり=意味不明
  くねんぼ=柑橘類…みかんの仲間
メモ:この種の数え唄は県内各地で行われたが、一般に「野菜尽くし」の文句なのに、ここでは「ろうそく」が出てきているのがおもしろい。元は「むかご」だったのではないかと思う。

数え唄(臼杵市福良)
☆いち栗 にんにく 山椒に椎茸 牛蒡にむかごに
 七草 初茸 くねんぼにとんがらし

数え唄(臼杵市稲田)
☆いち栗 にんにく 山椒の椎茸 牛蒡にむかごに
 七草 初茸 くねんぼにとかけ

羽根突き唄(佐伯市女島、弥生町上小倉)
☆いちじく にんじん 山椒に椎茸
 ごんぼにむかご 七草初茸 くねんぼに唐辛子

羽根つき唄(竹田市神原)
☆いちご にんじん 山椒 椎茸 ごんぼ むくろ
 なすび 山芋 こんにゃく 豆腐

羽根突き唄(玖珠町)
☆いちじく 人参 山椒に椎茸 ごんぼに結び
 茄子 山芋 蒟蒻 豆腐
☆豆腐は白い 白いは兎 兎は跳ねる 跳ねるは蛙
 蛙は青い 青いはバナナ バナナは長い 長いは煙突
(以下略)



●●● ひとんごふたんご ●●●

羽根つき唄(大分市国分)
☆ひとんご ふたんご みまたのよそおせ いつやで武蔵
 ななんご やつしご くじょうにお泊まり
 ※くじょう=久住の転訛か

風船つき唄(庄内町長野)
☆ひとんごふたんご みまたのよそうし いつやがむさし
 ななんごやつしろ 久住にてお泊り

羽根つき唄(大野町藤北)
☆ひとんご ふたんご みまたの よそうし
 いつやが むさし ななんご やつしろ 久住のお泊り

羽根つき唄(直入町長湯)
☆ひとんご ふたんご みまたの よそうし
 いつやが むさし ななんご やつしろ 久住にてお泊り



●●● たいのこねんねん ●●●
 この唄はお手玉はもとより、せっせっせ遊びやものまね遊びなどの唄としてよく知られている。県内各地で採集されているほか、他県でも広く唄われていたようだ。

手遊び唄(杵築市弓町)
☆一つひよこが豆食うて タイノコネンネン
☆二つ船には船頭さんが タイノコネンネン
☆三つ店には番頭さんが タイノコネンネン
☆四つ嫁さんかんざし挿して タイノコネンネン
☆五つ医者さんが薬箱 タイノコネンネン
☆六つ昔はちょんまげ結うて タイノコネンネン
☆七つ泣き虫蜂にくわれて タイノコネンネン
☆八つ山ではコンコンさんが タイノコネンネン
☆九つ乞食がお椀持って タイノコネンネン
☆十で殿さまお馬に乗って タイノコネンネン

手遊び唄(臼杵市東福良)
☆一つひよこが豆食べて タイノコネンネン
☆二つ船には船頭さんが タイノコネンネン
☆三つ店には番頭さんが タイノコネンネン
☆四つ横浜 風が吹いて タイノコネンネン
☆五つ医者どんが鞄持って タイノコネンネン
☆六つ昔は刀差して タイノコネンネン
☆七つ泣けべそ芋持って タイノコネンネン
☆八つ山には天狗さんが タイノコネンネン
☆九つ乞食がお椀もって タイノコネンネン
☆十で殿さま馬に乗って タイノコネンネン

お手玉唄(上浦町)
☆一つ ひよこが豆を食って タイナクネンネ
☆二つ 舟には船頭さんが タイナクネンネ
☆三つ 店屋の番頭さんが タイナクネンネ
☆四つ 横浜風が吹いて タイナクネンネ
☆五つ 医者さんがかばん持って タイナクネンネ
☆六つ 昔は鎧着て タイナクネンネ
☆七つ 泣きべそ蜂が刺して タイナクネンネ
☆八つ 山には天狗さんが タイナクネンネ
☆九つ 乞食がお椀持って タイナクネンネ
☆十で 殿様お馬に乗って タイナクネンネ



●●● 一匁の一助さん ●●●
 全国的に広く唄われた唄で、県内でも方々で採集されている。この種の手まり唄の中では、もっとも人口に膾炙したものといえるだろう。この唄でまりつきをするときは、みんなで輪になって、「○匁に渡した」で隣の人につき渡す遊び方と、一人が連続でついていき二匁、三匁…と増していくにしたがって足の通し方などが難しくなっていく遊び方とがある。

手まり唄(杵築市馬場尾)
☆一匁の一助さん イの字が嫌いで 一万一千一百石
 一斗一升一合一勺 お蔵に収めて二助さんに渡した
☆二匁の二助さん ニの字が嫌いで 二万二千二百石
 二斗二升二合二勺 お蔵に収めて三助さんに渡した
(以下、十まで同様)

手まり唄(上浦町)
☆一匁の一助さん おわかでごめんな 一万一千一百石 
 一斗 一升 一合までお墓に収めて 二匁に渡した
☆二匁の二助さん おわかでごめんな 二万二千二百石 
 二斗 二升 二合までお墓に収めて 三匁に渡した
(以下、九まで同様)

手まり唄(弥生町上小倉)
☆一匁の一助さん 一の字が嫌いで 一万一千一百石
 一斗一升一合まで お倉に納めて 二匁に渡した
☆二匁の二助さん 二の字が嫌いで 二万二千二百石
 二斗二升二合まで お倉に納めて 三匁に渡した
(以下、九まで同様)

手まり唄(鶴見町羽出浦)
☆一番目の一助さんの量る上米は 一万一千一百石の
 一斗の一升の一合まで 図り納めて二番目に渡した
 ※上米(じょうまい)=上等の米
☆二番目の二助さんの量る上米は 二万二千二百石の
 二斗の二升の二合まで 図り納めて三番目に渡した
(以下、九まで同様)
メモ:鶴見町で唄われたものは、よそと少し節が違っている。

手まり唄(鶴見町吹浦)
☆一番目の一助さん 量る上米は
 一万一千一百石の 一斗の一升の一合まで
☆二番目の二助さん 量る上米は
 二万二千二百石の 二斗の二升の二合まで
(以下、九まで同様)

お手玉唄(玖珠町)
☆一匁の一助さん 一の字が嫌いで 一万一千一百石
 一斗一升一合一勺豆 お倉に納めて二匁に渡した
☆二匁の二助さん 二の字が嫌いで 二万二千二百石
 二斗二升二合二勺豆 お倉に納めて三匁に渡した
☆三匁の三助さん 三の字が嫌いで 三万三千三百石
 三斗三升三合三勺豆 お倉に納めて四匁に渡した
(以下、九まで同様)



●●● 開いた開いた ●●●
 所謂「わらべ唄」的な旋律を持ってはいるが、多分に学校唱歌的な性格を帯びた唄である。

遊ばせ唄(中津市下正路町)
☆開いた開いた 何の花が開いた 蓮華の花が開いた
 開いたと思ったらいつの間にかしぼんだ
☆しぼんだしぼんだ 蓮華の花がしぼんだ
 しぼんだと思ったらいつの間にか開いた

遊ばせ唄(玖珠町)
☆開いた開いた 何の花が開いた 蓮華の花が開いた
 開いたと思ったらいつの間にかしぼんだ
☆しぼんだしぼんだ 蓮華の花がしぼんだ
 しぼんだと思ったら いつの間にか開いた
メモ:幼児の目の前で両手の平を開いたり閉じたりしながらあやした。

人当て鬼の唄(玖珠町戸畑)
☆開いた開いた 何の花が開いた れんげの花が開いた
 開いたと思うたらいつの間にかしぼんだ 後ろにおる人だあれ



●●● 中ん中ん小坊さん ●●●

人当て鬼の唄(中津市下正路町)
☆中ん中ん小坊さん なぜ腰がかがんだ
 親ん日にえび食うて それで腰がかがんだ
 一皿二皿三皿の上に やいとをすえて 熱や悲しや金仏 金仏
 ※親ん日=親の命日
  やいと=お灸



●●● ぼんさんどこ行く ●●●

人当て鬼の唄(大分市東稙田)
☆ぼんさんぼんさんどこ行くの どこ行くの
 私ゃ田んぼの稲刈りに 稲刈りに
 私も一緒に連れて行て 連れて行て
 お前が来ると邪魔になる 邪魔になる
 後ろにいるのはだーれだれ

人当て鬼の唄(玖珠町戸畑)
☆坊さん坊さん どこ行くの 私は田んぼに稲刈りに
 私も一緒に連れしゃんせ お前が来ると邪魔になる
 このかんかん坊主 くそ坊主 お前の後ろに誰がおる



●●● 中の弘法大師 ●●●

人当て鬼の唄(玖珠町戸畑)
☆中の中の弘法大師 なぜ背が低い 運動せんから低い
 このかんかん坊主 くそ坊主 お前の後ろにゃ誰がおる



●●● 盲のお小僧 ●●●
 この唄は「開いた開いた」よりもなお新しいものだそうで、旋律もわらべ唄的なものから離れて唱歌風である。何かの替え唄だと思うのだが元唄がわからない。明るくはずんだ節はなかなか調子がよいが、文句が今の時代にはそぐわず、今後も唄われることはないだろう。

人当て鬼の唄(玖珠町戸畑)
☆盲のお小僧真ん中に お手々を繋いで輪になって
 唄ってくるくる回ります 盲のお小僧知らぬ間に
 後ろに隠れた人がいる 頭にアの字のついた人よ
 その名は何でしょどなたでしょ



●●● 瀬戸の河原の水車 ●●●

人当て鬼の唄(宇佐市長洲)
☆瀬戸の河原の水車 仕掛けがよければようまえ ようまえ
 一皿二皿 みさんの上に やいとを据えて あしや悲しや 金仏
 ※ようまえ=よく回れ
  やいと=お灸



●●● 座頭さんえ ●●●

人当て鬼の唄(臼杵市東福良)
☆座頭さんえ 座頭さんえ お茶を一杯あげましょか 「まだまだ」
 そうおっしゃるなら あなたの後ろは誰じゃいな

人当て鬼の唄(中津江村)
☆座頭さんよ座頭さんよ お茶を一杯あげましょか 「まだまだ」
 まだとおっしゃるなら あなたの後ろは誰じゃいな トコトン



●●● かごめかごめ ●●●

人当て鬼の唄(宇佐市長洲)
☆かごめかごめ 籠ん中ん鳥は いついつ出やる
 夜中の晩に 杖ついてつっぱった 後ろの正面だれか

人当て鬼の唄(別府市内竈)
☆かごめかごめ かごの中の鳥は いつ出て遊ぶ
 夜中の頃に 暁かけて 何とか告ぐる あなたの後ろは誰かいな

人当て鬼の唄(玖珠町柿西)
☆かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる あなたの後だあれ

人当て鬼の唄(弥生町江良)
☆かごめかごめ 籠の中の鳥はいつ出て遊ぶ
 夜明けの空の朝日の光 輝くときに
 ひとんこ ふたんこ さんめなこ 寄って中のくそつかみ
 あとは誰が揃えるか この人さんが揃えるぞ
 ※くそつかみ=草をつかみ

人当て鬼の唄(佐伯市)
☆かごめかごめ 籠の中の鳥はいつ出て遊ぶ
 夜明けの空に朝日の光 輝くときは 後ろはだあれ
 ひとんこふたんこ さんめのこ 寄って中のくそつかみ
 誰があとを揃えるか この人さんが揃えるよ
 ※くそつかみ=草をつかみ



●●● 前のおばさん ●●●

捕まえ鬼の唄(中津市下正路町)
☆前のおばさんお茶飲みおいで 鬼がおって行かれません
 鬼を突きのけさっさとおいで 鬼の来ん間に豆ども拾お
 鬼の来ん間にお茶ども飲もう
 ※豆ども・お茶ども=豆でも・お茶でも

捕まえ鬼の唄(臼杵市東福良)
☆向こうのおばさんお茶飲みおいで 鬼がおって行かれません
 鬼の仲間にちょいとおいで



●●● うちの婆さん四十九で嫁入り ●●●

手まり唄(久住町栢木)
☆うちの婆さんは四十九で嫁入る 白髪頭にかんざし挿して
 向こう通れば子供が笑う 子供笑うな縁じゃもの 縁じゃもの

手まり唄(中津江村)
☆とんぐりとんぐり婆さんな四十九で嫁入り 白髪頭にかんざし挿して
 向こう通れば子供が笑う 子供笑うな縁じゃもの



●●● お一つ下ろして ●●●
 この唄は寄せ玉専用のもので、ただ技の名前を羅列したものである。地口に近く、リズムもまちまちなので唄といえるかどうか微妙だが、一応掲載する。この種のものは全国的に広く唄われた。しかし、今は寄せ玉遊びをする子がいないので全く唄われていない。覚えているのは昭和20年代生まれか、せいぜい30年代生まれの人までだろう。

お手玉唄(宇佐市長洲)
☆お一つ下ろして おさらい
 お二つ下ろして おさらい
 お三つ下ろして おさらい
 おみんな おみんな下ろして おさらい
☆お手さみ お手さみ お手さみ お手さみ下ろして おさらい
☆おひらい おひらい おひらい おひらい下ろして おさらい
☆落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ下ろして おさらい
☆おんばさみ おんばさみ おんばさみ おんばさみ下ろして おさらい
☆大きな川渉らんせ 大きな川渉らんせ 大きな川渉らんさ 大きな川渉らんせ
☆小さな川渉らんせ 小さな川渉らんせ 小さな川渉らんせ 小さな川渉らんせ
 ヤットコ ドッコイショ
☆お左 お左 ひっかけ下ろしてならして下ろして おさらい

お手玉唄(香々地町堅来)
☆お一つ お一つ お一つ下ろして おさら
 お二つ お二つ お二つ下ろして おさら
 お三つ お三つ お三つ下ろして おさら
 おみんな おさら
☆大きい橋 大きい橋下ろして おさら
☆小さい橋 小さい橋下ろして おさら
☆お手乗せ お手乗せ お手乗せ下ろして おさら
 おみんな おさら

お手玉唄(安岐町吉松)
☆お一つ お一つ お一つ お一つ下ろして おさらい
 お二つ お二つ下ろして おさらい
 お三つ お一つ下ろして おさらい
 おみんな 下ろしておさらい(以下欠落)

お手玉唄(武蔵町)
☆おじゃみ
 お一つ お一つ お一つ下ろして おしゃら
 おみな取って また取り しゃがんでぞんぞん
☆お手の平 お手の平 お手の平下ろして おしゃら
 おみな取って また取り しゃがんでぞんぞん
☆お背中 お背中 お背中下ろして おしゃら
 おみな取って また取り しゃがんでぞんぞん
☆お左 お左 お左 だり別れ
 島寄せ 中寄せ おじゃめて落として おしゃら
☆小さい川渉れ 小さい川渉れ 小さい川渉れ おしゃら
☆大きい川渉れ 大きい川渉れ 大きい川渉れ おしゃら
☆おおしろし しろし落として おしゃら

お手玉唄(杵築市弓町)
☆お初め お一つ お一つ お一つ お一つ落として オシャラ
☆皆さん今晩は テテシャン テテシャン落として オシャラ
☆おつかみ おつかみ落として オシャラ
☆落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ落として オシャラ
☆大きな川は 疲れきってオシャラ
☆一山くらんで 二山くらんで 三山くらんで 四山くらんで
 五山くらんで 六山くらんで 七山くらんで 八山くらんで
 九山くらんで 十山くらんで
☆おまけが一升 おまけが二升 おまけが三升
 いっちょんきり お初め なんとくさい

お手玉唄(杵築市弓町)
☆おじゃみ おふた おふた おみい おみい
 おひと寄せ おふた寄せ おみい寄せ トンキリ
 おふた おざくら おざくら トンキリ
 おみい おざくら おざくら トンキリ

お手玉唄(杵築市馬場尾)
☆お一つ お一つ お一つ お一つ下ろして おーさらい
 お二つ お二つ下ろして おーさらい
 お三つ お一つ下ろして おーさらい
 おみんな おーさらい
☆おつかみ おつかみ おつかみ おつかみ下ろして おーさらい
☆落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ下ろして おーさらい
☆大きい橋 大きい橋 大きい橋 大きい橋 おーさらい
☆小さい橋 小さい橋 小さい橋 小さい橋 おーさらい
☆大寄せ 大寄せ 大寄せ 大寄せ おーさらい(以下欠落)

お手玉唄(杵築市鴨川)
☆おじゃみ お初め おしゃらい
 お一つ お一つ お一つ下ろして おしゃらい
 お二つ お二つ お二つ下ろして おしゃらい
 お三つ お三つ お三つ下ろして おしゃらい
 おみんな下ろして おしゃらい
☆お左 おひと寄せ おひと寄せ おひと寄せ おしゃらい
☆おてそみ おてそみ おてそみ おてそみ下ろして おしゃらい
☆おてのせ おてのせ おてのせ おてのせ返して おしゃらい
☆大きい橋くぐらんせ 大きい橋くぐらんせ くぐっておしゃらい
☆小さい川渉らんせ 小さい川渉らんせ 渉っておしゃらい
☆じいさん ばあさん じいさん ばあさん下ろして おしゃらい
☆いっちょけん にちょけん さんちょけん おみんな おしゃらい
☆べにべにやっこここ 一十
 べにべにやっこここ 二十
 べにべにやっこここ 三十のチョイ
☆おんどり一羽が一匁
 おんどり二羽が二匁
 おんどり三羽が三匁のチョイ
☆梅王 松王 桜丸の一十
 梅王 松王 桜丸の二十
 梅王 松王 桜丸の三十のチョイ
 桜が枯れたらいっきとせ

お手玉唄(別府市東山)
☆お一つ落として おしゃら
 お二つ落として おしゃら
 お三つ落として おしゃら
 おみな落として おしゃら
☆おはさみ おはさみ おはさみ落として おしゃら
☆おちりんこ おちりんこ おちりんこ落として おしゃら
☆小さい川渉れ おみな落として おしゃら
☆大きい川渉れ おみな落として おしゃら
☆お左 お左 右左 中寄せ 下寄せ 定めて落として おしゃら

寄せ玉の唄(大分市国分)
☆お一つ お一つ お一つ お一つ落として おっしゃらん
☆おってんしゃん おってんしゃん おってんしゃん
 おってんしゃん落として おっしゃらん
☆おってばさみ おってばさみ おってばさみ
 おってばさみ落として おっしゃらん
☆おってくし おってくし おってくし
 おってくし落として おっしゃらん
☆お左 お左 お左 お左 大左
 寄せし しま寄し 定めて 納めて おっしゃらん
☆おてかけ おてかけ おてかけ おてかけ おっしゃらん
☆おっしいろん おっしゃらん
☆小さい川渉れ 小さい川渉れ 小さい川渉れ 小さい川渉れ
 渉って落として おっしゃらん
☆大きい川渉れ 大きい川渉れ 大きい川渉れ 大きい川渉れ
 渉って落として おっしゃらん
☆おおみな 落としておっしゃらん

お手玉唄(臼杵市東福良)
☆お一つ お一つ落として オシャラ
 お二つ お二つ落として オシャラ
 お三つ お三つ落として オシャラ
 おみな落として オシャラ
☆おてちゃん おてちゃん落として オシャラ
☆お手挟み お手挟み落として オシャラ
☆落ちちんこ 落ちちんこ落として オシャラ
☆お左 お左 あかつき しもつき落として オシャラ
☆ヤッチャナ ヤッチャナ落として オシャラ
☆お手ぐし お手ぐし招いて オシャラ
☆おんぼし おんぼし招いて オシャラ
☆おふた まねき落として オシャラ
☆おんだい びきびきびき雀 びき助 貧乏 そう貧乏
 奥さん 旦那さん 奥さん 旦那さん かけだしばった
 もみすりもんだ 向こうの長吉 じじばば渉れ 大川渉れ オシャラ
☆小川渉れ オシャラ
☆お手ひじ 手かけて落として オシャラ
☆お手たたき 手かけて落としてオシャラ
☆大袖 手かけて落として ならして落として オシャラ
☆小袖 手かけて落として ならして落として オシャラ
☆一やんでくらんで 二やんでくらんで 三やんでくらんで 四やんでくらんで
 五やんでくらんで 六やんでくらんで 七やんでくらんで 八やんでくらんで
 九やんでくらんで 十やんでくらんで
☆おまけに一升 おまけに二升 やっちきしょ おってんばらい

お手玉唄(鶴見町羽出浦)
☆おひとつ落として おっしゃら
 おみな落として おっしゃら
☆お手さん落として おっしゃら
☆手挟み手挟み お一つ落として おっしゃら
☆落ちりんこ落ちりんこ 落として おっしゃら
☆小さい川渉れ 小さい川渉れ おっしゃら
☆大きい川渉れ 大きい川渉れ おっしゃら
☆甲肘 甲肘 叩いて鳴らして 叩いて鳴らして
 叩いて鳴らして おっしゃら

お手玉唄(蒲江町西野浦)
☆お一つ下ろして 下ろして下ろして おさらい
 お二つ下ろして おさらい
 お三つ下ろして おさらい
 お皆さらい
☆おてしゃん おてしゃん おてしゃん下ろして おさらい
☆お手挟み お手挟み お手挟み下ろして おさらい
☆落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ おさらい
☆お左 お左 お左 おお左
 中つけ すな寄せ さら寄せ お手つき おさらい
☆八つの山猫 いたちに追われて 追われて 追われて おさらい
☆手のぶし 手のぶし 手のぶし下ろして おさらい
☆おん挟み おん挟み おん挟み下ろして おさらい
☆おおし 白 白 白 いっかんおさらい
☆おお袖 おお袖 おお袖 ゆかけて下ろして おさらい
☆おお肘 おお肘 おお肘 ゆかけて下ろして おさらい
☆お手ばた お手ばた お手ばた ゆかけて下ろして おさらい
☆小さい川原潜れ 小さい川原潜れ 小さい川原潜れ 潜りとったら おさらい
☆おん橋渡れ おん橋渡れ おん橋渡れ 渡りとったら おさらい
☆お一つやんのも おおむつき お三つやんのも おおむつき
☆お一つちょんぎり お一つちょんぎり お一つちょんぎり 一貫しょ

お手玉唄(佐伯市女島)
☆お一つ お一つ お一つ落として おしゃら
 お二つ お二つ お二つ落として おしゃら
 おみな おしゃら
☆おてしゃん おてしゃん おてしゃん落として おしゃら
☆手挟み 手挟み 手挟み落として おしゃら
☆おちりんこ おちりんこ おちりんこ落として おしゃら
☆お左 お左 波別れ
 下つけ 中つけ さらめて落として おしゃら
☆おってんぐし おってんぐし おってんぐし落として おしゃら
☆おしる しるしるしる落として おしゃら
☆ももだしバッタン ももだしバッタン落として おしゃら
☆小さい川渉れ 小さい川渉れ落として おしゃら
☆大きい川渉れ 大きい川渉れ落として おしゃら
☆お二つまねき お二つまねき落として おしゃら きりこ

お手玉唄(佐伯市)
☆おしゃら
 お一つ お一つ お一つ お一つ落として おしゃら
 お二つ お二つ落として おしゃら
 おみな落として おしゃら
☆お手しゃん お手しゃん お手しゃん お手しゃん落として おしゃら
☆手ばさみ 手ばさみ 手ばさみ 手ばさみ落として おしゃら
☆落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ 落ちりんこ落として おしゃら
☆お左 お左 波別れ
 下つけ 中つけ 晒し手拭頬かむり
☆おんぼし おんぼし おんぼし おんぼし招いて おしゃら
☆おしる しるしる招いて おしゃら
☆手叩き 手叩き 手叩き お手叩き もう一度おしゃら
☆おってん櫛 おってん櫛 おってん櫛 おってん櫛落として おしゃら
☆ももだしばったん ももだしばったん
 ももだしばったん ももだしばったん落として おしゃら
☆小さい川渉れ 小さい川渉れ 小さい川渉れ 渉って落として おしゃら
☆大きい川渉れ 大きい川渉れ 大きい川渉れ 渉って落として おしゃら
☆お二つ招き お二つ招き落として おしゃら
☆奥さん電報 旦那さん電報落として おしゃら
☆きりこ落として おしゃら

お手玉唄(直入町)
☆おしと おふた おみい おみな なってくりょ テンチャン
☆おしと 桜々 おふた 桜々 おみかえり かえり おみざくら

お手玉唄(直入町)
☆ご褒美 お一つ お二つ お三つ およのさがり おおてんばらい
 じょうきなじょうきな おおてんばらい
 危ねえ危ねえ すてすこ おおすてすこ
 おんさい びきびき雀 おしゃら しゃしゃ

お手玉唄(玖珠町)
☆おひと おふた おみみ およよ
☆ひと寄せ ふた寄せ さくら とんきり なかぎり
☆おひとさくら おひとさくら おひとさくら おひとさくら とんきり
 おふたさくら おふたさくら おふたさくら おふたさくら とんきり
 おみさくら おみさくら おみさくら おみさくら とんきり
 およさくら およさくら およさくら およさくら とんきり
☆下寄せ かね寄せ さくら とんきり
☆玉隠し 玉隠し 玉隠し 玉隠し とんきり
☆ねずみ隠し ねずみ隠し ねずみ隠し ねずみ隠し とんきり
☆水汲み 水汲み 水汲み 水汲み とんきり
☆おなな おなな おなな おなな とんきり
☆おへへ おへへ おへへ おへへ とんきり
☆がにやど がにやど がにやど がにやど とんきり
☆なでこみ なでこみ なでこみ なでこみ とんきり
☆なで下ろし なで下ろし なで下ろし なで下ろし とんきり
☆お手入れ お手入れ お手入れ お手入れ とんきり
☆お手出し お手出し お手出し お手出し とんきり
☆門越え 門越え 門越え 門越え とんきり いったんきり
☆お一つ お一つ お一つ お一つ おさらい
 お二つ お二つ お二つ お二つ おさらい
 おみつ お三つ お三つ お三つ おさらい
 おみんな おさらい
☆お挟み お挟み お挟み お挟み おさらい
☆ちりんこ ちりんこ ちりんこ ちりんこ おさらい おさらい
☆おてっしゃ おてっしゃ おてっしゃ おてっしゃ おさらい
☆おてっぽす おてっぽす おてっぽす おてっぽす おさらい
☆おいし おいし おいし おいし ひっかけて下ろして おさらい
☆お袖 お袖 お袖 お袖 ひっかけて下ろしてお手々叩いて おさらい
☆おつつき おつつき おつつき おつつき おさらい
☆やっちゃ山猫 食いつきゃ血が出る おさらい
☆お左 お左 お左 お左 お左どすこい おさらい
☆小さな門くぐれ 小さな門くぐれ
 小さな門くぐれ 小さな門くぐれ おさらい
☆大きな門くぐれ 大きな門くぐれ
 大きな門くぐれ 大きな門くぐれ おさらい
☆どの玉とってくれやんしょ
 一升屋のおんすけ 二升屋のおんすけ 三升屋のおんすけ
 四升屋のおんすけ 五升屋のおんすけ 六升屋のおんすけ
 七升屋のおんすけ 八升屋のおんすけ 九升屋のおんすけ
 十升屋のおんすけ
☆おまけに一升 おまけに二升 おまけに三升 おまけに四升
 おまけに五升 おまけに六升 おまけに七升 おまけに八升
 おまけに九升 おまけに十升 きりすったな 大玉取って上がった

お手玉唄(玖珠町柿西)
☆おひと おふた おみみ およよ おいつ おさらい

お手玉唄(中津江村)
☆お一つ お一つ おさら おみんな おさら
 お二つ お二つ おさら おみんな おさら
 お三つ お三つ おさら おみんな おさら
☆お挟み お挟み下ろして おさら
☆落ちんこ 落ちんこ おさら
☆おてんしゃ おてんしゃ下ろして おさら
☆お左 お左 お左 大左 下寄せ かね寄せ おさら
☆しゃみ しゃみ下ろして おさら
☆おてっぽしぽし おてっぽしぽし おさら
☆おいし おいし おさら
☆小さい橋こぐれ 小さい橋こぐれ おさら
☆大きい橋こぐれ 大きい橋こぐれ おさら

お手玉唄(中津江村)
☆お一つ おさらい
 お二つ おさらい
 お三つ おさらい
 やっちょめ やっちょめ おさらい
 おみんな おさらい

●●● 庭じゃ米搗く ●●●

手まり唄(宇佐市長洲)
☆宇佐の新町 分限どんがでけた 庭じゃ米搗く座敷じゃ碁を打つ
 奥の納戸じゃ冷酒もやす あやもポンポンつきなされ さあつきなされ

手まり唄(玖珠町柿西)
☆向いの婆さん縁から見れば 牡丹芍薬テマルの花よ

手まり唄(天瀬町五馬市)
☆向かい婆さん縁から見れば 庭じゃ米搗く座敷じゃ碁を打つ
 奥の納戸で 二挺三味線物語り サヨナーイッテナー
メモ:庭で米搗きをするなど普通の農家の婆さんかと思っていたら、碁を打つやら浄瑠璃を唄うやら、元は左褄をとっていたのだろうというようなニュアンスのある文句である。

手まり唄(日田市)
☆向かいの婆さん縁からみれば 庭じゃ米搗く御前じゃ碁を打つ
 奥の納戸じゃ 二挺三味線物語り サンヨエーイッテノーイッテノー



●●● イーチクターチク ●●●
 同種の唄が全国的に広く唄われていたようだ。県内でも方々で唄われ「ずいずいずっころばし」と同様の遊び方にて鬼ごっこ等の鬼決め等をしていたが、今はただじゃんけんで決めるばかりになっている。この唄で鬼決めをしたのはせいぜい、昭和20年代生まれまでだろう。

手遊び唄(宇佐市長洲)
☆イーチクターチク たえんさんがお客に呼ばれて蜂から刺されて
 あいたとも言われず かいとも言われず ただしくしく泣くばかり
☆一がさした 二さがした 三がさした 四がさした
 五がさした 六がさした 七がさした 八がさした ぶんぶんぶん

手遊び唄(宇佐市横田)
☆イーチクターチク たえんさんが お客に呼ばれて蜂から刺されて
 あいたとも かいたとも言えずに ただ泣くばっかりしょ
☆イーチクターチク たちんばこ みょうりんしょうりん
 かなかなつんぼ がにがよぼし挟んだ
☆井戸ん端ん茶碗蒸しゃ危ないもんじゃ はよ引きゃしゃんせ

鬼決めの唄(豊後高田市田染)
☆イーチクターチク 太右衛門さんが法事に呼ばれて蜂からさされて
 アーイタもカーイタも言われぬ ただ泣くばっかりしょ
 ブンブラブンブラ ブンブラブン

鬼決めの唄(真玉町金屋)
☆イーチクターチク たーえんさんがお客に呼ばれて蜂からさされて
 痛てとん言われにゃ 痒いとん言われん ただ泣くばっかりしょ
 ※痛てとん=痛いとも

手遊び唄(武蔵町)
☆イーチクターチク たちばこ みょうじん
 しょうじん かねごろう ちょっと引き連れやれ
☆イーチクターチク たちんばこ かねぐりちょっと 引き分けた
☆イーチクターチク たあえもさん 蜂から刺されて
 いてともかいとも 言わずにただ泣くばかり

手遊び唄(杵築市弓町)
☆イーチクターチク たーえんさんがお客に呼ばれて蜂からさされて
 いてえとも言わずにただ泣くばっかりじゃ
☆一がさした 二がさした 三がさした 四がさした
 五がさした 六がさした 七がさした 蜂がさした
 ブンブンブンブンブーン

鬼決めの唄(大分市東稙田)
☆いっちくたっちく たいよむさんが法事に呼ばれて蜂から刺されて
 いてえとも かいいとも言わずに ただしくしく泣くばかりじゃった

手遊び唄(大分市南大分)
☆一がさいた 二がさいた 三がさいた 四がさいた
 五がさいた 六がさいた 七がさいた 八がさいた
 ブンブンブンブンブーン

鬼決めの唄(佐伯市女島)
☆イーチクターチク たいの舞のおちょくは いくたいな
 橋の元の菖蒲は 誰が植えた菖蒲か いったいどの たいどの
 たいが娘 梶原 源八そこぬけ 太郎左衛門よ

鬼決めの唄(直川村)
☆一が刺した 二が刺した 三が刺した 四が刺した 五が刺した
 六が刺した 七が刺した 蜂が刺した ブンブンブン

鬼決めの唄(玖珠町)
☆イーチクターチク 隣のターエムさんがお客に呼ばれて蜂から刺されて
 いてえとむ言わにゃかいいとむ言わずに ただ泣くばっかりじゃった
☆一が刺した 二が刺した 三が刺した 四が刺した
 五が刺した 六が刺した 七が刺した 蜂が刺した ブンブンブン



●●● 一のけんじょ ●●●
 イーチクターチクと同様に唄われた。

鬼決めの唄(大分市東鶴崎)
☆一のけんじょ 二けんじょ 三のけんじょ 四けんじょ
 しけのばちのうちにゃ おもはもはっぽう
 お茶々の花が 咲いたか咲かんか まだ咲き揃わん
 青おんの盲が その先ゃつんのけ
 ※青おん=青鬼

鬼決めの唄(臼杵市稲田)
☆一りけんど 二けんど 三けんど 四けんど しこんぼ張り上げて
 中くぼ蓮華 蓮華の枕 木枕 きっという天気のおんどり



●●● いっぷくてっぷく ●●●

鬼決めの唄(久住町栢木)
☆イップクテップク 手まりぶしゃ 乙姫が幽霊に恐れて泣く声は
 ピヨピヨ マングリマングリ オヒャリコヒャリコ
 ヒャの間のお母さんが のんのん薬師のじょうたんぼ
 ヒケノコサイサイ

手遊び唄(中津江村)
☆イップクテップク ちんだいさんの乙姫は 牢屋に生まれて泣く声は
 チョチョ マングリマングリ オシャリコサイサイ
 ときにゃあ寄ってこれを引け のーれ
☆一が刺した 二が刺した 三が刺した 四が刺した
 五が刺した 六が刺した 七が刺した 蜂が刺した ブンブンブン



●●● 花一匁 ●●●
 この唄は専ら子貰い遊びで唄われたものだが、近年は耳にすることが稀になっている。ともあれ、平成中頃までは年少者に盛んに遊ばれていたもので、この種の遊び唄としては最も長く唄われたものの一つだろう。昔の子供は覗きカラクリ等で芝居にもある程度は親しんでいたので「お七が吉三に花一匁」等の文句も採集されている。

子貰い遊びの唄(宇佐市長洲)
☆買って嬉しや花一匁 負けてはがいや花一匁
 じゃんけんぽん あいこでしょ
 あん子がほしい あん子じゃわからん
 こん子がほしい こん子じゃわからん
 より取り見取り どん子がいいか 「花ちゃん」
 麦飯 味噌のセ そんなこっちゃやれん
 米ん飯 鯛のセ そんならやろか
 ※花いちもんめ=花とは「玉代」「線香代」(芸者や遊女の揚げ代)の意か。
  はがいや=悔しや
  セ=菜(さい)の転訛。おかずのこと

子貰い遊びの唄(杵築市札ノ辻)
☆東京浅草 芝居がかかる お七が吉三に 花一匁
 もんめ もんめ 花一匁 あの子が欲しや 花一匁
 この子が欲しや 花一匁 あの子じゃわからん
 この子じゃわからん 相談しましょ そうしましょ 「決まった」
 キクちゃんが欲しい ハナちゃんが欲しい キクちゃんはやらん
 ハナちゃんもやらん 何して決みょか 一兵衛さんで決みょか
 「一兵衛さんが芋食うて 二兵衛さんが肉食うて
  三兵衛さんが酒飲んで じゃんけんぽん
 勝って嬉しや 花一匁 負けてはがいや 花一匁

子貰い遊びの唄(杵築市札ノ辻)
☆勝って嬉しや 花一匁 負けて悔しや  花一匁
 大阪新町 花一匁 よりどりみどり  花一匁
 あの子が欲しや あの子じゃわからん
 この子が欲しや この子じゃわからん
 相談しましょ そうしましょ 「決まった」
 ミヨちゃんが欲しい テルちゃんが欲しい 何して決みょか
 じゃんけんにしよか 「じゃんけんぽん、あいこでホイ」
 勝って嬉しや 花一匁  負けて悔しや 花一匁

子貰い遊びの唄(別府市)
☆子供をくりい どの子がよいか この子がよいぞ
 こかじ こかじ 何もってくれるか
 みかん三つに白墨四つ それでもやらぬ
 鯛に米ん飯で養う それでもやらぬ
 たばこ屋の倉みんなやろ そんならいけいけ

子貰い遊びの唄(佐伯市堅田)
☆梅と桜を合わせてみれば 梅はすいすいだまされた
 桜はよいよいほめられた それいったん細まった
 花ちゃん取りたい花一匁 美代ちゃん取りたい花一匁
 「じゃんけんぽん」
 勝って嬉しい花一匁 負けて悔しい花一匁
 ふるさとまとめて花一匁

子貰い遊びの唄(直川村)
☆勝って嬉しや花一匁 負けてはがいや花一匁
 「じゃんけんぽん あいこでしょ」
 あん子がほしい あん子じゃわからん
 こん子がほしい こん子じゃわからん
 より取り見取り どん子がいいか 花ちゃんがほしい
 麦飯味噌で そんなこっちゃやれん
 米ん飯 鯛のセ そんならやろか
 ※麦飯味噌で=麦ごはんに味噌のおかずで
  鯛のセ=鯛のおかず セは菜(さい・おかずの意)の転訛

子貰い遊びの唄(玖珠町)
☆勝って嬉しや花一匁 負けて悔しや花一匁
 「じゃんけんぽん あいこでしょ」
 あん子が欲しい あん子じゃわからん
 こん子が欲しい こん子じゃわからん
 よりどりみどり どん子がいいか 「花ちゃん」
 麦飯 味噌のセ そんなこっちゃやられん
 米飯 鯛のセ そんならやろか

子貰い遊びの唄(中津江村)
☆隈じゃ太政官 豆田じゃお鶴 より取り見取りじゃ 花一匁
 もんめ もんめ 花一匁 あの子が欲しい あの子じゃわからん
 この子が欲しい この子じゃわからん 相談しましょ そうしましょ
 誰々さんが欲しい 誰々さんが欲しい 「じゃんけんぽん」
 勝って嬉しい花一匁 負けて悔しい花一匁
 ※太政官=隈町でもっとも別嬪といわれた芸者の渾名。太政官札でも買えない云々
  お鶴=豆田町でもっとも別嬪といわれた娘
  隈じゃ太政官、豆田じゃお鶴=日田の騒ぎ唄「太政官節」からの引用



●●● ひいふう三羽の鶯が ●●●
 この文句は「白鷺の伊勢参宮」で、「ションガエ節」ほか県内各地の祝儀唄の文句に多く出てくる。大人が唄う文句を聞き覚えて、手まり唄に転用したのだろう。

手まり唄(国東町見地)
☆みょうとの鴉が思い立ち 今年初めて伊勢参宮
 伊勢ほど大きな町なれど 一夜の宿を借りかねて
 浜にたどりて浜の松 大松小松の二の枝に
 柴をかき寄せ巣を作り 十二の卵を生み揃え
 十二が十二にかいわれて 親にもろとも立つときは
 金の銚子が七銚子 黄金の杯さし合うて

手まり唄(鶴見町羽出浦)
☆ひいふう三羽の鶯が 今年初めて伊勢参宮
 伊勢ほど広い町なれば 一夜のお宿を借りかねて
 浜ばた小松の二の枝に 白鷺寄せて巣を組んで
 十二の卵を生みそろえ 十二が一度に目を開き
 親もろともに立つときにゃ 銀の銚子が七銚子
 黄金の銚子が七調子 連れがナー 祝うて来たわいな 来たわいな

お手玉唄(弥生町切畑)
☆ひ ふ さん しの鶯が 梅の木小枝に巣ごもりて
 十二の卵を生みそろえ それが一度にかいわれて
 七つ難儀の花ちゃんが コレラの病気にかかられて
 石炭酸を飲まされて 花ちゃんの母さん血の涙
 血じゃなかった紅じゃった イレコ
 ※コレラ=かつて日本でも流行、「三日コロリ」などといって恐れられていた。
  石炭酸を飲まされて=石炭酸(フェノール)は消毒に使うもので内服薬ではないのに、コレラ感染をおそれるあまり希釈物を自己判断で服用し、死亡する例もあったという。
メモ:この種の唄の末尾には、よく「ピッピノピ」や「まず一貫かしました」などの囃子をそえるが、ここでは「イレコ」となっている。これは、盆口説のイレコで唄われていた文句を転用したためではないかと思う。よく、イレコから元の音頭に返るときに「今のイレコはよくできました」云々の口説が聞かれるので、そこからとったのではないだろうか。

手まり唄(九重町後野上)
☆ひいふう三つのウグユスが 小野小町の二の枝に
 薄くわえて巣をつくり 生んで育てて立つときは
 十二の卵を生み揃え 金の銚子にササ入れて
 ゆうべこそ貰うた初嫁御 今朝は納戸に座らして
 金襴つむぎを縫わしたら しっくりしっくり泣きなさる
 何で悲しうて泣きなさる 衿と衽をつけきらん
 針は針屋のくされ針 糸は糸屋のちぎれ糸 これで一体負わせた
 ※ウグユス=鶯
  小野小町=ここでは「梅」の意
  ゆうべ=昨夜
  ササ=酒
  つけきらん=つけられない(can't)

手まり唄(玖珠町戸畑)
☆ひいふう三つ 鶯が 梅の小枝に二の枝に
 薄くわえて巣をつくり 十二の卵を生み揃え
 生んで揃えて立つときにゃ 金の銚子 七銚子
 よんべこそ貰うた花嫁御 今朝こそ納戸に座らせて
 つむぎの小袖を縫わせたら 何かしくしく泣きやるが
 何が悲しうてお泣きゃるか 襟とおくみをつけきらん
 私の弟の千代松が まだ七つにならんとき
 お馬の上から飛び降りた 飛び降りた これで一回かるわせた
 ※よんべ=昨夜
メモ:戸畑のものは、半ばから「うちの裏のチシャの木に」と共通の文句に変わっており、後半ではまた無関係の「私の弟の千代松が」云々の文句になっている。子供の自由な発想でいろいろな文句を繋ぎ合わせたりして変化したのだろうが、一方では意味もわからず覚えた通りに唄う子も多かっただろう。

手まり唄(日田市)
☆一、二、三の鶯が 梅の小枝に巣をかけて 巣をかけて巣をかけて
 十二の卵を産みそろえ 産んでそろえて立つときは
 一つヒヨ鳥 二つフナ鳥 三つみそっち 四つ夜鴉
 五つ石たたき 六つむく鳥 七つ渚の 浜千鳥
 サーイッテナーイッテナーイッテナー



●●● あしたお万が ●●●
 途中より「姉さん帷子、血がついて」云々が接続されている。この、帷子に血がついたかと思ったら紅だった云々の内容はいろいろなわらべ唄に折り込まれており、人口に膾炙した文句である。

手まり唄(別府市内竈)
☆あした お万が早や起きて 窓の光で髪結うて
 カンス磨いてお茶汲んで おじいさんにもお茶あげて
 おばあさんにもお茶あげて 後でお万が汲んで飲み 汲んで飲み
 向こうの山では太鼓の音がする やあやあめでたや 参りたや
 参りたけれどもベベがない 姉さん帷子貸してんか
 姉さん帷子血がついて あれは血じゃない中つ紅
 中つ紅ならなおよかろ



●●● 向かいのお屋根 ●●●

手まり唄(大分市国分)
☆向かいのお屋根はキラキラ光る 光るこそ道理じゃ
 様の嫁入りなさる いくつでなさる 七つでなさる
 七色飯に おしゅんと こしゅんと 腰元連れて
 伊勢にゃ七度 熊野に三度 愛宕様には月まいり
 ※七色飯=徳川家光のために春日局が考案したもので、菜飯・小豆飯・麦飯・粟飯・湯取り飯・引き割り飯・干し飯のうちから一つを選んで食べる。ここでは婚礼のご馳走の例えか。
 ※おしゅんと・こしゅんと=お舅(お姑)、小姑の転訛か



●●● うちの裏の庄太郎さん ●●●

手まり唄(大分市松岡)
☆うちの裏の庄太郎さんが 馬に乗りかけ馬から落ちて
 医者にかかろか目医者にかかろか 医者も目医者もご苦労ご苦労
 舟の船頭さんに白粉貰うて つけてみたれば蕎麦の粉じゃ 蕎麦の粉じゃ
 そうそう船がかやった 頭のこぶしが汚れた 油火であぶった
 油臭いとおっしゃった 松葉火であぶった 松葉臭いとおっしゃった
 よんべ貰うた花嫁御 お飯は何膳いけますか お飯は三膳よういける
 大根畑に飛び込んで 大根何本 八十本 それでもお腹が足らんとせ
 池の中に飛び込んで 池の水を皆飲んで それでもお腹が足らんとせ
 川の中に飛び込んで 川の水を皆飲んで それでもお腹が足らんとせ
 海の中に飛び込んで 海の水を皆飲んで それでもお腹が足らんとせ
 高崎山に腰かけて あっち向けドンドン こっち向けドンドン
 ソーラいっきとせ
 ※船がかやった=転覆した
  よんべ=昨夜
  よんべ貰うた花嫁御=昔の花嫁行列は出立が遅れ(わざと遅らせて)、到着が夜中になるのが常だった。


●●● おとったんも帰ろ ●●●

手まり唄(上浦町)
☆今日は今日 明日は明日 おとったんも帰ろ 子供出てみよ
 お母さんも出てみよ お竹豊松十二とせ 十二とせ
 十二の子が踏み折って 喜多さん喜多さん継いでくれ
 喜多さんは二階で三味を弾く 子供小坪で手まりようつく
 あのまあ 手まりのしなのよさ しなのよさ
 ※今日は今日、明日は明日=ここでは「今日か明日」の意だろう
  おとったんも帰ろ=お父さんも帰ってくるだろう
  小坪=狭い前庭

手まり唄(上浦町)
☆こうもりこうもりこうさんせ あっさんさんが子を持って
 宵から見舞いに行っちみや おっとたんも帰ろ
 子供出てみよお母さんも出てみよ お竹豊松十二とせ 十二とせ
 十二の子が踏み折って 喜多さん喜多さん注いでくれ
 喜多さんは二階で三味を弾く 子供小坪で手まりようつく
 あのまあ手まりのしなのよさ しなのよさ
 ※こうさんせ=来さんせ(おいでなさい)
  行っちみや=行ってみなさい
メモ:唄い出しは、蝙蝠を見かけたときにはやし立てた唄だが、途中から「今日は今日、明日は明日」の唄に切り替わっている。このように、子供らしい自由な発想で、全く関係のない唄が組み合わさっている例はよく見られる。



●●● 臼が米搗きゃ粉糠がパッパ ●●●

手まり唄(竹田市本町)
☆確かに確かに受け取りました 臼が米搗きゃ粉糠がパッパと
 パッパしちく竹 パッパはちく竹 向かいの白壁づくりの
 お政所のそのまた隣の お春様にお渡し申します



●●● どんどんどてら ●●●
 
手まり唄(別府市東山)
☆どんどんどてらの大明神 釣鐘はずして身を隠し
 安珍清姫 足もと天満宮
 ひ ふ み よ いつ む なな や この と 十まで返して



●●● うちの隣の三毛猫 ●●●

手まり唄(山香町若宮)
☆うちの隣の三毛猫が 白粉つけて紅つけて
 かいかい橋を渡るとき 人に見られてちょいと隠す

手まり唄(弥生町切畑)
☆隣の猫がうちへ来て 白粉つけて紅つけて
 紅がないので トントン橋を渡るとき 人に見られてちょいと隠した



●●● オランダ船か南蛮船か ●●●
 近隣に同種の唄が見当たらない。長崎方面の唄が、縁故関係か何かで伝わったのではないかと思う。大友宗麟がキリシタン大名だったこともあってか、ある種の親しみをもって唄われたのだろう。

手まり唄(上浦町)
☆おててん手まりあの鳴るドラは オランダ船か南蛮船か
 ここは長崎出島の館 高い窓から遠眼鏡のべて
 窓のあちこちおばさんの異人 ホレ飛んだ アレ飛んだ
 赤い小鳥がまた逃げた まずまず一かん サンタマリア



●●● あんたがたどこさ ●●●
 音楽の教科書にも載ったりして全国的に広く唄われているが、在来のわらべ唄とは言い難い側面がある。県内では野津原町でしか採集されておらず、広く唄われるようになったのは戦後のことではないだろうか。野津原町のそれは、肥後街道経由の参勤交代で伝わってきたのだろう。

手まり唄(野津原町本町)
☆あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ
 船場山にはたぬきがおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ
 煮てさ 食ってさ うまさのさっさ

手まり唄(日田市)
☆あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ
 船場山にはたぬきがおってさ 船場川にはエビショがおってさ
 それを猟師が鉄砲で撃ってさ それを漁師が網ちゃで取ってさ



●●● 私の心とあなたの心 ●●●

お手玉唄(玖珠町戸畑)
☆私の心とあなたの心と 合うか合わぬか合わせてみましょ
 合えば吉野の千本桜 合わにゃ高野の石堂丸 まず一回合いました
 ※合えば吉野の~石堂丸=一種の掛詞のようなもので、この言い回しは盆口説で盛んに使われている(音頭取りが交代したばかりのときに謙遜の意味で「わしが口説で合うかは知らぬ」等に続ける)。子供達にとっても、盆口説で何度も聞いたお馴染みの言い回しだったのだろう。



●●● 一の間のおかおか ●●●

手まり唄(蒲江町西野浦)
☆一の間のおかおか 二の間のおかおか 三の間のお月の出るさらまでも
 までもまでも門まで出たら 弥三郎さんからお手かけられて
 はずやはずや恥ずかしゅござる



●●● みよちゃん私が死んだなら ●●●

手まり唄(大分市国分)
☆みよちゃん私が死んだなら この子を大事にしてやって
 育ててやってちょうだいね あらまあ母ちゃん死ぬなんて
 母ちゃん死んだら悲しいわ



●●● あぶく立った煮え立った ●●●
 この唄は遊ばせ唄としては今なお知られているが、下記に紹介するような鬼ごっこの問答としての唄い方はほとんど忘れられているようだ。

つかまえ鬼の唄(佐伯市女島)
☆おふく立った煮え立った 煮えたか煮えんか食べてみろ
 まだ煮えん 隣のおばさん時計は何時 「三時」
 あなたのお名前なんと申す 「柳の下の鬼婆」
メモ:鬼の周りを囲んで「おふく立った煮え立った…」と唄い、要所々々で鬼は「三時」などと返答する。「柳の下の鬼ばばあ!」を合図に周りの者は蜘蛛の子を散らすように逃げていき、鬼はそれを追いかける。

つかまえ鬼の唄(佐伯市堅田)
☆あわぶく立った煮え立った 煮えたか煮えんか食べてみろ
 まだ煮えん 隣のおばさん時計は何時 「三時」
 あなたのお名前なんと申す 「柳の下の鬼婆」
 生きてるか死んでるか 生きてる



●●● 百姓のおばさん ●●●

手まり唄(武蔵町)
☆百姓のおばさんが 鍬をかついで田んぼへ行って
 夜遅くに通りゃんせ 桃や 桃や 流れが速い
 洗濯するとおベベが濡れる うんとこどっこいしょ



●●● おつま落とした ●●●

手まり唄(玖珠町)
☆おつま おつま落とした 落とすとお裾をはぐるばい
 ソラはぐるばい もうはぐるばい わしゃもう知らん
 あなたにしっかり渡すばい



●●● わしとおっかさんと ●●●

手まり唄(庄内町竜原)
☆わしとおっかさんとお寺に参りかけ
 お寺の窓から酒の粕投げて捨てた
 わしにゃ当たらんでおっかさんに当たった お軽勘平と申された
 セントート イッキトセ



●●● 天神様のお祭りで ●●●

手まり唄(九重町)
☆天神様のお祭りで てんてん手まりを買いました
 てんてん手まりはどこでつく 天神様の下でつく



●●● 一つとせ節 ●●●
 この唄は座興唄やわらべ唄として全国的に知られている。その土地々々の文句で親しまれたほか、芝居文句のものは瓦版売りの流行小唄として知られた。今に残るものとしては「銚子大漁節」や小学唱歌に転用されたもの等がある。県内では座興唄、手まり唄ほか、堅田踊りの演目にもなっている。

手まり唄「数え唄」(姫島村)
☆一つとせ 人も通らぬ山道を
 お七と吉三は手を引いて 通ろうかいな
☆二つとせ 二股大根は離れても
 お七と吉三は離りゃせぬ おお離りゃせぬ
☆三つとせ 見事な簪買うて来て
 お七に挿させて科を見ろ おお科を見ろ
☆四つとせ 用もない門を二度三度
 お七に逢おうどちゃ五度七度 おお五度七度
 ※逢おうどちゃ=逢おうとて
☆五つとせ いこう煙草を買うて来て
 吉三に吸わせて香り聞こ おお香り聞こ
☆六つとせ 椋の木の小枝に花が咲く
 吉三とお七はなぜ咲かぬ おおなぜ咲かぬ
☆七つとせ 何を云おうにも語ろにも
 お七がおなかにゃヤヤがある おおヤヤがある
☆八つとせ 屋敷広めて蔵を建て
 お七と吉三は寝て語る おお寝て語る
☆九つとせ ここに流行らぬ笄を
 買うて下んせ吉三どの おお吉三さん
☆十とせ 遠い所に行こよりも
 近い別府に通わんせ おお通わんせ
☆十一とせ 一々私が悪かった
 こらえて下んせ吉三さん おお吉三さん
☆十二とせ 十二薬師様へ願を立て
 お七と吉三は顔ほどき おお願ほどき
☆十三とせ 十三参宮をするときにゃ
 留守を頼むぞ吉三さん おお吉三さん
☆十四とせ 十四白歯に鉄漿をつけ
 お七は吉三の嫁になる おお嫁になる
 ※鉄漿=かね(おはぐろ)
☆十五とせ 極楽浄土へ参る時
 連れて行かんせ吉三さん おお吉三さん
☆十六とせ 十六羅漢は薄羅漢
 お七と吉三は働かん おお働かん
☆十七とせ 質に置いたる櫛笄
 受けてくだんせ吉三さん おお吉三さん
☆十八とせ 八幡地獄に墜ちる時
 助けてくだんせ吉三さん おお吉三さん
☆十九とせ 九万九千の寺々に
 参ろじゃないかえ吉三さん おお吉三さん
☆二十とせ 俄かに咲いたる菊の花
 採ってくだんせ吉三さん おお吉三さん
メモ:八百屋お七の文句で、子供が唄うには文句が大人びている。お七の文句につきものの火事のくだりが一切出てこないのがおもしろいし、一から十どころか二十までも数えているのが珍しい。

手まり唄(別府市内竈)
☆一つとさ 人も通らぬ山道を
 お七と吉三が手を引いて おお 通ろうかいな
☆二つとさ 二股大根離れても
 お七と吉三は離りゃせぬ おお 離りゃせぬ
☆三つとさ 見事かんざし買うてきて
 お七にささせて科を見る おお 科をみる
☆四つとさ 用もないのに横町に
 お七に逢うどちゃ五度七度 おお 五度七度
 ※逢おうどちゃ=逢おうとて
☆五つとさ いつか帰ろと思えども
 三年経たねば帰られぬ おお 帰られぬ
☆六つとさ 胸に結ばる玉じゅすを
 買うて下さんせ吉三さん おお 吉三さん
☆七つとさ 何を言おうも語ろうも
 お七のお腹にややがおる おお ややがおる
☆八つとさ 屋敷広めて小屋立てて
 お七と吉三が寝て語る おお 寝て語る
☆九つとさ ここに流行らぬ鼈甲櫛
 買うて下んせ吉三さん おお 吉三さん
☆十とさ 遠いお江戸で買うよりも
 近い別府で買わさんせ おお 買わさんせ
メモ:八百屋お七の数え唄。昔の子供は、盆口説や覗きカラクリ、田舎芝居その他である程度は知識があったのかもしれないが、子供向けの内容とは言い難い。

手まり唄(別府市内竈)
☆一つとさ 卑怯未練の師直が
 顔世は連判その胸を さらそうかいな
☆二つとさ 深い編み笠 虚無僧の
 主人の手の内ゃご無用と 本蔵かいな
☆三つとさ 身の上知らずの九太夫が
 主人の逮夜に蛸さかな 挟もうかいな
☆四つとさ 与市兵衛は死なしゃった
 お軽は売られていくわいな むげないわいな
☆五つとさ 猪撃たんと勘兵衛は
 ねらみすました二つ玉 放そうかいな
 ※ねらみすました=睨みすました
  二つ玉=火縄銃で、2つの銃弾を同時に撃つ方式
☆六つとさ 無念あまりに判官が
 天地を散らしの黄金を 騒ごうかいな
☆七つとさ 何心なく由良之助
 力弥に鯉口響かせて 起こそうかいな
☆八つとさ 矢口の面々集まりて
 天と川との合言葉 使おうかいな
☆九つとさ 九つ梯子を屋根にかけ
 嫌がるお軽を二階から 下ろそうかいな
☆十とさ とうとう仇討あい済めば
 めでたく主人の墓の前 お供養かいな
メモ:仮名手本忠臣蔵の数え唄で、やはり子供には難しい内容である。

数え唄(上浦町)
☆一つとや 人ごみ押し分け婆さんが
 一太郎やーいと船を呼ぶ 船を呼ぶ
☆二つとや 不思議や瓢箪滝の水
 お酒とかわるも孝の徳 孝の徳
☆三つとや 美保の松原天人が
 羽衣貰うて舞を舞う 舞を舞う
☆四つとや 与一は屋島の戦いに
 扇の的で手柄する 手柄する
☆五つとや 稲村ヶ崎で義貞は
 剣をささげて海ひかす 海ひかす
☆六つとや 昔六人山伏が
 鬼を退治に大江山 大江山
☆七つとや 七つ道具を投げ出して
 弁慶謝る五条橋 五条橋
☆八つとや 屋島の戦い義経は
 船を八艘飛び越えた 飛び越えた
☆九つとや 粉糠だらけで働いて
 悟一の爺さん歌が好き 歌が好き
メモ:同様の唄が全国的に流行し、県内でも各地で唄われた。一般に同じテーマの文句で通すことが多いのに対してここに紹介したものは各節に全く連絡がなく、やや珍しい部類である。

手まり唄(湯布院町内徳野)
☆一つとせ 人を見下ろす師直が
 顔世に恋慕のその胸を 晴らそうかいな
☆二つとせ 深編笠の虚無僧が
 戸無瀬が手の内ご無用と とどみょうかいな
☆三つとせ 身の上知らずの九太夫が
 主人の逮夜に蛸ざかな はさもうかいな
☆四つとせ 夜討めいめい集まりて
 山よ川よの合言葉 交わそうかいな
☆五つとせ 猪撃たんと勘平が
 えらみつめたる二つ弾 放そうかいな
☆六つおせ 無念あまりの判官が
 館をドンドと騒がせて 起こそうかいな
☆七つとせ なに心なき由良之助
 力弥が鯉口響かせて 響こうかいな
☆八つとせ 屋敷の案内いちいちに
 玄関お長屋下部屋と 探そうかいな
☆九つとせ 九つ梯子を取りいだし
 嫌がるお軽を二階から 下ろそうかいな
☆十とせ トンと仇を討ちおさめ
 めでとう主人の塚の前 手向きょうかいな
メモ:仮名手本忠臣蔵の文句で、全く子供向きではない。大人が唄っていたものを聞き覚えたのだろう。

手まり唄(直入町)
☆一つとせ 一つあわせの大神楽
 神楽に舞い立つお梅さん ササ お梅さん
☆二つとせ 二見が浦で網を引く
 お梅さんと守男さんは袖を引く ササ 袖を引く
☆三つとせ 三股のかんざし買って来て
 お梅さんに挿させて品を見る ササ 品を見る
☆四つとせ ようよう仕立てたこの羽織
 お梅さんに着させて品を見る ササ 品を見る
☆五つとせ いついつ見ても今見ても
 お梅さんのお顔は桜色 ササ 桜色
☆六つとせ 無間地獄に堕ちるとき
 助けてくれない守男さん ササ 守男さん
☆七つとせ 泣く泣く硯を引き寄せて
 何度も文書く守男さん ササ 守男さん
☆八つとせ 薮に入らぬ鶯が
 ホケキョと鳴いたら出ておくれ ササ 出ておくれ
☆九つとせ ここは谷底 池の水
 合いうち流れる天の水 ササ 天の水
☆十とせ とうとう柳に飛びついた
 お梅さんと守男さんは心中する ササ 心中する

数え唄(竹田市)
☆一つとせ 東は大野 西は肥後 山坂多き直入郡
☆二つとせ 文を通わす郵便は 竹田玉来外四ヶ村
☆三つとせ 道は近頃開けきて 馬車の行き来も次第なり
☆四つとせ 養蚕制度は年々に 開け進むぞ頼もしや
☆五つとせ いちばん高いは祖母山で 大船久住はこれに次ぐ
☆六つとせ 村数あわせて十九にて 町は竹田の一つなり
☆七つとせ 菜種たばこや米大豆 薪や炭は豊かなり
☆八つとせ 社は城原の八幡社 寺は竹田の万徳寺
☆九つとせ 戸数は九千五百にて 人口およそ一万余
メモ:郷土の地理教育の目的で、小学校で先生が児童に教えた唄。

手まり唄(九重町)
☆一つとせ 一つはお伊勢の大神楽
 神楽に舞い立つお梅さん ササ お梅さん
☆二つとせ 二見が浦で綱を引く
 綱を引くよりゃ袖を引け 袖を引け
☆三つとせ 三日月様は雲の上
 お梅さんと守衛さんは雲のかげ 雲のかげ
☆四つとせ よその殿さん馬に乗る
 お梅さんと守衛さんは駕籠に乗る 駕籠に乗る
☆五つとせ いつ行って見ても今見ても
 同じかんざし挿している 挿している
☆六つとせ 無間地獄に落つるときゃ
 お梅さんと守衛さんは二人連れ 二人連れ
☆七つとせ 七つ何事ないように
 村の鎮守にお参りに お参りに
☆八つとせ やまたの鏡は昔より
 国の宝とあがめられ あがめられ
☆九つとせ 孝行息子の金次郎
 薪を背負うて勉強する 勉強する
☆十とせ とうとう鞠つき済みました
 皆で仲良く遊びましょ 遊びましょ

手まり唄(玖珠町)
☆一つとせ 柄杓に笈摺 杖に笠 杖に笠
 巡礼姿で父母を 父母を 尋ねようかいな
☆二つとせ 二親揃うてありながら ありながら
 父さん母さん顔知らず 顔知らず 会いたいわいな
☆三つとせ みるみるお弓は立ち出でて 立ち出でて
 お盆にしらげの志 志 あげようかいな
 ※しらげ=白米
☆四つとせ よくこそ旅に出しゃんした 出しゃんした
 さぞかし連れ添う親御たち 親御たち 同行かいな
☆五つとせ いえいえ私は一人旅 一人旅
 父さん母さん捜します 捜します 会いたいわいな
☆六つとせ 無理に押しやるその金を その金を
 無理に懐差し入れて 差し入れて あげようかいな
☆七つとせ 泣いて別れたその後で その後で
 見送り見送り伸び上がり 伸び上がり かわいいわいな
☆八つとせ 山越え谷越え里越えて 里越えて
 はるばる尋ねて来たものを 来たものを 帰そうかいな
☆九つとせ 九つなる子の手を引いて 手を引いて
 わが家の表の玄関口 玄関口 帰ろうかいな
☆十とせ 阿波の徳島十郎兵衛 十郎兵衛
 わが子と知らずに手にかけて 手にかけて 殺そうかいな

手まり唄(中津江村)
☆一つとせなこえナ 一人は森々ナー おシゲさん
 一人は江上の文五郎さんナ チンコシャンカポイポイ
☆二つとせなこえ 二間の陰から 水が出る
 そん水ぁおシゲさんの化粧の水
☆三つとせなこえ 見るも見りんも よか女子
 桜色育ちのよか女子
 ※見りんも=見ないも
☆四つとせなこえ 夜も夜中も 出て歩く
 おシゲさんに逢おでちゃ二度三度
 ※逢おでちゃ=逢おうとて
☆五つとせなこえ いつ行ってみても 腹がせく
 丸薬飲ませて逆立ちょな
☆六つとせなこえ 森な手紙が 呼んできた
 おシゲさんでなからにゃ字が読めん
☆七つとせなこえ 何もなければ お茶一つ
 おシゲさんに上ぎょよなお茶じゃない
☆八つとせなこえ 屋敷拡げて 蔵建てて
 おシゲさんと文五郎さんな蔵の番
☆九つとせなこえ ここで別れて どこで逢う
 極楽寺坂の前で逢うな
☆十とせなこえ 遠い所へ 行くときは
 思いきりゃあはんもせにゃならぬ

●●● ぎりぎり山・むこどり山・えんえん山 ●●●
 この3つの唄は詩形・節が似通っており、元は同じものであったと考えられる。意味不明な箇所も多いが、子供の想像力で補った痕跡が多々見られる。

手合わせ唄(杵築市下司)
☆セッセッセのヨイヨイヨイ
 むこどり山には鶯が一羽ネ あいつさしてくりょと棹取り直しネ
 直しゃとれない綾子さんでとってみしょ あやを訪ねて鶴屋の茶会ネ
 (以下欠落)
メモ:演唱者が途中までしか覚えていなかった。

手まり唄(弥生町切畑)
☆ぎりぎりぎっちょん ぎり山 東の奥を見ればね 見ればね
 川のそてらで お佐代がかいちょこね かいちょこね
 お佐代させさせ すいぎょのお櫛 貰うたかね 貰うたかね
 誰に貰うたか 源氏の男に貰うたかね 貰うたかね
 源氏の男は 達者で困るわね 困るわね
 達者見込みか 七・八月は 月はね 月はね
 それでお佐代は 涙がぼろぼろ ぼろぼろ
 落てた涙を 袂で拭いたかね 拭いたかね
 拭いた涙を たらいでジャブジャブ ジャブジャブ
 洗うた袂を お棹にかけたかね かけたかね
 かけた袂を 箪笥に入れたかな 入れたかな
 鉄砲もてございめ 胸に向かってドーン
 ※達者で=ここでは「若くて色気ざかりで」といった程度の意味か
  七・八月は=「妊娠してお腹が目立つ」様子か
メモ:切畑のものは、ややわかりにくいが「お佐代」と「源氏の男」の鉄砲心中の話になっている。盆口説「お為半蔵」の影響もあるかと思われる。

手合わせ唄(大分市南大分)
☆セッセッセ
 むこぞり山には鶯が一羽ね あいつさいてくりょと棹取り直すね
 竿じゃ取れない綾子さんで取ってやろ あやを訪ねて駿河の茶屋に
 一で橘 二でかきつばたね 三で下り藤 四で獅子牡丹
 五つ伊山の千本桜ね 六つ紫いろよく染まる 七つ南天 八つ山吹の
 九つ小梅を散らしに書いたとせ 十で殿さま 葵の御紋
 御紋所か油買い茶買い 茶屋の亭主がちゃっちゃもちゃくちゃ

手合わせ唄(挾間町上市)
☆ムコヤッセッセ ギリギッチョン
 ギリギリ山も土手山も 東も西も見ればね 見ればね
 お小夜さしすせ水晶のお櫛がない お櫛がない
 そこでお小夜さんが涙をほろほろ ほろほろ
 落ちる涙で菜の葉をもんだかね もんだかね
 もんだ菜の葉は広いかね 狭いかね
 浅いかね 深いかね ジャンケンショ あいこでショ

手合わせ唄(庄内町阿蘇野)
☆セッセノセ
 むこどり山には鶯が一羽ね 棹で差いてくりょと棹取り直しね
 竿じゃ取れない綾子さんでも取ってみしょ 綾をたずねて鈴屋の茶園
 一で橘 二でかきつばた 三で下り藤 四で獅子牡丹
 五つ伊山の千本桜 六つ紫いろよく染めて 七つ南天 八つ山吹の
 九つ小梅を散らしておいでなさい 十で殿さま 葵の御紋
 ※伊山=深山の転訛か。

手遊び唄(玖珠町戸畑)
☆せっせっせ
 むこどり山から鶯が一羽ネ 棹でさしてくりょと棹取り直すネ
 竿じゃ取れない はやくさんで取ってみしょ はやを訪ねて駿河の茶藪ネ
 一に橘 二に杜若ネ 三で下り藤 四で獅子牡丹ネ
 五ついやまの千本桜ネ 六つ紫色よく染めてネ
 七つ南天八つ山吹のネ 九つ小梅に散らしをつけてネ
 十で殿さま葵の御紋ネ いっちゃくちゃ むっちゃくちゃ
 ごしょ ごしょ 大阪ずっきん かぶってドッコイ
メモ:戸畑の「えんえん山」と「むこどり山」はほとんど同じ節で、「むこどり山」の文句を3字ずつ返せば「えんえん山」の節で違和感なく唄える。どちらも短調の単純な節を繰り返すばかりだが文句に物語性があるので、子供の興味を引いたことだろう。

手合わせ唄(玖珠町戸畑)
☆えんえん山 丸山土手から東を見ればネ 見ればネ
 門の扉におさよさんと書いたかネ 書いたかネ
 おさよ挿したる黄楊の櫛はネ 櫛はネ
 誰に貰うたか 源次郎さんに貰うたとせ 貰うたとせ
 源次郎 男は伊達者でごうまんネ ごうまんネ
 伊達者見込んで七八月目 七八月目
 そこでおさよは涙をぽろぽろ ぽろぽろ
 落つる涙を袂で拭いたかね 拭いたかね
 いっちゃくちゃ むっちゃくちゃ ごしょ ごしょ
 大阪ずっきん かぶってドッコイ
 ※ずっきん=頭巾の転訛 「ずいきん」とも

手合わせ唄(中津江村)
せっせのせ
☆むこどり山から自転車を見ればね 見ればね
 門のドテラにおさよと書いたかね 書いたかね
 おさよ挿したる翠玉の櫛はね 櫛はね
 誰に貰うたか 善次郎さんから貰うたかね 貰うたかね
 善次郎 男は伊達者で困るね 困るね
 伊達者未婚で身持ちになったかね なったかね
 身持ち幾月 七月八月ね 八月ね
 そこでおさよの涙がほろほろ ほろほろ
 落ちる涙を菜の葉でもんだかね もんだかね
 いっちゃくちゃ むっちゃくちゃ ごしょ ごしょ
 大阪鉄砲 つき鉄砲 ドーン

わらべ唄(耶馬溪町山移)
☆裏の山から鶯が一羽ね
 おりつサッサ 三郎じゃ ハーどえなるか



●●● そこを通られ ●●●
 全体的に意味不明の語句が多く内容がわかりにくいが、「御所」「天竺」「金の帆柱」「玉手箱」など、子供の空想の世界が広がりそうな文句である。県北から西部にかけて広く唄われた。

手合わせ唄(玖珠町戸畑)
☆そこを通られここも通られ 熊野のどんしゃん 肩にかけた帷子を
 裾かたは梅の折り枝 中は御所の枝折はし
 枝折はしのあどまかいどま お茶屋が娘
 姉よりも妹よりも にほんたけきて聞こえた
 聞こえたは天竺の姉の方から こもじゅくあみの布が三反やってきた
 その布を染めてやろどちゃ 七日かからな染め出さぬ
 染め出して後ろには金の帆柱 前には鹿子のよい鹿子
 片袖に鶴亀つかせて また片袖にゃ玉手箱
 玉手箱を開けてみたらば いんかい様が寝てござる
 そのいんかいに酌をとらせて お一つお上がれ七夕
 七夕は下戸じゃ上戸か それは知らねど も一つ上がれ七夕
 ※染めてやろどちゃ=染めてやろうとて
メモ:「えんえん山」とか「むこどり山」よりもずっと軽やかなテンポで、ピョンコ節のリズムで畳みかけるように唄う。節が変化に富んでおり明るく楽しい雰囲気なのだが、息継ぎがとてもしにくい。せっせっせ遊びの唄なので2人一緒に唄ってもよいが、この唄に限っては1節(ここでは節の切れ目で改行した)ずつを交互に唄った方が容易いだろう。そのようにして唄う例もあったのではないかと思う。

手まり唄(日田市)
☆そこ通られここも通られ 小田原通るは小田原名主の中娘
 色白と桜色して 見事に化粧して 江戸高庄屋に貰われた
 江戸高は伊達の庄屋で 何を着さしてやるものか
 上から下まで 金欄紬を七重八重 イッテノーイッテノー

手まり唄(前津江村大野)
☆そこ通られここも通られ くまどのドンシャン肩にかけて帷子
 ショショかたは梅の折枝 中はゴリショの反橋
 反橋はアドもカイドも茶屋が娘 
 姉よりも妹よりもにっぽんでかけた聞こえた
 聞こえたは天に聞こえた 天竺の姉御の方から
 九十九よみの布が来た その布を染めてやろどちゃ
 七日かからにゃ染め出さん 七日かかって染め出いて
 後には金の帆柱 前には鹿子の玉手箱 玉手箱
 開けてみたならエンカイ様が寝てござる
 エンカイに酌をとらせて 七夕様に酒進上
 七夕は下戸か上戸か 知りはせねどもま一つお上がれ七夕
 一つでは乳を飲み初め 二つでは乳の首はないた
 三つではつけひぼとき初め 四つでこの筆とり初め
 五つでは糸を巻き初め 六つでコロバタ織り初め
 七つでは綾を織り初め 八つで金襴緞子を織り初め
 九つではコイを勇んで そこに嫁入りここに嫁入り
 十で殿御となり初め 十一では花のようなる若をもうけて
 弓矢神楽を舞い初め 雨も降らずに雪も降らずに
 お宮の脇から水がジョンジョと出てきた
 その水にコマン小袖を流いた その水は欲しゅはなけれど
 お伊勢参りの白粉浴衣が 欲しうござるのう
 サンヤノー イッテノー
 ※ショショかた=裾かた(帷子の裾の方)
  ゴリショ=御所
  染めてやろどちゃ=染めてやろうとて
  つけひぼ=付紐
  流いた=流した この種の音便はかつてよく聞かれた。「残いた」「戻いた」等
メモ:玖珠町で採集されているものより文句が長いが、節はほとんと同じ。ピョンコ節のリズムで畳みかけるように唄う。節が変化に富んでおり明るく楽しい雰囲気なのだが、息継ぎがとてもしにくい。



●●● うちの裏の竹伐り ●●●
 何か元になる昔話か何かがあったのだろうが詳細不明。

手まり唄(大分市松岡)
☆うちの裏の竹伐りゃ誰な 誰じゃござらぬ手柄でござる
 手柄 生竹十本ばかり 伐りて小切りてお駕籠に差して
 お駕籠めぐりに石菖植えて 石菖実がなりゃおヨシが孕む
 今度出た子が女ん子なれば つまみ殺して南無阿弥陀仏
 今度出た子が男ん子なれば 京にのぼせて裃着せて
 金の硯箱 蒔絵の筆で 書いて書かせて読ませてみれば
 牡丹 芍薬 百合の花 トコいっきとせ
 ※誰な=誰かい?

お手玉唄(臼杵市稲田)
☆そこの向こうの竹伐りゃ誰な 誰じゃござらぬ手頃でござる
 手頃生竹十本ばかし 切って落としてお籠に差して
 お籠周りにせきしょを植えて せきしょ実がならおヨシが身持ち
 こんだでけた子が男の子なら 上にのぼせて裃着せて
 江戸にのぼせて江戸縞着せて 金の硯箱 まきやの筆で
 書いて読ませて 隣じろもに渡した
 ※せきしょ=石菖(昔、蒸し風呂のときに床に並べた)
  実がなら=実がなれば
  身持ち=妊娠中
  こんだでけた子=今度できた子
  上にのぼせて=上方に上らせて
  まきやの筆=蒔絵筆

手まり唄(鶴見町吹浦)
☆うちの後ろで竹ょ伐んな誰か 誰じゃござらん手頃でござる
 手頃生竹 十本ばかり 切って切りかやして お籠にさして
 お籠周りにせきしょを植えて せきしょ実がなりゃおヨシが孕む
 おヨシ腹の子が男の子なら 京に上して裃着せて
 金の硯箱まきやの筆で 書いて書かいて読ませてみたら
 庭じゃおを打つ 座敷じゃ碁を打つ 奥じゃおシンさんが
 チンカラカンカラかね叩く ピッピノピ
 ※竹ょ(たきょ)切んな=竹を切る人は
  切りかやして=切り倒して
  せきしょ=石菖
  上して=上らせて
  まきやの筆=蒔絵筆
  書かいて=書かせて

手遊び唄(直入町)
☆うちの裏の竹伐りゃ誰じゃいな わしじゃお竹じゃ氏神さんかいな
 お手を合わせて拝むとすれば 三三本目のかずらが切れて
 それをお医者に見せたなら お医者たまがって
 びっくりしゃっくり しゃっくりこけた

手まり唄(中津江村)
☆どこどこの山で笹切るは 善次郎さんか次郎さんか
 ちょっと誰々お茶煙草 お茶も煙草もいりませぬ
 隣の娘にちょいと惚れて 簪やったり櫛やったり
 なんとかをしよったら子がでけた



●●● 一の木、二の木 ●●●
 この唄は謎かけ問答の繰り返しで、わざと「~候」という言い回しを多用しており、やや皮肉めいたような響きも感じられる。海部地方で広く唄われた。

手まり唄(臼杵市東福良)
☆一の木 二の木 三の木 桜 五葉の松に柳
 柳の木には烏もとまる とんぼもとまる
 烏の首はねじ上がった首じゃ どうしてなるか ひもじい候
 ひもじけりゃ田に行って泥鰌掘って食らえ 足が汚るる候
 流れ川で洗え 流るる候
 すすきにとまれ 足を切る候
 紙でもってくびれ ほめく候
 ほどいて冷ませ 蠅がむしる候
 その蠅をつみ殺せ 罪になる候
 ※くびれ=くくれ

手まり唄(弥生町切畑)
☆一の木 二の木 三だの木 桜 五葉松 柳
 柳の枝にとんびがとまる 烏がとまる
 からすん首ゅ見よ ねじ上がった首じゃあ ひだりい候
 ひだるけりゃ田に行って土ゅ掘って食らえ 足が汚るる候
 川行って洗え 流るる候
 すすきにとまれ 足ゅ切る候
 瓜ゅもてくびれ ほめく候
 ほどいて冷やせ 蠅がつつく候
 そん蠅ゅつみ殺せ つんびなる候
 ※ひだりい=ひもじい
  くびれ=くくれ
  つんびなる=聞こえなくなる

手まり唄(佐伯市女島)
☆一の木 二の木 三の木 桜 桜の枝に 烏がとまって
 あの烏の首を見い ねじれた首じゃ どうしてなった いやしん候
 いやしかりゃ谷行って どぶ掘って食らえ 足が汚れる候
 川へ行って洗え 流れる候
 すすきにとまれ
 ※いやしん=ひもじい
  いやしかりゃ=ひもじければ



●●● 子供の喜ぶお正月 ●●●
 この種の文句は方々のわらべ唄に見られる。端唄「初春」の子供バージョンといってもよいだろう。

手まり唄(別府市東山)
☆おしょんがおしょんがお正月
 松立てて 竹立てて 子供の喜ぶお正月
 朝起きれば元日で 年始の御所を拝みたて
 お茶持って来い おちゃぼこぼん 吸いもんなんなと早や持って来い
 煙草の煙で ひ ふ み よ いつにむ ななにや ここにと
 ※おちゃぼこぼん=お煙草盆

手まり唄(別府市内竈)
☆おんしょんおしょんのお正月
 松立てて 竹立てて 子供の喜ぶお正月
 一夜明くれば元日で 年始のお祝いをいたしましょ
 お煙草盆 お茶持て来い 吸い物なんぞと早う持て来い
 ひにふ みによ いつにむ ななにや ここにと

手まり唄(直入町)
☆お正お正のお正月さん
 正月は松立てて竹立てて 年始のご祝儀申します
 羽根突くまりつく福引で 喜ぶ者はお子供衆 旦那の嫌な大晦日
 ひいふうみいよう いつむうなあやあ 九つ十
 ※旦那の嫌な大晦日=大晦日はつけの清算日だったため



●●● 正月の二日の朝の ●●●
 糸まりで遊ぶときの手まり唄で、かなり古いものかと思われる。

手まり唄(緒方町尾平)
☆正月の 二日の朝のお祝いに くけてもろうたお手まりは
 品がようて品ようて 下にもポン 上にもポン
 ポンポと上がるはお手のうち 落てしゃんすなお手まりさん
 ※落てしゃんすな=落ちなさるな



●●● わしのいとしの千松 ●●●
 この唄は「ションガエ節」でよく唄われる「私の弟の千松」の文句や、子守唄「おむくの父さん」の類の文句など、複数の要素が接続されたものと思われる。一応、全体としてある程度意味が通るようにはなっている。

手まり唄(臼杵市東福良)
☆わしのいとしの千松様が 七つ八つから金山に
 金がないやら死んだやら 一年たてどもまだ見えぬ
 二年たてどもまだ見えぬ 三年三月の九十九日の
 夜の夜中に文が来た 文の上書き何と読む
 お仙来いとの文じゃもの これからお仙のこしらえは
 下に召したが白綸子 中に召したが金襴緞子
 上に召したがけし鹿子 けしで包んだ綿帽子
 馬にこいこい乗せてやろ 馬はヒンヒンおずござる
 牛にこいこい乗せてやろ 牛はモンモンおずござる
 お駕籠にこいこい乗せてやろ 駕籠はギャーギャーおずござる
 さらばさらばと後見れば 後は蓮華の花が咲く
 馬の鞍緒になんかけました
 ※おずござる=恐ろしうござる
  なんかけました=寄りかからせました



●●● おせよ柴刈 ●●●
 幼い子供には理解できないかもしれないが、なかなかきわどい内容である。

手まり唄(津久見市保戸島)
☆おせよおせよ 柴刈り行こや 柴刈りゃどこか そこの上の桜の木
 一本切っちゃお手に持ち 二本切っちゃお手に持ち
 三本目に日が暮れて 中の家に泊まろうか 外の家に泊まろうか
 中の家に泊まったら 畳が狭うで夜が寝られん
 朝早う起きて 甘い酒を三杯と 苦い酒を三杯と 袴の裾を汚して
 おっけえ川に行ったら おっけえしが洗わせん
 こんめえ川に行ったら こんめえしが洗わした
 松の木に干そうもん 松がばらばらあえてきた
 栗の木に干そうもん 栗がばらばらあえてきた アライッセント
 ※おせ=(女性から見た)恋人または男兄弟
  袴の裾を汚して=情事の暗喩か
  おっけえ=大きい
  こんめえ=小さい
  し=人
  あえてきた=落ちてきた(あえる=木の実などが落ちる)



●●● 嫁入りするなら言うてこい ●●●
 花嫁への憧れをもって唄われたと思われる文句で、県外でも似たような発想の唄が唄われていたようだ。

手まり唄(上浦町)
☆おとやんおとん嫁入りな 嫁入りするなら言うてこい
 紬のおべべを百三十 木綿のおべべを百三十
 これほど仕立ててやるからは 朝もとうからおひなって
 チャンチャン茶釜に湯を沸かし ゆずりゆずりに(欠落)
 二十四孝窓あけて 窓のあかりで髪結うて すまからすまを掃わき出せ
 ※おとやん=お父さん
  おとん=末娘の
  朝もとうから=朝早くから
  おひなって=「おひんなって」の転訛。置きて
  すまからすま=隅から隅

手まり唄(弥生町切畑)
☆おもさん おもさん 嫁入りするなら言うてこい
 紬のおべべが百三十 木綿のおべべが百三十
 それほど仕立ててやるほどに かねて言うちょく帰るなよ
 しんしんいつようや塩なめしょ 塩なめたらカネつけしょ
 眉つけたらおしつけしょ オテコテンならいったいしょ
 ※おもさん=「お父さん」の意の御所言葉。おもうさん。
  かねて言うちょく=予め言っておく
  カネつけしょ=おはぐろをつけさせよう
  眉つけたら=眉を引いたら
  おしつけしょ=白粉を塗らせよう



●●● 山中通れバッタやん ●●●
 子供らしい発想で、動物の擬人化した文句がおもしろい。

手まり唄(上浦町)
☆山中通れバッタやん 器量もよければ品もよい
 それで鼠さんが打ち込んで 簪ょやろか櫛やろか
 いいえそんなもなあいりません 今の流行の繻子の帯
 それを貰うちょきゃよいけれど 結んで歩くのが気の毒ドンドン 
 気の毒ドンドン おい オテテコテンならひと返し
 ※バッタやん=バッタさん
  打ち込んで=入れ込んで
  そんなもなあ=そんなものは



●●● 山中通れば鶯が ●●●

手まり唄(上浦町)
☆山中通れば鶯が 梅の小枝に昼寝して
 花の散るのを夢に見た 夢に見た



●●● 四郎さん四郎さん ●●●
 佐伯周辺で局地的に流行した唄か。

手まり唄(上浦町)
☆四郎さん 四郎さん 大阪芝居をやめにして
 やめて佐伯に帰らんせ 佐伯に下れば馬に乗る
 馬の白羽に槍が立つ おせつか中村船頭町
 ここは分限者の家かいな 大日 大日寺の前
 大きな坊主がちぎれて紛れて水流す



●●● 下道通るは誰さんか ●●●
 内容がわかりにくいが、一部、あまり子供向きではないように思われる。

手まり唄(前津江村大野)
☆下道通るは誰さんか ゲンジのおさんかケショさんか
 こっちにお入りお茶たばこ お茶もたばこもわしゃ不好き
 不好き不好きに目がくれた お目がくれたら晩ござれ
 晩も来ましょがどっち枕 東枕に窓の下
 窓は切窓 戸は板戸 板戸しゃらしゃらつき開けて
 親に千貫 子に五貫 まひとつおばばに四十五貫
 四十五貫の銭金で 高い米買うて船に積む
 船はどこまで大阪まで 大阪土産にゃ何貰うた
 一にこうがい二にさざらん 三で薩摩の流行帯
 帯は貰うたがまだくけぬ くけてやろどちゃ易けれど
 針もなければ糸もない 糸は糸屋で買うてやろ
 針は針屋で買うてやろ 買うてやろ 買うてやろ
 ※おさん=下級の女中
  不好き=「嫌い」の婉曲
  まひとつ=もう一つ
  くけてやろどちゃ=絎けてやるのは
メモ:「そこ通られ」の唄と同じく弾んだリズムで調子がよい唄だが、節はこちらの方がずっと易しい。「7・5」あての単調な節を繰り返すばかりで覚えやすいし息継ぎもしやすく、無理なく唄える。



●●● 京の綿屋 ●●●
 内容がわかりにくい。子供は全体としての意味よりも、たとえば「京の」とか「金襴緞子」などの単語の響きに惹かれて唄ったのかもしれない。

手まり唄(中津江村)
☆京の綿屋の讃岐の下にゃ 七つ小次郎と十三小次郎と
 ゆめなわつんつるよし わかなわつんつるよし
 先の小刀 身は細けれど 綾も裁ちます錦も切れます
 金襴緞子にゃ申すにゃ及ばず あの子が裁ってお手まり打つのを
 ストンと切り上げてみれば 天寿好天の月の夜のごとく
 ひいふうでいっこしょ



●●● 姉さん花折り ●●●
 唄い出しの「姉さん姉さん」でうまくごまかしているが、その実は夜這いや廓通いを想像させる文句である。しかし「花折り」「姉の(妹の)宿に泊まろうか」「転んで」「裾が濡れて」など縁語的な表現によるものなので、幼い子供にはわからなかったかもしれない。

手まり唄(蒲江町西野浦)
☆姉さん姉さん花折り行こや 仙崎後ろの桜花折りに
 一本折ったら腰に差し 二本折ったらお手に持ち 三本目に日が暮れて
 姉の宿の泊まろうか 妹の宿に泊まろうか 姉の宿に泊まったら
 畳が狭うて夜が寝れん 朝とう起きて妹の宿に行ったら
 甘い酒三杯辛い酒三杯 それを呑んで転んで 袴の裾が濡れて
 大きい川原に行ったら忙しい こんまい川原も忙しい
 松の木に干せば 松臭うて干されん
 栗の木に干せば 栗がバラバラあえて
 あっちにふらふら こっちにふらふら 夜が明けた
 ※朝とう=朝早く
  あえて=(枝についている実が)落ちて



●●● 向こう通るは源太郎さん ●●●

手まり唄(竹田市)
☆向こう通るは源太郎さんじゃないか 鉄砲担いで小脇に差して
 雉のお山に雉撃ちに 雉はけんけんほろろ打つ
 まあ寄ってお茶ども上がり お茶も煙草も禁止でござる
 となり姉さはちょっと来ておりた 晩にゃ行きましょ寝床はどこか
 東枕の窓の下 窓は雉窓戸は板で 打っても敲いても開く戸じゃないぞ
 ここは浜本与太郎様 一人娘をやるほどに 打つな叩くな苛むるな
 されて戻ろと思やるな 結構な座敷に直らせて
 金襴緞子を縫わすれば ほろりほろりとお鳴きゃるが
 何が不足でお泣きゃるか 何にも不足じゃないけれど
 襟とおくみをつけきらん つけてやるのは易けれど
 それではお家が立ちません ひいよにみしょに いつむになるよ
 兄さんさぶろくしてこまひょいと やくついたやんさや
 いっこ貸した
 ※されて戻ろと思やるな=よしや旦那が厳しくても離縁して里に戻ろうとは思うな
  それではお家が立ちません=襟や衽も縫えないようでは家庭が立ちゆかない



●●● ごべやごべごべ ●●●

手まり唄(緒方町小宛)
☆ごべやごべごべ 五兵衛の娘が六兵衛を貰うて
 七兵衛が仲立ち 八兵衛がお客 九兵衛と十兵衛が樽かたげ
☆粟の権兵衛さんは杉の木往生で 杉の枯れたに桃の木つんだ
 桃がなるなるお春が身持ち お春腹の子は何といってつきょか
 あぼちゃとつきょうで あぼちゃ流行らぬ千金丹にします
 裾ご紋つき 袖口ゃ桃色 着せて抱かせて町場に出せば
 町の若い衆が誰の子でござる 粟の権兵衛さんのかかり子でござる
 かかり子 かかり子 いっちょかした
 ※何といってつきょか=名前を何とつけようか
  かかり子=嗣子

手まり唄(中津江村)
☆さきごべごべ 五兵衛が娘を六兵衛が貰うて
 七兵衛が仲立ちゃ八兵衛がお客 九兵衛と十兵衛が樽かたげ 樽かたげ



●●● わしが姉さん ●●●
 色町に関係する文句の唄で、この種のものは他地域にも広く残っている。所謂「苦界」「浮川竹」も、田舎の子供にとっては華やかさ等に対する一種の憧れをもって、こういった唄が親しまれたのだろう。その背景として、「紺屋高尾」「夕霧太夫」等について、田舎芝居や浄瑠璃等で子供にも知られていたということが考えられる。

手まり唄(前津江村大野)
☆わしが姉さんな三人ござる 一人姉さんな太鼓の稽古
 一人姉さんな鼓の稽古 一人姉さんなフコカにござる
 フコカいちばん伊達者でござる 二両で帯買うて三両でくけて
 くけ目くけ目にゃ七房さげて 帯に短し襷にゃ長し
 うちの小女郎にくるるにゃ惜しゅし 山じゃ役僧さんの鉦緒にゃよかろ
 鉦を敲いて拝むとすれば 四十五貫のじゃの緒が切れた
 なんで繋ごかナイトで繋ご ないしょ子供じゃひこめりゃせんか
 彦の麓の三本杉に 七つ小女郎が八つ子をはろうだ
 産もうにゃ産まれんおろそにゃおえん 山のごんぼとコウラの石菖
 それを一服煎じて飲んだら 腹の八つ子がじゃんじゃと下る
 もしもその子がおっとの子なら 寺に捧げて手習いさせて
 筆は紙筆まきやの硯 高い天からはね落とされて
 はんや鼻紙落ちたとおしゃる てんや手拭い落ちたとおしゃる
 かわいおちょぼがちょいと来て拾うた おちょぼ待ち待ち盃進上
 おちょぼ嫌とてかぶり振って逃げたノー サンヤノー イッテノー
 ※フコカ=福岡の転訛
  小女郎(こめろ)=芸者や遊女の見習いの娘
  はろうだ=孕んだ(妊娠した)。この種の音便は昔よく聞かれた。「遊うだ」等
  コウラ=川原の転訛
  おっとの子=男の子。「おとんこ」とも。
  まきや=蒔絵
  おちょぼ=小女郎よりも年の若い娘



●●● 向こうのお山に ●●●
 これも色町の文句で、内容は「わしが姉さんと」とだいたい同じようなものである。

手まり唄(犬飼町天神)
☆向こうのお山に日が入りまする あれは大阪行灯町の
 おやす やすやす やす山越えて 好いた男に何買うてもらおか
 櫛や笄 紅白粉 紅白粉 買うて貰うた 買うて貰うた
 おクニよおクニよなぜまま食べぬ 腹が痛いか癪か虫か
 虫じゃござらん七月ばかし 子がでけまする
 こんだでけた子が男の子なら 木綿着しょうか羽二重着しょか
 木綿着せてお宮に参ったら お馬さんから蹴落としされた
 トコイッキトセ
 ※行灯町=色町の比喩
  まま=ごはん
  七月ばかし=妊娠して7か月ばかり
  でけます=できます



●●● ひいふの姉さん ●●●

手まり唄(千歳村舟木)
☆ひいふの姉さん 侮りさんすな おカネが竹田に嫁入りまする
 一の山越え二の山越えて 三夜お月も照る日も曇る
 ひとすりゃだんぎりこ ふたすりゃだんぎりこ
 みいすりゃだんぎりこ ようすりゃだんぎりこ
 いつすりゃだんぎりこ むうすりゃだんぎりこ
 ななすりゃだんぎりこ やあすりゃだんぎりこ
 くうすりゃだんぎりこ とおすりゃだんぎりこ
 これで一丁貸しました



●●● ネズミさん ●●●

手まり唄(中津江村)
☆ネズミさん ネズミさん お前の屋敷はどこどこかい
 私が屋敷は棚の下 都に上がれば猫さんが 頭にさんぼり打ち込んで
 今日は母さん何としましょ 今日は父さん何としましょ
 私一人で何としましょ 何としましょ ひいふうでいっこしょ



●●● 坊さん坊さん ●●●
 もしや花札の「八八」の手役に関係がある文句なのかとも思ったが、詳細不明。

手まり唄(豊後高田市田染)
☆坊さん坊さん この家の座敷は祝いの座敷 梅が三本 桜が三本
 合わせて六本 清めて六本 唐竹 唐梅 烏が一羽で渡した 渡した

手まり唄(日出町真那井)
☆坊さん坊さん これのお庭にゃ梅が三本 桜が三本 合わせて六本
 から竹 唐梅 からす一羽で渡した

手まり唄(玖珠町戸畑)
☆はいはい私が受け取りました ぼんさんぼんさんお前の屋敷にゃ
 梅が三本 桜が三本 合わせて六本 から梅から竹
 からすが三羽で美代ちゃんに渡した

手まり唄(日田市)
☆坊さん坊さん お前の屋敷にゃ梅が三本 桜が三本 合わせて六本
 唐竹 唐松 烏が三羽でわたいた そこわたいた
 サンヨエーイッテノー イッテノー
☆坊さん坊さん あんたがあんまり大酒飲むから
 褌もかかれにゃ着物も着られにゃ 大睾丸抱えてあんげにゃべらべら
 こんげにゃべらべら サンヨエーイッテノーイッテノー

手まり唄(前津江村大野)
☆坊さん坊さん お前の屋敷にゃ梅が三本 桜が三本 合わせて六本
 唐梅 唐竹 烏が二羽でわたいた そこわたいた ここわたいた
 サンヤノーイッテノー
 ※わたいた=渡した。昔はイ音便もよく使った。
☆坊さん坊さん お前があんまり大酒飲むから
 着物着られにゃヘコもかかれん 大金玉抱えてあっちにゃぶらぶら
 こっちにゃぶらぶら サンヤノーイッテノー
 ※着物着られにゃヘコもかかれん=(酒ばかり飲んでお金がなくて)何も着るものがない

手まり唄(前津江村星払)
☆坊さん坊さん お前の屋敷にゃ梅が三本 桜が三本 合わせて六本
 唐竹 唐梅 烏が二羽でわたいた そこわたいた ここわたいた
 イッテノーサンヤエー



●●● 上の坊さんと下の坊さん ●●●

手まり唄(臼杵市東福良)
☆上の坊さんと下の坊さんと 沖に行ってから蛸を釣ってきて
 焼いてこんがらかして棚に上げちょいたら
 猫がかいかいかいまいた その猫打ととて
 縁の柱で頭こつこつ南無阿弥陀仏 嘘言や地獄 本当言や極楽



●●● 次郎んぼ太郎んぼ ●●●
 去年の栗の実を割ってみたら子供が出てきた…という、「桃太郎」もびっくりの内容。子供は面白がったことだろう。

寝させ唄(臼杵市東福良)
☆次郎よ太郎よ お馬どこへつないだ くりくり山につないだ
 何を食わせてつないだ 去年の粟がら 今年の稗がら
 取り混ぜて食わせた その中をあせってみたれば 粟を一つ見つけた
 咬み割ろうにゃ惜し惜し つみ割ろうにゃ惜し惜し
 つみ割り咬み割りしてみたりゃ 赤い小袖が六つ六つ
 白い小袖が六つ六つ 六つになる稚児が 驢馬に乗って
 さんがの道から日が暮れて 灯せど灯せど明からいで
 宿は狭し夜は長し 一杯飲まんせお客さん 二杯飲まんせ上戸さん
 三杯目の肴には 白瓜 から瓜 まくら瓜 ホラねんねんねんねんよ
 ※あせってみたれば=あさってみたら
  明からいで=明るくならなくて

寝させ唄(臼杵市稲田)
☆次郎んぼ太郎んぼ 馬どこにつないだ くるくる山の木の下の
 何を食わせてつないだ 去年の粟がらと 今年の稗がらと
 切って混ぜて食わした 上の山に上がって あせくってみたら
 粟を一つ拾うた つみ割るも惜し惜し 咬み割るも惜し惜し
 つみ割り咬み割りしてみたら 赤い稚児が出てきた
 六つになる稚児を 驢馬に乗せて 今日から熊野に初参り
 ※あせくって=あさって

手まり唄(上浦町)
☆次郎や太郎や 馬どこにつないだ くりくり山につないだ
 戻りに栗一個拾った つみ割ろうにゃほしゅや
 噛み割ろうにゃほしゅや つみ割ってみたら
 赤い乳児が三つ 三つなる乳児が お馬に乗って 傘さしゃ十郎兵衛
 ※ほしゅや=惜しや

言葉遊びの唄(挾間町朴木)
☆おとぼ おとぼ 馬どきい繋いだ くりくり山に繋いだ
 なにゅう食わせち繋いだ 去年の稗がら今年の栗がら
 けえくり混ぜちみたりゃ ひゅうひゅう栗う見つけた
 つみ割るも惜しい 咬み割るも惜しい つみ割っちみたりゃ
 白い小袖が六つ六つ 赤い小袖が六つ六つ 六つになる稚児に
 綾織りう着せち そっから熊野に初参り 三郷の市から日が暮れて
 扇の小骨に灯をとばし とばしてもとばしても明からんで
 そこの小屋に宿とった 宿は狭し夜は長し 暁起きて空見れば
 稚児のような傾城が むら杯を手に持って 一杯お上がり上戸さん
 二杯お上がり上戸さん 三杯目の杯に 何が肴と問うたれば
 白瓜 唐瓜 真っ赤な瓜の漬け大根
 ※おとぼ=末っ子。「おとんぼ」「すそご」とも言う。
  どきい=どこに
  なにゅう=何を 「う」は「を」にあたる助詞
  けえくり混ぜち=混ぜくって。「けえ」は強意の接頭辞(やや卑俗な言い回し)
  明からんで=明るくならずに
  傾城=太夫(上位の遊女)
メモ:二組に分かれて向かい合い一句ずつ交互に唄い、間違った方が負けという遊び方。



●●● お月さん・油買い酢買い ●●●
 「お月さんいくつ、十三七つ…」は全国的に唄われ、今でもよく知られている。大分県内でもよく唄われたが、半ば以降の文句が全国的に知られているものとはずいぶん変化している。月を見ながら年上の者が幼児に唄ってやったり、または子供同士で唄ったほか、寝させ唄としても唄われていた。夜なべ仕事で臼をまわす際に、大人が唄うこともあった。

月の唄(豊後高田市河内)
☆お月さんなんぼ 十三七つ 七つのときに 月の子を拾うた
 お千に抱かしゅか お万に抱かしゅか
 お千に抱かすりゃ お万がせえる

縄跳びの唄(山香町若宮)
☆お月さんなんぼ 十三七つ まだ年ゃ若い
 若いうちに紅カネつけて どこに参る いずくに参る
 いずくの路で 目のない鳥が あっちの谷でヒョーロヒョロ
 こっちの谷でヒョーロヒョロ
 ※カネ=鉄漿(おはぐろ)

月の唄(杵築市馬場尾)
☆お月さんなんぼ 十三七つ まだ年ゃ若いなあ

寝させ唄(大分市国分)
☆おとさんいくつ 十三七つ まだ年ゃ若いな
 若い子もって 誰に抱かしょ おまんに抱かしょ
 おまん茶袋 茶船に乗せて ひくひく見れば
 (以下欠落)

月の唄(大分市東稙田)
☆お月さんいくつ 十三七つ まだ年は若いな
 若い子をもって誰に抱かしょ おまんに抱かしょ
 おまん茶ん袋 茶船に載せて いくいく見れば
 えべすか大黒か あけて見たれば 福の神じゃった

月の唄(大分市南大分)
☆お月様いくつ 十三七つ まだ若い若いよ
 若い子を持って 誰に抱かしょうお万に抱かしょ お万茶ぶくろ

月の唄(佐伯市女島)
☆お月さんなんぼ 十三七つ まだ年ゃ若いぞ
 更紗の帯を 腰にしゃんと結んで お万どこ行く
 油買い酢買い 油屋の前で油徳利うち割った その油どうやった
 犬がねぶってしもうた その犬はどうやった 太鼓に張ってしもうた
 あっちの山でもドンドンドン こっちの山でもドンドンドン
 ※ねぶって=舐めて

寝させ唄(弥生町切畑)
☆お月さんなんぼ 十三九つ まだ年ゃ若い
 若いとき子を生んで 油買いに行きよって
 油徳利ちい割って その油どうやった 犬がねぶってしもうた
 あっちの山でもドンドン こっちの山でもドンドン
 ※行きよって=行く途中で
  ちい割って=ちち割って。「ちい」「ちち」は強意の接頭辞

寝させ唄(弥生町江良)
☆油買い酢買い油屋の前で 油どっくり打ち割った
 その油どうやった 犬がねぶってしまった
 その犬はどうやった 太鼓に張ってしまった
 その太鼓はドンドコドンドコ ドンドコナー

寝させ唄(鶴見町羽出浦)
☆お月さんいくつ 十三九つ まだ年ゃ若いが
 若い子を持って この子誰に抱かしょ お万に抱かしょ
 お万どこいく油買い酢買い 油屋の前で 油どっくり打ち割った
 その油どうした 犬がねぶってしもうた その犬はどうした
 太鼓に張ってしもうた その太鼓どうした 天に昇ってしもうた
 あっちの端じゃドンドンコ こっちの端じゃドンドンコ
 ドンドンコといってる間にそれ落っこちた
メモ:この文句のおもしろいところは、「ドンドンコ」と鳴る太鼓が「天に昇って」、雷様になってあっちの空でドンドンコ、こっちの空でドンドンコと鳴り、そのうち雷が落ちた…となている点である。太鼓から雷を連想するというのが、いかにも子供らしい自由な発想ではないか。

寝させ唄(大野町)
☆お月さんいくつ 十三七つ 七つの年に 油買いに行ったら
 油屋の木戸で 牛ん糞ずーめって 油一升かやした
 ※ずーめって=(踏んで)すべって
  かやした=こぼした

月の唄(直入町長湯)
☆お月様いくつ 十三七つ まだ年ゃ若いな
 七つの年に七つ子を生んぢ 油買いに行ったりゃ
 油屋の角で 滑っちこけち 油一升うっ捨てた
 その油どげえした 次郎どんの犬と ひんねぶっちしもうた
 その犬などげえした 打ち殺いち皮はいぢ 太鼓に張っちしもうた
 その太鼓どげえした 上のお宮でドーンドン
 ※どげえした=どうした ひんねぶっち=舐めて

月の唄(竹田市)
☆お月さんいくつ 十三七つ 七つの年に
 この子を持って お万に抱かしょ お万茶袋 茶舟に乗せて
 よくよく見れば 恵比須か大黒か福の神じゃった

月の唄(玖珠町)
☆まんまんさんないくつ 十三七つ やや持った
 お万に抱かしょか お蝶に抱かしょか お蝶もお万も油買いやったら
 油屋ん角で 一升瓶ぬこぼした その油どした
 次郎どんの犬と太郎どんの犬と ひんねぶってしもた その犬どした
 太鼓に張ってしもうた その太鼓どうした
 あっちの山にドーンドン こっちの山にドーンドン
 ※まんまんさん=月または仏様の幼児語
  やや=乳飲み子
  一升瓶ぬ=「一升瓶を」の連声
  ひんねぶって=舐めて。ひん=強意の接頭辞(やや俗っぽい言い回し)
  山にドーンドン=山の上の方の空で雷が鳴る様子

寝させ唄(中津江村)
☆まんまんさんないくつ 十三七つでヤヤ持った
 お万に抱かしょか お蝶に抱かしょか お蝶もお万も油買いにやって行った
 その油どしたか 次郎どんの犬と太郎どんの犬と ひんねぶってしもた
 その犬はどしたか 太鼓に張ってしもうた その太鼓どしたか
 あっちの山にドーンドン こっちの山にドーンドン
 ※まんまんさん=月

2、わらべ唄集

●●● お城のさん ●●●
 この唄は県内のほぼ全域に伝承されていた。「一列らんぱん」とか「一番はじめは」などよりも古い唄のようで、高齢者でなければ覚えていない。一般に手まり唄として唄われたが、一部ではお手玉唄にも転用されている。文句の意味がよくわからないが、お侍さんの色街通いを思い起こさせるような内容である。固有名詞の転訛が著しいが、田舎の子供にとっては華やかな世界への憧れもあって余計に親しまれたのかもしれない。

手まり唄(宇佐市高森)
☆お城のさん おんさまだいしょはいっちょごでお駕籠でいっちょさのドン
 差したかドンドン 忍ぶかドン どんどと流行るはぞろがみ様か
 ここは信太の境のドン(以下欠落)
メモ:演唱者が途中までしか覚えていなかった。

手まり唄(国東町見地)
☆お城のさん おん侍しょはいっちょごでお駕籠でいっちょさのドン
 差いたかドン 忍ぶかドン どんどと流行るはどの神様か
 ここは信太の境の段 おん吉原の駒造さん
 とぼけて流行るは音八つぁん 城木屋のお駒さん 才三さん

お手玉唄(安岐町吉松)
☆おひとのさん おんさま大将が
 いっちょごで おかごで いっちょさのドン(以下欠落)
メモ:演唱者が冒頭部分しか覚えていなかった。

お手玉唄(杵築市弓町)
☆お城のさん 王様蛙がいっちょごでお駕籠で一丁さのさ
 差したかドン 忍ぶかドン ドンドと鳴るは雷さん
 白木屋のお駒さん 才三さん アラ煙草の煙は
 ひ ふ み よ いつ む なな や この と

お手玉唄(杵築市馬場尾)
☆おんしろしろしろ お城のさん おんさま大将が一丁さのさ
 差したかドンドン忍ぶかドン ドンドと鳴るは雷さん(以下欠落)
メモ:演唱者が冒頭部分しか覚えていなかった。

手まり唄(大分市国分)
☆お城のさん おん侍しょが いっちょごでお駕籠で いちょさのどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんどと流行るはどの神様か
 ここは篠原 堺のどん おん社の弥四郎さん まくろうさん
 才三さん とぼけて流行るは十八才
 ひ ふ み よ いつ む な や この と 十まで返して

手まり唄(野津原町野津原)
☆お城のさん おんさま大将がいっちょごでお駕籠で いっちょさまどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんと流行るがどろ神様か
 ここは篠原 堺のどん おん吉原の吉郎さん 駒三さん
 とぼけて流行るが音八さん 白木屋のお駒さん 才三さん
 たばこの煙で十八歳 酒持って来い
 吸い物なんぞは早や持って来い ひに ふに み トコトン
 ※十八歳=丈八さんの転訛

手まり唄(臼杵市稲田)
☆お城のさん 王様大将で いっちょごで お駕籠で いっちょさかどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんどと流行るは どの神様か
 ここは臼杵のお祇園などん おん吉原の義三さん 駒三さん
 しろきわのお駒さん 才三さん たばこの煙で
 ひ ふ み よ いつ む なな や ここんと
 十まで返してお城のさん
 ※しろきわ=白木屋の転訛

手まり唄(臼杵市福良)
☆白木屋のお駒さん 才三さん タバコの煙は丈八さん
 ひいにふうにみいによ いつにむうになーなのや ここの

手まり唄(佐伯市)
☆お城のさん おまさんの在所はいずこでお駕籠で いかさのどん
 差したかどん どんどと流行るはどの神様か
 ここは信濃のさかえのどん 忍ぶかどん
 おんがしばらの義三さん 駒三さん どんどこ流行るは音八さん
 ひに ふに みに よに いつつに むに ななやに ここのに とおに

手まり唄(佐伯市女島)
☆お城のさん おんしろしろしろ 城木屋のお駒さん 才三さん
 煙草の煙で ひにふ みによ いつにむ ななにやに ここのにとう
☆十まで返してお城のさん
 おまさま在所は一丁櫓でお駕籠でいっちょさのどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんと流行るはどろがみ様か
 おここは信濃のさかえのどん 義造さん 駒造さん 音八つぁん
 松貰うた 竹貰うた これでいったい上がり
メモ:普通の「お城さん」を半ばで分けて、それをひっくり返して後半から唄い始めており意表をついている。

お手玉唄(鶴見町吹浦)
☆お城のさん 今の流行りの電気馬車 十二時頃にはどこに着く
 十二時頃には名古屋着く 名古屋まんしゅの奥さんが
 髪をゆらゆら丸髷に 足には絹足袋 繻子の帯 鶯が ホケキョーと
 ひいにふう みいによう いつにむう ななにやあ このにとお
 ※電気馬車=電車のことか
メモ:「お城のさん」と唄い始めているが、それ以降の文句との関連性が全く感じられない。これは、「お城のさん、おんさまだいしょが…」云々の替え唄として「今の流行の電気馬車…」と唄ったもので、唄い出しのみ「お城のさん」が残ったためだろう。

お手玉唄(鶴見町)
☆お城のさん 今の流行りのレンゲの馬車
 十二時頃にはどこに着く 十二時頃には名古屋でしょ
 名古屋まんじゅの奥さんが 髪を結う結う丸髷に
 足には絹足袋 繻子の上 ひや ふや みや よ 十で返して
 ※レンゲ=電気の転訛か

お手玉唄(鶴見町羽出浦)
☆お城のさん おんさまだいじょは いずこでお駕籠でいかさのドン
 差したかドン 偲ぶかドン ドンドと流行るはどの神様か
 ここはしのさかえのドン おんよしよしどの 義三さん
 駒三さん 音八つぁん ひいに ふうに みいに ように
 いつに むうに なに やあに ここの とうに

お手玉唄(蒲江町竹野浦河内)
☆お城のさん おん侍衆が いっちょごでお駕籠で一丁さのどん
 差いたかどん 忍ぶかどん どんどと流行るがどろがみ様よ
 ここは篠原 さかえのどん おん吉ひよらの吉三さん
 駒三さん 陽気で流行るが音八さん
 ひにふ みによ いつにむ ななにや

手まり唄(弥生町上小倉)
☆お城のさん おん侍しが いっちょごで お駕籠で いっちょさまどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんと流行るがどろがみ様か
 ここはしのはる 栄えのどん おん吉原の義三さん 駒三さん
 とうきて流行るが音八さん
 ひいにふう みいによう いつにむう ななにやあ こおのにとう

お手玉唄(直川村)
☆お城のさん おん侍衆が いっちょごでお駕籠でいっちょさのどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんどん流行るはどの神様か
 ここはしのばのさかいのどん おん吉原の義三さん 駒三さん
 とぼけて流行るが音八さん 白木屋のお駒さん たいらさん
 煙草の煙が ひ ふ み よ いつ む なな や この
 十まで数えて

お手玉唄(大野町藤北)
☆お城のさん おんさむ大将が いっちょごでお駕籠で一丁さのどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんどと流行るがどの神様か
 ここは篠場の境のドン おん吉原の吉三さん 駒三さん
 とぼけて流行るが音八さん シロキワのお駒さん たいざさん
 たばこの煙で ひ ふ み よ いつ む なな や この とう
 ※篠場=篠を採取するための入会地(集落や組の共有地)。ただし他地域では「篠原」「信濃の」「信太の」などと唄われておりこれらの転訛かもしれない。前後関係からの推定が困難で、原義が不明。
  シロキワ=白木屋 たいざさん=才三さん

お手玉唄(竹田市本町)
☆お城のさん 御侍衆がいっちょごで お駕籠でいっちょさのドン
 さしたかドン しのぶかドン ドンドと鳴るはどの神様か
 ここは篠原 栄えのドン 御吉原の義三さん 駒三さん
 今日来て流行るが 音八さん 城木屋のお駒さん 才三さん
 煙草の煙で ひいふう みいよう いつむう ななやあ このとお
 十まで返して

お手玉唄(挾間町朴木)
☆お城のさん 王様大将が いそごで お駕籠でいっちょさのドン
 差したかドン 忍ぶかドン ドンドと流行るは どろがみ様か
 ここはシノワの境のドン おん吉原の弥四郎さん 駒三さん
 とぼけて流行るが音八さん 城木屋のお駒さん 才三さん 煙草の煙で
 ひにふにみによ いつむ ななにや このにと 十まで返して

手まり唄(挾間町挟間)
☆お城のさん おむさむ大将が いっちょごで お駕籠でいっちょさのドン
 差いたかドン 忍ぶかドン ドンドと流行るが どろがみ様か
 ここは篠原境のドン おん吉原のヨシドウさん 駒三さん
 遠くで流行るが音八さん 城木屋のお駒さん 才三さん 煙草の煙で
 ひにふにみによに いつにむになにやに このにとに

手まり唄(玖珠町戸畑)
☆お城のさん おん侍しがいっちょごでお駕籠でいっちょさまどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんと流行るはどろ神様か
 ここは信夫の境のどん おん吉原の吉三さん 駒三さん
 とぼけて流行るは音八さん 白木屋のお駒さん さえださん
 煙草の煙が丈八さん
 ※信夫の=他地域では「信太の」と唄うことが多い。盆口説等で志賀団七の「姉の宮城野、妹の信夫」を聞き覚えて混同したものか、または「忍ぶかどん」から「しのぶ」の音を繰り返したのかもしれない。
  さえださん=才三さん

羽根突き唄(玖珠町)
☆おんしろしろしろ 城木屋のお駒さん 才三さんで 浅間の煙で
 ひいや ふ みいや よ いつの む ななの や このが 十よりゃ
 ひいや ふ みいや よ いつの む ななの や このが 二十よりゃ
 ひいや ふ みいや よ いつの む ななの や このが 三十よりゃ
メモ:「お城のさん」の唄は普通まりつきかお手玉で唄うことが多く、羽根突きで唄うのは珍しい。文句がずいぶん簡略化されている。

お手玉唄(前津江村星払)
☆お城のさん 鬼さま大事は いちごでお駕籠でいちさかどん
 差したかどん 忍ぶかどん どんどと流行るはどろ神様か
 そこは忍ぶの酒屋のどん おん吉原の吉三さん 熊造さん
 とぼけて流行るがおだ八さん 白木屋のお駒さん 西郷さん
 煙草の煙でひいふう みやよ いつにむ なながや このにとう
 十まで返してお城のさん
 ※鬼さま大事は=「おん侍衆は」「おんさま大将が」等の転訛か
  酒屋の=「境の」の転訛 昔、語尾のイやエがヤに転訛することがあった。「蒔絵」を「マキヤ」等。
  熊造さん=「駒三さん」の転訛
  おだ八さん=音八さん
  西郷さん=才三さん



●●● 東京帰りのお芋屋さん ●●●
 この唄は「お城のさん」とほぼ同じ節で、両者を接続して唄うことが多かった。「お城のさん」の末尾にて「ひい、ふう、みい…」と数えて「この、とお」。ここから「東京帰りの…」とつなげる。

手まり唄(国東町見地)
☆天から落ちたお芋屋さん お芋が一升でいくらかえ
 二十四文でござります あまり高いがたからかぽん
 お前のことなら負けてやろ 包丁まな板出しかけて
 頭を切るのが八つ頭 きりっぽ切るのがお芋屋さん

手まり唄(別府市東山)
 天から降りたるお姫様 お芋一升がいくらかえ 十五銭と申します
 あんまり高いが高々い まな板包丁出しかけて
 お芋切るのが大丈夫 とうと一こん貸しました
 ※お茶ぼこぼん=お煙草盆の転訛か

手まり唄(別府市内竈)
 天から落ちたお芋屋さん お芋一荷がいくらかえ
 二十四文でございます あまり高いが負からかぼん
 お前のことなら負けてやろ 包丁まな板出しかけて
 頭切るのが八つ頭 おいど切るのが大丈夫 まず一貫貸しました
 ※おいど=お尻

手まり唄(臼杵市福良)
☆東京下りのお芋さん お芋は一升いくらかえ 三十五文に負けてやろ
 まちっと負からんかショカラカポン あなたの御用なら負けてやろ
 ※まちっと=もう少し

手まり唄(佐伯市)
☆東京帰りのお芋屋さん お芋一升いくらかえ 三厘二毛でござります
 もっと負からんかちょこりっぽ おまさんのことなら負けてやる
 ざる下ろせ 升下ろせ 包丁まな板 さしかけて 頭を伐るのは八つ頭
 尻尾を切るのは唐の芋 とびの行水 からすの行水
 羽根をばたばたして いったいじゃ

お手玉唄(鶴見町)
☆お芋のさん お芋一個はいくらです 三十二文でございます
 もうちょっと負からか しゃからかぽん
 お前さんのことなら負けてやる ひや ふや みや よ 十で返して

お手玉唄(鶴見町羽出浦)
☆東京帰りのお芋屋さん お芋一斤いくらかえ 三厘五毛でございます
 もっと負からんか まかりきぼん お前さんのことなら負けてやろ
 ざる下ろせ 升下ろせ 頭を切るのが八つ頭 尻尾切るのが唐の芋
 鳶の行水 烏の行水 羽根をばたばたして いったいじゃ

お手玉唄(蒲江町竹野浦河内)
☆東京下りのお芋屋さん お芋一升はいくらかね 三十五もうでござります
 もっと負からんか負かりきこ お前さんのことなら負けてやろ
 烏が羽根をばたばたして いったんしょ

手まり唄(弥生町上小倉)
☆東京下りのお芋屋さん お芋一俵がいくらかえ 三十二毛でございます
 もっと負からんかちょこりきぽん お前さんのことなら負けてやろ
 ざる下ろせ 升おろせ 包丁まな板 出しかけて 頭を切るのが八頭
 きりっぽ切るのが唐の芋 とびの行水 からすの行水
 羽根をばたばたして いったいじゃ
 ※毛(もう)=通貨単位。円の1万分の1。
  唐の芋=唐芋(薩摩芋)

手まり唄(挾間町挟間)
☆十から落ちたお今さん お芋一升いくらかえ
 二十五文でござります もちっと負からかスカラカポン
 お前の心で負けてやろ セーニ マーニ いっことせー

手まり唄(直入町)
☆天から落ちたお芋屋さん お芋の一升いくらだい 三銭二厘でございます
 もちっと負からんかチャカラカポン お前のことなら負けてあぎょ
 升お出し ザルお出し まな板包丁出しかけて 頭を切れる八つ頭
 尻尾を切れる十の芋 ひいふうみいよう いつむうなあやあ
 九つ十 天から落ちたお芋屋さん
 ※旦那の嫌な大晦日=大晦日はツケの清算日だったため



●●● 席駄がかわって替えに来た ●●●
 これは「お城のさん」に似た節と、違う節とがある。前者は「お城のさん」とか「東京帰りのお芋屋さん」に接続して唄うことが多かった。

手まり唄(別府市内竈)
☆トントン叩くは誰さんか 新町米屋の米三さん
 あなたは何しにおいでたか 席駄が代わって替えに来た
 あなたの席駄は何席駄 ちゃんちゃん坊主の赤席駄
 私とお母さんとお寺に参りがけ お寺の御門から酒の粕投げて
 私にゃ当たらんでお母さんに当たって まず一貫貸しました
 ※席駄がかわって替えに来た=席駄を履き間違えて帰ってしまい、入れ替わったことに気付いたので取り換えに来た

手まり唄(大分市松岡)
☆とんとん敲くは誰じゃいな 新町米屋のお繁さん
 あなたは何しに来たのかえ 私ゃ席駄がかわって替えに来た
 わしとおっかさんお寺に参りかけ 酒屋の窓から酒の粕投げた
 わしにゃ当たらでおっかさんに当たった

手まり唄(大分市国分)
☆わしとお母さんとお寺に参りかけ お寺の窓から酒カス投げて
 私にゃ当たらんでお母さん当たって かかすかぶろと申します
 セーニ トート イッキトセ

手まり唄(臼杵市稲田)
 お城のさん お城を叩くは誰じゃいな
 新町米屋のシゲちゃんじゃいな シゲちゃんな今頃 何し来た
 席駄がかわって替えに来た シゲちゃんの席駄はどんな色
 赤ちゃこ茶色のエビ茶色 そんな色があるものか
 あってもないでも替えに来た

手まり唄(佐伯市東灘)
☆とんとん敲くは誰かいな 新町米屋の儀平さん
 儀平は何しに来たのかな 席駄がかわって替えに来た
 お前の席駄は何雪駄 猪かのしし皮張りで 朝も疾うから起きてきて
 ちゃんちゃん茶釜に茶を沸かし 奥から隅まではわき出し
 二十四孝の窓開けて 窓の灯りで髪結うてみれば
 つとが三尺折目が四尺 金でしめたら尋五尺 尋五尺
 ※かのしし=鹿
  はわき出し=掃き出して
  つと=日本髪の、後頭部の髪を上に折り返した部分

お手玉唄(鶴見町吹浦)
☆十まで返すは誰さんか 新町米屋の茂さんよ
 茂さんは何しに来たのかな 席駄の鼻緒がかわって替えに来た
 お前の席駄の鼻緒は何色な 紺の紫 いったいしょ
 ※席駄の鼻緒がかわって換えに来た=(暗がりで履いたので鼻緒の色がよくわからなかったが)帰って履いている雪駄の鼻緒を見ると、自分のを雪駄ではないのに気付いたので、取り替えに来た
  何色な=何色かい?



●●● おんきょう京橋 ●●●
 この唄は全国的に伝承されていた。昭和初期には中山晋平の編曲で、佐藤千夜子がレコードに吹き込んでいる。県内では主に大野地方で多く採集されているが、おそらくもっと広範囲で唄われたものだろう。

手まり唄(山国町守実)
☆紅屋のおっ母さん染物屋 立っても座ってもよう染まる
 人はちらちら藍絞り 雀の小枕こまがらせ
 あんどん車 水車 水がないとてお江戸行き
 お江戸の長崎腰かけて 子供衆さん 子供衆さん
 ここは何という所 ここは長野の善光寺 梅と桜をあげましょか
 梅はすいすい戻された 桜はよいよいほめられた

お手玉唄(杵築市馬場尾)
☆おんきょろ きょろ橋 橋ごめの 紅屋のおっかさん橋本屋
 立っても座ってもよう染まる 雀の小枕 こまがらせ
 行燈ぐるま 水ぐるま 水がないぞやお宿まで お宿は長崎 腰かけて
 ここは信濃の善光寺 善光寺さんに願かけて 梅と桜をあげたなら
 梅は酸いとて嫌われた 桜はよいよい褒められた 褒められた

手まり唄(大分市松岡)
☆向こうの山から鐘が鳴る さぞ行きたい参りたい
 姉さん帷子貸さんかえ 姉さん帷子血がついた
 何の血じゃろか紅じゃろか 紅屋の染物よう染まる
 立っても座ってもよう染まる 藍に絞りて藍絞り
 とんとん車に水車 水がないとてお江戸行って お江戸長崎 腰かけて
 あれ坊さん これ坊さん ここは何というところ
 ここは信濃の善光寺 善光寺さんに願かけて
 梅と桜をあげたれば 梅は酸い酸い戻される 桜はよいよい褒められる

手まり唄(緒方町尾平)
☆きょんきょん きょろ橋 橋ごめの 紅屋のお方の染物は
 伸っても反ってもよう染まる お江戸長崎 腰かけて
 子供衆さん 子供衆さん ここは何というところ
 ここは信濃の善光寺 善光寺さんに願立てて 梅と桜を差し上げた
 梅は酸よいとかやされた いっことせ にっことせ
 ※橋ごめ=橋詰の転訛。橋のたもと。
  酸よい(すよい・すゆい)=酸っぱい
  かやされた=返された

お手玉唄(緒方町小宛)
☆きょんきょろ橋 橋止めの 染屋のおばさん染物は
 あってものうでもよう染まる 行灯車に水車
 水がないとてお宿して 親は長崎 腰かけて
 もしもし車屋さん ここは何というところ
 ここはシノラのれんこう寺 れんこう寺様にご願立てて
 梅と桜をあげたなら 梅はすよすよ返された
 桜はよいとて褒められた 新町出口の笹植えて
 その笹折るな枝折るな 枝の上にかきつきを かきつきを
 チョロ一丁かした
 ※橋止め=橋詰
  シノラのれんこう寺=信濃の善光寺
  すよすよ=酸っぱい酸っぱい(と言われて)

手まり唄(犬飼町天神)
☆きょんきょん きょん橋 橋止めの 紅屋のお方の染物は
 あってもないでもよう染まる 縮緬に駒下駄 駒がやし
 行灯車に水車 水がないとてお江戸まで
 お江戸の御門に腰をかけ もしもし出家さん ここは何というところ
 ここは信濃の善光寺 善光寺様に願かけて
 梅と桜をあげたなら 梅は酸ゆいと嫌われた 桜は見事と褒められた
 トコイッキトセ

手まり唄(大野町藤北)
☆きょんきょんきょん橋 足止めの 紅屋のお方の染物は
 あってものうでもよう染まる 行灯車に水車
 水がないとてお江戸まで お江戸の御門に腰をかけ
 もしもし子供さん ここは何というところ
 ここは信濃のれんこう寺 れんこう寺様に願立てて
 梅と桜を上げました 梅はすいすい戻された 桜はよいよい褒められた
 ※足止め=橋詰の転訛 または「前を通るとつい寄りたくなる」といった程度の意か
  れんこう寺=善光寺の転訛
メモ:「民謡緊急調査」で採集された音源を図書館で聴いてみると、演唱者は「願立てて」を「ぐゎんたてて」と発音している。大分の言葉では、鼻濁音と濁音の区別には頓着しないが、「が」と「ぐゎ」の区別については近年まで残っていた(高齢者)。ほかにも「か」と「くゎ」や、「じ」「ぢ」「ず」「づ」も区別して発音する人がいた。しかし、今ではかなり高齢の人であっても明確に区別して発音することは稀となっている。



●●● あの山の花摘み女郎 ●●●
 玖珠町・山国町で採集されており、県内では少数派である。文句の内容がわかりにくく、名詞の転訛が多い。

手まり唄(山国町守実)
☆あの山の 花摘み女郎が十七八の嫁々盛り
 あちから頼みこちから頼み 頼みの帯が十三四筋
 一筋まいては頭の雀 紺屋のおきどでキリショが鳴いた
 どう言うて鳴いた こう言うて鳴いた すめすめこすめ 染物畑
 藍玉 小玉つき並べ つき並べ 京から船が三千下る
 そのお船の恐ろしさ 恐ろしさ

お手玉・手まり唄(玖珠町戸畑)
☆あの山の花摘み女郎が 十七八の花嫁ざかり
 あっちから頼みこっちから頼み 頼みの帯が十三やすじ
 一筋抜いて頭のすずめ 紺屋のお木戸でキリショが鳴いた
 どういうて鳴いたかこういうて鳴いた
 一つでは乳を飲み初め 二つで乳の首離れた
 三つでは付紐とき初め 四つでこの筆とり初め
 五つでは糸をとり初め 六つでコロハタ織り初め
 七つではひおくだ巻き初め 八つで金襴緞子を織り初め
 九つでここに嫁入り そこに嫁入り 十でとっくり収まった
 ※女郎(めろう)=小娘
メモ:テンポが速めで、この種の唄にしては節回しも変化に富んでいる。次々に畳みかけるように唄い、音引きがほとんどない。息継ぎがしにくく、若干唄いづらい。



●●● 大事々々のお手まり様 ●●●
 この種の唄は県内各地で採集されている。文句の内容からして、「大事のお手まり様」とはゴムまりではなく糸まりのようだ。糸まりはゴムまりのように強く跳ね返らない。そのため床に座って低くついて遊ぶか、または投げ上げて遊んだ。芯に糸を巻き付け、待針を打って色とりどりの木綿糸でくけていき美しい文様を出すのは大変手間がかかる。母親や祖母に手間暇かけて作ってもらったまりだからこそ、「大事々々のお手まり様」を「紙に包んで紙縒りでしめ」たのだろう。その後、徐々にゴムまりが出回るようになっても当初は高級品だったので、この唄はゴムまりの時代になってもなお親しまれていた。

手まり唄(大分市国分)
☆今日は今日々々 明日は大々 大事の大事 おんくけなされて
 もみの袋にお包み申して イロハと書いて いのいとようんで
 奥の奥の おたけおじゅうに卸し申した
 ※おんくけなされて=「くける」とは、「絎け縫いをする」の意。ここでは糸まりづくりの際に、巻き糸を数本ずつ拾っていくこと。

手まり唄(大分市東稙田)
☆今日は今日々々 明日は大々 大事々々のお手まり様よ
 お紙に包んで紙縒りでしめて しめた上からイロハと書いて
 誰に読ましょか吉郎に読ましょ 吉郎親方 馬追なされ
 馬をピンコシャンコ ビロードの脚絆 あてて踏ませて後から見れば
 牡丹 芍薬 百合の花 さあさ一貫 かしました
 ※ビロード=ベルベット 高級な布地で、昔は高貴な身分でなければ持てなかっただろう。

お手玉唄(臼杵市稲田)
☆確かに確かに受け取りまして 今日は今日々々 明日は大々
 大事な大事なお手まりさんを おびくきなされて
 もみの袱紗にお包みまして 奉書紙にイロハと書いて
 ホの字と読んで 隣じろもに渡した

手まり唄(鶴見町吹浦)
☆しっかに確かに受け取りましたが
 今日は今日々々 明日は明日々々 大事な大事なお手まり様や
 花や桔梗やおすぎ申して お花申して 紙に包んで紙縒りでしめて
 しめた印をイロハと書いて イの字と読んで
 向こうの向こうの誰かさんの お手の下までお渡し申す
 ピッピノピ
メモ:数人が輪になって、一人でまりをつきながら唄を唄う。その唄を最後まで唄うと、ポンと隣の人に突き渡して、また違う唄に合わせてまりをつくという遊びである。それで、「しっかに確かに受け取りました」や「お渡し申す」と唄っている。

手まり唄(蒲江町西野浦)
☆今日は今日々々 明日は大々 大事な大事なお手まり様よ
 花や桔梗や牡丹や おつぎ申して 紙に包んでお寺にあげて
 お寺子供衆にゃ血がついた 血がついた
 血ではござらん紅じゃもの 紅じゃもの 二十四孝のかめが トウハッ

手まり唄(庄内町阿蘇野)
☆今日は今日々々 明日は大大 大事大事のお手まり様を
 紙に包んで紙縒りで締めて 締めた上からイロハと書いて
 誰に読ましょか吉五さんに読ましょ 吉五親方 馬追いなされ
 馬はピンコシャンコ ビロードの脚絆
 当てて踏ませて後ろから見れば 牡丹芍薬 百合の花 百合の花
 セントート いっこん貸しました

手まり唄(挟間町朴木)
☆お月だいだい 今日もだいだい 明日もだいだい
 大事大事のお手まり様を 紙に包んで紙縒りでしめて
 しめた上からイロハと書いて 誰に読ましょか吉与さんに読ましょ
 吉与は盲で読みきりません そこであなたにいっこん貸しましたぞえ
 貸したぞえ
 ※読みきりません=読むことができません

手まり唄(荻町柏原)
☆大事大事のお手まり様よ 絹のふくさにお包み申して
 女のしずくもおっ母さんのしずくも 背戸に九つ変わらぬように
 しっかしっかとお渡し申すえ しっかしっかと受け取りました

手まり唄(竹田市本町)
☆今日はきょうきょう 明日は大大 大事な大事なお手まり様を
 絹の袱紗にお包み申して 紙縒りでしめて
 しめたところにイロハと書いて お政所のそのまた隣の
 花子様にお渡し申します

手まり唄(玖珠町戸畑)
☆今日は少々 明日は大々 大事大事なお手まり様を
 お紙に包んで紙縒りで締めて 締めたところにイロハと書いて
 こりゃだり渡そか ありゃだり渡そか
 向こう向こうのおん手ん下より 千代ちゃんにお渡し申すえ
 ※だり=誰に



●●● 八幡長者の弟娘 ●●●
 民話か何かを下敷きにした文句なのだろうが、よくわからない。

手まり唄(大分市松岡)
☆きんかん みかん どこで食うた 川向うで四つ食うた
 それの残りは誰にやる 八幡長者の弟娘
 あの子よい子じゃ器量な子じゃ 胸には法華経を読み立てて
 足には黄金の靴はいて 人の通らぬ山道を 通れ通れと責められて
 通ったら並んで通ったれば 元の殿御に行き逢うて
 殿さん殿さん暇おくれ 暇はやるこたやるけれど
 俺の女房になってくれ 赤足袋 白足袋 木綿足袋
 それが嫌なら大阪足袋 イヤいっきとせ
 ※弟娘=次女以下の娘、または末娘。「乙娘」とも作る。
  元の殿御=元カレ

手まり唄(大分市国分)
☆きいかん みかん どこで食うたか 川の向こうで三つ食うた
 それの残りは誰いやった 八万長者乙娘 乙はよい子じゃかちよしじゃ
 手には二本の手抜きして 足には二本の靴履いて 人の通らぬ山道を
 通れ通れと急かされて しょうがなくて通ったなら 元の元に帰った
 ※きいかん=きんかん
  誰い=誰に
  かちよし=別嬪

手まり唄(大分市国分)
☆うちの裏には蛇が棲むよ あれは蛇じゃない乙娘
 音もよければ器量もよし 器量もよいし容よし 俺の女房になってくれ
 俺の女房になったなら 縮緬一旦買うてやろ 縮緬一旦厭なれば
 木綿十反買うてやろ 木綿十反厭なれば 嫁入り道具を買うてやろ
 嫁入り道具が厭なれば 黒足袋 白足袋 紺の足袋

手まり唄(津久見市保戸島)
☆きんかんみかん なんぼ食べた お寺の向かいで六つ食べた
 そのお寺は誰が建てた 八幡長者の乙娘 乙はよいよい器量もよい
 器量に育てた子じゃもの 手には二本の矢を持って
 足には黄金の沓はいて 峠々の山道を 何とも言わずに通ったら
 もとの殿御さんに行き遇うて 殿御さん 殿御さん
 お暇をくだんせ殿御さん お姫をやろうも易けれど
 も一度女房になったなら 白足袋 紺足袋買うてやろ
 それが嫌なら綿帽子 セントン アライッセント
 ※乙娘=末娘



●●● 一段お上がり ●●●
 同種の唄が県内で広く唄われたほか、関西方面でも採集されているようだ。「おんきょう京橋」などと同様に、かつては全国的に親しまれた唄なのだろう。

手まり唄(大分市松岡)
☆一段お上がり 二段お上がり 三段上がって東を見れば
 よい子よい子が三人ござる 一でよいのが糸屋の娘
 二でよいのが二の屋の娘 三でよいのが酒屋の娘
 酒屋お近さんは伊達者でござる 日にち毎日
 白粉びんつけタラタラつけて 帯を一筋 青茶に染めて
 結ぶところが五葉松 五葉松

手まり唄(緒方町尾平)
☆一段上がりて 二段上がりて東を見れば
 良い子良い子が三人ござる 一でよいのが糸屋の娘
 二で良いのが二の屋の娘 三でよいのが酒屋の娘
 酒屋のおチクさんは伊達者でござる 油びんつけタラタラつけて
 白いもっといキリキリ巻いて 帯を一筋 赤茶に染めて
 結ぶところがお手の内 チョロいっこ貸した
 ※もっとい=元結(日本髪を結うときなどに髪を束ねるための、紐や紙縒り)

手まり唄(直入町)
☆一段お上がり 二段お上がり 三段上がって東を向けば
 よい娘よい娘が三人通る  一でよいのが糸屋の娘
 二でよいのが二の屋の娘 三でよいのが酒屋の娘
 酒屋のお月さん伊達者でござる 帯を八尺赤茶に染めて
 結ぶ所は縁じゃもの 縁じゃもの



●●● うちの裏のチシャの木 ●●●
 歌舞伎「先代萩」や盆口説「政岡忠義」でもお馴染みの、千松が唄う「雀の唄」を元にした唄。県内では国東半島で手まり唄または子守唄として唄われた。

手まり唄(豊後高田市田染)
☆うちの裏のチシャの木に 雀が三羽とまって 先の雀も物言わぬ
 後の雀も物言わぬ 中の雀の言うことにゃ ゆうべ貰った花嫁女
 ゆうべは納戸に直らせて 今朝は座敷に直らせて
 金襴緞子を縫わすれば 一人しくしく泣いている
 何が悲しゅてお泣くのか お襟とおくびをつけきらん つけきらん
 ※おくび=おくみ(衽)の転訛
  つけきらん=つけられない(つける能力がない)

手まり唄(香々地町塩屋)
☆そこのお裏のチシャの木に 雀が三羽とまって
 一羽の雀の言うことにゃ よんべ貰うた花嫁女
 よんべは納戸になおらせて 今朝は座敷になおらせて
 六枚屏風を引き立てて 金襴緞子を縫わすれば
 しっくりこっくり泣きしゃんす 何が不足で泣きしゃんす
 何も不足はないけんど お襟とおくびをつけきらぬ
 それこそ持てこいつけてやろ おくびはこうしてつけるもの
 ま一つ悲しいことがある わしの弟の千松は
 まだまだ七つにならぬうち 鉄砲かついで雉うちに
 雉はシャンシャン鳴いて立つ 泣いた涙を船に積む
 船に積んだら櫓が折れた 脇差一本櫓に差いて
 さあさ押し出せ都まで 都戻りに何う貰うた
 金襴緞子の帯う貰うた 帯は貰うたがまだ着けぬ
 くけの折り目に血が付いた それは血でない紅でかれ
 紅はどこ紅 大阪紅 大阪紅こそ色がよい
 おつばにつけたらなおよかろ なおよかろ
 ※よんべ(ゆんべ)=昨夜。「きにょんばん(昨日の晩)」は「一昨日の夜」の意。
  おくび=おくみ(衽)
  ま一つ=もう一つ
  何う=何を
  紅でかれ=「紅でこそあれ」の短縮。こそ→已然形の係り結びが方言として残存した。
  おつば=唇

寝させ唄(杵築市溝井)
☆うちの裏のチシャの木に 雀が三羽とまって 先の雀も物言わぬ
 後の雀も物言わぬ 中の雀の言うことにゃ ゆうべ貰った花嫁女
 ゆうべは納戸に直らせて 今朝は座敷に直らせて
 金襴緞子を縫わすれば 一人しくしく泣いている
 何が悲しゅてお泣くのか お襟とおくびをつけきらん つけきらん
 ※おくび=おくみ(衽)



●●● 向かいジャボン ●●●
 何らかの芝居文句なのだろうが詳細不明。

手まり唄(大分市松岡)
☆うちの裏のジャボンの木 朝はつぼんで昼ひらく
 晩にはしぼんで門に立つ 門に立つのは千松で
 まだ七つにならぬのに お馬の上から飛び降りて
 継母さんから叱られた これほどお腹が立つなれば
 地獄の袂に蛇を受けて 猫が嫁入りゃいたちが仲立ち
 二十日鼠が五升樽提げて 裏の小道をちょこちょこ走り
 なんぼ走ってもあの山越えて この山越えて
 ふすぼり煙草をようのんだ いっきとせ
 ※ジャボン=ザボン。ぼんたん。大きな実のなる柑橘類。
  しぼんで=しおれて
  猫が嫁入り云々=類歌が多い。「猫が嫁入りすりゃいたちが仲人 二十日鼠が一升二升三升四升五升樽さげて、裏の細溝をチョロチョロと」ほか
  ふすぼり=くすぶり
  のんだ=(煙草を)すった

手まり唄(大分市東稙田)
☆向かいジャボンの梅の花 朝つぼんで昼ひらく
 晩はしぼりて門に立つ 門に立つのは千松か
 まだ七つにならんとき お馬の上から飛び降りて
 それほどお腹が立つなれば 五尺の袂に状受けて
 猫が嫁入り いたちの仲立ち 二十日鼠が五升樽提げて
 裏の小道をちょこちょこ走り なんぼ走っても一丁まにコイコイ
 二丁まにコイコイ三丁まにコイコイ 出口にお月さんがござる
 ※しぼりて=しおれて

手まり唄(挟間町朴木)
☆向かいジャボンの梅の花 朝は蕾で昼開く
 晩はしおれて門に立つ 門に立つのは千松か万松か
 まだ七つにならぬうち お馬の上から飛び降りて
 まま親さんから叱られて 猫が嫁入り いたちが仲立ちすると
 鼠が五升樽さげて 裏の小道をチョコチョコ走り なんぼ走っても
 一のまんのこよこよ 二のまんのこよこよ 三のまんのお月さん
 出口を照らしてござる

手まり唄(中津江村)
☆向かいのジャボンの梅の花 朝々つぼんでひらひらと
 晩は萎れてかたみたつ かわぞで待つのは誰が松
 俺が弟の尻松ぞ 万松ぞ まだ七つにならんぞき
 お馬の上からおっぱいで 姉から貰うたきしゃ刀
 妹から貰うた笙の笛



●●● 疱瘡花や菊花や ●●●

手まり唄(庄内町阿蘇野)
☆疱瘡花や菊花や てんてん手まりこに詰め込んで
 おしや小宿に預けたら 継母さんから叱られて
 五尺の袂に矢を受けて 猫が嫁入りいたちが仲立ち
 二十日ねずみが五升樽さげて 裏の小道をちょこちょこ走り
 なんぼ走っても一の間こいこい 二の間こいこい 三の間に出口に
 お月さんがござる セントート いっこん貸しました
 ※疱瘡花=彼岸花



●●● 四方の景色 ●●●
 この唄はかなり古い唄で、もとは上方で流行したものが入ってきたのだろう。

手まり唄(臼杵市福良)
☆一に二に三に四に 四方の景色を春と眺めて 梅に鶯
 ホーホケキョーとさえずる 明日は祗園の二軒茶屋に
 琴や三味線 囃子てんてんまりをつく トコイッキとせ
メモ:「祇園の二軒茶屋」はもちろん京都のそれだが、臼杵の子供達は、おそらく臼杵の「祇園様」つまり八坂神社を想像したのではないだろうか。

1、唄の背景について

(1)遊びながら唄うもの
a お手玉唄
 お手玉のことを昔は「おじゃみ」とか「石なご」と呼んでいた。端切れを俵型に縫うものと、長方形に裁った4枚を座布団型にはいだものがある。中身は、もっとも上等が小豆で、遊びやすくてよい音がした。これはぜいたく品なので、ほとんどは外遊びのついでに集めた「じゅず玉」で、小石を入れる場合もあった。遊び方は、今でも遊ばれている「投げ玉」のほかにも、「寄せ玉」や「狐取り」があった。投げ玉の唄は手まり唄と共通の場合も多いが、寄せ玉と狐取りの唄はそれ専用のものがある。
○投げ玉
 複数の玉をグルグルと投げ上げるもので、両手でする(利き手で投げて反対の手で受ける)投げ玉を「さし」、片手でする投げ玉を「べにべに」と呼ぶことが多い。「ジャグリング」のように両手交互に互い違いに投げるのではなく、一方通行に投げる。
 今ではせいぜい2個で3個もできる子は珍しいが、昔の上手な子は4個、5個をこなした。この種の遊びの場合は唄のテンポが合えば何でもよいので、バリエーションに富んでいる。小学唱歌の転用も多々唄われた。
○寄せ玉
 今は全く遊ばれないが昔はとても人気が高く、ふつう「おじゃみ」と言えばこの遊び方のことをさしていた。ほとんど技の名前を羅列しただけの文句で、節回しもリズムも曖昧で地口に近いが、一応唄として取り上げた。
 5個か4個で一組のお手玉のうち、1つを親玉に定めておいて、それを片手に持ち、残り(子玉)は床に置いておく。基本的に、「おさらい」以外は片手(利き腕)のみで行う。「お一つ」で親玉を投げ上げて子玉を拾って親玉を受け、親玉のみはね上げ、手にある子玉を捨てて別の子玉を拾い親玉を受ける。これを繰り返して全部の子玉を1回ずつ拾っては捨てて、「おさらい」で親玉を投げたすきに両手で子玉全部を拾い、親玉を受けて全部捨てる。同様に「お二つ」で2個ずつ拾ったり、「おてそみ」では親玉を投げたすきに子玉を拾って反対の手の指に挟む、また「小さい橋くぐれ」では、親玉を投げたすきに左手の親指を人差し指で床にかけた橋の下を、子玉をすべらせて通すなど、次から次に技を展開していく難しい遊び方である。
○狐取り
 狐取り遊びは特殊のもので、縄か紐を使う。これは3人以上でなければダメで、投げ玉や寄せ玉にくらべるとずっと簡単な遊び方である。鬼役の二人が紐を輪にしたものを左右から張って持ち、その向こうにお手玉を数個置いておく。ほかの子供は狐になって、唄に合わせて輪に手を入れて向こうのお手玉をサッと取る。鬼が輪を絞めて腕をとられたら、鬼と交代する。

b 手まり唄
 昔は色糸をくけて作った手まりが主流で、主に投げ上げて遊んだ。次第にゴムまりが普及して
、屋外で地面について遊ぶことが多くなった。採集されている手まり唄は、ほとんど後者のものである。
○輪になってまりを渡す遊び方
 昔はみんながゴムまりを持っていたわけではないので、一つのまりを使ってみんなで遊んでいた。何人かで輪になって立ち、一人が唄いながらまりをつく。最後に「~さんに渡した」の文句で隣の人につき渡し、そのまま隣の人が別の唄でつき始める。
○一人でつく遊び方
 これはお手玉でいう「寄せ玉」と同様のもので、「牛方馬方」などを唄いながら次々に難しい技を出していく遊び方。こちらの方が難しい。足の下をくぐらせるのはもちろん、開いた足の間を前後についたり、また互い違いに斜めにつきながら連続で足の下を左右交互に、外向きに通すつき方もあった。

c 羽根つき・風船つき唄
 ほとんどが数え唄の形式をとっている。ついた数を正確に数えるため、ほかの数え唄のように「一つとせ」とか「一つとのよのえ」の形式ではなく、「ひとめ、ふため」のように、拍子に合わせてゴロ合わせの数え文句になっている。
○羽根つき
 羽根つきには二人で交互につく「追い羽根」と、一人で上向きに繰り返しついて回数を競う「上げ羽根」があるが、唄を伴ったのは概ね後者である。
○風船つき
 ゴム風船が普及するまではもっぱら紙風船で、置き薬などの行商人がくれるのを楽しみにしていたという話をよく聞く。紙風船は打ち方が難しく、ふくらますための穴のところをうまく狙わないと、すぐにしぼんでしまう。

d 鬼決めの唄
 鬼遊びの最初に行うもので、参加者が輪になって片手を出し、唄に合わせて順繰りに叩いたり指を挿し入れて行く。最後の人が鬼になるか、最後の人から抜けていき、同じことの繰り返しで残った人が鬼になる。今はじゃんけんで決めることが多いが、人数が多いといつまでもアイコが続く。それで、昔は唄で鬼を決めていた。

e くぐり遊びの唄
 関所遊びともいい、「通りゃんせ」の遊び方として今でもよく知られている。鬼が二人でアーチをつくって、他の人は列になってその間を次々に通り抜ける。唄の終わったときに鬼は腕を下ろして、つかまった人は列から外れ、同じことを繰り返す。

f 人当て鬼の唄
 鬼は目隠しをして真ん中に立つか屈むかして、その周りを他の人が輪になって唄に合わせてぐるぐると回る。唄の終わったときに、鬼が真後ろの人を推量し、当たれば交代する。「かごめかごめ」の遊び方である。

g 捕まえ鬼の唄
 いわゆる「鬼ごっこ」のことで、今の鬼ごっこは鬼が10数える間に逃げるが、昔はよく唄を伴う遊び方をしていた。その場合、鬼の周りで「人当て鬼」のときと同じように輪をつくってぐるぐると回り、唄の合間に鬼との問答があり、鬼が特定の言葉を言うまで続ける。ある言葉で蜘蛛の子を散らしたように周りの者は逃げていき、鬼はそれを追いかける。

h 子貰い遊びの唄
 大人数の遊びで、「花一匁」の遊び方である。2つのグループに分かれて、それぞれ横一列になり対面し、唄に合わせて交互に出たりさがったりするのを繰り返す。途中の問答と簡単な遊びで勝ち負けを決め、負けた方の指名された人が反対のグループに移る。これを繰り返して、人数の少なくなった方(要件はそれぞれ異なる)の負けとなる。

i 羅漢廻しの唄
 大勢で車座になってする遊びで、一定の文句を斉唱したあと、「ヨイヤサノヨイヤサ」とか「スッテンテンのスッテンテン」などの掛け声を繰り返す。その掛け声の始まりのところで、めいめいに好きな所作をとる。あとは順繰りに、左隣(あるいは右隣)の者の所作のまねをする。つまり、同じ所作が車座の中でぐるぐると回っていく。テンポを上げていって、間違えた者が輪から外れて同じことを繰り返す。雨降りの日に納屋の二階などに集まって遊んだほか、文殊講などで近隣の子供が大勢集まったときにも「はんかち落とし」等と同様、よく遊ばれていた。

j 手遊び唄
○せっせっせ
 二人で対面し、互い違いに手を打ち合わせて拍子をとる遊び方で、「おちゃらかホイ」とか「茶摘み」の手遊びとして今でもよく知られている。手まり唄やお手玉唄として紹介した唄に合わせて、手合わせ遊びをすることもあっただろう。
○その他
 指を使う遊びや、ものまね遊びなどいろいろある。

k 縄跳び唄
 縄跳び自体が比較的新しい遊びなのでそう古い唄ではなく、種類も少ない。主に長縄遊びのときに唄われた。
○一人ずつ順番に跳ぶ遊び方
 「郵便屋さん」の遊び方で、一節唄い終わるまで跳ぶか途中でひっかかれば、次の子に交代する。
○二人ずつ跳んでいく遊び方
 「誰々さんお入り」の遊び方で、まず一人入っておき、唄の半ばで次の人が入る。じゃんけんをして、負けた人は外に出て次の人と入れ替わる。
○その他
 みんなで一斉に跳ぶか、または人数が多いときには8の字に移動しながら次から次に跳んでいく。

l 通り抜け遊びの唄
 主に、長縄遊びの回し手を交代するときなど行われた。鬼(縄を回していた人など)は、長縄を半ばで折り返して左右それぞれに持ち、間を広く開けて向かい合わせに立つ(または短い縄を1本ずつ持つ)。他の者は縄に対して後ろ向きで待つ。イロハニ金平糖うんぬんの文句の後、鬼は縄を好きな形に張る。他の者は上、下、中を宣言したあと向き直り、上ならば二本の縄の上から、下ならば下から、中ならば中から、縄に触れないように通り抜ける。縄に触れた者は外れて、同じことを繰り返す。また長縄遊びに戻る場合は、先に外れた2人が縄の回し手になる。

m 履物隠しの唄
 鬼遊びの一種。参加者は履物を片方脱ぎ、それを並べる。唄の拍子に合わせて並べた履物を順々に指していき、唄の途中の文句(例えば「あー踏みしゃいた」など)を繰り返して順々によけていく。最後に残った履物の持ち主が鬼になる。他の者は、めいめいに自分の履物をどこかに隠す(あらかじめ遊びの範囲や「埋めてはいけない」など適切なルールを取り決めておく)。鬼はそれを捜すが、その際に持ち主は「軒の下」や「西」など、曖昧なヒントを出しておもしろがることもある。

n 拳遊びの唄
 座興唄としての本拳や藤八拳などではなく、子供の遊びとしての拳唄である。じゃんけんに前唄をつけたような簡単なものや、三すくみのポーズ(たとえば清正拳や狐拳など)をとるものがあった。類似するものとして「カード遊び」がある。これは三すくみの絵柄の書いたカードをめいめいに配り、唄のあとで一斉に見せ合い勝負を決める。

o おしあい遊びの唄
 おしくらまんじゅうの遊び方のときに唄った。

p ぶらんこ遊びの唄
 ぶらんこは、いつまでも漕ぎたがる子供が多かったので、平等に遊べるように順序良く交代する目的で唄われた。

q むくろじ投げ遊びの唄
 むくろじは、羽根つきの羽根の尖端についている丸い実である。それを投げて遊ぶときに唄った。

r つくし遊びの唄
 春になり、つくしやセリを採りに行ったときによく遊んだ。つくしをハカマのところでちぎってそれとわからないようにくっつけて持ち、どこが切れ目かあてる遊びのときに唄った。

s つなば遊びの唄
 つばなの時季になると、子供は遊びのかたわらに引き抜いては噛んでいた。遊び唄というほどではないが、つばなに親しみを持っていた昔の子供が、遊びながら唄ったものである。

t 独楽回しの唄
 逆さにした樽などに独楽を打ち、独楽同士をかち当てて長回しを競うときに唄い囃した。

u 囃し唄
 これは特定の遊びによるものではないが、集団で遊びながら口ずさんだりしたものである。尻取り唄や悪口唄など、いろいろある。

v 花鳥風月の唄、動物の唄
 遊びながら、慣れ親しんだ動物や植物を見て唄った。親や年長の者が小さい子に唄ってやることもあり、下記(2)の性格を帯びている場合もある。

(2)子守をしながら唄うもの
a 寝させ唄
 床についた子供や、背中に負うた子供を眠らせるときに唄う子守唄で、母親や祖母のほか、年上の子も唄った。子守奉公で唄った「守子唄」とは性格が異なり、単純に子供を寝かせるためだけに唄ったものである。
 ところで、伝承状況を見ると、同じような唄が飛び飛びに伝承されている。唄の伝承地が入り乱れており、それぞれの地域性はあまり感じられない。それは、この主のものは家族関係の中で唄われるのが主であったので、縁故関係等もあり唄の伝搬が容易に起きたからと思われる。

b 遊ばせ唄
 幼児をあやしながら手遊び等をするときの唄で、「おつむてんてん」や「ちょちちょちあわわ」等は今でも知られている。種類は大変多いが、その性格上、唄とはいえないものも多いので紹介は少数にとどめた。なお、<イ>の「囃し唄」のうち花鳥風月に関するものや、「おんきょうきょう橋」その他の遊び唄を親が幼児に唄ってやることも多々あった。

c 守子唄
 これは子守奉公に出た子供が、奉公先の子供を背に負うて唄ったものである。代表は「宇目の子守唄」で、大人が唄った座興唄や田植唄その他の文句の転用と思われるものも多々ある。子供をあやす唄、眠らせる唄というよりは、うっぷん晴らしの性格が色濃い。

(3)年中行事や通過儀礼の際に唄うもの

a もぐらうちの唄
 小正月の入りの日に、集落の子供達が家々を順繰りに回って、唄に合わせてワラたぼなどで地面を叩く行事。モグラ退治をして、豊作を願うものである。餅などをくれるので、子供にとっては楽しみな行事だったが、衰退した地域が多い。

b よしのみ祝いの唄
 「もぐらうち」をした日の晩には「よしのみ祝い」をした。米・麦・粟・小豆などで炊いたごはんを「よしのみ」といい、子供は親や祖父母と一緒に唄い囃した。翌15日には小豆粥を炊いたり、または残しておいた「よしのみ」で入れ粥にして、家内でお祝いをした。「どんど焼き」をするところも多く、今とは違って昔の子供は小正月をとても楽しみにしていたと聞く。奉公人にとっても、藪入り前の楽しい行事だったという。

c どんど焼きの唄
 小正月の行事。外で櫓を組み火を焚いて、集落の家々からしめ飾り、松飾り、書初めなどを集めて積み上げ燃やす。衰退したが、今でもところどころで行われている。子供だけの行事ではないが、餅や団子を焼いて食べたりしたので、楽しみにしている子が多かったという。

d 虫送りの唄
 農薬のない時代には、害虫の駆除が大問題だった。昔は、盆前後に虫送り(虫を追い払うこと)として、夜、松明を振り回して唄いながら歩くようなことが広く行われていた。今は衰退したが、年中行事の継承と観光目的もあって、緒方町や三重町など、一部地域では「小松明(こだい)」が盛んに行われている。これは田んぼの畦に沿ってたくさんの竿を立て、それに火を燃すものである。

e お盆の唄
 昔のお盆は七夕から始まって、初盆の供養踊りや精霊舟、その後も観音様の踊り、弘法様の踊り、地蔵盆など、八朔踊りまで次から次に盆踊りがあり、子供にとって楽しみな行事だった。ところによっては、盆踊り唄とは別に、親や祖父母が「盆の十六日おばんかていたら」云々の唄を唄ってやることもあった。また「ほうちょうのべのべ今夜の夜食」などといった、お供えのやせうまを作るときの唄なども親と一緒に唄った。

f 御取越しの唄
 御取越しは浄土真宗の報恩講で、子供にとっても楽しみな行事だったという。だれだれさんの家で報恩講があるよと触れ回るときに子供が唄ったもの。この種の講組はたくさんあったが、広く行われたものに「お庚申講」や「文殊講(もんじこ)」がある。後者は今でいう子供会のお楽しみ会のようなもので、堂様や公民館、または座元の屋敷にその集落の子供が集まって、自分たちで何をするか決め(例えば学芸会のようなことなど)、一晩を楽しく過ごすというものである。これに関する唄もあったのではないかと思うが今のところ採集例は見当たらない。

g 亥子の唄
 亥子は、旧の10月の初亥の日の行事だが、今も伝承されている地域では旧暦に関係なく、11月の初亥の日に近い土曜日か日曜日に行うことが多い。元は男の子だけの行事だが、子供が少ないので女の子も一緒に行う地域も増えている。集落内の屋敷のツボを亥子槌で搗いてまわる行事である。その集落の子供会(場合によっては中学生も含む)のうち最年長の者から一人を「頭取」として、他の者はその下につくが、長幼の序がある。頭取は御幣をとって、他の者は唄にあわせて亥子槌で地面をドシンドシンと搗くか、めいめいにワラたぼで地面を叩く(地域によって異なる)。その家のものは、古くは「亥子餅」などをお礼に渡したが、お金を包むところの方が多くなっている。全ての屋敷を廻り終えると、座元の屋敷(頭取の家)に集まる。そこでは、餅をみんなで食べたり、集まったお金を分配したりする(取り分にも長幼の序がある)。昔は一晩をみんなで楽しく過ごしたが、今は公民館で食事をして解散することが多い。
○亥子槌を使う場合
 亥子槌は丸くて扁平な石(人の頭ほどの直径)で、ぐるりに溝が切ってあり縄をめぐらせ、そこから引き綱が四方八方に多数のびている。めいめいに引き綱をとって、唄に合わせて綱を引き引き、オイサオイサと搗いていく。一節終われば、地面にできた窪みに、頭取が御幣を少しちぎって置く。その窪みをまたぎ越してはいけないと言われていた。
○ワラたぼを使う場合
 これは先述の「もぐらうち」と融合したものと思われる。

h 餅踏み唄
 初誕生祝いの行事で、のし餅を赤子に踏ませる行事で唄った。二斗升に流して作った正方形の足餅の上に白紙を広げ、祖父母のこしらえた誕生草履を履いた赤子に踏ませる(男の子は右足、女の子は左足から)。餅踏みのあとは、升や算盤、筆、箕、裁縫道具などを並べておいて、赤子がはじめにどれを触るかでその子の将来を占ったりする。

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