夢の浮橋

下記3点に内容を絞って一から出直しです。 民俗・文化風俗や伝承音楽の研究に寄与できればと思っています。 ・大分県の唄と踊りの紹介 ・俚謡、俗謡、新民謡の文句の蒐集 ・端唄、俗曲、流行小唄の文句の蒐集

2019年05月

佐渡おけさ(盆踊り唄)
〽ハー佐渡へ(アリャサ)
 佐渡へと草木もなびくヨ(アリャアリャアリャサ)
 佐渡はいよいか住みよいか(アリャサッサッサ)
〽佐渡へ 佐渡へと枯れ木を流す 流す枯れ木に花が咲く
〽来いと 言うたとて行かりょか佐渡へ 佐渡は四十九里波の上
〽波の 上でもおじゃるならおじゃれ 舟にゃ櫓もある櫂もある
〽雪の 新潟は吹雪で暮れる 佐渡は寝たかや灯が見えぬ
〽泣いて くれるな出船の際に 沖で櫓櫂が手につかぬ
〽おけさ 踊るなら板の間で踊れ 板の響きで三味ゃいらぬ
…おけさ節の代表格。村田文蔵をはじめとする名人の歌声がレコードで広まり全国的に大流行した。「おけさぞめき」「選鉱場おけさ」も共通にて省略する。

佐渡おけさ(勝太郎節)
〽ハー月の 出汐と約束したがヨ 月は早う出て森のかげ ハ アリャサ
〽島の 乙女の黒髪恋し 一度行きたい佐渡ヶ島
〽泣いて くれるな都が恋し 鳴くな八幡のほととぎす
〽異見 せられて差しうつむいて 泣いていながら主のこと
〽好いた お方に謎かけられて 解かざなるまい繻子の帯
〽泣いた 涙の乾かぬうちに またも泣かすか暁烏
〽離れ ばなれに咲いてはおれど 水に浮草 根はひとつ
〽おけさ 踊りについ夜が更けて 月も傾く佐渡の夏
…小唄勝太郎の十八番。自身のアレンジによる端唄風のおけさ節で、戦前に流行した。

佐渡おけさ(米若くずし)
〽ハー島の(アリャサ) 乙女の黒髪恋しヨ(ハ アリャアリャアリャサ)
 「坊やはよい子だねんねしな 里の土産に
 何貰うた(ハアリャアリャアリャサ)
〽徒し 徒波寄せては返す
 「袖に松風 村時雨 島の娘が
 船を待つ
〽おけさ 踊りについうかうかと
 「月も踊るか佐渡ヶ島 おけさ踊りに
 夜が更ける
〽佐渡へ 佐渡へと草木もなびく
 「佐渡はいよいか住みよいか
 唄で知られた佐渡が島
〽わしが 心は深山の紅葉
 「ういの奥山 里遠く
 秋が深まりゃ色を増す
〽雪の 新潟は吹雪に暮れて
 「おけさくずしの音も冴えて
 佐渡は寝たかや灯が見えぬ
〽五十 三里は踊りに更けて
 「佐渡はよい島 情け島
 月も一夜の宿を借る
〽真野の 入江は時雨に暮れて
 「焦がれ待つ夜の磯千鳥
 いつか浮名の波が立つ
〽波の四十九里 近そうに見えて
 「私ゃ渚のつなぎ船
 行くにゃ行かれず泣き明かす

新おけさ(歌謡調)
〽徒し波 寄せて返して岬は曇るヨ
 逢えぬ辛さに日も曇るヨ(アリャアリャアリャサ)
〽流れ雲 せめて一夜は都の空へ わしが涙の雨と降れ
〽漁火の 燃ゆる思いに千鳥が鳴いて 主に逢瀬の夜が更ける
〽捨て小舟 櫓櫂なければ波風まかせ 佐渡と越後の間を行く

新おけさ(米若くずし)
〽奥山で ひとり米搗くあの水車ヨ
 「誰を待つやらくるくると
 回りつきせぬ 水車ヨ(アリャアリャアリャサ)
〽しちく竹 元は尺八 半ばは笛で
 「末はそもじの筆の軸
 思い参らせ 候かしこ

新潟おけさ
〽徒し 徒し徒波寄せては返すヨ
 寄せて返して ヤーレー また寄せる
〽ままよ ままよ鹿島に神あるならば 逢わせ給いや 今一度
〽山で 山で蹴っ転がした松の木ゴロ太のようでも
 妻と定まりゃ 辛抱する
…古町芸者による「おけさ節」、洗練された節回しの中に、頭3字の返しなど「ハイヤ節」の面影を残している。

はねおけさ(おけさアイヤ)
〽おけさアイヤーノ おけさおけさ今朝出たおけさヨ
 今朝もおけさでヤーレ 目が覚めた
 「裏の畑の莢豆は 一莢走ればみんな走る
 私ゃお前さんにヤーレ ついて走る
〽おけさ 竹になりたや紫竹の竹に 元は尺八 中は笛
 「末はそもじの筆の軸
 思い参らせ 候かしこ
〽おけさ ありゃドンチャン揚屋の二階で おけさ踊りの 絶え間ない
…宴会のはね前に唄われた。魚沼方面のものが著名。

はねおけさ(塩沢)
〽おけさ ハーイヤ ハイヤ 踊るなら板の間で踊れヨ アリャサ アリャサ
 板の響きで三味ゃいらぬ アリャサ アリャサ
〽おけさ踊るとて三味のバチ投げた 三味は鳴らぬが唄が出る著名。

浜おけさ(長岡おけさ)
〽押せやインヨー 押せや押せ押せ下関までもヨ(ハヨンヤサ)
 押せば港がヤーレ 近くなる(ハヨイヨイヨイサ)
〽山で 山で伐る木はたくさんあれど 思い切る気は さらにない
 「あらし畑の莢豆は ひと莢走れば皆走る
 私ゃお前さんに ついて走る

出雲崎おけさ
〽おけさ踊りと磯打つ浪はノ(ハ ヨシタヨシタ ヨシタナ)
 いつも心がソーレイ いそいそと(ハ ヨシタヨシタ ヨシタナ)
 「越後 出雲崎 良寛様は 破れ衣に鉄鉢持ちて
  子供集めて毎日日にち 手毬つくやらかくれんぼ
  鬼にされてもその身は仏
 仏心にソーレイ 鬼はない(ハ ヨシタヨシタヨシタナ)
〽今じゃ天下の良寛様も 昔ゃ行脚の 草枕
 「鉢崎 柿崎 柏崎下へ下りて出雲崎 新潟の隣の松ヶ崎
  松前鰊に佐渡わかめ
 五十嵐ゃ干子は 砂だらけ
〽行こか柏崎帰ろか新潟 ここが思案の 出雲崎
 「海の出雲崎ちょいと来て見やれ 春は鰯で大漁の浜よ
  夏は小鯛で舌鼓 秋は秋鯖 嫁には内緒
 冬は鱈の味噌汁 雪見酒
〽こぼれ松葉を手にかき寄せて 殿のご飯を 炊いて待つ
 「下は下げて上は上だり 沖はおつけでへた嵐
  あの船この谷へ入れたなら
 定めし出雲問屋が 繁昌しょかね
…賑やかな節で、長囃子の末尾にて字の節の下句に返るところに特徴がある。

小木おけさ
〽ハー 小木の(アリャサ)
 三崎の四所御所桜ヨ(アリャアリャアリャサ)
 枝は越後へ葉は佐渡へ(アリャサッサッサ)
〽おけさ 正直なら側にも寝しょが おけさ猫の性でじゃれかかる
〽小木の 港も静かに暮れて とまり舟より立つ煙
…素朴な節回し。これが洗練されて現在の佐渡おけさになった由。

寺泊おけさ
〽厚司ヤー(ヨイヨイ)
 エヤー縄帯腰には矢立ヨ(ハ ヨイヨイヨイヨイ)
 伝馬通いがヤーレ 止めらりょか(ハ ヨイヨイヨイヨイ)
〽佐渡へ 八里のさざ波越えて 鐘が聞こゆる 寺泊
〽行こか 出雲崎 帰ろか新潟 ここが思案の 寺泊
 「十七島田 しらはの娘 晒手拭ふわりとかぶり
  寺の大門すたばた行けば 寺の和尚はそれ見るよりも
  答えてやれぬ やれないけれども和尚の身なら
  呼ぶに呼ばれず 手にゃ招かれず
 崖の桜で 見るばかり
〽朝な 夕なの神信心を 一つぁ身のため 主のため
 「オヤオヤ オヤオヤ 瓜瓜 茄子茄子 ヨウガの手
  土手まま這い出す南瓜の手 垣根に絡みつく糸瓜の手
  川から手を出す河童の手 寝ていて手を出す兄さの手
  その手を引っ張る姉さの手 手と手と手
 後は野となれ 山となれ
…三味線のスタッカート奏法「三枚撥」=撥を持つ右手の親指を少し外に出し、弾いた途端に親指で糸を押さえ響きをとめる。出雲崎おけさ同様、長囃子の末尾で地の節の下句に返る。

壁塗りおけさ
〽踊り見るとて葦で目を突いたヨ(アリャサ アリャサ)
 葦は生葦 目に毒だ(アリャサ アリャサ)
〽取っちゃ投げ取っちゃ投げ枕はいらぬ 枕三十八みな投げた
〽三條の鍛冶屋が鍋づる飲んだ お前この酒なぜ飲まぬ
…十日町方面の伝承。

柏崎おけさ
〽吹けよ西風 上がれや日傘ヨ(アーリャ ヨイヨイヨイヨイ)
 かわい殿さのヤーレ 顔見たや(ハ アリャサー ヨイサー)
 「一反畑のさや豆が オヤ ひとさや走れば皆走る
 私ゃあなたにヤーレ ついて走る(ハ アリャサー ヨイサー)
〽竹の小口にシコタンコタンとなみなみたっぷり 溜まりし水は
 澄まず濁らず 出ず入らず
〽あだし徒波 寄せては返す 寄せて返して また寄せる
 「鉢崎、柿崎、柏崎 下へ下がれば出雲崎
  新潟おしもの松ヶ崎 松前にしんで佐渡わかめ
 五十嵐ほしこで 砂だらけ
〽厚司縄帯 腰には矢立 伝馬櫂かく ほどのよさ
〽おさん何する 行灯のかげで かわい男の 文を読む
〽お前と添うなら 死んでもよいが 添うてみたれば 死にとない

三十おけさ(鹿瀬おけさ)
〽三十エー 三十五反の帆を巻き上げてヨ
 沖をめがけて エー乗り出だす
 「行くよだ来るよだ 足音するよだ

角田おけさ
〽おけさ おけさ見るとて橋からとんと落ちてヨ
 おけさ見ないでヤーレ 哀れみた
 「おけさの囃子は梁がなきゃ天井まで

地蔵堂おけさ
〽弥彦山から分水見ればヨ(ハ アリャヨイヨイヨイ)
 今は盛りのヤーレ 桜花
〽金の地蔵堂で名高いとこは 越後蒲原 地蔵堂町
 「日本で名高い信濃川 大河津分水東洋一
  朝の嵐の狭の里 西行泣かした尼がいる
〽今日も地蔵堂で良寛さんが遊ぶ 子供相手に手まり唄
 「国上山寺ほとりに住んで 墨の衣に菅笠かむり
  歌や俳諧経読みまつり 五合もらえばまた遊ぶ

三条おけさ
〽姉さポンポン下駄鼻緒が切れた 兄さたってくりゃれ後生になる
〽盆だてがんね茄子の皮の雑炊だ
 あまり盛り付けられて鼻のてっこを焦がした
〽姉さ天上見やれ夜が明けるそだ 天の川原が西東

博多節
〽百万石の 知行執るよりあなたのそばで
 赤い襷を綾にかけ 手鍋さげても 厭や キタドッコイショ せぬ
 「世の中は好いた同志で暮らしゃんせ はい今晩は
〽博多 オイデマシタカネ 帯締め筑前絞り
 筑前博多の帯を締め 歩む姿が 柳 腰
 「お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽主を オイデマシタカネ 待つ夜はいつしか更けて
 秋というのに気が滅入り 雁の声さえ 細り がち
 「お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽島田 オイデマシタカネ つぶして丸髷結うて
 鏡に向かうて櫛をとり 昔思えば 片 えくぼ
 「苦労のおかげで苦労する オヤおいでましたかね
〽月は オイデマシタカネ 傾く夜は更け渡る
 主の来ぬのに顔そむけ 心細いは 暁の 鐘
 〽お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽主を オイデマシタカネ 松影さし込む月に
 人目をさけし四畳半 嬉しく見交わす 顔と 顔
 「お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽結うて オイデマシタカネ 貰おうか結わずにおこか
 櫛を出したりしまったり 主を待つ夜の 洗い 髪
 「お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽思案に オイデマシタカネ 置く手を胸よりおろし
 それと白川夜船で眠る 主の枕に ささげ たい
 「お月さんがちょいと出て松の影 はい今晩は
〽膝へ オイデマシタカネ 来た子の顔打ち眺め
 お前も親の真似をして 浮気するなと 異見する
 「お月さんがちょいと出て松の影 ハイ今晩は
〽八千代 オイデマシタカネ までもと頼みし甲斐も
 なくて人手に落ち椿 他所の眺めの 床の 花
 「お月さんがちょいと出て松の影 ハイ今晩は
〽板一枚の 下は地獄の船底よりも
 怖いは世間の人の口 人の口には 戸が 立たぬ
 「お月さんがちょいと出て松の影 ハイ今晩は
〽京 大阪 東京三府の地にもない たった一人の貴方に迷い
 惚れたが私の身の因果 苦労駿河の 富士の 山
 「世の中は好いた同志で暮らしたい オヤおいでましたかね
〽いま鳴る鐘は 芝か上野かアリャ浅草か
 また鳴る鐘は泉岳寺 四十七士の 供養の 鐘
 「お月さんがちょいと出て松の陰 ハイ今晩は

正調博多
〽博多帯締め筑前絞 歩む姿が柳腰
〽博多良いとこ朝日に映えて 松と竹とが西東
〽博多へ来る時ゃ一人で来たが 帰りゃ人形と二人連れ
〽筑紫名所は名島に宰府 けやの大門の朝嵐
〽操立て縞 命も献上 堅く結んだ博多帯
〽博多柳町 柳はないが 女郎の姿が柳腰
〽意気地づくなら命もままよ 博多小女郎の末じゃもの
〽恋の中道情けの博多 波を隔ての磯千鳥
〽何の玄海 船底枕 覚めりゃ博多の灯が招く
〽誰に買われて行くとも知らず 博多人形の片えくぼ
…元の「博多節」が門付の唄だとして花柳界で嫌われ、下に見られていた時代があった。それに代わる唄として、「天狗様」という流行小唄をもとに編み出した節を「正調博多」と呼んだ。どちらもよい唄だが、全国人気の点では長い間、元の「博多節」に遠く及ばなかった。
博多節:山村豊子、明石栄検みき光、南地力松、赤坂小梅、市丸、小唄勝太郎ほか
正調博多:水茶屋お秀、赤坂小梅、佐藤松子ほか

かっちり節
〽打ち出す太鼓にかき出すヤマは 博多若い衆の のう三四郎さん 威勢比べ
 それもそうだよ そりゃ嘘ないぞえ トコトンノカッチリカッチリ
〽言うちゃすまんばってん家の嬶手利き 夜着も蒲団も のう三四郎さん 丸洗い
 それもそうだよ そりゃ嘘ないぞえ トコトンノカッチリカッチリ
〽家の親父は位がござる 何の位か のう三四郎さん 酒狂い
 それもそうだよ そりゃ嘘ないぞえ トコトンノカッチリカッチリ
〽春のどんたく賑わう博多 杓子叩くも のう三四郎さん 芸のうち
 それもそうだよ そりゃ嘘ないぞえ トコトンノカッチリカッチリ
〽屋島壇ノ浦に滅びし平家 海の藻屑と のう三四郎さん 消えてゆく
 それもそうだよ そりゃ嘘ないぞえ トコ源氏が勝ったり勝ったり
…関西で唄われた流行小唄が博多で郷土化したもの。

ネッチョン節(博多流し)
〽山は晴りょとて思いは晴れぬ ヨホホイ
 様は浮雲 ネッチョン 旅の空 ヨホホイノホイ
〽晴れぬものなら雨など降らせ どうせ軒端の 濡れ燕
〽主が来たかと開いた雨戸 主は来もせで 風ばかり
〽おぼこ娘は紅葉に桜 嬉し恥ずかし 恋の色
〽逢うて行かんせついでじゃないか 嫌で別れた 仲じゃない
〽浮気同士がこうなりながら 浮気されたら 腹が立つ
〽博多柳町ゃ柳はないが 歩く姿が 柳腰

博多の四季
〽春の博多は 花に包まれ荒津山 他にないぞえ松林
 恵比寿大黒 七福神や稚児の台 ヤットナー ヨーイヨーイ
〽夏の博多は 祇園祭の山笠に 揃い法被の晴れ姿
 見るも勇まし 若い衆の台上がり
〽秋の博多は 箱崎八幡 放静生会 幕の内では三味太鼓
 引く手差す手の 舞の姿の晴れ衣装
〽冬の博多は 若八万の乙子様 年の瀬越しの若夫婦
 そろう笑顔に 厄を落として福迎え
〽春の博多は 東公園十日戎 引いて御神籤 大当たり
 かつぐ福笹 大判小判に大俵

(参考)浪花の四季
〽春の遊びは 門に門松しめ飾り 羽根や手鞠で拍子よく
 笑う門には 七福神のお礼者 たのもう どうれ
〽夏の涼みは 茶舟屋形や通い舟 音に名高い天神祭
 神輿、櫓太鼓に どんつくどんの囃子 花火 酒々
〽秋の夜長は 月のお顔も世の中も まんまるまるく治まりて
 道の小草も 穂に穂が咲いて ヤットナ
〽冬の寒さに 障子開くれば銀世界 子供喜ぶ雪遊び
 兎、達磨さんに 炭団の目鼻 おおつめた

ぼんち可愛いや(博多どんたく)
〽ぼんち可愛い寝んねしな 品川女郎衆は十匁
 十匁の鉄砲玉 玉屋が川へスッポンポン
〽もしもし車屋さん ここから柳町ゃなんぼです
 大勉強で二十五銭 五銭負けちょけアカチョコベ
〽一度は気休め二度は嘘 三度のよもやに騙されて
 浮気男の癖として 女房にするとは洒落かいな
〽もしもし床屋さん 髪をハイカラさんに刈っておくれ
 後ろ短く前長く なるたけ別嬪さんの惚れるよに
〽もしもし髪結いさん 髪を新蝶々に結っておくれ
 前髪高く鬢低く なるたけ殿御の好くように

博多子守唄
〽うちの御寮さんなガラガラ柿よ 見かけよけれど渋うござる ヨイヨイ
〽うちの御寮さんの行儀の悪さ お櫃踏まえて棚探し
〽うちの旦那さんな位がござる 何の位か酒くらい
〽うちの御寮さんな手利きでござる 夜着も布団も丸洗い
〽御寮よく聞け旦那も聞けよ 守を悪うすりゃ子に当たる

相生節(新民謡) 唄:相生検番雪千代
〽博多名物櫛田の銀杏 祝い山笠 千代の松 チョイト相検 今夜もせ
〽祝い山笠六本あれど 道は一筋 右左 チョイト相検 今夜もせ
〽博多小女郎むかしも今も 袖の湊の 泊り船 チョイト相検 今夜もせ
〽袖の湊の友禅しぼり 献上博多の 柳腰 チョイト相検 今夜もせ
〽こぼれ松葉か相生松か 千代の松風 松林 チョイト相検 今夜もせ
〽博多夜鴉あなたのくせは 顔も見せずに 口ばかり チョイト相検 今夜もせ
〽千代の松原沖行く船は ロシヤ通いか 支那行きか チョイト相検 今夜もせ
…この唄は今、全く顧みられずに忘れられている。「博多節」「かっちり節」などの一連の座興唄と同列に扱っても全く違和感がないので、再び普及されればと思う。

玄海ぶし(新民謡) 唄:音丸、伊藤久男
〽今日も玄海荒れよとままよ 唄で船頭衆は沖を行く
 男浪はトントン 女浪はシャンシャン
〽海に霧立ちゃ行く先ゃ見えぬ どこが博多の港やら
 男浪はトントン 女浪はシャンシャン
〽国に仇すりゃ多々良の浜に 天津神風 吹き起る
 男浪はトントン 女浪はシャンシャン
〽別れ惜しさに港を見れば 船は残りの島蔭に
 男浪はトントン 女浪はシャンシャン
〽西の筑紫路 博多が恋し 博多柳町なお恋し
 男浪はトントン 女浪はシャンシャン

博多小唄(新民謡) 唄:藤本二三吉
〽海の中道 門司よりかけて 狭霧がくれの ホイホイ 櫓が響く
〽千代の松原 涙で通や 涙の数ほど 落ち松葉
〽知らぬふりして弁天島は 霧のまんまで 暮れてゆく
〽いとし小女郎の情けに濡れて 恋は色増す 柳町
〽粋な博多の流行の帯は 味な思いを 綾で織る

博多小女郎(新民謡)
〽沖に見えるは毛剃の船か 京の惣七さんがわしゃ可愛い わしゃ可愛い
〽今も偲ばす多々良の浜に 国の護りの風が吹く 風が吹く
〽名島浜辺に不思議は一つ 船の帆柱 石となる 石となる
〽今日も玄海荒れよとままよ 唄で船頭衆は沖を行く 沖を行く
〽奈多の渚に玄海灘の 波は荒波 岸に打つ 岸を打つ
〽奈多の砂山 小松の枝も 横へ横へと寝てのびる 寝てのびる
〽呉一人形は愛しい姿 粋な座敷の床飾り 床飾り
〽博多人形の姿を見ても 粋な博多を偲ばせる 偲ばせる
〽夏の日よけの蝙蝠傘は 博多織りの一重張り 一重張り
〽今宵泊らば博多の水野 川の流れを寝てて聞く 寝てて聞く
〽博多結織り世界の特許 国の誉れと名は響く 名は響く
〽博多柳町 桜はなくも 君の俤 花と見る 花と見る
〽博多柳町まだ目は覚めぬ 今朝は夜明けが遅いやら 遅いやら
〽博多山笠 町から町へ 勇む若衆は練り歩く 練り歩く
〽海に霧立ちゃ行き先ゃ見えぬ どこが博多の港やら 港やら
〽博多小女郎は浮川竹の 淵に沈めど濁りゃせぬ 濁りゃせぬ
〽年の三日は筥崎宮に 今も伝わる玉せせり 玉せせり
〽春の曙 紅住庵に 咲くは幻 糸桜 糸桜
〽別れ惜しさに港を見れば 船は残りの島影に 島影に
〽博多名物 筑前絞 夏も涼しい肌触り 肌触り
〽品のよいのは博多の絞 流行り廃りはありゃしない ありゃしない
〽博多港に小女郎がなけりゃ 命に帆かけ通やせぬ 通やせぬ
〽西で名高い福岡市から 風味豊かな福お菓子 福お菓子
〽泣いてくれるな惣七さんよ 末の世までも切れやせぬ 切れやせぬ
〽月は夜空に蛍は草に 川は那珂川 清流荘 清流荘
〽博多名物どんたくにわか にわか煎餅は博多一 博多一
〽菓子を茶受けに家庭は平和 いつも長閑な日が続く 日が続く
〽菓子になるなら博多の松屋 梅は大宰府 天満宮 天満宮
〽春の夜すがら降る雨さえも 博多小女郎は波枕 波枕
〽博多小女郎の姿も粋に 帯は筑紫の博多織 博多織
〽譬い編み笠姿になろと 深い契りは仇にゃせぬ 仇にゃせぬ
〽西の筑紫路 博多が恋し 博多柳町なお恋し なお恋し

博多月夜(流行歌) 唄:音丸
〽さらばさらばと 港を出たが 残る思いに
 博多見返りゃ 松の月 チョイト 松の月
〽波もしぶきも 恐れはせぬが 沖のかもめは
 寂しがりゃとて 物言わぬ 物言わぬ
〽恋し夜もあろ 櫓櫂も干るろ ともに苦労の
 末を契りの 妻じゃもの チョイト 妻じゃもの
…伴奏に月琴のような音色が効果的に使われ、その節がところどころで、わずかに博多節の三味線の雰囲気を匂わせている。また、1番でいうと「チョイト松の月」のところは、博多節の「ハイ今晩は」の節を生かしている。

岐阜の盆踊りといえば、根尾踊り、郡上踊り、白鳥踊りが著名。

根尾踊り
「どどいつ」
 〽ハーヨーホイ さんより街道 いわしが通る 鯖も出てみよ鯵ょ連れて
 〽さんより踏むとて泥鰌踏み出した 盆にゃ泥鰌汁みなござれ
 〽臼をひきゃこそお手にも触れ 間にゃ見るばか思うばか
 〽どんどいつ踊って社殿の裏で 杉皮めくった仲じゃがや
 〽来いと言付け来るなと手紙 まこと来いやら来るなやら
「さんより」
 〽ア踊り始めはさんよりさまよ 振りよがお手の
  ア振りよがしなやかな アサンヨリ サンヨリ
 〽踊り初めたに皆来て踊れ 過ぎたら踊り 過ぎたら悔しかろ
 〽唄を出したら追いつぎ出しゃれ どぎれは唄の とぎれは聞きにくい
 〽踊らまいかな今年の盆にゃ 子はなし腹に 子はなし身は軽し
「新草」
 〽ヤレ 新草ひね草 ナーヨーホイ 誰が刈り初めたヨー
  ア根尾の伝吉とらの助 ソーライ
 〽唄はよいもの 心の勇む いかな辛苦も晴れてゆく
 〽声は鶯 身は細柳 髪は烏の濡れ羽色
 〽かたい約束 青田の中で 稲の穂結びしておいた
「草刈」
 〽アーエーヨーホイヨイコリャ 草を刈ろうか刈り干しめそか コラショイ
  鎌が切れぬかお愛しや
 〽鎌が切れぬば研いでもやろが わしが研いだと言わしゃるな
「まねき」
 〽アー まねき踊りがヨーエ 習いとて ホ見とてヨー
  傍に居りとてヨー ホ顔見とてヨー
 〽まねき踊りが 習いたか ござれ 金の千両も 持ってござれ
「しっこのさい」
 〽ヤーレ 一つヨーホイ 出しますヨ コリャはばかりながら シッコノサイ
  唄の文句は 知らヨーホイ ねどもヨー
 〽わしが ちょいと出て お邪魔じゃけれど 今宵一夜は 連れ 節で
「やちく」
 〽アーラ 私よそよそ そのまたよそで アラヤーチクサッサ
  村の御作法は知らないけれど アラヤーチクサッサ
 〽わしがちょいと出てしばらく口説く 唄も知らなきゃ文句やも知らぬ
 〽知らぬところは教えておくれ 合わぬところは合わせておくれ
「おわら」
 〽おわらおわら節どこでも流行る わけて根尾村は オワラ よけ流行る
 〽東京西京は針金便り わしとあなたは 文便り
 「アラ どんちゃん好きなら お茶屋の子になれ
  朝から晩までどんちゃんどんちゃん コラサノサードッコイショ
 〽竹になりたや大阪天満の破竹の竹に 元では尺八 中は横笛 そのまた裏では
  芸者や舞妓が絵書く文書く 筆の軸
  「おわらで呑んだ酒まだ酔い醒めない 醒めないはずだよあの娘の酌だよ
「お七」
 〽さあさ皆様さて皆様よ さあさこれから一筋口説く スットコドッコイドッコイショ
 〽口説く文句は何よと問えば 八百屋お七のちょいと物語
「さのさ」
 〽さのさ節 裏の細道さのさで通る トサッサ あれは確かに主の声 ヨイショ
  呼ぶに呼ばれぬネ 客の前 ほんに勤めは辛いもの ヨイショヨイショ
 〽見やしゃんせ 今行く芸者の着物の柄を 背には三味線 裾にゃ撥
  右と左にゃ酒肴 男迷わす高島田
「島田」
 〽島田 ヤーハイ 流れる 金谷は焼ける
  殿の ヤーハイ せき札 ソリャー 何処に立ちょ
 〽島田 親切 丸髷口説 銀杏 返しは 二心
 〽島田 白歯に お歯黒染めて 早く 女房と 言われたい
 〽娘 島田に 蝶々が止まる 止まる はずだよ 花じゃもの
「輪島」
 〽輪島出てから今年で ソーリャイ コイツァ四年 ヨーホイヤーレイノーホイホイ
  ヤレ 能登の輪島へ 戻ヨーホイ りたいヨ
 〽能登の輪島は素麺 どころ 空が曇れば なら ぬ職
「甚句」
 〽甚句踊らばしな良く踊れ しなの良い娘を イヨ 嫁に取る
 〽寝たら寝過ぎょに起こしておくれ 私ゃ五里来て 五里戻る
…上記13種のほかに「草津節」も踊られている。無伴奏で、皆で唄いながら下駄の音でリズムを取って踊る。根尾踊りは、かつては郡上踊り・白鳥踊りと同様に近隣に名を馳せていた旨を古い資料で知った(出典失念)。
※今は、郡上や白鳥の踊りにくらべると衰退著しい由(コメント欄にて教えていただきました)。

白鳥踊り
「源助さん」
 〽ハー源助さん源助さんと言うて鳴く鳥は(ア源助さん コラショ)
  小さい鳥だよ チョイト色どりよ
  小さい鳥だよ チョイト色どりよ(ア源助さん コラショ)
  ヨイヤヨイヤマカ ドッコイサノサ(ア源助さん 源助さん)
 〽郡上の白鳥ゃ住みよいところ 水も清いが 人もよい 水も清いが 人もよい
 〽恋しやさしや雪駄の音は 主はどなたか 知らねども 主はどなたか 知らねども
 〽忍び込んだに添わせておくれ 神も仏も 観音様も 神も仏も 観音様も
「シッチョイ」
 〽私がヨ ちょいと出てソーリャ(アシッチョイシッチョイ)
  べんこよなれけれど 下手なながらもしばらく話す(アシッチョイシッチョイ)
 〽一にゃ 一度は 遊びて踊れ 笛に浮かれて白鳥踊り
 〽二では 人情が 行き交うところ おらが白鳥すみよい町よ
 〽三つ 見事な アミダが淵の 滝の高さとあの音こそは
 〽四では 飛沫で 岩をも砕く 清い流れのあの長良川
 〽五つ 石徹臼 中居の社 千余長らえ大杉並木
「ドッコイサ」(神代)
 〽踊り子様よ 調子そろえて ソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
  べんこそなれど 私ゃ山家の ソーリャ(アドッコイサーノドッコイサ)
 〽山中やの者で 声もたたなきゃ 文句やも知らぬ 知らぬながらも
 〽しばらく話す 一にゃ石徹臼の 威徳寺様よ 二では西洞の
 〽法蓮寺様よ 三にゃ西円寺は 二日町のお寺 四では白鳥の
 〽来通寺様よ 五では小駄良の 円覚寺様よ 六にゃ六ノ里の
「猫の子」
 〽(アヨホーイ ヨイヨイ)誰もどなたも猫の子にしょまいか
  (ア猫の子にしょまいか)猫はよいものヨ コラねずみとる
  (アねずみとる よいもの猫は 猫はよいものヨ コラねずみとる)
 〽猫がねずみとりゃイタチが笑う(イタチが笑う)
  イタチ笑うな われもとる(われもとる 笑うなイタチ イタチ笑うな われもとる)
「場所踊り」
 〽ヤーレ そろりとヨ 輪を作れ そろりやそろりとヨ 輪を作れ
  (ヤーレ そろりとヨ 輪を作れ そろりやそろりとヨ 輪を作れ)
 〽お月の 輪の形に 天のお月の 輪の形に
  (お月の 輪の形に 天のお月の 輪の形に)
 〽お月では 畏れ多い 天のお月では 畏れ多い
  (お月では 畏れ多い 天のお月では 畏れ多い)
 〽車の 輪の形に 王明車の 輪の形に
  (車の 輪の形に 王明車の 輪の形に)
「ヤッサカ」(八つ坂)
 〽アーリャ 一にゃ芋飯 二にゃ握り飯(アヤッサカヤッサイ)
  三にゃ魚飯 四にゃしし飯(アヤッサカヤッサイ)
 〽五では五目飯 六つ麦飯よ 七つ菜飯 八つ焼き飯よ
 〽九では栗飯 十は鶏飯よ だれもどなたもお囃子頼む
「エッサッサ」(世栄)
 〽アリャサ ここに過ぎにしその物語(アドッコイショイ)
  ドウジャイナ その物語(ハエッサエッサエッササー エッササーのドッコイショ)
 〽六十四州は国広けれど 国広けれど
 〽恋と無情は不変なものよ 不変なものよ
 〽明治二十一旧三月の 旧三月の
「ヨイサッサ」(老坂)
 〽一にゃ朝顔 ヨイ 二にゃかきつばた(アラヨーイサッサ)
  朝顔 ヨイ 二にゃかきつばた(アラヨーイサッサ)
 〽三にゃ下り藤 四にゃ獅子牡丹 下がり藤 四にゃ獅子牡丹
 〽五つ位山の 千本桜 位山の 千本桜
 〽六つ紫 桔梗の花よ 紫 桔梗の花よ
「さのさ」
 〽小夜更けて 裏の細道さのさで通る(トサッサイ)
  あれはたしかに主の声(アヨイショコリャ) 呼ぶに呼ばれぬネ 客の前
  ほんにつとめはつらいもの(アヨイショヨイショ)
「ヨイトソリャ」
 〽ハーわしが出いても合わせまけれど(ハヨイトソリャ) 合わぬところはヨーイ
  御免なさりょ(コイツァ御免なさりょ 合わぬところはヨーイ 御免なさりょ)
 〽合わぬどころかよく合いました いつも頼むぞ
  その声で(その声で いつも頼むぞ その声で)
 〽御免なさりょと腰折り曲げて 腰に御免は
  なるものか(なるものか 腰に御免は なるものか)
…郡上踊り、根尾踊りと並ぶ岐阜を代表する盆踊り。白鳥踊りには屋外で踊る町踊りと、神社の拝殿で踊る拝殿踊りがある。町踊りの唄は上記のうち「場所踊り」「さのさ」「ヨイトソリャ」をのぞく7曲と「春駒」「川崎」の計9曲だったが、近年は「春駒」「川崎」は踊っておらず、古調の「場所踊り」や、拝殿踊りの「さのさ」「ヨイトソリャ」等を組み込む場合もあるようだ。

郡上踊り
「川崎」
 〽郡上のナ 八幡 出ていくときは(アソンレンセ) 雨も降らぬに袖しぼる
  (袖しぼる ノー袖しぼる) アソンレンセ(雨も降らぬに袖しぼる)
 〽天の お月様 つん丸こて丸うて 丸うて角のうて添いよかろ
  (添いよかろ 添いよかろ) (丸うて角のうて添いよかろ)
「三百」
 〽ハ揃えてござれ(ホイ) 小豆かすよに後生々々と
  (後生々々とノー後生々々と) ホイ(小豆かすよに後生々々と)
 〽ハヨーイヨイコリャ 今年はじめて三百踊り(ホイ)
  おかしからずよ他所の衆が(他所の衆がノー他所の衆が)
  ホイ(おかしからずよ他所の衆が)
「げんげんばらばら」
 〽ハーげんげんばらばら何事じゃ 親もないが子もないが(アードッコイショ)
  一人貰うた男の児 鷹に取られて今日七日(アードッコイショ)
  七日と思えば四十九日
  四十九日の墓参り おばんところへちょいと寄りて(アードッコイショ)
  羽織と袴を貸しとくれ あるものないとて貸せなんだ(アードッコイショ)
  おっぱら立ちや腹立ちや 腹立ち川へ水汲みに(アードッコイショ)
  上ではとんびがつつくやら
  下ではからすがつつくやら 助けておくれよ長兵衛さん(アードッコイショ)
  助けてあげるが何くれる 千でも万でもあげまする(イヤマカサッサイ ヤットコセ)
「騒ぎ」
 〽ハー 呑めよ騒げよ一寸先ゃ闇よ(コラサ) 今朝も裸の下戸が来た
 〽竹に雀は あちらの藪からこちらの藪までチュンチュンバタバタ羽交を揃えて
  品よくとまる 止めて止まらぬ色の道
 〽娘島田を 根からボックリ切って男の臍に叩きつけ それでも浮気の止まないときは
  宗十郎の芝居じゃないが 行灯の陰からヒューヒュラヒュッと化けて出る
 〽雨はしょぼしょぼ降る 蛇の目の唐傘、小田原提灯 ガラガラピッシャン
  ドッコイ姉さんこんばんは 誰かと思ったら主さんか
 〽竹の一本橋 すべりそうで転がりそうで危ないけれど 蛇の目の唐傘 お手々をつないで
  主となら渡る 落ちて死んでも二人連れ
 〽竹になりたや 大阪天満の天神様のお庭の竹に 元は尺八、中は笛
  裏は大阪天満の天神様の文を書く法名を書く筆の軸
「春駒」
 〽郡上は馬どこ(ホイ) あの磨墨の名馬(ホイ) 出したも
  ササ気良の里(七両三分の春駒春駒)
「ヤッチク」
 〽私がちょいと出てべんこそなけれど(アラヤッチクサッサイ)
 〽私ゃ郡上の山中家に住めば(アラヤッチクサッサイ)
 〽お見かけ通りの若輩なれば(アラヤッチクサッサイ)
 〽声も立たぬがよ文句やも下手よ(アラヤッチク
「甚句」
 〽櫓ヨ 太鼓に ふと目を覚まし(トコドッコイドッコイ)
  明日はヨ どの手で コイツァ投げてやる(トコドッコイドッコイ)
 〽角力にゃ 負けても 怪我さえなけりゃ たまにゃ 私も 負けてやる 
 〽角力にゃ 投げられ 女郎さんにゃふられ どこで 立つ瀬が わしが身は
「古調川崎」
 〽郡上のナ 八幡 コラ出ていく時は(アソンレンセ) 三度見かやす枡形を
  (枡形をノー枡形を) アソンレンセ(三度見かやす枡形を)
「猫の子」
 〽ヤーヨーホーイヤーヨーイ猫の子がよかろ(猫の子がよかろ)
  猫でしやわせ コラねずみょ取る(ねずみょ取るノーねずみょ取る
  猫でしやわせ コラねずみょ取る)
 〽猫がねずみ取りゃいたちが笑う(いたちが笑う)
  いたち笑うな われも取る(われも取る われも取る いたち笑うな 割れも取る)
「松阪」
 〽ヨーホーイも一つしょ(おうさて合点しょ)
  合点と声がかかるなら(コライ コライ)
  これから文句に掛かりましょ(ア ヨイヤナ ヤートセ)
 〽すべてお寺は檀家から 痩せ畑作りはこやしから

高山の盆踊り
「五ヶ村音頭」(万作踊り)
 〽唄い囃せや万作踊り 灘の五ヶ村響くよに
  (ア響くよに 灘の五ヶ村響くよに ホラ ヤッチク ドッコイショ)
 〽声は細越お庭は広し 聴こえますまい隅々へ(隅々へ 聴こえますまい隅々へ)
 〽おらが殿さのヤレ番じゃやら お城太鼓の音のよさ(音のよさ お城太鼓の音のよさ)
 〽お城太鼓の音はよけれども 七つ太鼓を八つに打つ(八つに打つ 七つ太鼓を八つに打つ)
「神先踊り」<岩滝>
 〽てきなてきなの数河坂を ちょいとこだわに立ち止まり
  (ちょいとこだわに立ち止まり イヤハイトセ ヨコノセ)
 〽あかざへ越すとかあか道よ 早く小峠下りついて(早く小峠下りついて)
 〽はや目に見える三少寺 これや峠の大森よ(これや峠の大森よ)
 〽若者どもは慰みよ 岩井の前の一の辻(岩井の前の一の辻)
「しょうがの踊り」<岩滝>
 〽アーヨイヨイヨイ しょうがの婆さは焼餅好きで
  よんべ九つ今朝七つ(ショウガイノー)
 〽しょうがの婆様しょうがい箱貰うた 開けてみたれど何もない
 〽何もないとはそら嘘ですよ 中に小判が五両ある
 〽しょうがの踊りは忙しものよ 殿と語らす暇もなや
「高山音頭」
 〽飛騨の高山 高いといえど(チョコチョイト) 山が高うのうて名が高い
 〽高い山でも 登れば下る 私ゃあなたに片登り
 〽もうし兄様 矢立が落ちる 矢立落ちぬが顔見たい
 〽飛騨の高山 お城の御番 勤めかねたよ加賀の衆が
「やんさ踊り」
 〽やんさ踊りが今始まるぞ(ドッコイショ)
  婆さで手みよ孫抱いて(アヨイヤサノ ヨイヤサノ エーサッサ)
 〽宝出てから折敷地泊まり 干米噛んだよ二合五勺
 〽今年ゃ豊年 穂に穂が咲いて 枡は取り置き箕で量る
…上記のうち「高山音頭」は座興唄の転用。「やんさ踊り」は飛騨地方全域に伝承されており、地域によって呼称が異なる。土地によってはこの唄のことを「五ヶ村音頭」と呼ぶこともあり、やや紛らわしい。

古川の盆踊り
「ぜんぜのこ」
 〽めでためでたの若松様よ 枝も栄える葉も繁る
  (コリャ ついたとてなんとせず ゼンゼノコ オヤマンマノコ)
「松坂」
 〽サーサ 踊ろよお盆の踊り 踊りゃ手が鳴る三味が鳴る
 〽音に名高い古川まつり 起こし太鼓の勇ましさ
 〽天気よければ金森様の お城太鼓の音のよさ

白川の盆踊り
「古代神」(陣屋踊り)
 〽おらがサーサヨー お背戸のショロショロ川に
  昔ゃ蛇が棲む今亀が棲む 亀も亀じゃが人とる亀よ
  昨日四人取って今日五人取りやった 合わせ申せば九人の家内
  そやに取ってくれちゃ人の種ァ絶える サーサヨー
 〽おらが 隣の八兵衛のばばさ 歳は九十九で嫁入りなさる
  前歯日本に鉄漿つけて 白髪三筋に黒びんつけて
  ばばさ起きゃれと孫子の意見 おいでなるかや出雲の神が
  結ばしゃんした縁じゃもの
 〽器量が よいとてけんたいぶりおきゃれ 深山奥山その奥山の
  岩に咲いたる千重のつつじ なんぼ器量よく咲いたかとても
  人が手出さにゃその身そのまま果てる
 〽おらが お背戸に桃の木が三本 中の小さいのに蜂が巣をかけた
  蜂も蜂じゃが脚長蜂よ 足が六本あって羽が四枚ござる
  顔に目があり尻にゃ針ござる おらと殿まと御拝堂の下で
  信心話をしておるときに 西のほうからブンヤと来ては
  殿の顔をちっくりやと刺しゃた おらもそのとききゃ死のかやに思った
 〽この屋 東のあちら向いた山に 石で刻んだ地蔵さんがござる
  女参ればにかほや顔で 男参ればあっち向いてござる
  とかくあの地蔵ゃ色のある地蔵じゃ
「しょっしょ踊り」
 〽ハー ショッショどころか今日この頃は(アーラ ヨイヨイ)
  人の知らない苦労する(アいかにもショッショ)
 〽来いといわれて行くその夜さの 脚の軽さよ嬉しさよ

神岡の盆踊り
「太子踊り」<吉田>
 〽さても(ショイショイ) 見事なお太子桜(ショイショイ)
  元は吉田の常蓮寺(ソリャ ドッコイソリャ ドッコイソリャ
  サッサ ソラ トコドッコイショ)
 〽枝は 釜崎、葉は朝浦 花は船津の町に咲く
 〽いとも 尊いお太子様の 御安置なさる常蓮寺
「船津音頭」
 〽船津太郎兵衛に見せたいものは(アヤッショ) 盆の踊りと稲の波
  稲の波(アヤッショ 盆の踊りと稲の波 稲の波)
 〽殿の若い衆に吉田の小町 何でつるべに橋かけぬ
  橋かけぬ(何でつるべに橋かけぬ 端かけぬ)

滋賀県は「江州音頭」の本場だが、ほかにもたくさんの盆踊りがかつては唄い踊られていた。「四宮踊り」「顕教踊り」「手引き踊り」「表看板」などの古い踊りは、「江州音頭」の隆盛とともに下火になっている。

江州音頭
〽エーみなさま頼みます(コリャショ)
 ヤこれからヨイヤセーのコレ掛け声を(コリャ ヨイトヨイヤマカ ドッコイサノセ)
〽アーさてはこの場の皆さんへ(ドシタ) 文明開化の御代となり
 お顔見たけりゃ(ハイ) 写真あり 声が見たけりゃ(ヨ) 電話あり
 空を仰いだことなれば 鳶や烏と競争して ブンと飛ぶのがこれが飛行機だえ
 こんな便利な世の中に なぜとて写真が物言わぬ 言わぬはずだよ焼いたものじゃ
 焼いたコレ写真に物言わうとて 三年以前に死んでしもうて 影も形もない人に
 物を言わせる これが蓄音機 こんな文明な世の中に 時勢遅れのわたくしが
 演じコリャあげます言の葉は 派手なコレ曳き舟 淀川花火 関取千両幟の抜き読みで
 ここに芸者の松吉が 留関病気を治さんと 松吉貞女のチョイトお粗末は
 これからじゃとて(ソコダ) 皆様よ ことや細かに(ハイ)
 私ゃ訥弁で程よく読めねども これから読み上げ奉る
 アー デンレーレレン デレレンレーン レレレン(ハイ)
 デンレレレーンレーン デンレレレンレレー(ハイ)
 デレレンレ レレーデレレンレ レーンレン
 <以下略>

大津の盆踊り
「さんしょ踊り」
 〽アー 山椒山から アー吹き来るコリャ 風はヨ コレワイサ
  裾や袂にコリャそよそよと アー山椒 それはそよそよとナ アー山椒
 〽山椒小粒でも ひりりと 辛い
  油断なさるな 小鳥やよ 山椒 それは小鳥やよ 山椒
「しょがいな節」
 〽アー 秋が来たやら ドシタヤイ(アードシタイ ドシタイ)
  鹿さえ鳴けば ノーホホエ なぜに紅葉が色づかぬ ショガイナ
  (アー色づかぬ なぜに紅葉が色づかぬ ショガイナ)
「江州音頭」
 (略)

伊香の盆踊り
「八草踊り」
 〽美濃と近江の奥山道を ハッソーハッソー 縫うてつないで
  縫うてつないで新街道 ハッソーヨイショ ハッソーヨイショ ハッソー
 〽八草峠はぜんまいわらび 今は車で 今は車で美濃廻る
「ヤンシキ踊り」
 〽アー大根は 双葉のときから恋されて 聞いてもおくれよ人参さん
  お色の黒い牛蒡さんに 冗談しられてお腹がでっかくなりました
  ドボ漬け桶へと身を投ぎょか 沢庵桶へと身を投ぎょか
  それとも蕎麦屋の婆さん呼んで来て おろしにかけた方がなおよかろ
  ヤンシキ ヤンシキ ヤンシキドッコイ
「フイトサ」
 〽わしの若いときゃ縮緬たすき エトフイトサ 今は縄帯
  縄たすき エトフイトサ オーサ エトフイトサ ドントサ
 〽思うて来るなら裏からおいで 表車戸で音がする
「能登」
 〽能登い能登いとヨ 皆行きヨ 果てるヨ 能登はいよいかイナ
  住みよいかいな ジャントコイ ジャントコイ も一つおまけにジャントコイ
 〽能登の輪島は そうめん どころ 空が曇れば
  皆の衆がしょっくじゃよ
「くずし」
 〽くずしくずしが習いたきゃおじゃれ チョイ 酒の四五升も持ってござれ
  ホリャ持ってござれ 酒の四五升も持ってござれ
 〽おいでなされと言うておいたのに 殿はいかよの御用じゃやら
  御用じゃやら 殿はいかよの御用じゃやら
「しょんがいや」
 〽しょんがいや言うたことがないが 今年ゃしょんがいやのネ 五十年忌
  ションガイヤ 五十年季 今年ゃしょんがいやでヨイヨイヨイ
 〽宮は神明女神であれば 氏子なりゃこそ 恋もする 恋もする 氏子なりゃこそ
 〽女神なりゃこそ踊りの宮が 氏子増えます 栄えます 栄えます 氏子増えます
「江州音頭」
 (略)
「伊勢音頭」
 (略)
「鞍馬音頭」
 〽アー 月の都に曇りなき(アレワヤーノソーコセ)
  ア光のどけき春の日に
  静かにまでも安らかに(アソリャ ヨーイヨーイ ヨーヤマカセ)
 〽澄める都の古は 奈良の都の八重桜 今日九重に匂い出で
 〽流れも清き鴨川や すべしら川の波風も 治まる御代こそめでたけれ
 〽上は一条今出川 中立売りや裃や 宝をまさぐ長者町
「顕教踊り」
 〽顕教ナーヨエー 踊りが習いたかござれヤ(コラショイ)
  金のナーヨー 四五両ももてござれナー
  (アラヨーイヨイー ヨイトコナー ソンリャエ コラショ)

甲賀の盆踊り
「ヤッチクレ」
 〽ヤッチクレの踊りで踊ろじゃないか(ヨーイセ ソリャセ)
  貰うたはよけれど皆様や(ソラ ヤッチョロマカセノ チョロマカセ)
 〽してさっそくではありますけれど 伺い述べますお粗末は
「松坂」
 〽まっつぁか音頭に取り替える(チョイトコチョイ)
  取り替えましたらこれよりも(ソラヤレトコサッサ ヨイヤサノサ)
 〽さても大石内蔵之助 東さ下向をくださんと
「ヤッチュクライ」
 〽やっちゅくらいの踊りはそりゃ貰うた(アレワイショ ドッコイショ)
  貰うたはよけれど声がない(アラ ヤッチュクライノライノライノ ヤッチュクライ)
 〽人の手を刺すあざみでさえも 蛍に一夜の宿を貸す
 〽あなたは灯心 私は油 ともに明るく暮らしたい
 〽竹になりたや尺八竹に 末は夫婦となるわいな
「ソレソレ踊り」<水口町>
 〽盆の十四日にヨ ソリャ踊らぬ者はヨ ソレソレ ナノエ ソレソレ
  藪の木陰で恋をするヨ ソレソレ ナノエ ソレソレ
「ソレソレ踊り」<土山町>
 〽それそれ踊りはヨ 誰でも踊るヨ ソレソレ
  同じあほなら踊りゃんせヨ ほんまかいな トノエ ナノエ ソレソレ
「ソレソレ踊り」<信楽町>
 〽笹ヶ岳おろしはヨ ソレソレ 寒くはないがヨ ソレソレ
  主はろくろでわしゃひでしヨ ソコ ホンマカエ ソレソレ
「推量節」
 〽佐治の小佐治の ドッコイショ 枡形の池は アホラシヤ オマヘンカ
  澄まず濁らず出ず入らず トコヤットコ 推量推量
「やれおせ」
 〽やれ押せそりゃ押せ下関までも ハドッコイ 押せば港が近くなるヨ
  ヤレ押せ ソリャ押せ ヤットヤレ押せ
「カラカラビッシャン」
 〽姉もさすなら妹もさしゃれ 同じ蛇の目の傘を
  カラカラビッシャン カラカラフンダイ
 〽娘十七八 二階の埃 落ちてどなたにかかるやら
「お染さん」
 〽お染さんはどこへ行たヤ お染油屋のたね買いに ドッコイショ ドッコイショ
「表看板」
 〽表看板 枯木と見せて ヨーコソナーコレ 裏で咲くのが藤の花
  モットモソーカイ エーコトナーコレ スッキャンナーコレ
 〽竹の丸太橋 滑って転んで危ないけれどもお手々も引きよて
  お口も吸いよて殿となら渡る 落ちて死んだかて二人連れ
 〽通や名が立つ通わな切れる よそに妻持ちゃ苦でござる
 〽竹に雀はあちらの藪からこちらの藪までチュチュンバタバタ
  羽交をそろえてしなよくとまる 止めて止まらぬ 三全世界の恋の道
「江州音頭」
 (略)

蒲生の盆踊り
「ションガイナ踊り」
 〽ションガイナの婆さんチャン袋へ入れて 底が抜けたらどうなさる ションガイナイ
「江州音頭」
 (略)

志賀の盆踊り
「しょうがない節」
 〽盆にゃ踊ろし ヤッコラセ ヤッコラヤッコラ
  正月にゃ寝よしヨーエ 長の夏にや草取ろし ショーガイナ
  コラ草取ろしヨーエ 長の夏にや草取ろし ショーガイナ
 〽唄うてよいなあ お器量前が ドーシタイ ドーシタイドーシタイ
  下がると思うてヨーエ 思うて唄わぬ方おかし ショーガイナ
  コラ方おかしヨーエ 思うて唄わぬ方おかし ショーガイナ
「ショウガイナ」<北船路>
 〽アヨーイナー めでためでたがヤッコラショ アー三つ重なりてヨーエ
  知行が増します 五千石 ショウガイナ
「ショウガイナ」<北比良>
 〽唄のヨーホーエ 上手なドシタイエ(ナンジャナンジャ)
  一人節よりもヨーホホエ 下手な連れ節ゃおもしろい ショウガイナ
「ドッコイショ」
 〽比良は コラ よいとこナ ドッコイショ(ヨーイソコジャエ)
  比良はコラ よいとこじゃ朝日を受けて(ヤットコセー)
  暮雪おろしが アレそよそよと(イーローアーレワサッサイ)
「能登」
 〽能登よいか 能登がいよいか住みよいか アードッコイサーセー
  住みよいか 能登がいよいか住みよいか
  アードッコイサノ ドッコイサー ヤットコセー
 〽まだ夜は夜中 からすき星がこの上に この上に からすき星がこの上に
「江州音頭」
 (略)

坂田の盆踊り
「手引き踊り」
 〽盆にゃ踊ろし野神にゃ寝よし 長の夏中は糸とろし
「獅子踊り」
 〽獅子やヨ 踊りを習いとうて見とうて(シシ) 今朝も朝飯食わず来た(シシ)
「まぬけ踊り」<伊吹町>
 〽ハー まぬけ踊りはヨ 習いにくうござる アラ一つ違えばヨ
  みな違う(アラ ナッチャエ ナッチャエ)
「まぬけ踊り」<米原町>
 〽ちょいと出ました私が(ヨイヨイ) 遠い昔の祖先より
  (アラ ソレワサッサノ ヤットコセー)
 〽唄い継がれた磯節を 不便ながらも努めます
 〽老若男女の隔てなく どしどし踊って下されや
「江州音頭」
 (略)

長浜の盆踊り
「顕教踊り」
 〽顕教ナ 踊りを習いたきゃござれヨ(コラショ) 金の四五両もエ
  持ってござれ(アラヨイヨイ ヨイヤナエ ソンリャエ コラショ)
 〽国友 よいとこ一度はおいで 春は桜の 花堤
 〽夏は 川面のあの涼風に 秋田黄金の 波が打つ
 〽冬は 河原のあの雪景色 上にそびえる 伊吹山
「四宮踊り」
 〽四宮踊りを習いたきゃござれ(アヨイトヨイト)
  金の四五両も持ってござれ(アレワーサーノ ヤットコセ)
 〽夜明け烏が渡っても頼む 私ゃ浮かれて盆踊り
「江州音頭」
 (略)

島根県の盆踊りでは、「津和野踊り」がよく知られている。ただしこれは津和野独特のもので、全体的には「ヤーハトナ」の類の音頭が広く行われており、「山くずし」ほか、種々踊られている。

出雲音頭 唄:黒田幸子
〽ハー ちょいとやりましょか(ハラドッコイセ)
 ハー ちょいとやりまするナ 私がやろか(アラヤーハットナー ヤーハットナー)
〽私がやろか わしがやるので 合わぬか知らぬ
〽合わぬか知らぬ 合わぬところは 囃子で頼む
〽囃子で頼む 囃子無ければ 口説かれませぬ
〽口説かれませぬ 哀れなるかや 石堂丸は
〽石堂丸は 父を訪ねて 高野に上がる
〽高野に上がる 母は麓の 玉屋が茶屋に
メモ:黒田幸子が、お母さんに習った米子の盆口説の節を整えたもの。それをレコードに吹き込む際、適当な呼称がなかったため、同種の音頭が出雲方面で広く行われていることから「出雲音頭」とした。

八束の盆踊り
「こだいじ」(宍道町)
 〽安芸のナー 宮島 回れば七里(ア スタコラサッサイ)
  浦は七浦ナー 七ヤー 恵比寿ナーハーヨー(チョイチョイ)
 〽空の 星さえ 夜遊びなさる 娘夜遊び 無理 はない
「神立」(玉造)
 〽盆が来りゃこそ踊らか跳にょか(コリャコリャサーイ)
  浅葱ナ かたびら ハーヨーサナーはげるまで(ハイショハイハイ)
「甚句」(大芦)
 〽甚句ナー 踊らばしな品よく踊れ(チョーイチョイ)
  しなのナー よい娘は ホンマニこちの嫁(チョーイチョイ)
「茶町」(玉造)
 〽茶町ナー 通いすりゃ(ハイ) 駒がのうてならぬヨ(ハイハイ)
  買うてナー 乗りゃんせ ヤンサ 鹿毛の駒ヨ(ハイサハイハイ)
「八百屋お七」(八束)
 〽アーもとの吉三にいろいろと(アラドッコイ)
  逢うて語るがうれしさよ(アラヤンハトナー ヤンハトナー)
 〽一把の藁に火をつけて 放り上げたるばかりにて
「静三」(八束)
 〽なんの仰せもただはいはいと(アラコレワイセー)
  そこで静三は支度にかかり(ハーヨーイヨーイヨーイヤナ)
 〽紺の股引、大津の脚絆 笠に甲掛け紙緒の草履
「那須与一」(美保関)
 〽囃子のうては音頭が取れぬ(ドッコイショードッコイショ)
  音頭のうては(アードッコイドッコイ) 囃子が取れぬ
  さあさ踊り子衆よ大音にたのむ(ヤートセー ヨヤサノセ)
 〽その名ふれたる下野の国 那須与一の 誉れの次第
  なりは小兵でござそうらえど

蔵屋の盆踊り
「こだいじ」
 〽サーヨーホー サーノーホー ヨーイコラ ヨイコラナ(ア出いた出いたナーエ)
  揃うた揃うたよ踊り子が揃うた(コラセーコラセ)
  稲の出穂よりナ まだヨ 揃うたナーハヨー
 〽いとしこだいさがエ猫の子を連れて(コラセーコラセ)
  「猫どの猫どのそなたの眼は 真ん中ちょんぼり黒くて丸いよで光る
   あげになけらにゃ屋根から屋根まで ちょろちょろちょろつく
  鼠が捕らりゃ もら やせぬ
 〽いとしこだいさんが山に寺建てて 人も参らぬ 戸も 立たぬ
 〽いとしこだいさんが腰にゃ魚篭さげて 前の小川にと 泥鰌 とりに
「にがた」
 〽揃うたヨ 揃うたとヨ 踊り子が揃うた(コラヨイサノセー ヨイサノサ)
  稲の出穂よりナ(チョイト) まだ揃うた
 〽ござれ 話そや 小松の下で 松の葉のよに 細やかに
「ばんばら」
 〽国は雲州広瀬の町で(アヨイヨイ)
  家中並びの大工屋町で(アラヨーイヨーイヨーイヤナ)
 〽大工頭の源九郎様よ それの息子の安次というて
「山づくし」
 〽哀れなるかや石堂丸は(ヨイヨイ)
  父をたずねて高野へ登る(コラヤーハトナーエ ヤーハトナーエ)
 〽母は麓の玉屋が茶屋に 預け置いたぞ厭わしないか

加茂の盆踊り
「こだいじ」
〽甚句ナーヨ こだいじがサー 腰に籠さげて(コリャサイ)
 前の小川にナー 泥鰌ヨー とりにナーヨ

荒茅踊り
〽アー後ろに控え(アラヨイヤセー)
 アー西は日本海さかまく怒涛(アラヤーハートナー ヤーハートナー)
〽さかまく怒涛 妙見お山を南に控え
…「行進踊り」「山崩し踊り」「雀踊り」「関の五本松踊り」「どじょうすくい踊り」の5つがある。手首の使い方が特徴的で、小さめの所作でくるりくるりと手を返しながら出て行くところなど、優雅な印象を受ける。

川合の盆踊り
「ドッコイサ」
 〽さあさエー 若い衆エ ひと跳ねやろよエ(ア マカセーマカセ)
  とかく踊りは調子が大事(アラヤートナー サーヤートマカセ)

川本の盆踊り
〽ちょいと出てきてこの傘貰うた(ヤットセーコリャセ)
 傘は貰うたが捌きはつかぬ(サーヨーホイヨーホイ ヨーイヤナ)
〽前の音頭のご名人様の 音声休めのたばこの間

石見の盆踊り
「お杉」(日和)
 〽今度長州の赤間ヶ関よ(ドッコイサ ドッコイサ)
  関じゃ千軒並びもないよ(アヨーイセー ヨイヤサノサ)
 〽よろず小間物、京屋が娘 年は十八その名はお杉
「いろは」(日貫)
 〽今日の若い衆に頼みがござる(ヨイトコショイ)
  わしの口説はナ 危ない口説(アラハーヨイヤナー ヨイヤナー)
 〽竹の丸橋、丸歯のくくり 渡りかけても 落ちよかもしれん
「ハンヤ」(日貫)
 〽ハンヤヨー ハンヤあがたの(アラメッカイショ)
  ア川真ん中にヨ あやめ咲くとはサマ しおらしやナー

琴ヶ浜の盆踊り
「ヤーハトナ」
 〽細谷川の(アードスコイドスコイ)
  鶯啼く声さぞおもしろや(サーヤーハートナー ヤーハートナ)
 〽囃子が大事 囃子ぬるけりゃ口説かれませぬ
「ヤッチョコドッコイ」
 〽口説かれませぬ(アーヤッチョコドスコイ)
  踊る子供や見物の衆は(ソレー ヤットーナー ヨイヤナ)
 〽見物の衆は 声を揃えて囃子を頼む
…音頭は「ヤーハトナ」と「ヤッチョコドッコイ」を接続して口説く。踊りは「一つ橋(一つ拍子)」「願成就」「思案橋」があり、共通の音頭でめいめいに好きな踊り方で踊るようだ。盆の三日間を夜通し踊る。

仁万の盆踊り
〽さあさここらで踊ろじゃないか(ソレドスコイドスコイ)
 誰もどなたも見物の衆よ(ソラ ヤートナー ヤーコラセ)
〽踊り明かそや今宵が一夜 踊れ踊れや踊り子の衆よ

那賀の盆踊り
「甚句」(江津)
 〽エー 甚句踊らば(ハエイサエイサ) しなよく踊れ
  しなのよいのが コラサット こちの客
「口説」(浜田)
 〽ユーエー ここにナー 説き出すその一節は(ヨイヨイ)
  ときはナー 天保、鎖国の時代 ひそかに帆を上げ海外渡船
  (ヨヤセー アリャセーコリャセー ヨイトナー)
「口説」(有福)
 〽去年ヨー 去年盆まで踊りた様はヨ 今年燈籠の サマー灯とぞなるヨ

隠岐の盆踊り
「山くずし」(浦郷)
 〽アー山崩せ(アラセ)
  山を崩して田にしましょ(アラヤーハットナー ヤーハットナー)
  サテ田にしましょ(アラセ)
  山を崩して田にしましょ(アラヤーハットナー ヤーハットナー)
 〽盆の十六日ゃめでたい月夜 子持ち姿も出て踊れ
  出て踊れ 子持ち姿も出て踊れ
 〽夕べ夜這い人が百四十と五人 させにゃ名が立つ皆させた
  皆させた させにゃ名が立つ皆させた
 〽天の星さえ夜這いに行くに 地下の若い衆に無理はない
  無理はない 地下の若い衆に無理はない
 〽女子友達 高嶺の花よ 盛り過ぎたらチラバラと
  ちらばらと 盛り過ぎたらチラバラと
「石堂丸」(海士)
 〽ヤレ石童丸は(アラセ)
  父をたずねて高野の山へ(アーヤーハットナー ヤーハットナー)
 〽高野の山へ 母は麓の玉屋が茶屋に
 〽玉屋が茶屋に 残し置かれるその哀れさよ
「おそめ」
 〽ヨー盆が来たこそ麦に米混ぜて(アレワイショ)
  中にゃ小豆がチラパラと(アラヤンハトナー ヤンハトナー)
  ヨーチラパラと チラパラと(アレワイショ)
  中に小豆がチラパラと(アラヤンハトナー ヤンハトナー)
「酒田」(浦郷)
 〽酒田ナー 三之丞ヤッソコナ
  あぐみ屋のお藤 音にサー サイジョガ音に(ヤー聞けども目にゃ見えぬとせ)
 〽親を 大切 黄金の箱に 入れて 入れて 持ちたやいつまでもとせ 
 〽いつも 月夜で 夜が八月で 年が 年が 二十五でおればよいとせ
「加茂」(浦郷)
 〽あなた百までわしゃ九十九まで(ともに白髪のサマ 生ゆるまで)
 〽何の宝も持ちてもみたが(子より宝な ものはない)
 〽今年ゃよい年 穂に穂が咲いて(道の小草も 米がなる)
 〽かわいがらんせ わが子の嫁は(かわいわが子も 人の嫁)
「ショヤレ」(浦郷)
 〽踊る子が出たしなよい踊り(しなのよいのはこちの嫁)
  アーヨーイヨヤサ ソリャサ アリャサ ヨイサノサッサデ
  (こちの嫁 しなのよいのはこちの嫁)
  アヨーイトサッサ ヨイヤサ ソリャサ
「なしょまま」(浦郷)
 〽なしょままならぬ(ままになる身をヤレヨー 持たせとや)
  なしょままならぬ(ままになる身をヤレヨー 持たせとや)
 〽踊る子が出たしなよい踊り(しなのよいのはヤレヨー こちの嫁)
 〽今年ゃ豊年穂に穂が咲いて(道の小草も 米がなる)
 〽親はよいもの七つの行灯(親がなけらにゃ 光ない)
「イサノエ」(浦郷)
 〽イサーノーエー 踊り子が出たしなように踊るノーエー(ア可愛やなっと)
  しなのよいのはノーヤレ こちの嫁ノーエー(ア可愛や可愛や)
 〽何の宝も持ちてはみたが 子より宝な ものはない
 〽お前よ百までわしゃ九十九まで ともに白髪の 生ゆるまで
「ドーゴショガイナ」(浦郷)
 〽ドーゴショガイナが習いたきゃござれ 酒の四五升も持てござれ
  持てござれ 酒の四五升も持てござれ
 〽酒の四五升はいと易けれど どうせ店屋に酒がない
  酒がない どうせ店屋に酒がない
 〽酒は酒屋でよい茶は茶屋に 女郎は大阪の新町に
  新町に 女郎は大阪の新町に
「シュガイナ」(宇賀)
 〽シュガイナーが習いたきゃござれ
  酒の四五升も持てござれ シュガイナー(チョイトサーチョイトサ)
「ヨーホイ」(浦郷)
 〽音頭とる子が橋から落ちて(ヤットセー) 橋の下でも アノヤ 音頭とる
  (アーラ ヨーホイヨーホイ ヨーイヤナー)
 〽盆がきたらこそ麦に米混ぜて 中へ小豆を パラパラと
「口説」(宇賀)
 〽盆だ盆だや七月ぁ盆だ(ヤートセ) 九月お菊の アコラ 花盛り
  (サー ヨホイヨーホイ ヨーイヤナエ)
「おしゃれば誠」(浦郷)
 〽サーノーエーエイエー 揃うた揃うたや若い衆が揃うた(可愛やな)
  稲の出穂よりノーヤレ まだ揃うたノーホホエー
  (エーおしゃれば誠 おしゃれば実よりエ 誠ノーホホエー)
「キンニャモニャ」
 〽キヨが機織りゃキンニャモニャ あじだけへだけ
  殿に来いよのキンニャモニャ 知らせだけ
  キクラゲチャカポン 持ってこいよ
…同じ音頭でも浦々で踊りが違う。「ヤーハトナ」の節が主だが、ほかにも「ヨーホイ」「酒田」「加茂」など、他地域からの流入と思われる口説が数多く伝わっている。近隣の流行踊りの吹き溜まりの感がある。

畑の盆踊り
「ヨウソレ」
 〽思い切れとはヨ 死ねとの言葉ヨ ソレソレ
  思い切らりょか死なりゃせぬヨ ソレソレ ソレキタ
 〽思い切りゃんせ 男が卑怯な 女身でさえ思い切る
「思案橋」
 〽上を殿さまお駕籠でお通り(ソリャヨイヤサノエー ヨイヤサノエ)
 〽こんな小女郎は器量よい小女郎
「松坂」
 〽思う殿御とヨー ヨー松坂ヨ 越せばヨー ノウエイサー
  松の露やらヨー ヨー涙やらヨー
 〽松の露でも 涙でも ないが 思い合わせの 霧が降る
 〽お寺門口にゃ 蜂が巣を かけて 坊さん出りゃ刺す 入りゃ刺す
 〽坊さばかりを 刺すでは ないが 小僧出りゃ刺す 入りゃ刺す

津和野踊り
〽富士や浅間の煙はおろか(合) 衛士の焚く火は川辺の蛍 ササ ヤレコノサ
 焼くや藻塩の身を焦がす ヨイヤサ
〽松の葉越しに出る月見れば 見えつ隠れつ人目を忍ぶ 空にも恋路があるものか
〽さても見事や御手洗つつじ 宵につぼんで夜中に開く 夜明け方にはちりぢりと
…音頭は全くの座敷唄であって、旧来の念仏踊り・小歌踊りの面影を色濃く残すものである。特徴的な装束と流麗な所作が相俟って、一種独特の雰囲気がある。複雑な足運びでクルリと反転しては元の向きに返るところに何ともいえないよさがある。

岡山県の盆踊りでは、白石踊りが最も著名と思われる。ほかに宮内踊り、松山踊り、大宮踊りもよく知られている。また、津島の八朔踊りも一種独特の雰囲気があり、たいへん個性的である。

松山踊り
「東」
 〽イヨーホイナー 東踊りと出掛けましょうか(アラサ コラサ)
  どうか皆さん囃子を頼む(ハラサノサー ハーヨーイヤナ)
 〽私ゃ来ましたあの山越えて 当所の今宵の踊り場へ
「エイト」(扇子踊り)
 〽エイトナ エイトが揃うたなら(チョイト)
  ここらナ あたりで考えましょか(アリャサ ハーヨーイヤナ)
 〽何をか やろかと思案に暮れる 思案 半ばにゃヒョロリと入れた
「てんがらこ」
 〽アリャサコリャコリャこりゃまたどうじゃ
  どうかナ 皆さんよろしゅにゃ頼む(アリャサ コリャサ)
 〽国は京都で三条が町に 糸屋 与右衛門、四代目の盛り
「二つ拍子」
 〽いやりゃナ さんよのお若い様よ
  側がナ 柳と揃うたなら(アリャサノサ ハーヨーイヤナ)
 〽されば 皆さん何をか始みょ 始みょと 言うたとてまたわからない
「横田」(四つ拍子)
 〽ハー 加藤佐衛門 アリャ茂氏と 名乗れば刈萱ノウサ 驚いて
  (ササ ヨーイヨーホイ ヨーイヤナーエー)
 〽持ったる花籠 取り落とし はっとあかりに 驚いて
「さんこ」(砂かき踊り)
 〽さんこナーエ さんこと名は高けれど(チョイト)
  さんこナ さほどのことはない(ハーヨイヤサノサー ヨイヤサノサ)
 〽来た来た来た来たこの方の番じゃ 番手順番ちょいとやりましょう
「山づくし」
 〽山々づくし山づくし 山で高いのが富士の山(アラヤンハットナー ヤンハットナー)
 〽海で深いのが音戸の瀬戸よ ここらで高いは銀細工
メモ:高梁市を中心に旧松山藩に伝わる盆踊りを「松山踊り」と呼んでおり、新見市には特にたくさんの種類の踊りが残っていた。ところが音頭・踊りの種類が多いため伝承に難渋したのか、今は1つの音頭に、昔踊っていたいろいろな踊りを組み込んだ新「松山踊り」として整理・統一されたものが普及しているようだ。

新庄の盆踊り
「テンガラコ」
 (略)※段物口説
「まんま」
 〽お前百までわしゃ九十九まで(ドッコイショ)
  ともに白髪の生えるまで(アラヨイトサノサー ヨイトーナー)
「小大寺」
 〽逢うて嬉しやナー 別れのナー 辛さ
  逢うて別れがナー なけりゃよい(ヨサノエ サーノーエ サーノーエー)
「東」
 〽ヨーンホーホーイ ヨーンホーイ
  新庄名物この盆踊り(アリャセ コリャセ)
  手振り足振り上手に踊る(ヨイトサノサー ヨイヤーナー)
「早備前」
 〽めでためでたの若松様よ 枝も栄える葉も茂る
…櫓の上には音頭取りと囃子方が上がり、太鼓は踊りの輪に入って、片手で太鼓を持ち、1本バチで太鼓を打ちながら進む。ここの踊りは太鼓主導の感がある。右回り、左回りは決まっておらず、「東」などでは踊りの途中で太鼓が反転すると踊り手も一斉に反転し、輪の進み方が反対になる。

牛窓の盆踊り
「エイト」
 〽エイトヤーエイト(も一つおまけにエイト) エイトの声が揃うたなら(ホイ)
  側の衆頼むぞいつまでも(ハーヨイワサー アーヨイワサー)

西栗倉の盆踊り
「がんりき」
 〽アー踊り踊らば三十まで踊れ(ヤレコリャ)
  アー三十過ぎたら コラ子が踊る(ヤレコイ サーコイト)
 〽わしとお前はえんざの釣瓶 あえてもつれて 花が咲く

野介代の盆踊り
「がんりき」
 〽ここにサーエー 珍し心中噺
  エー国は作州勝北郡(トコシャントコ シャントコ)
 〽エーイエー 村名申せば堀坂村で
  村でいちばん呉服屋がござる(トコシャントコ シャントコ
 〽ここの娘をお俊というて 年は十九で今咲く花よ
「四つ拍子」
 〽ソリャどんどヨーエー どんどとヨーエ 鳴瀬には落ちる
  鳴らぬ小川の ヨイショコラ 瀬に落ちる
  (ソリャヨーイトコセ コリャヨーイトナ
  アリャセーイ コリャセー ソリャヨーイトセー)

加茂の盆踊り(四つ拍子)
「音頭」
 〽踊りゅナーエ 踊るなら三十まで踊れ(ドッコイセー シャーントセ)
  三十ナーエ 過ぎたら ハイヨー子が踊るヨ(ハードッコイドッコイ)
  「勘平さんは三十に なるやならずで死なしゃった(シャントコシャントコ)
 〽音頭 とる子が橋から落ちて 水の 中から 音頭とる
 〽踊り 子が来たお庄屋庭に 白い 笠着て 浴衣着て
  「敦盛様を討ったとは 誰なる人かな恨めしや
「高い山」
 〽高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の花盛りヨ
  (ソラヨイヨイヨイ アラドンドンドン)

落合の盆踊り
「備前踊り」
 〽ヨホホーエ あとには一人、政岡が 奥口うかがいうかがいて
  我が子の死骸を抱き上げ アーこらえこらえし溜め涙 せきりせき上げ嘆きしが
  これ千松ゃよう死んでくりゃった そなたが命棄てた奴 邪智深き栄御前
  取り替え子と思い違え おのれが企みを打ち破りしは アー日ごろ毎日神々に
  祈るお礼のありがたや アー思い出せばこの程より 唄うた唄に千松が
  七つ八つから金山へ 一年待てどもまだ見えぬ 二年待てどもまだ見えぬ
  アー唄の中なる千松は そなたは百年待ったとて 千年万年待ったとて
  ヨーホホーエ ここらでひとつ頼んだ(ヨーイヨーイ ヨイヤーセ)
「三味線踊り」
 〽心やさしの蛍の虫は 忍ぶ畷に灯をともす(ヨーイサノサ)
 〽梅と桜を両手に持てば どちが梅やら桜やら


大宮踊り
「あおい」「まねき」
 〽どみの堂じゃハエウワハン てんこのこが踊るウワハンヨ
  (てんこのこが踊る おごはおらぬか出てしゅめせ)
 〽なれなれ 背戸屋のなすび(背戸屋のなすび ならにゃならさす嫁のなか)
 〽おいとしや 孫六様は(孫六様は 霧に迷いやる茅部野で)
 〽どろどろと 鳴る神様よ(鳴る神様よ ここは桑原、野に落ちゃれ)
 〽子供らちゃ 長三郎と寝たと(長三郎と寝たと 長三見もせにゃ逢いもせぬ)
 〽忍ぶには どてら布子がよかろ(どてら布子がよかろ 菊の下葉に夜を明かす)
 〽懐かしや 大宮様の(大宮様の 松が見えますほのぼのと)
 〽踊るには 薬師堂がよかろ(薬師堂がよかろ 薬師ゃ木仏で物言わぬ)
「しっし」
 〽しっしヤレコラサが今始まりて お婆出てみや(ヨイショ)れ
  孫連れて(サー孫連れて お婆出てみやれ 孫連れて)
 〽神代このかた変わらぬものは 大宮踊り と
  色もみじ(色もみじ 大宮踊りと 色もみじ)

白石踊り
 イヤ ドンドサマ ドンドサマ
〽サーヨイサテ 許させ給え(イヤ ヨーホエ ヨーホエ ヨイヤネー)
 アーソレ世の中の(アソレセ)
 定め難きは無情の嵐(イヤ ヨーホエ ヨーホエ ヨイヤネー)
〽散りて先立つならいといえど(アソレセ)
 わけて哀れは冥土と娑婆の(イヤ ヨーホエ ヨーホエ ヨイヤネー)
「賽の河原で(エーサーアンヨホホ アラドッコイドッコイ)
 とどめたり(イヤヨーホエ ヨーホエ ヨイヤネー)
「二つや三つや四つ五つ(ヨイナー)
 ハー十よりうちの嬰児なるが(イヤヨーホエ ヨーホエ ヨイヤネー)
〽朝の日の出に手を取り交わし 人も変わらぬ野原に出でて
〽土を運んで上りつ下りつ 山の大将われ一人じゃと
…音頭は入れ節を挿んでいく形式で、同種の形式の音頭は大分県の臼杵市以南ほか、沿岸部で広く行われている。白石踊りは種類が多く「男踊り」「女踊り」「娘踊り(月見踊り)」「扇踊り」「奴踊り」「笠踊り」「二つ拍子」「大師踊り」「阿亀踊り」「梵天踊り」「ぶらぶら踊り」「鉄砲踊り」「真影踊り」と計13種類を数える。めいめいに好きな踊り方で踊ってよく、いろいろな踊りが同時進行で進んでいくのは壮観である。それぞれによく工夫された所作で、とてもおもしろい。

真鍋島の盆踊り
 チョイトコセー チョイトコセー チョイトコセー
〽ヤレー誰もどなたもヨーエ(ソレ) みな若い衆よ(ヨイヨーエ)
 合わぬところは(ソリャ ハーソリャ) ごめんなれ ションガエ
 (ヤーレーごめんなれ ソレワごめんなれ)
 合わぬところはご、ごめんなれ ヤレコリャセ(ソリャヤレコリャセー ヨイヤナ)
〽花の名所は 真鍋の島よ どちら向いても 花畑
 (花畑 花畑) どちら向いてもは、花畑
〽盆の十四日の 蓮の葉の団子 一夜もまれて 流される
 (流される 流される) 一夜もまれてな、流される

宮内踊り
〽エー エー 杖を片手に アラ深谷川を 渉る浮世の独木橋
…歌舞伎踊りの所作に由来するという独特の手振りで、一つひとつの所作が流れるようにつながっていくのでなく、切れ目(キメの手)が多い。手数は少ないが、不格好にならないように踊るのは難しい踊りである。「手踊り」「扇子踊り」があり、音頭は同じだが、白石踊りのようにめいめいに好きな踊りを同時進行で踊っていくのではなく、全員が同じ手で踊る(手踊りの段には全員が手踊りを、扇子踊りの段には全員が扇子踊りを)。

津島八朔踊り
〽ソリャ高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の花盛りヨ ソレワヨイヨイヨイ
〽高い山から踊り場見れば 踊り見物が山となる
「アードントコ掛け声頼みじゃ(ヨイヨイヨイヤサ) ハーヨーホイ
 さてさてこれよりお俊伝平猿回しを読み上げまするでござりまする
 これ伝平さん 母じゃ人の今のお言葉 ご合点が参りましたか コリャ
 われも得心してくれたか合点がいたか ささ合点したなら
 どうぞこの場を立ち退く分別
「アードントコ掛け声頼みじゃ(ヨイヨイヨイヤサ)
 しかしそのなりでは人目に立つ 京の町を離れるまでは
 (以下略、浄瑠璃文句が続く)
…地の音頭は「高い山」で、浄瑠璃の地口を挿む。踊りは「四つ拍子」「八つ拍子」など9種類あり、「ドントコ掛け声頼みじゃ」の音頭で次から次に手を変えていくのだが、全てが一連のものとして全く途切れずに切り替わっていくのは見事なものである。流麗な所作ばかりで、足運びなどずいぶん工夫されている。しかも簡単な手踊りばかりでなく、たもとを繰るやらかいぐりするやら、二本の扇を翻すやら、複雑を極める。一方通行の輪踊りかと思えばいつの間にか2人ずつ向かい合わせになり、組踊りの体で入れ替わっていき、そのうちにまた一方通行の輪踊りに戻るなど、お見事というよりほかない。

<大島>

大島節(俚謡)
〽アー 私ゃ大島 御神火育ちヨ(アハーイハイトー)
 胸に煙はナ 絶えやせぬナ(アハーイハイトー)
〽つつじ椿は 御山を照らす 殿の御船は 灘照らす
〽竹の一本橋ゃ細くて長くてしなしなしのうて危ないけれど
 私とあなたと二人で渡るにゃ怖くない
〽うつつ心で柱にもたれ 起きていながら主の夢
〽三浦岬にドンと打つ波は 可愛いお方の度胸試し
…悠長なテンポで、ゆったりと唄う。せりあげるように唄い出して、囃子を「アハーイハイトー」と引き伸ばすところなど流行小唄の節とは全く異なる。大島里喜や野村ふさのレコードで知られた。戦前に著名な歌手が吹き込んだものの中では、藤本二三吉のレコードが比較的地元の節に近い。

大島節(古調)
〽エー 私ゃ大島 御神火育ちヨ(ハーイハイトー)
 ヤレー 胸に煙はヨ 絶えやせぬナ(ハーイハイトー)

大島節(流行小唄)
〽ハー 島と名がつきゃ どの島も可愛ヨ(アハイノハイ)
 わけて利島はナー なお可愛ヨ
 「アーラ一本歯の下駄はいて 四畳半をピョンピョンと(アハイノハイ)
〽九尺二間の雨戸一枚と 私の心 あれあれ
 あちら立てればこちらが立たない こちら立てればあちらが立たない
 双方立てればヤレコノドッコイショで 身が立たぬ
 「一本歯のズイノズイ どんぶり鉢ゃ浮いた浮いた
〽私ゃ大島 一重の桜 八重に咲く気は さらにない
 「おやりよおやりよ
〽一丁二丁三丁 四丁五丁ある町で 中の三丁目が ままならぬ
 「てなこたナイショナイショ
…大正の頃から東京の花柳界に入り、全国的に流行した。速いテンポで、高調子で唄い出し、語呂のよい唄囃子を適宜挿入してする。三味線は同じ手を繰り返すばかりである。SP盤の時代には、藤本二三吉や大島里喜・野村ふさ以外(市丸・小唄勝太郎・南地力松・南地なべ・栄太・下田芸妓連など)はこちらの節で唄っている。

大島節(虎造くずし)
〽ハー 男伊達なら 桜か富士かヨ
 「清水港の次郎長と さても見事な
 宮柱ヨ(ハイノハイ)
〽国を売るのも 男の意気地
 「美保の松原、小夜しぐれ 男次郎長が
 旅がらす
〽人情からめば 命も捨てる
 「清水港の次郎長が 降らす血の雨
 血の涙

舟大工唄
〽もしエ 大工さんどちらへお出で
 ねじり鉢巻 衿に尺金 墨壷なんぞを手に提げて
 つまみ端折りで程がよい ドンドンするのは大工じゃないか
 ドンドンするのは大工じゃないか
〽お前エ 芝居かわしゃ新橋へ
 梅と桜の真中見れば 人力車がはやばやと
 人力車がはやばやと
〽音がエ するぞよ太鼓の音が
 あれは芝居の寄せ太鼓 忠臣蔵ではないかいな
 「エー 中入りだエー 櫓太鼓に〆太鼓 トコドッコイドッコイショ

ガッシャガシャ節
〽エー 胸に千把の茅焚くとてもヨーホホイ
 煙出さなきゃ サー主ゃ知らぬ(ホラガッシャガシャ てば寝られない)
〽杉の若ぼいみたよな殿御 他人に取られて なるものか
〽沖を流れる小草でさえも 鳥に一夜の 宿を貸す
〽沖で鴎の啼く声聞けば 船乗り稼業が やめられぬ
〽私ゃ三宅の荒浜育ち 波も荒いが 気も荒い

大島の古謡
「八幡崎」
 〽ヤレ八幡崎の(色鰯) 出てとれよ(小浜の) エー網の(ヤレ若衆へ)
 〽小浜に名所(三つござる) 前は海(後ろは) 城で(殿が住む)
「扇黒骨」
 〽扇黒骨をばナー ハー誰が買うてくれたヤーレー
  忍ぶ夜妻が オーサ買うてくれたノー
 〽実があればこそ 恋路もあれか 買うてくれたが 実じゃもの
 〽実を丸めて 袂に入れて 永の道中の 道連れに
「今の十七」
 〽今の十七や(お庭のナー 梅だ) 主に(急かれて ハー散る紅葉)
 〽主へもし待て(今年の 歳は) 明けて(三月 花嫁に)
「明けて来春」
 〽明けてナー(来春三月頃は エーまたも行ぎましょあの原へ エイヤサエー
  ヨーイヤナーエ ヨイヤナノナー エーヤサ エーヤサエー
 〽向かい(小山のいつもの場所へ 花とわらびの春場所へ)
 〽花を(見ながら楽しみながら わらび折りましょあの原へ)
「お伊勢参り」
 〽男エー 初伊勢参りヨ アー道中エー 頼みますお伊勢様
 〽懐かしいぞえ 今朝出た殿が どこの 宿屋に泊まるやら
 〽金のかんざし 伊達には挿さぬ 縁の つなぎの留めに挿す
「よまい節」
 〽エー 添われないから来るなと言うたにナーエ
  末は泣いたり泣かせたり アジョロサマエヨー泣かせたり
「黄金のなな子」
 〽黄金のなな子に紺の糸ナーヨー 十七が 袂につけて引かせ
 〽帷子着ずとも帯を締めずと 小田原の 絹屋の嫁になりたや
 〽絹屋の亭主はよい男 さわら木へ かんなをかけたごとく

大島小唄
〽夜の夜中にふと目を覚まし 雨戸引き開け眺むれば
 主に焦がれて鳴く虫の ソーリャ鈴虫、松虫、くつわ虫
〽中で憎いのはきりぎりす 主と私のよい仲を
 思い切れ切れ切れと鳴く なんで思いが切らりょうぞ
〽庭の四隅に菊植えて 根も菊、葉も菊、枝も菊
 天皇陛下の紋も菊 私ゃあなたの無事も訊く

エンサカホイ
〽おらがトイチは巻舟船頭ヨ 波に揺られて舵を取る エンサカホイ
〽お前舵取りゃ私も艫で 世間眺めて帆綱とる
〽おらがトイチは大島沖で 波に揺られて鰹釣る
〽錨巻上げ帆さ巻くときは 可愛いあの子が目に浮かぶ
〽船を送ろと前の浜出れば 憎や狭霧が邪魔をする

あんこ節
 ソラエンヤラヤノヤ ハエンヤラヤノ 声聞きゃ懐かしや
〽エー東京大島 針金便り(エンヤラヤノヤ)
 ソラ 主と私は文便り
 (ソラエンヤラヤノヤ ハエンヤラヤノ あんこさんにわしゃ迷うた)
〽わしが思うこと 字に書いたなれば 一丈紙にも書き余る
〽お江戸行くなら 言伝頼む まめでいたよと言うておくれ
〽好きと好きなら 泥田の水も 飲めば甘露の味がする
〽船の艫櫓に 鶯とめて 浜は大漁と鳴かせたい
 「あんこさん 懐かしいなあ
…地元ではゆったりとしたテンポで、弾んだリズムで唄っているが、戦前に大島以外の芸者が吹き込んだレコードではわりと速いテンポで、弾まずに唄っている。舟を漕ぐときに唄うのであれば地元の唄い方が適しているが、作業唄から離れて、騒ぎ唄或いは流行唄として唄われるようになってテンポが速くなり、それに伴って弾まないリズムに変化したのだろう。

飴売り唄
〽私ゃ最上の飴売り娘だにヨ(エー ブッキリ飴 ブッキリ飴)
 七つ八つからこの職が好きだにヨ
 (アーおっかさん騙いて銭持って来い エー ブッキリ飴 ブッキリ飴)
〽朝も早うから粉ん箱肩に
 アーヒッキリコッキリチャッキリチャンと叩いて歩くに
〽裏町中の町から角の町までも 売りに歩くのは小娘さんだに
〽音がするぞえ太鼓の音がい あれは娘さんの飴売り太鼓だ

大島かっぽれ
 サテよい凪よい風よい天気
〽ハー 沖の大船岸に近く 三十五反の ソラ三十五反の帆をあげて
 (サテよい凪よい風よい天気)
〽ハー船は新造で程がよい 表剣菱 表剣菱 男山
 (サテ面舵取舵合点だ)
〽ハー向こう遥かに眺むれば 向こう遥かに
 あんこ衆が出てきてちょいと招く(サテ若い衆伝馬に櫓を立てて)
 「海にざんぶと錨を投げ込んで サーサ港入り

綱引き唄
〽ハー明けて三月半ばの頃に ござれ高瀬へ見物に(ござれ高瀬へ見物に)
〽沖じゃ鰹で地の瀬じゃ小むろ 網をかけます地曳舟(綱をかけます地引舟)
〽網を引き寄せ呼ぶ子の貝を 吹けばいさば衆が飛んで来る(吹けばいさば衆が飛んで来る)
〽地曳浜から魚ばちささぎ 島のあんこらの程のよさ(島のあんこらの程のよさ)
〽舟を引き上げ囲炉裏のはたで 今日のしろわけ祝い酒(今日のしろわけ祝い酒)

七島甚句
 ナナトヤラ ナナト ナッサリサンジャ ナナトヤラ
 そりゃまたまったくだ ナナト ナッサリサンジャ ナナトヤラ
〽エー私ゃ大島黒潮育ち 男伊達なら負けはせぬ
 負けはせぬ 男伊達なら負けはせぬ
 (そりゃまたまったくだ ナナト ナッサリサンジャ ナナトヤラ)
〽朝も早うから船足揃え 舵を取る手の粋なこと
 粋なこと 舵を取る手の粋なこと
〽唄え唄えよ櫓拍子揃え 立てた大漁の旗高く
 旗高く 立てた大漁の旗高く
〽いろり囲んで手拍子揃え 祝う地酒もなみなみと
 なみなみと 祝う地酒もなみなみと

男伊達
〽男伊達ならネ 乳ヶ崎沖の トーホースイタネ(エースイタネ スイタネ)
 潮の速いをネ ドント止めてみろ トーホースイタネ(エースイタネ スイタネ)
〽潮の速いは 止めよで止まる 止めて止まらぬ 色の道
〽男前より 金より心 金で変われぬ 心意気

大島追分(磯節追分くずし替唄) 唄:美ち奴
〽旅まくら 紅い椿に
 つい手をかけて 噂ネ 三原に ヨイショコショ 立つ煙
〽櫓も櫂も 波に取られて
 身は棄て小舟 どこに とりつく 島もない
〽夕立の 晴れ間、晴れ間に
 帰ろとすれば またも 降りくる なみだ雨



<利島>

どうづき唄
〽利島よいとこ一度はおいでヤーレ
 コレ椿 花咲く コリャ情け島 おもしろや



<新島>

大踊
「役所入踊」
 〽しだり柳の 葉の露落ちて 池になるまで 御身と添わば
  御身思えば 関東坂を 徒歩や裸足で 一夜で忍ぶ
  月の葉さよ 場をひろめ 場をひろめ
「青ヶ丸踊」
 〽ハーインヤ わが恋よ ハーインヤ わが恋よ ハーインヤ 浜の松風
  磯打つ波よ 音には聞けど 音には聞けど 青が招かぬ
 〽わが殿よ わが殿よ 花の小籠に
  梅そえて 花諸共に 待つが大事よ 待つが大事よ
 〽わが君よ わが君よ 深山奥なる
  ほととぎす 人こそ知らぬ 泣くは誰ゆえ 君ゆえよ
 〽恋の踊りよ これまでも
「備前踊」
 〽備前木陰よ 一人姫 顔のえくぼが 有明の 月の忍ぶは 小屋の窓の
  戸がきしりきしり 鳴る夜はさらに 眠られぬ
「伊勢踊り」
 〽こりゃ何踊りよ お伊勢の踊りよ いじゃ踊る
  これから見れば 近江が見ゆる 笠買うてたもれ 近江笠
 〽お伊勢の踊りや これまでも
…昔は初日に役所踊りとして「役所入踊」「ささら踊」「駿河踊」「まどの役踊」「青ヶ丸踊」「きぬた踊」「備前踊」「お福踊」「伊勢踊」を、二日目に御寺踊りとして「お寺入踊」「池水踊」「桜町踊」「まがき踊」「名古屋踊」「二八踊」「八丈踊」「花見踊」「伊勢踊」を踊っていた。それぞれ9演目ずつだが「伊勢踊」のみ両日共通にて、計17演目である。伝承者の減少が著しく、本村・若郷あわせて5演目程度を残すのみとなっている由。



<神津島>

かのかあ節
〽アー神津見晴らす鏡がヨ(ソーダヨーエ) あればヨ
 千両エ(ソーダソーダエ) 出いても求めたいヨ(ソーダソーダエ)
〽伊豆の島々七つも あるが おらが 生まれは神津島
〽便りよこせよナライの 風で おらも やるぞえ南風
〽神津島から来いとの 手紙 行かじゃ なるまい顔見せに

ヤンレ節
〽一人娘を嫁にと出すに(ハーヨーイヨイ)
 「ハー箪笥、長持、鋏箱 これだけ揃えてやるからにゃ(コリャコーリャ)
  必ず戻るなこれ娘 もうしおっかさんそりゃ無理よ(コリャコーリャ)
  ハー西が曇れば雨とやら 東が曇れば風とやら(コリャコーリャ)
  千石積んだる船でさえ 港を出るときゃまともでも(コリャコーリャ)
  ハー風の吹きよじゃ出て戻る まして私は嫁じゃもの(コリャコーリャ)
 出るもナー 戻るも ヤンレ先次第(コイショーノショーイ)



<三宅島>

土搗き唄
〽アー めでためでたの若松様よ(ハヨイコノサンセ)
 枝も栄えて葉も繁るションガイナ 葉も繁る
 枝も栄えて葉も繁るションガイナ(コラヨーホイ ヨーホイ ヨイコノサンセ)
〽色の黒いのを彼氏に持てば からす啼くたび思い出す
 思い出す からす啼くたび思い出す
〽富士の高嶺にちらつく女房 お伊勢参りが気がかりな
 気がかりな お伊勢参りが気がかりな
〽思い出したらまた来ておくれ 紅い花咲く三宅島
 三宅島 紅い花咲く三宅島

島節
〽ハー 唄の初めは大島はらいヨ(ハイハイト)
 節を直すはヨー 三宅島ヨ(ハイハイト)
〽行こか八丈、戻ろか下田 ここが思案の 三宅灘
〽下田宵に巻きゃ夜明けに三宅 明けりゃ八丈の灘を越す
〽捨てて行かりょか帆が巻かれよか 二度とまた来る あてもない

神着の盆踊り
「江島生島」
 〽花の江島 花の江島がナー ヨイサナー 唐糸なればヨーイ
  アー手繰り寄しょうもの ヨイーナ 膝元へヨー
 〽江島ゆえに 江島ゆえにか 門には立てど 見せてたもるな 面影を
 〽江島殿 江島殿ほど 衣装持ちゃないが 浴衣一つで 門に立つ
「おまんかがみ」
 〽アーお江戸にゃヨー 妻はなけ、なけれども お江戸から
  吹き来る ヤレサー 風の懐かしノーホーエ
 〽おまんが 酌で飲む、飲む酒は 味醂酒か 伊丹か 江戸の地酒か
 〽十九 花の咲く、咲く盛り 三十五 深山の 奥の散る桜
「走り舟」
 〽ヤレ 走るナ 舟にノーイ ヤレわしゃ乗りかけヨ
  ヤレ 後がナ 見られぬノーイ ヤレ様ゆえにヨ
「奴踊り」
 〽よいさよいさでそりゃまたどうじゃ(ヨイヨイヨイ)
  わしが音頭で口説くじゃないか(アリャヤートセ ヨーイヤセ)
「殿さ踊り」
 〽わしがサーエー お母さんは無理なことおしゃる 岩を屏風に畳めとおしゃる
  岩が屏風に畳まれましょか 天に梯子をかけろとおしゃる
  天に梯子がかけられましょか 嫌なお方とただ添え添えと
  お母さんも若いときゃ 覚えがあるじゃヤーレー
…ほかに「恋し踊り」「ばんば踊り」「入踊り」がある。

よかた節
〽障子開ければ神津が一目(ヨカタ)
 なぜかお江戸は チョイト島のかげ(ヨカタノタッタ スイトタト スイトコ)
〽遠く離れて逢いたいときは 月が鏡に なればよい
〽三宅よいとこ一度はござれ 愛の紫陽花 出て香る

ききり節
〽めでためでたが三つ重なれば 末は鶴亀、五葉の松
〽これの座敷はめでたい座敷 東窓から銭すだれ
〽銭の間から朝日が差して 朝日長者でおめでたい

日和申しの唄
〽三宅大久保ヤーナー 出てゆくときは 後へ花置く ヤレ枝折るな
〽枝も折るまい 散らせもしまい 早くござれよ 先船で
〽三宅出るとき 誰が来て泣いた 石のよな手で 親様が



<御蔵島>

江島生島
〽行けば帰らぬナ 覚悟じゃ出たがナ(ヨイトサ ヨイトサ)
 またも見返す コレ江戸のかげ(ヨイトサ ヨイトサ)
〽江島ゆえにこそ 門に立ち暮らす 映してたもれや 面影を
〽ままになるなら 彼の海原を 歩いて行こうもの お江戸まで
〽島の明け暮れ 生島様と 呼ぶは江島か 波の音

陰元十六ささげ
〽間のナーエ 間の寺の前の陰元十六ささげナエ
 来ては番頭さんがコーレヤー なれなれと サノヨイトエ(サノヨイトエ)
〽島の 島の乙女か黒い髪恋し またも行きたや 御蔵島
〽恋し 恋し九つ思いし一つ 十になれども ままならぬ



<八丈島>


ショメ節
〽ヤー 八丈八重根のバラバラ松は 誰が伐るやら薄くなる ショメイ ショメイ
〽来たら寄りやれ寄りゃぬぶりやれ ぬぶりゃその夜にゃ泊まりやれ
〽南風だよ皆出ておじゃれ 迎い草履の紅鼻緒
〽なぶれ隠れにおじゃらっち様も 今じゃ足駄で提灯で
〽思い出すよじゃ惚れよが薄い 思い出さずに忘れずに
〽後家と鶏ゃ死のまでなこに 死んでからなくホラの貝
〽思いやか来れ思わぬほどに 誰がこの足ょ運ぼうし
〽奥山の 滝に打たれるあの岩でさえ いつ惚れるともなく深くなる
〽竹の一本橋ゃ細くて長くてしなしなしのうて危ないけれど 様と渡るにゃ怖くない
〽筆を柱に硯を舟に 書いた文をば帆に巻き上げて
 実と誠を荷物に積んで 間の港いソヨソヨと
〽奥山で ひとり米搗くあの水車 誰を待つやらただくるくると
 粉糠々々で苦労はすれど やがて世に出てままとなる

春山節
〽春になりゃこそ桑の木も芽立つヨ 様も時節を待つがよいヨ
〽友達頼めば時節を待てと 時節待つなら頼みゃせぬ
〽粋な小唄で桑摘む主の お顔見たさに回り道
〽わたし唄うはこの春山で わたしの心の晴れるまで

糸繰り唄
〽お前も身も十九、枠の糸 どちらが立つやら立たぬやら
〽枠の糸ならただ繰り返る 様のご縁ば返りゃせぬ
〽糸は千度切れたらつなぐ 様と入れたらつながれぬ

とよん節
〽とよん節とはヨーホホエー 七節八節 ソラブンブンブンブン
 おたん節とはヨーホホエー 九節 ソラブンブンブンブン
〽八丈ばんまが 車の音は どこで聞いても 程がよい

カンチロリン
〽このなカンチロリンを コリャ悪いと言えどネ
 コリャ これもサ カンチロリン
 アー良け唄 ヤイヨノサ 黄金唄ネ
 コリャこいつも実だよ カンチロリン
〽固いようでも 油断はならぬ 解けて
 流れる 雪だるま こいつも実だよ
○酒にうどんに コリャ 天麩羅を加えネ
 コリャ 御勘定は カンシロウさん
 アーいくらだと ヤイヨノサ ツキに訊けネ
 コリャ ごちそう様 おびん姉

追分節
〽鳥も通わぬ八丈ヶ島へ 遣らるるこの身は厭わねど
 後に残りし妻や娘が どうして月日を送るやら 思えば涙が先に立つ

米搗き唄(アキタ)
〽搗けどい搗けんどじゃナイヤラ(ヨナヒョイサ コラサ)
 この御蔵米はヨ(ヨナヒョイサ コラサ)
 これはヤヨ 御蔵のヨ 下、下積みかヨ(ヨナヒョイサ コラサ)
 「搗けたら剥けたら オンショウ オショコメ ドウトレ カブナメ
  お江戸の土産にヤエメガ浜まで
  持って行け 背負うて行け ヨナヒョイサ コラサ
〽搗いた米にも あらうちやれ混ぜて 嫁が 搗いたと 名をば呼ばしょ

牛追い唄(ボーホエ)
〽富士のナーエイ 裾野のエ 半七賊め
 角うナーエイ もがれてざまを見ろ ボーホーナイ
〽角う もがれて 残念なれど 富士の 裾野にゃわれ一人
〽富士の 裾野の 一輪桜 枝も 折られず一枝も
〽富士の 裾野の 蕾の桜 折らば 折りやれ今のうち

田植唄
〽ハーエー 今日の日和に植えたる苗は カラが三尺、穂が四尺 エイトーエイトー
〽わしの心と田原のタブは ままになる日を待ち焦がす
〽今じゃ泥田で腰ょ病むけれど 秋にゃ稲穂がお辞儀ょする

八丈太鼓囃子
「すがる」
 〽ここで聴き取れ姿で見取れナイ(ソラ キナヤレ キナヤレエイ)
  唄の文句でコリャ 悟れ様ナイ(ソラ キナヤレ キナヤレエイ)
  (ソラ キタマダ キタマダエイ ソラマダマダエイ)
 〽すがるにおミヨが泣こじゃ 怖い船乗りょ 誰がさせろ
「甚句」
 〽ソラ月夜に提灯見たことない 布団の三角見たことない
  坊主の丁髷見たことない 畑の蛤見たことない
  海の牛蒡 大根 見たことないぞえ
  (ソラ キタマダ キタマダエイ ソラ マダマダエイ
   ソラ キナキナキナ キナエイ)
 〽蛸には骨ない卵にゃ目ない あの娘は十九で色気がない
  私の財布にゃ金がない 坊主の鉢巻ゃとめどがない
「祭文口説」
 〽エー 浮世がままになるならばエー 駿河の富士に腰をかけ
  日本銀行肩にかけ 電信柱を杖につき 好いたお方を膝元に
  世間知らずに暮らしたい
  (ソラ キタマダマダエイ ソラ マダマダエイ
   ソラ キタサノサノ ソラ キナキナキナキ キナエイ)
「とのさ」
 〽八丈島には五ヶ村ござる 三根 大賀郷 樫立村よ
  坂を登れば樫立村よ 中に挟まる中之郷村よ
  末でよいのが末吉村よ アーうまいもんだうまいもんだエイ
  瓢箪ばかりが浮きものか 四つ又錨も綱で浮かせば
  浮いて来る 浮いて来るエ あなたも私も浮いて来た
  浮いて来た 浮いたショメ 浮いたショメ

樫立踊り(場踊り)
「松原」
 〽ヤーハハエ 一夜がナー きりか ヤーレコーリャヨーホエ
  もう一夜もござれな エーヤーハレヤーハ 新し船の ヤーレ船頭殿
「江島踊り」
 〽ヤレー 江島踊りはヨーイ 箙か ヤレー帯 ヤーハレ帯かヨーナ
  エーヤレ いちごすじの銭か エヤーハレ金かエ
「鵜の鳥」
 〽あれがヤー 鵜の鳥を見さい エーヤレ 鮎をくわえてヘーヘヘハーハ
  鮎をくわえてヨーエ 羽をぬす
「お菊がお茶」
 (聴き取り困難)
「走り舟」
 〽ヤレー 走りのナ 船に ノーホイ ヤーハレ わりゃ乗りたけがエ
  ヤレー 後をナ 見られて ノーホイ ヤーハレ 様ゆえに
 〽帆かけ 船かよ 入端の月か 遠く なるほど 懐かしや
「向いの山」
 〽エーソリャ 向いのお山に エーソリャ光るものが
  ヤレー月日かヨ 星か 様のホホエ 松明か
「清十郎」
 〽清十郎に エー十七エー アノホー ホーホーホーホーホイ お夏は七つエー
  ヤレー 合わぬ毛抜きを アノホー ホーホーホーホーホイ 合わしょとすればエ
  ヤレー 森の夜鴉 アノホー ホーホーホーホーホイ 合わしょとすればエ
  ヤレー 森の夜鴉 アノホー ホーホーホーホーホイ ヤンレ啼き明かすエ
「二八が若さ」
 〽ヤレ二八が若さの ヤーレ若さの ヤレ再びあろか
  ヤレ二八が若さの ヤーレ若さの ヤレ再びあろか
  ヤーレ 枯木に ヤレ花が咲きとろむ
  見よや花咲きふりょう ヒーふりょうにや晴るる ソーレ ヤートサ
「又七郎殿」
 〽又七郎殿はふじくりに上手 もう一タガくりて見せもんせ
  もう一タガくりて もう一タガくりて見せもんせ
「思案橋」
 〽思案橋ょヤーレ 越えてヘイノーホホー ソリャ行こか行きましょか
「やっこらさ」
 〽ヤレこの照り込んだヨエ 月の照り込んだを 夜明けとヨイ 思うて
  主を 戻したを エーマ 悔やしゅい ヤーコラサー コラヤーコラヤ
  コラヤーコラサーでちゃせいヤーコラサ
「十七」
 (聴き取り困難)

樫立踊り(手踊り)
「あいこ」
 〽あいこあいこが二度はやるとも 忘るまいぞえジョウサ節ヨ
  アイコノジョウサ(アーヨイトードッコイドッコイドッコイ)
 〽あいこあいこで果てしがつかぬ 果てしつけたや西東
「藤次郎甚句」
 〽エサーエ 谷川上のノーエ 我ゃその清水(ソラヨイトサーヨイトサー)
  様は天よ飛ぶノー 浮気鳥(ソラヨイトサーヨイトサー)
「平潟節」
 〽銚子平潟寄せずともままよ(ソラヨイトサーヨイトサー)
  すぐに南部の ヤレサ 宮古まで(ソラヨイトサーヨイトサー)
「平潟くずし」
 〽灘の権兵衛が嫂ぁ勾金を呑んだとさ(ソラヨイトサーヨイトサー)
  それが足らないとて馬の尻まで呑んだとさ(ソラヨイトサーヨイトサー)
「関東屋」
 〽あせのヨーホイヨイ 関東屋のあの水車(ヨーイヨイ)
  誰が廻すかくるくると(ソラヤットコマカセノ ヨイヤマカセ)
「伊勢音頭」
 〽伊勢はナーエ 津でもつ津は伊勢でもつナ(ハヨーイトセ)
  尾張名古屋はヤンレ 城でもつ(ササヤートコセーノーヨイヤナ
  アーリャリャーコレワイセー コノナーンデーモセ アーゴチソダゴチソダ)
「とのさ」
 〽アーわしが殿さを褒めるじゃないが
  今年初めて奉公に出したら(トコドッコイドッコイドッコイ)
  白の手拭二尺五寸貰うて
  白でかぶれば汚れてならぬ(トコドッコイドッコイドッコイ)
  何に染めよと紺屋に訊いたら
  一にゃ橘 二にゃ杜若(トコドッコイドッコイドッコイ)
  三にゃ下り藤 四にゃ獅子牡丹
  五つイ山の千本桜(トコドッコイドッコイドッコイ)
  六つ紫色よく染めて 七つ南天 八つ山御殿
  九つ小梅を散しに染めて(トコドッコイドッコイドッコイ)
  十で殿さんにかぶせたらよかろ ヤンレー
「おけさ」
 〽おけさヤーエ おけさ正直なら(ハヨイトキタ ヨイトサネ)
  そばにも寝しょがヨエ おけさ猫の性でコーレヤエ じゃれたがる
  「ソリャ 一丁二丁三丁とりゃ将棋の駒だよ
 〽鮎は 鮎は瀬に住む 鳥木にとまる 人は情けの かげに住む
「土佐」
 〽国は長崎 海老屋の甚句(ハーソーリャサイ)
  親の代から小間物売りに(アソラ ヨーホイ ヨーホイ ヨーイヤセ)
 〽とんと小間物 売りをば止めて 大阪通いの人もの立てに
「やり口説」
 〽国は大阪、筋交橋の(ヨーイヨーイ)
  万小間物さそじと申す(ヘンヤートセ ヘンヨーイヤセ)
 〽さそじ娘のおくめというが 顔の笑窪と目元のよさを
「よしこの」
 〽雨はしょぼしょぼ 蛇の目の唐傘、小田原提灯
  お客来たかと覗いて見たりゃ 晦日のかけとりだ(サーサ妙だ妙だ)
 〽若い時ゃ二度は来ぬぞよ 女郎も買いやれ博打も打ちゃんせ
  間のよいときゃ間男もしなされ 重ね妻粋なもの
「流れ」
 〽流れやらんせ 流した何を餌に来たエ 八丈ヤラ 女ならべを
  アラ餌に来た(サノヨーホイ ヨーホイ ヨヤーサーノサ)
 〽鳶やら鴉のナ 片羽を欲しゅえ
  飛んでマタ 行こうもの アノナ芸州まで

中之郷の盆踊り
「ヤトトン節」
 〽わがな父様は青ヶ島におじゃる ソリャわらな 八丈で
  わらな八丈で思われる(ソリャヤトトン取り込め)
 〽南風だよみな出ておじゃれ 迎え 草履の 迎え草履の紅鼻緒
 〽月の丸さも恋路の道も 江戸も 八丈も 江戸も八丈も同じこと



<小笠原>

南洋踊り
「ウラメ」
 〽ウラメウ ウルリヒイウメ エーワンツイリトゴ オシマア
  ワーガリ イヤゲン イヤゲン イリューエファガ ウェリモ
「夜明け前」
 〽夜明け前に あなたの夢見て 起きるとみたら 大変疲れた
 〽もしできるなら 小鳥になって あなたの所へ 時々飛んで行く
 〽私の心は あなたのために 大変やせた 死ぬかもしれません
「ウワドロ」
 〽ウワドロヒ イッヒヒイヒヒ ウワドロヒ イッヒヒイヒヒ
  ウワドロヒネミネ ウェゲルンガ アラルンガ リワツグラ
  ウェゲルンガツグラ ゲセイメネデキニト
  サブエンダリヒウェンダ リッヒヒイッヒヒイヒヒ
  サブエンダリヒウェンダ リッヒヒイッヒヒイヒヒ
「ギタイ」
 〽ギタイノギッビネイ エンナウイヤウイヤ
  ヤワウイヤウイヤガ センワラウ
  ヤワウイヨメンゲツィル ツギメッセミナチバ
  テギョラニマンナヨウ エマシゲレ
 〽ロレロレローレ ロレラッサンバイ ギウェウ ウェイナ
  ロレロレローレ ロレラッサンバイ ギウェウ ウェイナ
「締踊り」
 〽私はよく寝ました 昨晩夢を見ました
  そのとき私は大変よ 困りましたが分かりません
  「アフタイロン アザナスリータイム ワンツースリー ワンツースリー
   アフタイロン オブ ストップ

王滝の盆踊り
「お十五夜様」
 〽盆が来たそうでお寺の庭の
  アリャ石の ソリャ燈籠に 石の燈籠に日があたる
 〽盆にゃ来い来い祭りにゃ来でも 死んだ 仏も 死んだ仏も盆にゃ来る
 〽お前行くなら持てきておくれ 名古屋 街道の 名古屋街道の銀杏の葉
 〽名古屋街道の銀杏の葉よりも 木曽の 桧の 木曽の桧の思い葉を
 〽踊らまいかよお十五夜様に 月の 山端に 月の山端に入るまで
…ほかに木曽節、高い山、押せ押せ、おおさ、八幡、追分などあり。

小木曽の盆踊り
「甚句」
 〽アー 甚句習うとて身も気もやつす(コラショ) 今朝も親父にどやされた
  「コラ 押しつけ新畑丸焼けだやっと 去年の日照りでまた焼けて
   おかげで新畑カーラカラっと
 〽甚句踊るなら板の間で踊れ 板の響きで三味ゃいらぬ
  「新潟街道で南瓜がつるんだ つるんだ南瓜がこりゃまたどうだよ
   スットコドッコイショット」
 〽踊りそめたら手品のよさよ さどや馴染も嬉しかろ
  「おいらが女房になったも因果だ 枯木にナンバンなっても因果だ
 〽お前百までわしゃ九十九まで ともに白髪の生えるまで
  「おじさんどこだよ山辺の里かよ 商売なんだよ炭焼きかい
   道理でお顔が真っ黒だっと
「追分」
 〽ハー 小木曽とりわけ鉢伏せ エー山よ アーラホイホイ
  エー 天狗教えた エーこの踊り
  「ハーサ行くよだ来るよだ アー面影差すよだ オーサドンドン
 〽馬は鹿毛馬 四輪車 積んだ荷物は米と酒
  「来たそで戸がなる 行くそでまた鳴る 出てみりゃ風だよ
…ほかに「おおさ」「八幡」などあり。

阿智の盆踊り
〽踊りなりゃこそあなたのそばに 常は見るばか思うばか(ヨサコイヨサコイ)
〽伊那で生まれりゃ蛙でさえも カイコカイコと鳴くわいな
〽木曽じゃ蕗漬け長野じゃお蕎麦 伊那じゃ智里の吊るし柿
〽月の園原、小唄で下りゃ 阿智の川には銀の波

小谷の盆踊り
「おけさ」
 〽おけさヤー 踊るなら板の間で踊れよ(アリャサノサッサ)
  板の響きでソレ 三味ゃいらぬ
 〽逢いも 見もせにゃ焦がれもせまい 雉も鳴かずば 撃たれまい
「甚句」
 〽アー 皆揃って夜の更けるまで(アードッコイサイ ドッコイサイ)
  おらが在所の盆踊り 在所のおらが おらが在所の盆踊り
 〽音頭とりましょおおせとあらば 西の山まで届くほど
  山まで西の 西の山まで届くほど
「チョコサイ」
 〽チョコサイ踊るよな青二才野郎に 惚れた女子の
  惚れた女子の気が知れぬ チョコサイノサイ
 〽チョコサイどころか今日この頃は 二銭煙草も 二銭煙草も吸いかねる
 〽文の上書きゃ薄墨なれど 中に恋字が 中に恋字が書いてある

飯山の盆踊り
「烏踊り」
 〽踊らねか 烏踊りを踊らねか(踊らねか 烏踊りを踊らねか)
 〽十七八は 寝間に枕が定まらぬ(定まらぬ 寝間に枕が定まらぬ)
 〽十七連れて 行こか野沢の港屋に(港屋に 行こか野沢の港屋に)
 〽伊達こそするな 伊達にゃ三両の金がいる(金がいる 伊達にゃ三両の金がいる)
「薩摩踊り」
 〽イヤー ござれ正月 門に ソレ 門松本俵 ヨヤサノサーサイ
 〽イヤー 姉さ羽根撞く 羽子板 ソレ それより目許のしおらしや
  それより目許のしおらしや
「ままよ」(富倉)
 〽ままよでなぜままならぬ(ア ヤッシャイコラシャイ)
  ままになる身をノ コラ持たせたい
  なる身をままに(アヤッシャイコラシャイ) ままになる身を持たせたい
 〽ままになるならあの高社 鍬でならして 平らかに
  ならして鍬で 鍬でならして平らかに
 〽鍬でならして平らかに 主と私の 遊び床
  私の主と 主と私の遊び床
「盆じゃもの」
 〽声だやら どこのお稚児の声だやら(声だやら どこのお稚児の声だやら)
 〽お稚児の声 ありお囃子のドスの声(ドスの声 ありお囃子のドスの声)
 〽ドスドスと ドスは音頭をとるものか(とるものか ドスは音頭をとるものか)

伊折の盆踊り
「十万石」
 〽ハー 天気よければ松代様の 城の太鼓の音のよさ
  アー音のよさ 城の太鼓の音のよさ
 〽大姥山から東を見れば 城が見えます海津城
  海津城 城が見えます海津城
 〽犀や千曲の川風受けて 光る殿さの旗印
  旗印 光る殿さの旗印
 〽お盆来た来た盂蘭盆が来た 今に表の盆も来る
  盆も来る 今に表の盆も来る
「甚句」
 〽ちょいと小褄を返したならば 裏に回れと悟りゃんせ チョイト
  回れと回れと裏に 裏に回れと悟りゃんせ チョイト
 〽伊折なつかしモンペをつけた 娘手打ちの蕎麦の味
  手打ちの手打ちの娘 娘手打ちの蕎麦の味
 〽札所まいりの信者が続く 桜盛りの広福寺
  盛りの盛りの桜 桜盛りの広福寺
 〽この家お庭に立てたいものは 踊り御免の立て札を
  御免の御免の踊り 踊り御免の立て札を

木曽の盆踊り
「甚句」
 〽木曽のナー 深山に伐る木はあれど 思い切る気はさらにない
 〽石の 冷たい寝覚めの秋は さんさ時雨に濡れてゆく
 〽木曽の 山寺、今鳴る鐘は 昔ながらの初夜の鐘
「木曽節」
 〽木曽のナー ナカノリサン 木曽の御岳 ナンジャラホイ
  夏でも寒い ヨイヨイヨイ
 〽袷 やりたや 袷やりたや 足袋そえて

上村の盆踊り
「しょうがいの」
 〽しょうがい踊りが今始まるに 婆さ出てみよ孫つれて ショウガイノ
 〽通や名が立つ通わにゃ切れる 困りましたよ他所に妻
「よこばば」
 〽サー横ばばの 横ばばの 与左兵衛の クーン 娘にゃエ
  ×××の竿でさしてとれ
 〽竹に短冊 七夕様は 思いの 思い歌を書く
 〽上を見てさえ 限りはないに 上を見て咲く 下の百合の花
「絵島」
 〽サーエーノヤーレ 絵島ゆえにこそ門に立ち暮らすエ
  サー見せてたもれよ面影を
 〽雁が渡るに出てみよ絵島 今日は便りが来はせぬか
 〽恋の科人、絵島が墓の 里に来て鳴け秋の虫

柏原の盆踊り
「おけさ」
 〽おけさ踊るなら チョイト しなよく踊れヨ
  オヤ しながよければ嫁にとるヨ
  (アーよければしながヨ しながよければ嫁にとるヨ)
 〽早く盆にして 殿さの庭で 殿さ音頭で踊りたい
  (音頭で殿さ 殿さ音頭で踊りたい)
「甚句」
 〽甚句踊るなら三人でも踊れ 踊りゃ三角ノー そばの角
  (三角ノー 踊りゃ 踊りゃ三角ノー そばの角)
 〽甚句恋風そよとも吹かば 前の高野へ 出て涼め
  (高野へ 前の 前の高野へ 出て涼め)
 〽殿さお帰りやれ俺ら鶏ゃチャボだ チャボが二度鳴きゃ 夜が明ける
  (二度鳴きゃ チャボが チャボが二度鳴きゃ 夜が明ける)

諏訪の盆踊り
「エーヨー節」(山浦地方)
 〽ハー 扇子投げたが届いたか主さ ヨイソレ
  骨は黒骨 エーヨー 杜若
 〽届きましたよ黒骨扇子 開いてみたらば 杜若
 〽お名は指さねどこの輪の中に 命かけたい 人がある
 〽来たら寄っとくれよあばら家だけれど ぬるいお茶でも 熱くする

坂部の盆踊り
「すてしょう踊り」
 〽アすてしょう踊りを踊らにゃならぬ(スッテショウショウ)
  くにの土産と コリャ せにゃならぬ(スッテショウ スッテショウ)
 〽盆は来る来る紺屋は焼ける 盆の帷子 白で着る
「のーさ節」
 〽のーさ踊りは今始まるに 調子そろえて ノーサ しゃんしゃんと
 〽唄の上手があるとは知らで 一つ出したら 恥かいた
…ほかに「さしょう踊り」「甚句」などあり。


新野の盆踊り
「すくいさ」
 〽ひだるけりゃこそ救いさに来たに(ソリャ たんとたもれやひと掬い)
  たもれやたんと(ソリャ たんとたもれやひと掬い)
 〽盆よ盆よと楽しむうちに(いつか身にしむ秋の風)
  身に染む秋の(いつか身にしむ秋の風)
「高い山」
 〽高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の ソリャ 花盛りヨ
  ハーリワ ヨーイヨーイヨイ
「おさま」
 〽信州信濃の新蕎麦よりも(私ゃあなたの オサマ そばがよい)
  ハあなたの私ゃ(私ゃあなたの オサマ そばがよい)
 〽馬鹿にするなよ枯木だとても(藤が巻きつきゃ 花が咲く)
  巻きつきゃ藤が(藤が巻きつきゃ 花が咲く)
「音頭」
 〽アー音頭とる子が(ソリャ) 橋から落ちて 橋の(ソリャ)
  下でも音頭とる(アー音頭とる 音頭とる 橋の)
  ソリャ(下でも音頭とる ソーレソーレ ヨーイトセ トコショイ)
「十六」
 〽新野十六習いたきゃござれ ソレ 金の四五両も持てござれ
  持てござれ 金の四五両も持てござれ
 〽金の四五両もいることなれば 新野十六まずやめだ
  まずやめだ 新野十六まずやめだ
「おやま」
 〽おやま買う金(ソリャ) 私におくれ(ソリャ)
  (わしがおやまの) ソリャ(エー代をする)
「能登」
 〽アー能登へ能登へ木草もなびくノ 能登は木草の本元だ
  (本元だノ 能登は木草の本元だ)
…今は7種類を踊っているが、大正までは13種類ほどの踊りがあった。新野の盆踊りは3日間に亙って踊られるが、最初はすくいさで、あとは能登以外の6種類を切り替えながら踊る。3日間とも夜通し踊り続ける。能登は、最終日の明け方、最後に踊ると決まっている。

浪合の扇子踊り
〽扇子投げたか届いたか主さ 骨は黒骨かきつばた
 かきつばた 骨は黒骨かきつばた
〽くるりくるりと回るは淀の 淀の川瀬の水車 水車 淀の川瀬の水車

古間の盆踊り
「おけさ」
 〽古間 チョイト よいとこ コリャ 団扇はいらぬヨ コリャ
  都殿御の夏涼みヨ オヤ殿御の都ヨ 都殿御の夏涼みヨ
 〽お前 さんとは いつ会うたままだ 野尻開帳の年に会うたままだ
  開帳の年に野尻 野尻開帳の年に会うたままだ
「甚句」
 〽西は黒姫 コリャショ 東は斑尾エ 間に美しノー 鳥居川
  美し間に 間に美しノー 鳥居川

牟礼の盆踊り
「甚句」
 〽甚句恋風そよとも吹かば コリャ 裏の小山へ アリャ出て涼め
 〽下に下にの加賀さんさえも 牟礼甚句は 江戸みやげ
 〽加賀と江戸との道真ん中で 牟礼甚句の 花が咲く
「みつ節」
 〽今年ゃ豊年 穂に穂が咲いた 升はいらないノー 箕で量る
 〽盆の十三日が二度あるなれば 親の墓所へ 二度まいる

中野盆踊り
「川崎」(松川地区)
 〽瀬川と書いてさかさまに 淀の川瀬の水車
 〽猿丸太夫 奥山に 紅葉踏み分け鳴く鹿の
 〽小式部内侍 大江山 幾野の道の遠ければ
 〽周防の内侍 春の夜の 夢ばかりなる手枕に

新民謡「大町小唄」 唄:大町芸妓連
〽山に登ろか ヨーホホホイ 登ろよ山に ヤレコノサ
 美空十里は 岳の町 コノヤレコノ 大町ゃヨ
〽山を下ろか 下ろよ山を 夜の安曇野 光る町
〽北は白馬 南は穂高 どちら立山 思案町
〽鹿嶋籠川 高瀬の谷に 忍ぶ岩魚の 逢瀬町
〽雲の海越しゃ 大沢泊まり 一本立てよか 雨の町

新民謡「別所小唄」 唄:別所連中
〽連れて行かんせ観音さんへ 今年十九の厄除けに
 「別所湯の町よいとこさ ヨイヤサ コリャショ
〽吹くな春風、別所の戻り あたら湯花の香がさめる
〽恋の病の薬のお湯と 七湯七苦離、名を流す
〽青葉若葉の別所の里は 深山がらすをお湯で聞く
〽今日も浅間は煙で曇る 曇る別所は湯の煙
〽別所名物かずかずあれど 主へ土産は玉の肌

新民謡「飯山小唄」
〽ここは飯山エ スキーの ササ名所
 月や花より雪を待つ ウインタースポーツマン
〽行こよ城山 神明が 丘へ
 雪が晴れたよ日が出たよ ウインタースポーツマン
〽雪の飯山 スキーの 名所
 雪崩ないので誰も来る ウインタースポーツマン
〽五里や七里は スキーで 通う
 たまにゃ来いとの文欲しや ウインタースポーツマン
〽添うたようでも 離れて いるし
 それで添うてるスキーの跡 ウインタースポーツマン

新民謡「飯山新民謡」 唄:村山萬吉、飯山芸妓連中
〽ハー ヨイトヨイトヨイトナ 花は城山 御吉野桜
 誰に想いを 誰に想いを染井やら ゆかし葵の御所の跡
 ソレヨイトコラサ ソレヨイトコラサ
〽寺は三十六 鐘なら愛宕 人は恵端か
 人は恵端か法の町 今朝も撞木で目が覚めた

新民謡「お諏訪節」 唄:市丸
〽ハー 峰はナ(ハードッコイ) 峰は白雪、諏訪湖は茜 とけて見初めて
 トコドッコイドッコイセ エーとけて見初めて出湯の町(ソレ)
 アラヨイト ヨーイトヨイト トコドッコイドッコイセ
〽月に 月に誘われ柳にゃ呼ばれ 来たよ湯町の 来たよ湯町の盆踊り
〽今宵 今宵涙も凍るよ湖畔 神も恋路を 神も恋路を御神渡
〽花が 花が咲いたよ高島城址 様もほんのり 様もほんのり桜色
〽泣いて 泣いて別れた吹雪の諏訪よ 恋し湯の町 恋し湯の町、雪の町

新民謡「浅間小唄」 唄:浅間芸妓連
〽浅間湯の街ゃ ヨイショヨイショナ サイショ松本平 ヨイショヨイショナ
 山や谷間の 山や谷間の蔭じゃない ヨイショヨイショナ
 「ほんに浅間は湯の都 ササヨイショヨイショナ
〽女鳥羽河原じゃ河鹿が鳴くが 私ゃ別れにゃ 私ゃ別れにゃ湯場で泣く
〽山じゃアルプス出湯なら浅間 浴びて眺めて 浴びて眺めて炬燵酒
〽同じ燃えてもありゃ火の浅間 こちら情けの こちら情けの湯の浅間
〽桜三月あやめは五月 浅間湯の花 浅間湯の花四季に咲く
〽日本アルプス浅間の宿じゃ 庭の景色で 庭の景色で一眺め
〽山の木の葉が色付き染めりゃ 日本アルプス 日本アルプス雪を待つ
〽浅間湯の町上下はあるが 思いつめれば 思いつめれば上下ない

新民謡「千曲小唄」 唄:戸倉芸妓連/千曲芸妓連
〽岩間逃げ水 ひそひそ小みちヨ 木の根、草の根分けてきて
 さざめ合えばヨ 噂末ひろ 千曲川
 ホイノホイノホイノ ヨサホイノホイ ショコホイホイホイ
〽宵の睦言 ほろほろ河鹿 恋の姿の月見草
 湯の街戸倉 噂末ひろ 上山田
〽湯の香日ぐれて さらさら流れ 浅瀬波立つ恋は淵
 身も更科に 噂末ひろ 月田毎
〽千曲河原の すいすい蛍 湯の香くぐってまた光る
 川中島に 噂末ひろ 越路まで
〽恋のかけ橋 ほそぼそ灯 千曲渡れば湯の香まち
 沸き立つ思い 噂末ひろ年々に
〽千曲河原の 夜な夜な恋路 わたしゃ無駄には通やせぬ
 更科手古奈 噂末ひろ恋は意地
〽たぎる湯水は ひそひそ地底 湯みち尽くまで湧きゃせぬが
 燃え立つ恋は 噂末ひろ色に出る
〽戸倉湯けむり ちらちら小雪 積もる思いのとけてきて
 湧き立つところ 噂末ひろ 上山田
〽天の川原は きらきら小星 秋が来たかとすねてみる
 なぐさめられて 噂末ひろ 増す思い
〽千曲小唄は すらすら小唄 あとは替唄どんど出せ
 夜通し踊れ 噂末ひろ日本一

新民謡「更級節」 唄:更科芸妓連
〽信州信濃の更科蕎麦は ソーラサイ 馬の鼻息で
 馬の鼻息で サラサット すぐ茹だる(ハーナッチョモナッチョモ)
〽ところ更科お茶飲みどころ 寄るとさわると 寄るとさわると お茶ばかり
〽あちら聴いてりゃこちらにすまぬ 犀と千曲の 犀と千曲の 水の音
〽月の姥捨 曇ろと照ろと 思い棄てずに 思い棄てずに 忘れずに
〽蕎麦は見どころ 娘は出ごろ 月の田毎に 月の田毎に 宿るころ
〽田毎々々に照る月なれど たんた頼むは たんた頼むは ただ一つ
〽月が鏡となる山なれば よべの笄 よべの笄 拾うてくれ
〽七郷者とは縁組するな と云うて様々 と云うて様々 八幡様
〽長谷の観音様蹴出しが長い 見ろや千曲の 見ろや千曲の向こうまで
〽長谷の蛇杉に蛇が棲むげなが かわい蛇じゃげな かわい蛇じゃげな主じゃげな
〽桑の根っころほこほこ炬燵 やうち当たれや やうち当たれやお茶飲めや
〽ぼても軽々夜が夜が明ける 行きしょ畑の 行きしょ畑の桑摘みに
〽今は庭起き寝る夜もないに おらちゃ知りしね おらちゃ知りしねまたおいで
〽砂ですんなり横田の牛蒡 縦に束ねて 縦に束ねて朝は出そ

新民謡「川中島音頭」 唄:篠の井芸妓連中
〽信州ナ 信州信濃の川中島は 犀と千曲の間の島
 「聖が曇れば雨となり 冠着明かれば晴となる ヤーレソーレ ヤーントナ
〽妻女 妻女ほのぼの越後の勢は 眠る海津を見て忍ぶ
〽川は 川は朝霧ひとむち当てりゃ なんの八幡 武田菱
〽一目 一目夜の明け きらめく三太刀 惜しや七太刀 流れ星
〽昔 昔思えば千曲の水よ 車がかりの音もする
〽朝は 朝は越後よ 日暮れは甲斐よ わしとお前も五分と五分
〽戦 戦するなら 川中島よ お願かけなら善光寺
〽林檎 林檎花咲く茶臼の山を なぜに妻女はしゃがれ桑
〽花井 花井主水さま早や代掻きよ たたん田の水よう頼む
〽おらが おらが町こそ川中島よ 汽車に乗ってみな駅もある

新民謡「田中小唄」
〽弥津で撞くのは黒姫様の 恋し恋しの暮れの鐘
〽空の鳥さえするすの宮の 杜は忘れず来てとまる
〽富士見館なら行きがけ来がけ 寄らず通れば気がすまぬ
〽皆行きましょう藤沢のスキー 上り疲れは湯で治す
〽晴れた楢原 田中が一目 富士も見えます遠空に
〽春の大日 月さえ朧 袖に桜の花吹雪
〽赤い雪洞 成田の祭り 月の二七が待ち遠い
〽松の蔭からお寺が見える あれは田中の法善寺
〽私ゃ外山のさらさら粉雪 積もりゃ添寝も松とする

新民謡「ソイソイ節」 唄:松代芸妓連
〽春は松代どの空見ても ソイ 花のナ 杏子に ソイソイ 時の鐘
 ソデナー ソイナー ソイソイ
〽むすめ松代お蚕さま育ち 嫁に 貰いしょ くだしかい
〽鐘は割番 明け暮れ鳴るが 私ゃ 糸とり 時ゃ知らぬ
〽糸のとりつめヤッコラチャンとヤンと 明けりゃ 日和の 鐘が鳴る
〽行きしょやうちよ葉の桑摘みに 桑の てん葉の 裏つみに
〽何で逢いましょかちょっと出たばかり 桑の ほけ見に 出たばかり
〽参ろ参ろしょ虫歌様へ 様は 蚕の 守り神
〽今朝も早う出て西嶽見れば 雪の 茜の お日が差す

新民謡「松代音頭」 唄:松代芸妓連
〽ハー 人は象山音なら火砲 ソリャ 意気は信濃の
 意気は信濃の山桜 ヨイト ヨイト ヨシナ
〽真田六文銭海津の城よ 今は四つ葉の 今は四つ葉の馬肥し
〽寒くなりした白鳥様の 松の肌まで 松の肌までしみじみと
〽やうち行きしょか虫歌山へ 盆の月夜の 盆の月夜の虫聴きに
〽様と寝る夜も千曲の川の 水の瀬の瀬の 水の瀬の瀬の音がする
〽朝の別れに霧さえ立たにゃ 何で雨降ろ 何で雨降ろ尼飾山
〽がいろつらめし花嫁せりに 来たよ浅間の 来たよ浅間の山越えて
〽九の日九の日は七面様よ お前八文字 お前八文字ろくでなし

新民謡「須坂小唄」 唄:佐藤千夜子
〽山の上からちょいと出たお月 誰を待つのか待たれるか
 ヤカッタカタノタ ソリャカッタカタノタ
〽誰も待たない待たれもしない 可愛いお前に会いたさに
〽可愛い私は須坂の町に 須坂恋しかあのお月
〽お月ゃ工場をちょいと来て覗く 誰に思いをかけたやら
〽誰に思いを友達衆よ ホロロホロロと夜が更ける
〽ホロロホロロと須坂の町の 寝ずの番やらあのお月
〽お月ゃ姿は村雲まかせ 糸はその日の枠まかせ
〽糸は艶持つ皆さん達よ 私ゃ姿もまだ若い
〽須坂よいとこ須坂の町の 工場見せたやこの繁盛

新民謡「中野小唄」 唄:中野芸妓連
〽信州広くも中野がなけりゃ ヨイトコリャ ドッコイサノセッセッセ
 どこに日の照る どこに日の照る町がある 町がある
 カナカ ナカノカ ナンセカンセ ドッコイサノセッセッセ
〽信州中野はお蚕どころ 中野紬の 中野紬の出るところ 出るところ
〽中野生まれは気立てで知れる 横に車は 横に車は押しゃしない 押しゃしない
〽島田結わせて黒姫山に 婿があるなら 婿があるなら嫁にやる 嫁にやる
〽信州中野は奥での都 昔ゃ御天領 昔ゃ御天領 五万石 五万石
〽仲のよいのに誰が水差して 町の真ん中に 町の真ん中に川がある 川がある
〽月の出潮だ皆出て踊れ 中野小唄で 中野小唄で夜明けまで 夜明けまで
〽中野日が照る 照る日を避けて そっと日陰を 日陰を二人連れ 二人連れ
〽粉雪降る降る砧が冴える 様に見せたい 様に見せたい白紬 白紬
〽ゆかし懐かし高梨様の 松に昔の 松に昔の風が吹く 風が吹く

新民謡「池田小唄」
〽池田 池田よいとこ住みよいところ ヨイトサノセ
 町は明るいエー ササ田は広い セッセノセ ヨイトコリャセ
〽春は 春は桜で秋また月見 歌の名の出た 登波離橋
〽神代 神代ながらの八幡様に 合わせ舞う娘の あで姿
〽高瀬 高瀬河原の宵待草に 誰を待つやら 夕涼み
〽稲穂 稲穂千里の池田の町は 俵まくらで 春を待つ
〽秋を 秋をすませて大峯山に 雪の来ぬ間に 薪採り
〽高瀬 高瀬流れて五穀は実る 水に苦労の せぬところ
〽国を 国を富ませたお蚕様の 糸を繰り出す 池田町
〽鬼の 鬼の屋敷と伝えているが 鬼も出て来ぬ 鬼の釜
〽夏の 夏のさなかに真白き雪が 雪が降ったよな 繭の町
〽昔ゃ 昔ゃ高瀬の荒れたる河原 今じゃ黄金の 波が立つ
〽池田 池田よいとこ一度はおいで 繭の白さの 娘が招く

新民謡「小諸小唄」
〽上州見おろし浅間が山は 胸にほのぼの火を燃やす
〽二つ日はない浅間が山よ わしが願いをどうなさる

新民謡「山の唄(守れ権現)」 唄:小唄勝太郎、三島一声、島村武男/四家文子
〽守れ権現 夜明けよ霧よ 山は命の禊場所
 行けよ荒くれ どんどと登れ 夏は男の度胸だめし
〽何を奥山 道こそなけれ 水も流るる鳥も啼く
 馬子は追分 樵は木遣 朝は裾野の放し駒
〽風よ吹け吹け 笠吹き飛ばせ 笠は紅緒の荒結び
 雨よ降れ降れ ざんざとかかれ 肩の着ござも伊達じゃない
〽山は百万石 木萱の波よ 木萱越ゆればお花畑
 雪の御殿に 氷の窟屋 滝は千丈の逆落とし
〽さあさ火を焚け ごろりとままよ 木の根枕に嶺の月
 夢にゃ鈴蘭 谷間の小百合 酒の肴にゃ山くじら
〽守れ権現 鎮まれ山よ 山は男の禊場所
 雲か空かと 眺めた山も 今じゃわしらが眠り床

新民謡「夏の魅惑(キャンプファイアの唄)」 唄:佐藤千夜子
〽夕日薄れて紫に 暮れる下界は雲の海
 駈けよ若人、白樺の キャンプファイアに夜が来る
〽仰ぐ蚕山の静けさよ 星も凍ゆる雪渓よ
 岩を褥にピッケルと ザイル枕の夜が来る
〽お花畑の幻に 岩を百花の唇よ
 愛し乙女の胸に咲く 愛の言葉を夢に見る
〽槍のピークに月が出た 明日は穂高の縦走よ
 眠れ若人、白樺の キャンプファイアに夜が更ける

新民謡「仰げ燕岳」 唄:美ち奴
〽仰げ燕岳 見下ろせ黒部 吹くは山風 さやさやと
 ヤーホイ ヤッコラサノサ サノサ サノサ
〽槍の縦走 ロープのたるみ 切れりゃ全身 谷の底
〽ここは涙の 針ノ木平 さげたピッケルも 濡れてくる
〽お花畑の 匂いにむせて 今宵気になる 月の傘
〽千畳小屋にも 灯りがついて 誰が踊るか おけさ節

流行歌「天龍下れば」 唄:市丸
〽ハー 天龍下れば ヨーホホイノサッサ しぶきに濡れてヨ
 咲いた皐月に エー咲いた皐月に虹の橋 ホンニアレワサノ 虹の橋
〽伊那の夕空 あの片しぐれ 明日は下りじゃ
 明日は下りじゃ笠ほしや 笠ほしや
〽筏つないだ 藤蔓さえも 切れりゃ気になる
 切れりゃ気になる夫婦岩 夫婦岩
〽こえる淵瀬に 命をかけて 主と私は
 主と私は中泉 中泉

民謡「安曇節」
〽サー 何か思案の有明山に 小首かしげて 小首かしげて出たわらび
 出たわらび 出たわらび チョコサイコラホイ
〽登る常念 豊科口の 一の沢辺は
 一の沢辺は夏桜 夏桜 夏桜
〽槍を下れば梓の谷に 宮居涼しい
 宮居涼しい神垣内 神垣内 神垣内
〽一夜穂高のわさびとなりて 京の小町を
 京の小町を泣かせたや 泣かせたや 泣かせたや
〽安曇六月まだ風寒い 田植布子に
 田植布子に雪袴 雪袴 雪袴
〽白馬七月 残りの雪の 間に咲きだす
 間に咲きだす花の数 花の数 花の数
〽烏帽子下れば葛の湯泊まり 浮世離れた
 浮世離れた高瀬入り 高瀬入り 高瀬入り
〽日本アルプスどの山見ても 冬の姿で
 冬の姿で夏となる 夏となる 夏となる

流行歌「天龍旅情」 唄:音丸
〽天龍二十五里 しぶきの花の エーソーレエー
 花の中行く 花の中行く トコヤンサノエー ひのき笠
〽伊那の娘に赤石問えば 桑を摘み摘み 桑を摘み摘み目で知らす
〽天龍来るなら皐月の見ごろ 波に若鮎 波に若鮎 躍る頃

流行歌「仲乗り天龍しぶき」 唄:照菊
〽天龍しぶきに桧の笠に 濡れて下るか仲乗りさんよ
 泣いちゃいけない高遠がらす 泣けば別れが辛くなる
〽思い出したら唄うておくれ 幼馴染のあの伊那節を
 西に東に流れる雲も 天龍しぶきにゃむせるもの
〽伊那の山々ねんねんころり 唄う小諸のあの子守唄
 つつじ色づく柳は芽吹く 小唄聴きたや夫婦岩

流行歌「天龍二十五里」 唄:三門順子
〽ハー 諏訪湖ナ 諏訪湖ながれて 伊那の谷ヨ
 越えて懐かし 聞くも懐かし 天龍川 セッセセノセノ ヨイトセノセ
〽別れ 別れ惜しさが 涙に なって旅衆の いとし旅衆の 肩濡らす

流行歌「伊那の夕月」 唄:音丸
〽伊那の夕月 眉より細いヨ
 想いやつれた待つ身の影か あれさ狭霧に 濡れて出る
〽山の九つ 夜風の夜岸
 恋に焦がれりゃ苦労もないが あれさ越されぬ 天龍峡
〽伊那の育ちは 繭づき暮らし
 募る思いに影さえ痩せて あれさいつの日 丸くなる

流行歌「天龍ながし」 唄:日本橋きみ榮
〽サー 天龍二十五里 しぶきに濡れてヨ
 やなぎ一葉の やなぎ一葉の 舟がゆく
〽男伊達なら 天龍くだり かわいあの娘の かわいあの娘の 婿にとる

流行歌「可愛い筏乗りさん」 唄:青葉笙子
〽落ち葉しぐれに思いも濡れる 可愛い筏乗りさん 川風に
 木曽のお山は霧隠れ エー霧隠れ
〽誰に焦がれて鳴く山鳩よ 可愛い筏乗りさん 夢載せて
 月に唄うか里なまり 里なまり
〽思い急くとも流れは堰けぬ 可愛い筏乗りさん 波しぶき
 袷やりたや足袋そえて 足袋そえて

流行歌「木曾路恋しや」 唄:豆千代
〽ハー 木曾の川霧ゃナ 夏でも寒いヨ 今朝も別れに雲の傘
 サササヨイヤサノ サササヨイヤサノ 雲の傘
〽主の筏も 急かれりゃ曇る 伊那は雨かや川しぶき 川しぶき
〽木曾は夕焼け 流れて暮れて 美濃や尾張の薄月夜 薄月夜

流行歌「木曾路しぐれて」 唄:東海林太郎
〽捨てた情けか木曾路をあとに 涙隠しの三度笠
 時雨降る夜の御嶽越えて ひとり股旅どこへ行く
〽呼んでくれるな川原の芒 すぎたあの日を思い出す
 どうせおいらはこの木曾川の 水の流れか浮草か
〽なまじ晴れるな木曾路の月夜 晴れりゃおいらをまた泣かす
 時雨降る夜にほろりと濡れて ひとり股旅どこへ行く

流行歌「木曾の馬子唄」 唄:東海林太郎
〽木曾のお山にヨ 今朝降る雨は 誰が別れの 誰が別れの涙やらヨ
〽まめでいなよと 形見に貰うた 情け一夜の 情け一夜のお六櫛
〽何で売らりょか 愛しの黒馬を たとえ妻子の たとえ妻子のためじゃとて

流行歌「追分手綱」 唄:高山美枝子
〽月が照る照る浅間のふもと 小諸通いの戻り駒
 唄は 追分 手綱に通う 娘ごころの 娘ごころの鈴が鳴る
〽風が出たかよ小笹が揺れる 三里峠も唄で越す
 今日も 追分 沓掛手綱 里の灯りも 里の灯りもちらちらと

新民謡「新井小唄」 唄:新井芸妓連
〽御坊の桜がちらちら散って アリャサノサ 雪の南葉がほんのりと
 月も朧の新井の町の 夢のあの夜が忘らりょか
 トヨイトヨイトヨイト ヨイトサノサ
〽願をかけよと白山様へ 参る心の切なさも
 矢代河原にいざよう月の 影に迷うたわしじゃない
〽越後見納め小出雲坂で 泣いた昔は夢じゃない
 遠い思いを包んだ袖に 今もこぼれる松の露
〽心急き急き関川堤 さらりさらさら川風に
 荒い瀬波の切ない身をも さらり忘れて夕涼み

新民謡「新井甚句」 唄:藤本二三吉
〽春は極楽 経塚山よ ホケキョホケキョと
 ホケキョホケキョと鳥も鳴く ササホイ
 「さあさ夜さ来た 踊れや唄え
〽ホケキョホケキョと鳴く鳥さえも
 花の新井にゃ 花の新井にゃ夢を見る
〽夏の短夜 新井で明けて
 見たよ南葉の 見たよ南葉の朝姿
〽御坊の御恩講にゃ 泊まりかけてござれ
 財布膨らませて 財布膨らませてしゃなしゃなと
〽新井矢代川 夏でも寒い
 一人涼みじゃ 一人涼みじゃ風邪を引く
〽盆の踊りは 新井で踊れ
 派手な姿も 派手な姿も目に立たぬ
〽雪が来た来た 妙高の嶺に
 夜風肌寒 夜風肌寒しみじみと
〽スキーするなら 加茂さんの裏よ
 神の御陰で 神の御陰で怪我はない

新民謡「栃尾音頭」 唄:すみゑ、桃子
〽ハー 糸になりたや 栃尾の糸に(ヨイトーサー)
 栃尾紬の ヨーイト ヨーイト ヨーイトナ
 ハー アー機糸に 恋しお方の機糸に
 ヤットンカラリコ スットントン

新民謡「栃尾小唄」 唄:新橋喜代三
〽守門お山の雪解け初めて 花の栃尾は エー春霞 春霞
 紬織る娘の浮き立つ胸に 燃えて鳴るよな オーサソレソレ 筬の音
〽乙女心は栃尾のお召し 艶も美人の 雪の肌 雪の肌
 筬の糸さえ引かれりゃなびく 私ゃ情けに すぐそまる

新民謡「燕小唄」 唄:小唄勝太郎/市丸
〽燕町(アリャサ) 廻るモータよ響くはハンマ(サノアリャサッサ)
 街は明るい朗らかさ
 「つんつん燕の言うことにゃ 越後の燕は縁の町
〽全国は 言うもおろかよ国際的の 品は燕の洋食器
〽蚊帳吊や キセル銅器は燕の誇り ほかにあろうか見らりょうか
〽別れても いつになっても金物見たら 思い出しなよ燕町
〽春風に なびく青柳 燕がとまる 花に寝てきた鳥かしら
〽そよそよと 弥彦山から燕の町へ 風も慕うて日に幾度
〽悲しさに 忘れられよか燕の町は 越後平野のまん真中
〽信濃川 流れ流れて燕の町の 岸に水さえ来て淀む

新民謡「新潟音頭」 唄:藤本二三吉/千代菊、はじめ
〽ハー 船は来る来る宝を乗せて(アリャサ)
 今日も港の 今日も港の岸に着く ソレ
 「トントントンカラカンノ ヨイヨイヨイヤサ 拍子揃えて ヨーイヤサ
〽夜の白山踊りに更けて 樽の砧が 樽の砧が冴え渡る
〽日和山から沖合見れば 佐渡や粟生島 佐渡や粟生島、念珠が関
〽夏の涼みは住吉祭り 蘆の舟江の 蘆の舟江の川びらき
〽娘器量よし堀端通りゃ 蝙蝠ちょいと出て 蝙蝠ちょいと出て顔のぞく
〽出船入船、数ある中で 嬉し待つ身に 嬉し待つ身におけさ丸
〽主が気になり寝られぬ夜は 沖の海鳴り 海鳴り身に沁みる
〽いとし主さん逢われぬ夜は 通いなれても 通いなれても橋ゃ長い
〽恋の新潟、柳の陰で 君を待つ間の 君を待つ間の朧月
〽関屋通れば心が躍る 駒に勝負の 勝負の運試し
〽越後よいとこ稔りの秋は どこもかしこも どこもかしこも米の山
〽山に風吹きゃ長岡街は ちらりちらちら ちらりちらちら花の雨
〽雪の高田はスキーの都 晴れの腕前 晴れの腕前見せるとこ
〽主の心をわしゃ測り兼ね 三条名物 三条名物曲尺
〽米の越後にゃ実りに邪魔な 二百十日が 二百十日がなけりゃよい
〽一の宮居お夜日子様よ 杉の並木も 杉の並木も神さびて
〽弥彦角田は夫婦の山が 一つ霞みに 一つ霞に暮れてゆく
〽石油井櫓、林と並ぶ 並ぶ井櫓 並ぶ井櫓東山
〽スキーやるなら高田へおいで 雪はさらさら 雪はさらさら光る雪
〽新発田十六連隊、皇国の誉れ 大和魂 大和魂、加治の花
〽燕土産の真鍮の煙管 煙に巻けとの 煙に負けとの謎じゃない
〽うちの嫁さん村上生まれ 鮭を食うたび 鮭を食うたび国自慢
〽瀬波温泉、笹川流れ も一つおまけに も一つおまけに粟生島
〽津川キリン山、紅葉の眺め 下る馬下 下る馬下筏舟
〽出湯のおんばさま仏の利益 胸の悩みも 胸の悩みも治りゃよい
〽白根絞りの揃いの浴衣 粋と意地との 粋と意地との凧戦
〽新津甚句はしなよい踊り 唄の文句が 唄の文句が秋葉山
〽聴いた三界節 観ましたお堂 ほんに柏崎 ほんに柏崎よいところ
〽縮買おうか上布にしよか 思案に暮れる 思案に暮れる小千谷町
〽姉は十日町、妹も女工 四つ違いの 四つ違いの六日町
〽倅働け祝言の時にゃ 袴履かせる 袴履かせる五泉平
〽尼瀬、寺泊、出雲崎かけて 烏賊釣り舟の 烏賊釣り舟の灯が続く
〽ここは直江津、謙信公の お城春日の お城春日の山の上
〽酒は酒屋に団子は茶屋に 金の出るのは 金の出るのは佐渡の山
〽海府見物、相川泊り 戻り土産に 戻り土産に佐渡おけさ
〽越後不思議の七つの一つ 鳥屋野、西方寺の 鳥屋野、西方寺の逆さ竹
〽越後不思議の七つの一つ 田上、山本の 田上、山本の繋ぎ栢

新民謡「新潟小唄」 唄:藤本二三吉/曽我直子
〽水の新潟、八千八川 ハーサハラショ ハラショノロンロン
 末は万代 橋ゃ長い 橋ゃ長い
 「とんとと叩けよ樽砧 港にお船も寄ってきた
  ハーサハラショ ハラショノロンロン
〽添うてよいのは柳の日陰 越の男の 後ろ影 後ろ影
〽人目なりとも白山さまの 松になりたや さやさやと さやさやと
〽お前砂山ぐみ原雀 風にちらりと 見たばかり 見たばかり
〽見ても涼しい万代橋よ 夏は河口 越の海 越の海
〽晴れて打ち上げた花火のあとで なんで入江よ こうさびし こうさびし
〽冬の砂山どこまで寒い 海の向こうは 佐渡ヶ島 佐渡ヶ島
〽天の川さえ隠れにゃ寒い まして荒海 佐渡ヶ島 佐渡ヶ島

新民謡「港おどり」 唄:佐藤千夜子/藤本二三吉
〽港おどりはヨ 港おどりはエ 御放楽踊りヤットサノサ
 時にゃ帯まで空とけるヤットサノサ
 「ハ、ドンゲデモ コンゲデモ ヤットサノサ
〽乗れば乗り切る 乗れば乗り切る こうなるからにゃ どんな越後の荒海も
〽逢わぬ日はない 逢わぬ日はない 白山さまよ 末はどうなることじゃやら
〽山が見えます 山が見えます 越後の山が もはや新潟も近くなる
〽弥彦さんから 弥彦さんから 佐渡粟島へ 飛べば飛べそな夢を見た
〽新潟港の 新潟港の あやめの花よ 夏が來たのにまだかいな
〽信濃川さえ 信濃川さえ 萬代橋ゃかかる かけてかからぬ橋はない
〽わしが思うたら わしが思うたら 松ヶ崎ゃ曇った 佐渡の出船も雨となる
〽ザクリザクリの ザクリザクリと 砂山の砂も 夜は夜霧で重くなる

新民謡「新潟みなと音頭」 唄:小野巡
〽ハー 新潟港の 新潟港のヨイトヨイトナ(アリャヨイトヨイトナ)
 出船入船にぎやかに 千艘万艘も 千艘万艘も岸に着く(ソレ)
 「みなと新潟ヨイトヨイトナ(アリャヨイトヨイトナ)
〽祀る白山 祀る白山 花の船江の守り神 松の緑も 松の緑もいやさかる

新民謡「越佐行進曲」 唄:朝居丸子
〽越後米の国 稲田は百里 愛の風吹きゃ明日も晴れ
 赤い夕陽に黄金の波が 遠い思いに日が暮れるヨ
 エッサエッサエッサエッサ エッサエッサエッササノサー
〽山はアルプス 海ゃ荒海よ 越後女子衆は雪の肌
 深く積もった雪さえ解けりゃ 花も一日みな開く
〽新潟、長岡 越路の都 三条、新発田は米の町
 新津、柏崎ゃ石油の本場 恋のおけさは佐渡島

新民謡「越佐小唄」 唄:小唄勝太郎
〽積もる淡雪さらりと解けりゃ 千里ひとはけ春霞
 なびく平和の歌声に 花も微笑む越後の春は 開く梅から桜から
〽港繁昌の入船出船 波に文化の虹が立つ
 沖の鴎に大漁旗 波も涼しい越後の夏は 招く佐渡から白帆から
〽繭は白銀、田畑は黄金 めぐみ豊かな海の幸
 汗と血潮が実を結ぶ 風もかぐわし越後の秋は 揺れる五穀の穂波から
〽民を一つに笑顔で結ぶ 高き理想に伸びる里
 愛と自由に栄えゆく 雪も楽しい越後の冬は 山の尾根からスキーから

新民謡「妙高山麓温泉小唄(ヤーソレ節)」 唄:藤本二三吉
〽暑さ忘れはヨーイヤサ 赤倉・妙高 ヤーソレヤレサノサ
 行こよ池ノ平 関、燕 ヤーソレヤレサノサ
〽麓ぁ湯けむり 谷間は雪よ 嶺は極楽 越後富士
〽朝日ほんのり 白樺林 夢の国から 日本海
〽田口・妙高の 湯船で聴いた 関の川音 ほととぎす
〽池ノ平の 秋草原で 見たよ涼しい 夏の雲

新民謡「新津小唄」 唄:市丸
〽花になれなれ ハーズイトセ 新津の花に(トコサイノ ハラリコショ)
 春はサー のどかに晴れ晴れと ハー桜林で エイコノ咲く花に
〽今日も油田の 櫓の風は
 いとし 小声で懐かしく 新津繁昌と 呼びかける
〽新津貯水池 茶山の上で
 小手を かざせば茶の陰に 遠く見えます 佐渡が島
〽阿賀ノ川でも 越す気があれば
 淵が あろうと瀬があろと 越して越されぬ ことはない
〽見せてやりたや 見渡す限り
 花は 五色にさまざまに 咲くは小合の チューリップ
〽波が打ちます 蒲原平野
 青田 稲田に立つ波は 恋し新津の 町までも
〽よそじゃ見られぬ 小合の牡丹
 乱れ 咲いても色のよさ おいで眺めに 見物に
〽私ゃ思いを たとえてみれば
 ちょうど 秋葉の幸清水 誰に汲ませる あてもない
〽秋葉山見りゃ 松の木ばかり
 待つは 辛いと知りながら と言うて待たずに おられよか
〽新津見返り また振り返り
 永い 別れにゃしちゃおかぬ 思い出すたび 逢いに來る
〽迷うちゃ嫌です 新津の駅は
 西に 東に北南 心こまかに 汽車が出る
〽私ゃ思いを 譬えてみれば
 丁度 紅葉の幸清水 誰に汲ませる あてもない

新民謡「四季の新津」 唄:鈴木三重子/島倉千代子
〽花の秋葉のぼんぼりに そっと抱いた恋ごころ
 乙女心よ思い出よ なつかしい街わたしの新津
〽月の光に濡れながら 君と踊った松坂は
 若い一夜の思い出よ なつかしい街わたしの新津
〽雨に煙った並木路 駅の時計も泣き濡れて
 誰を待つやら蛇の目傘 なつかしい街わたしの新津
〽肌もつぶらな処女雪を スキーで行きましょ山越えて
 あかりが招くよちらちらと なつかしい街わたしの新津

新民謡「直江津小唄」 唄:藤本二三吉
〽唄の米山 夕日に赤い 明日も凪だよ日が暮れる ちらりちらちら
 街の灯が招くぞえ ヨイショヨイショコリャ ヨイショヨイショナ
〽今日も見た見た 荒川橋で 港出てゆく船の影
 沖にゃほのぼの 夢の国かよ佐渡が島
〽ゆかし懐かし 砂山かげで 月を待ち待ち月見草
 星の涙が 濡れて嬉しいや袖袂
〽夜の荒川 神輿が下る 川は満灯の迎え船
 祇園囃子の 笛や太鼓で夜が明ける
〽お前船乗り わしゃ浮気鳥 どうせこの世は波の上
 波の上でも 浮いた心じゃ暮らされぬ
〽波がどんと打つ どんと打つ波に 羽を折られて啼く千鳥
 浜が暮らしは とかく寂しい夜が多い
〽雪が降る降る 降る降る雪が 雪の中から月が出る
 名古の浦わにゃ 波の花咲く千鳥啼く

新民謡「長岡小唄」 唄:朝居丸子
〽ハー 信濃河原に朝立つ霧は(ヨイヨーイトナ)
 暮れりゃ情けの 暮れりゃ情けの雨となる
 夜の長岡 濡れて嬉しい花の雨(サノヨイヨイ 花の雨)
〽越後長岡 家並みが良うて 通る娘の 通る娘のなりのよさ
 そよげ並木の そよげ並木のプラタナス(プラタナス)
〽名さえゆかしい鈴蘭通り 照らす電灯の 照らす電灯の夢のかげ
 夜も花咲く 夜も花咲く並木かげ(並木かげ)

新民謡「松の山温泉小唄」 唄:浅草福々
〽越後松の山 情けの出湯 ホンニサ
 肌にほのぼの 添うて嬉しい薬お湯ヨ
 「アー待ちますお出でを松の山 ささ湯の里ゆらりとな

新民謡「松の山温泉湯本節」 唄:船越富美子
〽ハー 誰になびくか出湯の煙 可愛いお方の
 ヤーレほのぼの気もなびく
〽気楽気ままな湯本のお湯にゃ お月様さえ ほのぼの浴びに来る
〽恋し懐かし湯本の冬は 布団担いで ほのぼの西東

新民謡「春日山節」 唄:徳山たまき
〽戦するなら謙信公のような(アリャ謙信公のような)
 敵も情けに泣くような
 「そうだそだそだ その意気だ その心意気
〽信濃川中島謙信公がなけりゃ(謙信公がなけりゃ) 只の川原だ石原だ
〽弱きを助けて強きをくじく(強きをくじく) それが命の武士の花
〽春日山頭、松吹く風に(松吹く風に) 今も伝わる義の叫び

新民謡「柏崎小唄」 唄:久龍
〽笹に青菅きりきりしゃんと 巻いた粽が忘らりょか
 祇園花火の 祇園花火の散る頃合いは
 鐘が鳴ります 鐘が鳴ります番神様に かけた願いは何じゃやら
 「ほんにそだこて、そだこてや
〽海は翡翠か波ゃ白銀か 泳ぎゃひらひら舞う鴎
 オール持つ手も オール持つ手も赤銅色よ
 昨日覚えた 昨日覚えた三階節の 踊る手ぶりで舟もやろ
〽佐渡も彌彦も一目に晴れりゃ 日本一のグランドで
 あがる勝鬨 あがる勝鬨、山まで響く
 山じゃ茸狩り 山じゃ茸狩り田は金の波 栗も色づきゃこぼれます
〽雪の米山夕日に映えりゃ スキーかついで西東
 町と村とを 町と村とをつないだ道に
 添うて離れぬ 添うて離れぬあの橇の痕 どこで逢うやら果見えぬ

新民謡「アノソ節」 唄:淡谷のり子
〽雪の米山ほんのり霞みゃ 里は桜の花ざかり
 海にゃ長閑な 海にゃ長閑な浮寝鳥
〽浜じゃ網曳く町には人出 石油工場じゃポーが鳴る
 山は霞の 山は霞の薄化粧
〽忘れまいぞえお野立山で 聞いた松風、波の音
 空の雲雀の 空の雲雀の歌心
〽人の心と閲魔の粽 キリリ結んだほどがよい
 中にゃ香もある 中にゃ香もある味もある
〽祇園祭の花火は謎か 三階節踊りの手が揃や
 空にゃ夢のよな 空にゃ夢のよな天の川
〽海は瑠璃色、泳げば波が 金と輝き銀と散る
 磯じゃ松風 磯じゃ松風、音頭とる
〽なぎさ松原、砂山行けば 裾にからまるグミの枝
 ほろろこぼれる ほろろこぼれる実の赤さ
〽秋の浪音、身にしみじみと 呼んでいるよな佐渡が島
 暮れりゃ番神さんの 暮れりゃ番神さんの鐘が鳴る
〽米山曇れば弥彦も曇る 間の柏崎ゃ日照り雨
 里は稲刈り 里は稲刈り汗の雨
〽波はどんと打つ日は暮れかかる 空は雪空、鳴く千鳥
 街にゃ悲しい 街にゃ悲しい灯がともる
〽アノソコノソで今日の日も暮れる 暮れて身にしむ浜風も
 なぜか親しい なぜか親しい柏崎
〽越後柏崎スポーツの都 広いグランド日はうらら
 若い血が燃え 若い血が燃え腕が鳴る
〽競馬見に来て気も浮き浮きと 浴びて嬉しや砂煙
 残る思いの 残る思いの柏崎
〽立ととねまろと仏は仏 石の地臟さん物言わぬ
 物は言わねど 物は言わねど願を聞く
〽生田万よ貞心さんよ 浪よ千鳥よ松風よ
 さてもゆかしい さてもゆかしいこの町よ

新民謡「清津峡温泉小唄」 唄:小龍
〽三国山なみ屏風に立てて 解いた恋帯、清津川
 「堅い岩さえ
 情けに濡れりゃ 暮れて出湯の湯が招く 清津よいとこ ササお湯どころ
〽淡い湯の香に鶯啼いて 夢も溶け合う瑠璃が渕
 「橋は猿飛
 逢瀬のしぶき 乙女日傘に降りかかる 清津よいとこ お湯どころ
〽お山苗場は今宵も雪か 軒にあられの音がする
 「熱い情けに
 ついひかされて 泊まり重ねる旅衣 清津よいとこ お湯どころ

新民謡「糸魚川小唄」 唄:小唄勝太郎、小野巡
〽ハー 積もる白雪 さらりと解けてヨ(ヨイセ)
 春は太鼓のネーチョイトサ 音から明けりゃ(ハドッコイサット)
 若い力でせり合う神輿 稚児の舞う手に花が散る
 ヤーンレサッテモ サッテモナ(ヤーンレヨイヤサノ ヨイヨイヨイ)
〽海は翡翠か 雫は真珠か 波にうきうき 南を見れば
 空にゃ銀色、白馬ヶ岳も 笑顔涼しく雪を抱く
〽夜の村雨 からりと晴れりゃ 山は紅葉の あの裾模様
 凛と立ったる黒姫さまも 今朝はほんのり薄化粧
〽雪は降る降る 昨日も今日も 明日も雪かよ 炬燵の円居
 唄で励まし話でなだめ 同じ思いで春を待つ
〽登ろ登ろよ 白馬の山へ 糸魚川から 姫川伝い
 汗は蓮華の湯壺で流し お花畑を寝どころに
〽ヨホイヨホイで 盆の夜が更ける 稲は満作 穂に穂が下がる
 唄の文句は細谷川で 鶯の声ほのぼのと
〽海の遠鳴り 夜風が寒い どこで鳴くやら あの浜千鳥
 心しみじみ月見て更かす 秋の浜家のしめやかさ
〽沖は万灯か 竜宮城か 太刀魚釣りかよ いか釣り舟か
 浜のさざめき夜更けの空に 夫婦星かやちらちらと
〽白馬しまえば 里には霰 海は高波 能登さえ見えぬ
 柑子蜜柑の色づく頃は 濡らすまいぞえハサの稲
〽美山三本松 あのスロープに 残すスキーの 痕さえ光る
 光る雪道里から里へ なさけ心の通い道

新民謡「白根小唄」 唄:小唄勝太郎
〽ハーリャアリャアリャアリャサノサ 鳴かぬ虫さえ白根の町は
 春を知らせの風を待つ アリャリャリャ 風を待つ サイサイ
〽桜町には桜は咲かぬ 粋な姿を花と見る 花と見る
〽お諏訪祭りは夜明けが早い 踊り半ばに夜が明ける 夜が明ける
〽鹿倉山からお月さま出ない あれは有明 朝の月 朝の月
〽竹にしんなり降る雪さえも 白根通いの邪魔となる 邪魔となる

新民謡「赤倉小唄」 唄:小唄勝太郎
〽わらび採る子の唄から明けて 春の赤倉むらさき霞
 誰を待つやら白樺越しに なびく湯煙ゆらゆらと
 「赤倉、湯どころ、スキーどころ ほんによいよい、よいところ
〽粋な浴衣がちらほら揺れる 夏の赤倉すずみの宵は
 谷の小川で河鹿も鳴いて 逢うにほどよい夏祭り

新民謡「赤倉音頭」 唄:鈴木三重子、今村隆
〽ハー 踊りナー 踊り踊れよ赤倉音頭
 踊りゃ後生楽、妙高山も 晴れて若葉の薄化粧
 「さあさ踊れよ輪になって踊れ 手拍子そろえてシャシャンと踊れ
〽行こか 行こか参ろか権現様へ
 今日もあの子の日傘が見える かけた願いは何じゃやら
〽一度 一度おいでよ越後へ来たら
 お湯の赤倉、スキーの名所 スキー招けば湯も招く

新民謡「三條音頭」 唄:三條芸妓連
〽ハー 三條よいとこ越後の花よ(ヨイトネーヨイトネ)
 男度胸の エーサ度胸の 火花咲かせる鍛冶屋町(ソレ)
 「三條三條とちょいと参上 みんな参上でちょいと踊れ ちょいと踊れ
〽桜だよりを聞いたか見たか 花の本成寺 本成寺 咲いて嬉しや懐かしや
〽空で絡んで勝鬨あげて 凧は男の 男の 意気で上がるよ勇ましく
〽夜の街ゆえ情けの雨か 松の新小路 新小路 濡れていきます相傘で
〽三條音頭で夜も日も明けりゃ 盆は楽しや 楽しや 娘盛りをほっかむり

新民謡「おじゃれ節」 唄:久保幸江
〽ヤーンレナー 雪の中からおじゃれと招く
 小千谷恋しや 可愛いあの娘の筬の音
 「ハートントンカラリトンカラリ トントンカラリ トンカラリ
〽越後なまりで口には出せぬ 私ゃ君ゆえ 信濃川瀬のあの蛍
〽旅の雁さえ後振り返る 月も指さす 小千谷育ちの雪の肌

新民謡「高田小唄」 唄:藤本二三吉、高田芸妓連
〽ハー 越後高田のお城の花見 米山さんまで浮かれてござる
 見やれあの様に 雪の頬かむりしてござる
 「ねえおまん そだねかね
〽ちらりほらりと花散る陰で 姉ちゃあばちゃが浮かれてござる
 見やれあの様に 赤いほっぺたしてござる
〽妙高南葉の谷間の雪が 解けりゃ高田は緑の都
 見やれ森蔭 夢の灯も赤うござる
〽スキー滑るなら金谷のお山 佐渡島まで一目でござる
 見やれ手に手を 取るも取らぬも雪まかせ

新民謡「高田スキー音頭」 唄:小唄勝太郎、三島一声
〽雪の都は越後の高田(ヨイトサ) 山にゃ輝くレルヒの塔
 仰ぐシャンツェに粉雪煙り(ヨイヨイトサノサ) 晴れりゃ佐渡まで厚化粧
 「さらりさっさら さらりとナ うららゲレンデどこまでも
〽謎かスラローム 夢かよシュプール 今日も金谷で日を暮らし
 戻りゃ雁木に火影がほのり 味な雪夜の炬燵酒
〽雪の高田は白銀づくり スキー祭りの笛太鼓
 家族リレーの手柄を語り 囲む囲炉裏のスキー汁
〽男伊達なら謙信公のように 虹の立つよなハイジャンプ
 雪と情けがもつれて解ける 広い野原の果て見えぬ

新民謡「スキー行進曲」 唄:羽衣歌子/藤本二三吉
〽空は灰色、風が身に染みる 雪の広野は果て見えぬ
 どうせここまで来たのじゃないか ままよジャンプの離れ技
〽雪は降る降る日は暮れかかる 街の灯しもまだ見えぬ
 心細さにとる手の先へ 躍りつたわる絹の雪
〽君は東へ私は西へ またの逢う日を楽しみに
 昨日すべったあのスロープの 跡はいつまで残るやら
〽さらりさらさら窓打つ雪の 音に結んだ夜半の夢
 さめて悔しい風追いかけて すべる野山の雪あかり
〽ころり転んで抱き起されて 照れたあの日は夢じゃない
 野越え山越え笑顔で滑る 今の思いを誰が知ろ
〽明日も風かと見上げる空に 凛とそびえた雪の嶺
 心残りの二筋道を 照らす火打ちも明々と
〽照れりゃテレマーク、クリスチャニヤの 心残りは雪げむり
 すべるあとから雪ゃ降り積もれ 胸の思いは消えはせぬ

新民謡「スキー民謡 さらさらと」 唄:朝居丸子
〽さらさらと 心細かに雪が降る スキーで行こうよね 行きましょうよね
 広い野原をどこまでも ツーツガツー ツーツガツー
〽さらさらと 遠いところに雪が降る スキーで行こうよね
 行きましょうよね 銀の山越えどこまでも
〽きらきらと 空は晴れたよ陽は眩し スキーで行こうよね
 行きましょうよね 野越え山越えどこまでも
〽きらきらと 星も遠くに見えだした スキーで戻ろよね
 戻りましょうよね 森の高田へ灯の影へ

新民謡「スキー民謡 チラリサラリと」 唄:藤本二三吉
〽チラリサラリと粉雪が 思い出すよに降りしきり
 積もる思いはやるせなく 独りスキーで山越える 山越える
〽チラリサラリと粉雪が いとも寂しく降りしきり
 空は冷たく風寒く 独りスキーで山越える 山越える
〽いつの間にやら雪止んで 胸もすっきり気も晴れて
 空を見たれど山高く 独りスキーで野を越える 野を越える
〽遠い寒空ほんのりと 赤い夕日の雪あかり
 消えりゃ雪野が暗くなる いっそスキーで灯の里へ 灯の里へ

新民謡「スキー民謡 雪のお山で」 唄:高田芸妓連
〽雪のお山で リャーンとリャン ジャンプにテレマク リャーンとリャン
 クリスチャニヤで リャーンとリャンリャン 走って転んでこーろころ
 ちょいと休めば リャーンとリャン 松の蔭から リャーンとリャン
 佐渡ヶ島まで リャーンとリャンリャン ぎらぎらぎらぎんらぎら
 光り輝く銀世界 ヤッコリャどうじゃ アリャどうじゃ
 光り輝く銀世界 リャリャリャン
〽雪の山から ジャンプにテレマク クリスチャニヤで 尻餅、雪餅、兎餅
 ちょいと下れば 待の影から 森の高田で ちらちらちらちんらちら
 恋し高田の灯が見える 恋し高田の灯が見える

新民謡「スキー民謡 雪よ降れ降れ」 唄:朝居丸子
〽雪よ降れ降れ積もるだけ積もれ 積もるはしから雪ゃ凍る
 スキー履く身は ヨイショヨイショヨイショ
 スキー履く身は雪まかせ ヨイショヨイショナ ヨイショヨイショナ
〽風よ吹け吹け雪吹きまくれ 山は凍った野は広い
 スキー履く身は スキー履く身は雪まかせ
〽さあさ滑ろよ転ぼとままよ 空は高いぞ日はうらら
 スキー履く身は スキー履く身は雪まかせ
〽若い身空に思案がいろか さあさ滑ろよどこまでも
 スキー履く身は スキー履く身は雪まかせ

流行歌「越路の月」 唄:青葉笙子
〽暮れて 峠にゆらゆら煙り 落ち葉焚くやら懐かし恋し
 泣いていずこへ 泣いていずこへ 渡り鳥
〽右は 信濃路 左は越路 通い慣れてか馬追い手綱
 昔なじみの 昔なじみの 鈴が鳴る
〽ひとり 忍んで峠を越えて 今日も今日とて他国の山に
 恋し故郷の 恋し故郷の 月を見る

流行歌「おけさ月夜」 唄:浅草〆香
〽ハー 思い出せとてサ 照るかよ月よ
 おけさ踊りの 夢も懐かし佐渡ヶ島ヨ
〽花の都に 来は来たけれど 小木の港の おけさ月夜が忘らりょか
〽おけさ踊りに 今宵も更けて 島の浜辺に 咲いてこぼれる恋もあろ
〽おけさ唄えば 懐かし恋し 街のネオンが なぜか今宵は胸に沁む

流行歌「佐渡の故郷」 唄:青葉笙子
〽島も遥かよ さざなみ八里 越えて都へ風も来る
 誰が唄うか おけさを聴けば 思いしみじみ
 ああ 恋し懐かし 佐渡の故郷
〽小木の港に 花咲く頃を 日毎数えて指を折る
 会いに帰ろか 便りを出そか くにの母さん
 ああ 恋し懐かし 佐渡の故郷
〽習い覚えた 夜宮の踊り 遠く離れてあの頃の
 夢の数々 幼い頃の 月もある夜は
 ああ 恋し懐かし 佐渡の故郷

流行歌「佐渡小唄」 唄:東海林太郎
〽ハー 思い出しますおけさの唄で 夜ごと日ごとの夢の主
 恋の情けに揺られて揺れて 佐渡は四十九里 波まくら
〽主は都よ私は佐渡よ 逢うに逢われぬ離れ島
 雪に埋もれて金山そだち 嬉し逢瀬はいつじゃやら
〽逢いに来たかよ荒波越えて 磯の千鳥じゃせんもない
 泣いてくれるな泣かせてくれな 佐渡は四十九里 波の上

新民謡「大川小唄」
〽恋の坂々見返り峠 旅のつばめもネ チョイト振り返る
 大川よいとこ一度はおいで 熱い人情の トコヨイヨイ 花が咲く
〽佐渡に名所は数々あれど ほんに見せたい 津神島
 紅の架け橋、朝日に映えて 港繁盛の 鎮守様
〽眺め西丘ほんのりほろり 燃えて色増す 磯つつじ
 想い岩百合すずらん百合の 花も夢見る 理想郷
〽鯛に真イカに鮑に栄螺 蛸は生簀の 人気者
 津神公園、潮香に明けて 夢の浦島 龍宮城
〽沖の千鳥も焦がれて通う 大川娘は 紅椿
 別れ辛さに寄り添う影を 浜の松風 抱いて吹く

新民謡「鴨湖小唄」
〽葦のそよぎに影見せて 岸吹く風の静けさよ
 松は枯れても島崎の あせぬ思いは心から
〽松の林に啼く声は 友呼ぶ朱鷺のまぼろしか
 蒼い鴨湖にトキ色の 翼映して飛ばせたや
〽山は晴れても気は晴れぬ 弁天様まで来は来たが
 淵に沈んだ鐘の音に かけた願いのやるせなさ
〽天王まいりに日は暮れて 蕎麦の花咲く帰り路
 あきつ飛び交う稚崎の 丘に唄うは佐渡おけさ
〽石の橋ならいつまでも 折れはしまいに来ぬ人を
 心こごめに待つ宵は 両津恋しや浮かぶ灯よ

新民謡「両津小唄」
〽島の灯台、灯がつけば 船も来るじゃに夕千鳥
 浪に啼く啼く飛び去って 両津桟橋、雨が降る
〽沖の鴎にことづけて 聞くは悲しき潮の音
 時雨松かや袖ぬらす 島の乙女のもの思い
〽海に吹く風曇る日は 眠る鴨湖も夢に泣く
 私しゃ両津の磯そだち 胸に情けの堰きはせぬ
〽金北山の頂きに 雲がかかれば時化の風
 今日の出船はやめしゃんせ 町にカフエの灯がともる

新民謡「よっしょい節」
〽越後今町男の盛り ハヨッショ 凧の戦は ヨッショイショイ
 意気でやる 意気でやる ハーヨッショヨッショヨッショイナ
〽よっしょよっしょと矢声があがる 凧は今町 中の島 中の島
〽風よ吹け吹け百枚張よはずめ 晴れよお晴れよ 守門山 守門山
〽揚げた揚げたよゆらりと揚げた しかも百枚張の 大凧を 大凧を
〽やっさ絡んだそら来た走れ 意気は今町 滑車で鳴る 滑車で鳴る
〽憎い向うのあの人中に 可愛いお方を なぜ立たす なぜ立たす
〽凧よ絡むならきりりときりと いっそ煙の 走るまで 走るまで
〽さすが大凧ゆらりとゆらり 揺れて落ちかけて また昇る また昇る
〽絡め絡めと絡ませといて あれだふわりと また逃げる また逃げる
〽たんとよい風お主にあげて 私ゃやんわり 負けて勝つ 負けて勝つ
〽凧は六角とっつぁは四角 とかくお前と わしゃ互角 わしゃ互角
〽落ちよ落ちよと願掛けながら 揺れて舞いだしゃ 気が揉める 気が揉める

新民謡「湯沢シャンソン」
〽雪がヨホホイ 呼びます越路の雪が
 山も白いに 山も白いに ホイ早うおいで
 「リャリャンと行ってもテレマーク ジャンプで来るならツツーノツ
〽越の 野山に今朝積む雪は やがて根雪の やがて根雪の 床となる
〽布場 雪晴れ朝日に映えて どれが影やら どれが影やら あの子やら
〽雪の 一本杉君ならよかろ いつも眺めが いつも眺めが さえざえと
〽雪に 二筋スキーの跡を 今朝も早うから 今朝も早うから 誰がつけた
〽かかさ 思えば雪山千里 ちゃちゃよ泣けます ちゃちゃよ泣けます お月夜は
〽湯沢 湯の宿木天蓼漬けて 山で日送り 山で日送り 気もとろい
〽西に 大峰東に飯士 中は鳴瀬の 中は鳴瀬の 魚野川
〽ちょけん ちょけんは苗場の奥よ 雉が呼ぶすけ 雉が呼ぶすけ 君恋し
〽あんね どこゆくさんぱく穿いて 山のたらんぼの 山のたらんぼの 芽を摘みに
〽雪の 解け際聞いたか見たか 木の芽ふぐれの 木の芽ふぐれの 若緑
〽三国 峠の権現様に 生きのよいのを 生きのよいのを ちいとばか
〽朝の 吹雪に箕ぶしかぶり 男よいもの 男よいもの はやさらば
〽親に 別れた角兵衛獅子も 笛でひよろと 笛でひよろと 越えたやら

↑このページのトップヘ