玖珠郡に広く流布している文句で、特に北山田では盛んに口説かれている。


三日月の滝の由来

国は西国豊後の国よ 音に聞こえし三日月の滝 聞くも語るも涙の種よ 六十三代醍醐の帝 祖父に持たるる小松の女院 生まれながらに優しい気立て 蝶よ花よと御成長なさる 人に優れたきれいなお方 琴にかけては当世一よ 花に譬えて申してみれば 立てば芍薬坐れば牡丹 歩く姿は姫百合の花 何に不自由のない身であれど 月に叢雲花に風 当時宮中で美男と呼ばる 上に使える有原朝臣 父に持たるる正高公よ 吹くや名手の横笛に 耳を傾く宮人達は いつか目を引き袖を引く 流す浮名の水の面 落とす波紋は都の人の 口に上りてそれからそれと いつか上聞き怒りに触れて 姫は哀れや出雲の国に 君は西国豊後の国は 遠く離れし野上の里に 離れ離れの月日を仰ぐ 燃ゆる思いの遣る瀬無く 日にち毎日泣き暮らす 思い余りて西国なさる これに供する十二の妃 鏡抱きて逢瀬を祈る 肥後の小国に鏡を納め 映る鏡は日に日にかわる 今に不思議は鏡が池よ 迷い彷徨い幾日を重ね 慣れぬ旅路も君恋しさに たより訪ねてこの地に着けり 語る樵夫の話を聞けば 憐れ訪ぬる恋しき君は 矢野検校に養子の話 今は果てなく力も尽きて 頼む糸とて早絶え果てて もはや望みもこの世にあらず 積もる思いを涙でつづる 言葉切れ切れただ涙川 心急き急き雪駄を揃え 死出の旅路に草踏み分けて 飛ぶや飛沫に身は消えていく あわれたちまち涙で曇る 霊は今なおこの地にとまり 滝の神ぞと親しく祀る 涙絶えなき三日月の滝 響く滝壺千尋の水は あわれ涙の嘆きの声よ 心うたたに見上げる松は 滝に映りて影なお寒し 続く涙の御幸橋 通る人ごと涙を絞る 移り変われど変わらぬ情史 幾代伝えんこの語り草 綴る涙の三日月の滝 滝の響きに名残は尽きぬ 氏子ともども郷土は栄ゆ 絵巻姿に月影動く 老いも若いも手に手を取りて 我を忘れて一夜を過ごす 踊り楽しむ供養のために ともに踊れば早明けの鐘 知らず更けゆく明るい夜空 明けて平和の希望に燃ゆる 村は栄ゆる郷土の踊り こんな口説もまずこれまでよ