●●● 大黒様の数え唄 ●●●
手まり唄(杵築市溝井)
☆大黒さんという人は ここのお国の人でない 唐から日本に渡るとき
一で表を踏ん張って 二でにっこり笑うて 三で盃いただいて
四つ世の中良い様に 五つ出雲の神様に 六つ婿さん貰うて
七つ何事無い様に 八つ屋敷を買い広め 九つここに蔵を立て
十でとうとう福の神 ちょいと一貫貸しました
亥の子唄(姫島村)
「亥の子餅来たで」
☆エートンサーエートンサー
亥の子の餅を祝わんものは 鬼う生め蛇生め
こってなら人をつけ うなみなら角ん生えた子生め
京は天竺 わが朝に 一つや二つは祝いもの 一で俵を踏ん張って
二でにっこと笑うて 三で酒をつくって 四つで世の中よいように
五つでいつものごとくなり 六つで無病息災に
七つで何事ないように 八つで屋敷を踏み拡げ
九つ米俵うっつんで 十で十並の蔵を建て
十一で金のガンガン湧くように 十二お家の繁盛と申し上げます
サンヨサンヨ
亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 大黒さんという人は ここのお国の人でない
唐から日本に渡るとき 一で表を踏ん張って 二でにっこり笑うて
三で盃いただいて 四つ世の中良い様に 五つ出雲の神様に
六つ婿さん貰うて 七つ何事無い様に 八つ屋敷を買い広め
九つここに蔵を立て 十でとうとう福の神 京は天竺わが朝に
一つや二つは祝いもの 三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ
手まり唄(大分市国分)
☆大黒様という人は ここの国の人でなし 一で俵を踏ん張って
二でにこにこ笑うて 三で杯いただいて 四つ世の中ヨイヤセ
五ついつものごとくなり 六つ婿じょう貰うて 七つ何事ないように
八つ屋敷広めて 九つここに蔵を建て 十でとうとう収めた
※婿じょう=お婿さんを。「婿じょ」は親しみを込めた呼び方(同様に「嫁じょ」とも)
お手玉唄(臼杵市稲田)
☆大黒さんという人は このお国の人でない それから日本に渡るとき
一で俵を踏んばって 二でにっこり笑うた 三で盃貰うて
四つ世の中よいように 五つ出雲の神様が 六つ婿から結びあい
七つ何事ないように 八つ屋敷を買い広め 九つここで祝いましょ
十でとうとう収まった
メモ:地口に近い単調な節の繰り返しで、テンポが速い。
亥の子唄(臼杵市深江)
☆一つ祝いましょ 大黒さんという人は 一で俵を踏んまえて
二でにっこり笑うて 三で盃さし合うて 四つ世の中よいように
五ついつものごとくなり 六つ無病息災に 七つ何事ないように
八つ屋敷を広めて 九つここに蔵を立て 十で京に上って
宝物を買いくらせ あなたのお蔵にちょうどいっぱい ユーンエイ
亥の子唄(佐伯市青山)
☆ここでひとつ祝いましょう 十月の亥の子には 山でも里でも餅を搗く
餅を搗いて祝いましょう 一で俵をふんまえて 二でにっこり笑うて
三で盃かかえて 四つ世の中よいように 五つ厭でも金ができ
六つ無病息災に 七つ何事ないように 八つ屋敷を拡めて
九つここらい蔵が建ち 十でとうとう祝った エイエイ エイトナー
※ここらい=ここらに
亥の子唄(直川村仁田原)
☆亥の子をひとつ祝いましょう
今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて 実に実がなって
一歩に米が七俵 五文にお酒が七銚子 ついても減らん 叩いても減らん
ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出ていけ エーイエイ エイトナ
亥の子餅搗かん者は鬼生め蛇生め
大黒さんという人は 一で俵をふんまえて 二でにっこり笑うて
三で酒をふるもうて 四つ世の中よいように 五ついつものごとくなれ
六つ無病息災に 七つ何事ないように 八つ屋敷を踏み拡げ
九つここに蔵を建て 十でめでたい大黒さん 福の神ゃ入ってこい
貧乏神ゃ出て行け 祝うて三献 まひとつ三献
メモ:直川村で唄われたものは、唄というよりは地口に近い。
亥の子唄(緒方町)
☆今夜の亥の子を祝いましょう 大黒さんという人は 一で俵を踏ん張って
二でにっこり笑うて 三で盃差し合うて 四つで世の中よいように
五つで泉の湧くように 六つで無病であるように 七つで何事ないように
八つで屋敷をまわりうち 九つ米蔵おん建てて 十でめでたく祝うた
亥の子唄(大野町)
☆今夜の亥の子を祝いましょう 大黒さんという人は 一で俵を踏ん張って
二でにっこり笑うて 三で盃差し合って 四つで世の中よいように
五つで泉の湧くように 六つで婿さんあるように 七つで何事ないように
八つで屋敷をまわりうち 九つで米蔵おっ立てて 十でめでたく祝いましょう
手まり唄(直入町長湯)
☆大黒様という人は ここのお国の人でない 唐から日本に渡るとき
潮風に吹かれて それでお色が真っ黒い 一で俵をふんばって
二でにっこり笑うて 三で盃差し合うて 四つ世の中よいように
五つ出雲の神さんが 結び合わせた縁じゃげな 七つ何事ないように
八つ屋敷を踏み広げ 九つここに蔵を建て 十でとうとう納めた 納めた
手まり唄(九重町後野上)
☆大黒様はこの国の人でなし 唐から日本に渡るとき
一に俵を踏ん張って 二でにっこり笑って 三で酒をつくって
四つで世の中よいように 五つで出雲のごとくなる 六つで無病息災で
七つで何事ないように 八つで屋敷を広めて 九つここで家造り
十でとうとうおさめた これでいったいおおわせた
●●● 亥の子餅ゅ搗かんもんな ●●●
もとは悪口唄だったのだが、本来の意味は失われているようだ。
亥の子唄(武蔵町)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅を搗かん者は鬼生め蛇生め
角ん生えた子生め
亥の子唄(杵築市弓町)
☆亥の子亥の子 亥の子餅ゅ搗かん者な鬼ぅ生め蛇生め
角ん生えた子生め サンヨッサ サンヨッサ
搗いた餅ゃ搗き戻せ 盆のように搗くものは
京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いもの
三つと搗いたらもうよかろ
ワーイワッショイワッショイワッショイワッショイ
亥の子唄(杵築市魚町)
☆東西南北万々歳 東西南北万々歳 東西南北万々歳
亥の子亥の子 亥の子餅ゃ搗かん者にゃ鬼ゅ生め蛇生め
角ん生えた子生め サンヨッサ サンヨッサ
搗いた餅ゃ搗き戻せ 盆のように搗くものは
京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いもの
三つと搗いたらもうよかろ
亥の子唄(杵築市馬場尾)
☆亥の子亥の子 亥の子餅ゅ搗かん者な鬼ゅ生め蛇生め
角ん生えた子生め 京は天竺わが朝に 一つや二つは祝いのもの
三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ
メモ:農家では「豊年満作万々歳」、商家では「商売繁盛するように」、男児のない家では「この家にぼんのでくるごと」など、その場その場で適宜、冒頭に挿入して唄うこともあった。
亥の子唄(大分市国分)
☆今夜の亥の子を祝わん者は 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め
メモ:国分ではワラてぼを使っていた。餅ではなく、おはぎをくれたとのこと。この行事は大分市内では全く廃絶したが、他地域では今なお行っている集落がある。
亥の子唄(臼杵市深江)
亥の子唄(大分市国分)
☆今宵さの亥の子餅ゆわわん者は 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め
亥の子唄(臼杵市深江)
☆搗かいな 搗かいな
亥の子餅うくれんもんな鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め
大きな子もこんめえ子も杵う取って投げた
田中たよむさんが棚から落ちて 缶子踏み割り猫ん御器う蹴割り
鉈で足う切る不調法な男 ヘンテー ヘンテー ユーンエイ
※こんめえ=幼い
たよむさん=太右衛門さんの転訛
亥の子唄(津久見市)
☆亥の子 亥の子 こいさんの亥の子 祝わんもんな皆バカよ
鰯の頭ヘイコン うるめん頭ヘイコン
麦餅ゃいらんせん 米ん餅くだんせ
亥の子唄(蒲江町蒲江浦)
☆亥の子の餅をくれんうちゃ 鬼ゅ生め蛇生め
角ん生えた子生め ヒンフンミーヘー
※くれんうちゃ=くれない家の者は
亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅くれにゃ 鬼生め蛇生め
角の生えた子を生め おばさん餅くだんせ
餅くれにゃ 小便たごチチ割るど
買うて祝わにゃ ヤーさんに祝え
※チチ割る=「チチ」は強意の接頭辞 やや荒っぽい言い回し。
亥の子唄(佐伯市木立)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅搗けつけ
搗かんもんな皆ばか 鬼生め蛇生め 角の生えた子生め
ここん旦那さんなぶんぶん分限者 銭も金も湧いてこい
福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出ていけ 餅一つ祝わんせ
亥の子唄(鶴見町島江)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅う搗かんもんは鬼生め蛇生め
角の生えた子生め カンクロ餅ゃいらんど 白餅を十ばかり
※餅う=餅を
カンクロ餅=かんころ餅
いらんど=いらないぞ
亥の子唄(米水津村浦代浦)
☆亥の子餅ゅくれんやた鬼生め蛇生め 角の生えた子生め
※くれんやた=くれない奴は
亥の子唄(米水津村竹野浦)
☆亥の子 亥の子 今夜は亥の子
亥の子餅搗かんもな鬼生め蛇生め 角の生えた子生め
亥の子唄(挾間町谷 中村)
☆今夜の亥の子 祝わん者は鬼生め蛇生め 角生えた子生め
祝うた門には福来る 最後にも一つ添えちょけ ま一つ添えちょけ
亥の子唄(大野町)
☆今夜ん亥の子 餅つかんもんな 鬼生め蛇生め 角ん生えた子生め
亥の子唄(緒方町)
☆今夜の亥の子 祝わんものは 鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め
亥の子唄(玖珠町)
☆亥の子 亥の子 亥の子餅う祝わんもんな
鬼う生め蛇生め 角ん生えた子生め
●●● 杵築の町の千太郎さん ●●●
亥の子唄(国東町浜)
「祝わせちょくれ」
☆ヨーイヨーイ ヨーイヤナ アレワイセ コレワイセ
サッサーヤーワドッコイセ
杵築の町の千太郎さん まだも九つならん年 若殿さまからもらわれて
池の端に田をつくり 一株作れば二千石 二株作れば四千石
お飯に炊けば富士の山 お酒に造れば泉酒 これの屋敷はよい屋敷
お鶴とお亀が舞い遊び さよう さよう
船が難船せんように 死んでも命があるように さよう さよう
●●● これの座敷はよい座敷 ●●●
亥の子唄(武蔵町)
☆そもそも亥の子の始まりは 京や天竺わが朝に
唐土から飛んで来て 五穀成就の鬼となる
これの これの座敷はよい座敷 南下がりの北上がり
東方朔は八千歳 浦島太郎は九千歳 千も万も搗いて御慶とせ
サンヨサンヨ
亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 これの座敷はよい座敷 東下りの西上り
南上りの北下り 東方朔は八千代 浦島太郎は九千代
千年も万年も生くるよに サンヨサンヨ
※生くるよに=生きるように
●●● 鶴と亀とが舞い込んで ●●●
亥の子唄(杵築市)
☆亥の子亥の子 亥の子様を念ずれば 鶴と亀とが舞い込んで
家は栄えて神の福 蜘蛛のえばりをつくときにゃ 京は天竺わが朝に
一つと二つは祝いもの 三つと搗いたらおおかたせ サンヨサンヨ
※蜘蛛のえばり=蜘蛛の巣
メモ:悪口唄ではない本来の文句だが、あまり唄われていない。
●●● お大黒の能には ●●●
亥の子唄(佐賀関町西脇)
☆一つ祝いましょう お大黒の能には 銭も何もがらがら
金の恵比寿の福の神 ハヤッサイノーヤッサイノー
一振り二振り金剛界 ヤレやったかぶんまくろう
鍛冶屋の金クソ天竺までも祝いて それが足らんちゅて角のえのみの木
ちんぐりむいてひり割った ヒェーンエーイ ここの家は繁盛々々
※足らんちゅて=足りないと言って
●●● 男の子を祝いましょ ●●●
亥の子唄(臼杵市大浜)
☆みそすりゴンゴン みそすりゴンゴン
一つ祝いましょ 男の子を祝いましょ エントンセ エントンセ
亥の子餅う搗かんもんな 鬼う生め蛇生め 髭の生えた子生め
ユーンセー
※餅う(もちゅ)・鬼う(おにゅ)=餅を・鬼を
☆一つひよどりゃひよの山祝え 二つ船乗りゃ船んさま祝え
三つみみずは土の中祝え 四つ嫁じょは姑を祝え
五つ医者どんは薬箱祝え 六つ婿じょは嫁じょを祝え
七つ名子どんな鍬と鎌祝え 八つ山伏ゃほうらんけを祝え
九つ紺屋は窯の中祝え 十で殿さま蔵の中祝え
ユーンエー ユーンエー
※婿じょ・嫁じょ=「お婿さん」「お嫁さん」程度の、親しみをもった呼び方
名子どん=小作人
ほうらんけ=ほら貝
●●● 銭三文見つけち ●●●
亥の子唄(津久見市保戸島)
☆亥の子ひとつ祝いましょう 亥の子 亥の子 亥の子餅ゃ搗っかいな
角ん生えたこれん これんの下で 銭三文見つけち 一文で柿買う
二文でじょうり買う じょうり屋のおばんが焦がれたままよ
商売 商売 商売よ おかみさんの帷子 貧乏神は出ち行け
福の神は入っち来い ヨイショヨイショ お家のご繁盛
※じょうり=ぞうり
メモ:臼杵以北の亥の子唄は地口に近い単調な節を繰り返すばかりだが、保戸島のものは半ばに別の節をイレコにして変化を持たせてある。この傾向は県南に行くほど顕著で、節がやや技巧的になってくる。
●●● ぶんぶん分限者かんかん金持ち ●●●
亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆祝いましょう 亥の子亥の子 亥の子のお餅は 搗けば搗くほど
黄金が湧き出る 妙や目出度やお多福繁盛 繁盛広めて蔵をも建てて
蔵の中には穀金ゆ詰めて 呑めや大黒唄えや恵比須 中で酌とる福の神
根を持って咲いた ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
誰々が代になったら 金にゃしゃごん しゃごんじゃ
亥の子唄(直川村赤木)
☆亥の子をひとつ祝いましょう 今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて
実に実がなって 米が一歩に七俵 酒は御門に七銚子
ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出て行け エイエイエイトナ
亥の子唄(直川村直見)
☆亥の子をひとつ祝いましょう 今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて
実に実がなって 米が一歩に七俵 酒は御門に七銚子
ここん旦那さんな ぶんぶん分限者 かんかん金持ち
福の神ゃ入ってこい 貧乏神ゃ出て行け 祝うて三献 まひとつ三献
※まひとつ=もう一つ
●●● 赤いたすきで金はかる ●●●
亥の子唄(蒲江町蒲江浦)
☆亥の子 亥の子 今夜の亥の子 亥の日を祝うた者は
正月見れば松島飾る 四方の隅に蔵建て並べ
ここのおかみさんないつ来てみても 赤いたすきで金はかる
ひとつ祝いなんせ スットントンのトン
●●● 大文字かぼちゃ ●●●
これは大昔の流行小唄の転用。吉原の大店「大文字屋」の主人は、娼妓の食事をかぼちゃばかりにして倹約して商売を大きくした云々、背が低くて頭の大きい人だったため「大文字かぼちゃ」と渾名された由。それからきた悪口唄だが、剽軽な人で近隣在郷の者が唄い囃すと一緒に唄った始末だったとかで、流行に拍車をかけた。端唄・小唄としては全く廃絶しているも、堅田踊りの演目として今なお唄われている。
ところで、「大文字かぼちゃ」の節は三弦唄としては易しい部類だが、子供が唄うには難しすぎる。今の子供のように4拍子や3拍子などの拍子感覚が身にしみついているわけではなく、「間をとって唄う」ような拍子感覚に馴染んだ子にとってはまた違ったのかもしれないが、この唄を亥の子唄に転用したとは驚きである。
亥の子唄(蒲江町西野浦)
☆ヤーさんヤーさん ヤーさんが餅は 搗いてもねれん 叩いてもねれん
エーイ エーイ バー かかはハリセー ととはコリャセー
手水でようねれた ヨイヤニセー ヨイヤニセー
亥の子唄(鶴見町羽出浦)
「亥の子一つ祝いましょう」
☆祝いめでたな若松さまよ 枝もサッサ 栄えて ホンニ葉もしげる
よいわいの よいわいの ヘントンヘントン
☆ここの屋敷はめでたな屋敷 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
☆ここの屋敷に井戸掘り据えて 水は 湧かずに 金が湧く
☆ここの姉さんいつ来てみても 茜 たすきで ねねはかる
☆ここの嫁さんいつ来てみても 茜 たすきで 金運ぶ
☆ここの旦那さん真浦に網を置き込んで 鰯ゃ 沖を飛ぶ 前をからす
☆姉と妹に紫着せて どちが 姉やら 妹やら
☆沖の暗いのに白帆が見える あれは 紀州の みかん船
☆貰うて帰りますお旦那様よ 明日は お礼に 参ります
○亥の子の神さん祝うてくんなんせ あとをまどうてくんなんせ
よおき白餅くんなんせ
※まどうて=(元の状態に)埋め戻して
よおき=たくさん
亥の子唄(鶴見町島江)
「亥の子一つ祝いましょう」
☆祝いめでたや若松さまよ 枝もサッサ 栄えて ホンニ葉もしげる
サーよいわいの よいわいの ヘントンカントン
☆ここのお庭に井戸掘り据えて 水が 湧かずに 金が湧く
☆ここのお家はめでたい屋敷 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
「亥の子の神様祝うてくんなんせ」
亥の子唄(鶴見町大島)
「祝いましょう 祝いましょう」
☆祝いエー めでたな若松様よと申します
そりゃまたどう言うて申すかな 枝も チョイトセイ
栄える ホンニ葉も茂る ヨサよいわいな よいわいな
☆ここの ご家はめでたいなご家と申します
そりゃまたどう言うて申すかな 鶴と 亀とが 舞い遊ぶ
☆ここの 庭にと 井戸掘り据えてと申します
そりゃまたどう言うて申すかな 水の 涌くほど 金が涌く
亥の子唄(米水津村浦代浦)
「エイトナ エイトナ エントンついたら地がほげた
後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い
※地がほげた=地面に穴があいた
まどうて=(元の状態に)埋め戻して
☆祝いめでたな若松様よ 枝も栄えて葉も茂るヨ
面白いな よいわいな
「エイトーエイトー エントンついたら地がほげた
後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い
☆沖のカモメに潮時とえば 私ゃ立つ鳥 波に問えヨ よいわいな
「エイトーエイトー エントンついたら地がほげた
後をまどうてくれなんせ 山猫やんちゃん送って来い来い
☆貰うて帰りましょう旦那様よ 明日はお礼に参りますよ 面が白いな
「ぶんぶん分限者 ここのとんたんな分限者 銭も金も湧いて来い来い
亥の子唄(米水津村竹野浦)
☆エイトンジョーヤ 亥の子の餅は石で搗く 搗けたらめれんと申します
セイヤ はれさ引く手も ほんに猿がまなこ サーよいわいな よいわいな
●●● お正月さま ●●●
お正月の唄(杵築市納屋)
☆お正月さまはどこから来るか かんじょう屋の木戸まで すずに酒入れ
袂に餅入れ こんぶりこんぶりござる すいすいござる
正月の唄(臼杵市海添)
☆お正月さまはどこからござる ブーブー山の木の下 羽根と羽子板
重箱に餅入れて 瓢箪にあかを入れ 山芋を杖につき
ひょっくりひょっくり ござった
※あか=酒
メモ:正月に、親や祖父母が子に唄ってやったり、物ごころのついた子供が口ずさんだりした。
正月の唄(臼杵市東福良)
☆お正月さまはどこから来る ブーブー山の下から すずに酒入れ
袂に米入れ 重箱に餅入れ 羽子板腰にさし 山芋の杖ついて
ひょっくりひょっくり ござった
※すず=お神酒徳利
正月の唄(佐伯市木立)
☆正月どんはどっからござるか 扇山のそらから さぜえぶきい酒う入れて
つるの葉に米う入れて 鼻え杖うつっぱって へっこらへっこらござった
エッチキ蕎麦食うた 小豆食うた あぶらげ食うて すべくった
※さぜえぶきい=さざえブクに(さざえの殻に)
酒う(さきゅう)=酒を う=「を」にあたる助詞
鼻え杖う(はねえつよう)=鼻に杖を え(い)=「に」にあたる助詞
すべくった=「すべった」の強意(やや俗っぽい言い回し)
メモ:正月に親や祖父母が子に唄ってやったり、または兄弟姉妹で一緒に唄った。
正月の唄(鶴見町羽出浦)
☆正月さんが来た来た だいだい木の根まで だいだいをかむげて
つるの葉をくわえて 餅を袂に入れて 金の杖をついて
へっこらへっこら 来やんした
●●● へろへろの神さま ●●●
どんど焼きの唄(杵築市)
☆へろへろの神様は 正直な神様で おささの方へ面向きよる 面向きよる
※おささ=お酒
●●● トンドタギリギッチョ ●●●
トンド焼きの唄(鶴見町羽出唄)
☆トンド トンド タギリギッチョ ギリギッチョ ギリギリもうちゃかんまんが
かもうこたかもうが 源氏が怒るけ ヤレ囃せ囃せよ
※もうちゃ=回っては かんまんが=構わないが
かもうこたかもうが=構うことは構うが 怒るけ=怒るので
☆トンド トンド タギリギッチョ ギリギッチョ ギリギリもうちゃかんまんが
かもうこたかもうが 源氏が怒るけ ヤレかやせかやせよ
※かやせ=倒せ
●●● もぐら打ちゃ十四日 ●●●
もぐら打ちの唄(安心院町)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆飯ゃ腹いっぺえ 明日なさ おかい
※腹いっぺえ=腹いっぱい 明日なさ=明日の朝は おかい=おかゆ
もぐら打ち唄(九重町)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆げえは十五日 餅おくれ 餅おくれ
※小豆げえ=小豆がゆ
ぶりこ打ちの唄(玖珠町柿西)
☆もぐら打ちゃ十四日 小豆粥は十五日
●●● よしのみ一杯 ●●●
よしのみの唄(中津市下正路町)
☆よしのみ一杯 粥一杯 鍋釜売ってもよしのみゃ祝え
よしのみ一杯 粥一杯 長々お世話になりました
よしのみ一杯 粥一杯 ごりょんさんさよならケツねぶれ
※よしのみ=米・麦・粟・小豆で炊いたごはん。
メモ:正月十四日、小正月前夜のお祝いを「よしのみ祝い」という。奉公人は、藪入りを迎える明るい気持ちで唄ったものである。
●●● 粟ん鳥、稗ん鳥 ●●●
小正月の昼間に、子供が割竹を振り回して歩きながら大声で唱えた。豊年を願うものである。
鳥追いの唱え(国見町岐部)
☆粟ん鳥ゃホー 稗ん鳥ゃホー
鳥追いの唱え(大分市国分)
☆粟ん鳥 稗ん鳥 ショイショイ 田原まで飛んで行け
●●● 実盛どん ●●●
虫送りの唄(中津市福島)
☆実盛どんはごうじんだ ごうじんだ その虫は おん供で
アータフーケ マンプクリン エーイエーイ ワー
虫送りの唄(湯布院町由布院)
☆実盛どんのごうじんだ 後ぁ富貴 満福利
虫送りの唄(玖珠町)
☆実盛どんなごうじんだ 後ぁ富貴 満福利
●●● 盆の十六日 ●●●
お盆の唄(杵築市馬場尾)
☆盆の十六日おばんかて行たら 上がれ茶々飲め やせうま食わんか
ほうちょうのべのべ今夜の夜食 茄子きりかけ ふろうの煮しめ
※おばんかて=おばさんの家に
やせうま=のべぼうちょうに黄な粉をまぶしたおやつで、お盆のお供えにした
のべのべ=伸ばせ伸ばせ
メモ:お盆の頃に親、また祖父母が子供と一緒に唄ったもので、盆踊りの文句の転用。
お盆の唄(竹田市)
☆盆じゃ提灯じゃ 明日の晩は祝言じゃ
☆お盆の十六日おばんかた行ったら 上がれ飲め飲め やせうま食わしょ
メモ:おばんかた=おばさんの家に
やせうま=のべぼうちょうに黄な粉をまぶしたおやつ(お盆のお供え)
●●● 柿なれはらめ ●●●
柿の表年を願う唄(佐伯市木立)
☆はらめ はらめ 柿なれはらめ はらまにゃ伐って 飛ばするぞ
●●● 御取越参っちおくれ ●●●
御取越誘いの唄(豊後高田市田染)
☆御取越参っちおくれ じいさんもばあさんもこけんごち参っちおくれ
煮豆もたけた 煎菓子も入れた みんな早う次郎やん方に参っちおくれ
じいさんもばあさんも 早う参っちおくれ
※こけんごち=転ばないように
●●● 家移りげえ ●●●
家移り粥の唱え(大分市国分)
☆家移りげえ 何食おう けえの国のけえ太郎 投げ込みけえする けえする
※げえ=粥
メモ:新築祝いのお座の前に、大黒柱その他に棟梁・その家の長男・親戚の長男の3人がお粥さんを備える行事で唱えた。
●●● 一つ踏めば千石 ●●●
餅踏み唄(本匠村)
☆誕生餅一つ祝いましょう
もう一つ祝いましょう 祝うて三坤祝いましょう
右の(左の)足から踏みましょう 千石万石踏み拡げ
今年ゃ豊年穂に穂が咲いて 道の小草に米がなる
東の方に蔵建てて 西の方にも蔵建てて 千石万石入れましょう
東の蔵に米つめて 西の蔵にも米つめて 千石万石祝いましょう
餅踏み唄(佐伯市青山)
☆ヨシ子ちゃんお誕生日
一踏み踏んだら千石で 二踏み踏んだら二千石
三千石に踏み広め 東の方には金の蔵 西の空き地に銀の蔵
空いたところに瑠璃の家 鶴は千年 亀は万年
百まで長命おめでたや おめでたや
餅踏み唄(佐伯市木立)
☆一つ踏めば千石 二つ踏めば二千石
三千石のお祝いに 鶴は千年 亀は万年
あなた百までわしゃ九十九まで ともに白髪のはゆるまで
百まで生きて米かめ米かめ 鶴は千年 亀は万年 千石も万石も
この子が蔵を建てますように
餅踏みの唱え(大分市国分)
☆ヨイショヨイショ ともに白髪の生えるまで
アー踏みましょ踏みましょ ヨイショヨイショ